ラインハルトの兄は魔女に魅入られている!   作:欠けたチーズ

41 / 42
ご都合
原作の辛いところは反映しません、何故ならご都合だからです。


【ラインハルトルート】誰かのしあわせ

意識が浮上する、微かに聞こえる風の音

それらを聞いてゆっくり目を開ける

またあのパンドラと過ごした家なのでは無いのかと言う恐怖が湧き出たがすぐに違うことに気づいた、視界に映ったのはアストレア家内にある自分の自室、そして視界の隅に映る真っ赤な髪が見えた

 

数日寝ていたのか重い体を動かすことができず視線だけを向ける

 

「兄様」

 

不安そうに見つめてくるラインハルトの姿が見えた

いつもの服とも騎士服とも違うラフな服装、何か軽い用事でもあったのだろうかと自分の頭は心配そうに自分を呼んだラインハルトの声を他人事のように処理してしまった

 

泣きそうなラインハルトの顔に無自覚に手を伸ばす

 

重くゆっくりと動く手に気づいたのかラインハルトはその手を取った

 

「兄様僕が誰だかわかりますか?」

 

「ああ覚えている、ラインハルトだろ」

 

レインの答えにラインハルトは嬉しそうに返事をしていた

 

無意識にラインハルトの方に伸ばしていた手をゆっくりと戻そうとしたがそれを拒むようにラインハルトが痛まない程度に抑えたのでやめた

 

「…アイツは…魔女は…どうなった」

 

数秒の沈黙の後怯えたように、ゆっくりと途切れ途切れで言い放った言葉にさっきまで嬉しそうな顔をしていたラインハルトの顔はコア張っていく

 

「死亡しました。」

 

「そうか」

 

もう魔女の恐怖に怯えることなどない

頭では分かっていても今までの生活から癖が抜けきれない、ラインハルトと目を合して話すことができなかった

恐怖かそれとも罪悪感かはわからないが

 

「…」

 

「…」

 

沈黙が続く、お互い何を話していいのか分からなかった

ラインハルトは自分を犠牲にし続けた兄への言葉をどう切り出していいかわからなかった

レインは守ると言っておきながらちゃんと守らなかったことについて、自分がラインハルトを嫌っていないと言うことを言おうにも、今までの恐怖()が邪魔をした

 

「…悪かった」

 

最初に言葉を発したのはレインだった

レインの言葉にラインハルトは呆気に取られたような顔をしていた

 

「守るっていって、助けるって言って、お前をずっと1人にさせて孤立させて孤独にさせて…兄らしいことなんてしてやれなくって…お祖父様の事も父様の事も…庇ってやれなかった守ってやれなかった…酷いことした…ごめん謝って済むことじゃないと思っている」

 

「そんなことありません」

 

レインの手を掴んでいた手に少し力が加わる

 

「兄様は僕を守ってくれていました、ずっとお祖母様の葬式の時1番最初に庇ってくれました、僕が落ち込んでいる時には必ず励ましてくれていました、兄様はずっと僕を守ってくれていた、兄様はずっと自分を犠牲にして僕を守ってくれていた、それに気づかなかった、気づきもしなかった、勝手に嫌われたと思い込んで距離とって、それでも兄様は僕を思っていてくれていた、助けれてくれていた守っていてくれた」

 

その声はどんどん泣きそうな声になっていくのがわかる

 

「兄様は僕の兄様でいてくれた」

 

やっとラインハルトの顔を見れば今にも泣きそうだった

ふと頭にはまだ幼い頃のラインハルトの顔が映る、まだ子どもらしくってよく目に涙を溜めていた、まさに今その顔をされていた

 

「兄様はずっと僕を大切にしてくれていた…ずっと」

 

そう言いながらラインハルトの視線は机に向いた、特に何も置かれていない殺風景な机の上に何かが光に反射して輝いているのが見えた

 

レインは気づいていないが、プリステラでラインハルト達の目の前で攫われた際に落としたブローチの部品がそこにあった

 

「スバルから聞きました。ロズワール邸が一度焼けた日、何かが入った箱を悲しそうに持っていたと、その日からよくポケットに手を入れて何かを触っていたと」

 

案外よく見ていることに内心少し引く

 

「手紙とっていてくれたんですね。」

 

「…ああ」

 

一度全て燃えた後もラインハルトからの手紙は取っておいた、いや捨てられなかったのだ、誘拐されてから何か手がかりでも探しに部屋の中を捜索でもされたのだろう

日記などと言った人に見られて恥ずかしくなるようなものは書かなかってよかったなどと思う

 

「兄様」

 

「なんだ?」

 

「ずっと僕を守ってくれてありがとうございます」

 

「…何言ってるんだよ俺はお前の兄様なんだぞ、弟を守るのは当たり前だ…それに俺はラインハルトをちゃんと守れなかった」

 

後悔が頭に浮かぶ、守った?それは魔女からだけだ

肉体を守れたとしても、精神を守れなかったら意味がない

精神を傷つけられてそのままにしていて、知っていて助けなくって

ただそれだけがレインの心に大きな後悔を刻んでいた

 

「ならこれからはずっと一緒にいてください」

 

「…」

 

「僕の兄さんとしてずっといて下さい、僕が困ったら助けてください、僕と話をして下さい、僕と、ぼくと」

 

とうとう目から涙を出し始めるラインハルトの姿に重い体を無理やり動かし、横になっていた上半身を起き上がらせる

空のように青い目からこぼれ落ちる涙を指で掬い上げる

だが片手、しかも大粒の涙は止まるどころか勢いを増す

 

「俺はお前よりもずっと弱いし頭も良くないし、頼りないぞ」

 

「兄さんがいいんです」

 

「俺が逆に助けられるかもしれないぞ」

 

「いいんです、ずっと助けてもらっていたから」

 

困った、涙は止まる気配が無いままだ

 

涙を掬い上げるのをやめ涙で濡れた手をシールに押し当て水分を取る

 

「ラインハルト」

 

涙を流しながら青い瞳が見つめてくる

 

ラインハルトが涙を流している姿を身内以外が見れば腰を抜かして驚くのだろうか、何故か冷静にそんな事を考える

真っ赤な髪に手を置く

 

「お前の兄様は弱いぞ、頼りないぞ」

 

「そんなことありません、兄さんはすごい人なんです」

 

鼻を啜りながら言っている、鼻を啜るな鼻をかめと言えば「離れたく無いので嫌です」と言われてしまった、少し嬉しいのは隠す

 

「…」

 

相変わらず少し頑固だな、手を離さずずっと見つめてくる姿を見てそんな事を考える

 

「兄様はな、実はラインハルトに弱いんだよ」

 

「僕に?」

 

不思議そうに見つめてくるラインハルトの姿に軽く笑い、着させられていた服の裾でラインハルトの顔を拭く

 

「ラインハルトが一緒にいて欲しいって言ってたらか俺はそうしたいと思ってしまうんだよ、覚えてるか?俺が騎士団に入隊して初めての仕事の日ラインハルトが行かないでって行った時のこと」

 

「我儘を言ったと思ってます」

 

「あの時な俺割と本気で騎士団やめてラインハルトと一緒に過ごそうか悩んだんだぞ」

 

「本当に?」

 

信じてなさげな顔に頷く

 

「俺はなそんだけ、ラインハルトが大切なんだよ、だからお前が一緒にいて欲しいなんって言ったらな、俺は冗談抜きでやるぞ?」

 

今は魔女もいないならば、恐怖で縛られる事もない、いやきっと癖だけが残りそれから解放されるにも何年もかかるだろう

 

「そうして下さい」

 

幼児退行している気もするが、可愛らしい弟の頼みだもう引き受けることにした

 

頭を撫で、緩んだ手から自分の手を引き抜き背を撫でる

自然に抱きつくような形になり肩に顔を埋め、その状態でまだ泣かれる

 

落ち着くまでこの状態を続け、ラインハルトが落ち着いてからは2人でずっと話をした、空いていた時間を埋めるように日が落ちても星が見えても話をして、様子を見に来た婆やに起きたならば終えてくれてもよかったのではないか?的な事を言われた後も話をした

 

ーーー

 

怪我の容体は、切り口が鮮やかすぎてすぐくっついたと言われたため今は大した怪我ではないらしい

 

俺の弟はすごい

 

と言ってもフェリスが話す内容を聞いていたラインハルトの顔は死んでいた、まあ当たり前か、俺だってラインハルトは切ったら罪悪感と後悔で自害する

 

「にしてもさ」

 

フェリスが突然話を変えたと思ったら言葉が詰まったように、吐き出すように答えた

 

「その目はもう戻らにゃいよ」

 

「まぁ、そうだよな」

 

眼帯をつけている目に手を置く

パンドラの目と交換された目

 

パンドラがどうやって交換したのかは分からないし知りたくないが、目の交換なんて元々不可能な話だ、だが目の前にいる王国1番な治癒魔術師ならば可能かもしれないが鮮度の落ちた死体から抜き取った目を移植する、それも視力を落とさずなんて無理な話だ

 

「…」

 

「はいはいラインハルトもそんな顔しにゃい、レインきゅんが無事だったんだしはーい笑って笑って」

 

落ち込んでいると言うことは簡単にわかるほどに落ち込んでいるラインハルトを気遣ってからいつも通りに接してくれているフェリスに内心感謝をする

 

ーーー

 

怪我の完治そしてラインハルトの精神面が落ち着くまで王都に残ることとなった

 

「お前にも世話になった」

 

「レインがお礼言った!」

 

口元に手を抑え、あり得ないものを見るかのように言い放ったスバルの足を軽く蹴る

 

「いてっ、…でレイン、ラインハルトは上手くやれてんのかよ」

 

「…わかんねぇ」

 

「まぁそうだよな、10数年間ずっとあの状態だったのだろ?仕方ないよな」

 

スバルの考え込むような仕草も久しぶりに見る

 

「ああそうだ、時間作れたらこっちに来いよ、ガーフィールとペトラがすげぇ心配してる後オットー、それとエミリアがお礼言いたいって」

 

ガーフィールとペトラには異様に懐かれていたからかそんな事を言われる

 

そもそもレイン自体妹弟属性に弱く無意識に甘やかすと言う、ラインハルトを甘やかさない反動が誰かに向いていた、と言う可哀想な奴のため、それに1番当てられていた2人が1番レインに懐いていた

 

「お礼はいらないって言っといてくれ」

 

「分かった、取り敢えず顔だけ見せに来いよ、じゃないと乗り込むぞ」

 

そう言い放つスバルを見て「別にいいぞ」と返せば予定を決め始めたのでやっぱり止めた

 

ーーー

 

話をした、たくさん話をした

朝食をとってから、昼食になるまでずっと喋って、夕飯になるまでまた話して

 

婆やに少し休まないと喉を痛めると注意されるほど話して

フェルト様から呆れられるほど話して

 

10数年ぶりの幸せを噛み締めて、思い出して、感じて

笑って、笑って

 

久しぶりにこんなに笑って顔が筋肉痛になって、爺やから心配されて婆やからはだから言ったのにと呆れられて

 

そんな日を数日続けて

 

コツコツと自分の足音だけが廊下に響く

 

一つの扉の前で止まりノックをする

 

中から「誰だ」掠れた声が聞こえ自分の名前を答えれば大きな音が扉に向かってくる

一歩後ろに体を引けば、さっきまで体があった位置に扉が勢いよく開いた

 

「魔女の呪いが解けたので本音で話し合いに来ました」

 

自分ともラインハルトとも微かに違う青い瞳の色を見つめる

 

「恨み言でも言いに来たのか」

 

「それは魔女の呪いがあっても言えます」

 

固まるハインケルの身体を押し、部屋に入らせる

自分も入り扉を閉めたのを確認してから眼帯に手をかけ外す

 

「お前目が」

 

「魔女の目です」

 

目を見開き、そして後悔しているのかすぐに目を逸らされた

 

頭を抱え後退り、机にぶつかり机によりかかる自分の父親を見て口を開く

 

「ずっと後悔してました。あの時のことを父様を突き放した日の事を」

 

「なんで」

 

「魔女に目をつけられ害を加えられるのが怖く突き放し、父様を傷つけた、母様のこともあったと言うのに」

 

「なんで!お前は俺らのせいで片目がそうなったんだろ!?俺やラインハルトを守ろうとして!攫われたんだろ!何で恨み言を言わない!何で何でだよ…恨み言を言ってくれればいいだろ、お前らのせいでこんな目にあったってそう言ってくれれば」

 

力無く寄りかかっていた体は勢いをつけて掴みかかってくる

 

「気が楽になりますか?なりませんよね、父様は優しいから自分のせいでって責めるでしょ?後悔するでしょ?それに俺は恨んでなんていない、そんなふうに思ってもいない、俺は父様や母様、ラインハルトを守れて良かったと思ってます。」

 

胸ぐらを掴んでいる手を優しく掴み手を離させる

 

「僕は父様も母様もラインハルトも大切です。守りたいと思ってます。自分よりも2人が強いってわかってます、それでも守れるならば守りたかった」

 

目を見開き力無く座り込んでしまった

 

「俺がお前をそこまで追い詰めさせたのか…おれが」

 

「違います。父様は凄い人だから、凄いから」

 

座りこむハインケルに目を合わせるためにしゃがみ込む

 

「俺は父様の子でラインハルトの兄様だ、だから守りたいと思うし助けたいと思う、力になりたいと思うんだ、こんな形は良くないと思ってはいましたが…危害を加えられたくなかった」

 

「…レインお前は俺の子じゃない方が幸せだったんじゃないのか…こんな目にあってそう思って…」

 

今にも泣きそうな顔がこちらを見ていた

 

「父様、僕は貴方の子で良かった。後悔などしたことない」

 

目に溜まった涙がこぼれ落ちて行く

 

「俺は、お前らの父親として誇れるような事はできてない」

 

「これからやればいいです」

 

「ラインハルトに酷い事を言った」

 

「ラインハルトは許してくれる、俺の弟だからな」

 

後悔が口からポツポツと漏れ出ている

 

「おれは…俺は」

 

「父様はこれからラインハルトに会いに行きませんか?」

 

手を差し出す、剣を振るうさいに出来た豆や怪我の跡まみれの手を

 

「母様が起きた時、ラインハルトと父様の仲を知ったらショックでまた寝てしまうかもしれないですし。もちろん仲は取り持ちます手助けもします」

 

無言のままハインケルはレインの手を取った

昔のように幼く笑う

 

ーーー

 

たまにスバルと王都で出会って話す

 

「お前、ヴィルヘルムさんはぶるなよ」

 

「…」

 

カフェでお茶をしていた時にそんな事を言われ無言のままコーフー(コーヒー)を啜る

聞かなかったことにしたかった

 

レインの中ではヴィルヘルムという人間にかなりの苦手意識があった

その原因はラインハルトをなじったから、それにプラスしてプリステラでの出来事、ラインハルトは許すだろうがレインは許す気には慣れなかった

 

「ユリウスから聞いたからな、ラインハルトとラインハルトの父親とレインで仲良くしているって」

 

「お前ら何で…仲悪くあれよ」

 

意外なところ経由で情報が抜けていた

 

「…あの人苦手なんだよ」

 

珍しそうに見つめてくる目に文句を言おうか悩んだがやめた

スバルには返しきれないほどの借りがある、魔女の権能が無くなった今死に戻りの記憶も持ち越せない為、助けてもらった、ラインハルトのメンタルケアをしてもらったなどと言った恩を返しにくくなっていた

 

だから悩んでいた

何故かスバルひヴィルヘルムを尊敬している、祖父だけ仲間外れにするのもな、などと思っていたが

 

「気を遣わせて悪かった」

 

「お前本当に人が変わったよな」

 

「お前には前みたいに接してやろうか?」

 

「遠慮しとく」

 

軽い冗談を躱し、少し頭を悩ませる

出来ることならば祖父とも仲良くすべきなのだろうか、苦手意識が邪魔する

 

「…なぁ…協力してくんねぇ?」

 

悩んだ末に出た言葉にスバルは待っていたと言わんばかりに笑っていた

 

ーー

 

王都の街並みを1人歩く

見知った道を歩く

 

幼い頃は家からこの道に辿り着くまで1時間近く使っていたが成長した今では30分かかるかかからないかほどになっていた

 

とある店の前で立ち止まり中に入る

昔からよく通っていたチョコレート店

ラインハルトがよく好きだと言っていた店、レインが初めて魔女に攫われる原因となった店

 

慣れたように店に入り、チョコレートを買ってすぐに店を出る

 

スバルに協力してもらい何とか多少の会話を躱し、いろいろ経て、今日ラインハルト、ハインケル、ヴィルヘルム、スバル、そしてレインでお茶会をすることとなった、何故スバルがいるのか?それは気まずくなったらスバルを使い何とかしようと、そう考えたからだ

スバルはすごく嫌がっていたが、レインの珍しい必死な説得に渋々了承した

 

動き回り、失った時間を取り戻そうとしているがまだ

恐怖も癖も抜けきれない、白金の髪はまだ怖いし片目だって怖くって眼帯をつけている 

まだ夢に出てくるほど魔女に恐怖している

 

洗脳のようなものをされていた時のパンドラを愛おしいと思う気持ちは今は微塵もなくい

むしろ恐怖が湧き出る

 

魔女に魅入られ、魔女の目を持つレインは魔女教から狙われることになるかもしれない、それでもレインは自分の大切な人の為に相変わらず生きる

 

自分を犠牲にしてまで

自分が死んでも家族を守る

そんな生き方しかできないのだから

 

ハッピーエンドに決まりました!

  • ラインハルトルート(和解)
  • パンドラルート
  • どっちも
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。