余所行きの服を着たロズワールと廊下ですれ違った
「しばらく屋敷を開けるかぁらよろしく頼むよ」
「…悪巧みですか」
「そんなことはなぁいさ」
何を考えているのかよく分からない笑みを浮かべ、玄関に向かっていく
「…楽しそうだなアイツ」
最近、王都に行くエミリアに無理やりついて行かせようとした時から、何だか楽しそうにしているロズワールの背を見つめる
何かろくなことを考えていなのは分かる
ーー
「レイン来てくれ!」
太陽も沈み月が綺麗に見え始めた頃だった、そう言って扉をノックもせずに荒々しく開けたスバルが来たのは
「何だよ五月蝿え」
「呪術師の正体がわかった!」
その言葉を聞き、急いで剣を持ち立ち上がる
ーー
「ラム! レム! 話がある!」
「話つけてなかったのかよ!」
ラムやレムに話をつけずに真っ先にレインのところに来た時点で相当急いでいることは分かった
「どうしたの、バルス。そんなに焦って…レイン様も」
「悪いがこれから村に行く。止めても無駄だし、止められても行くが、伝えないで行くのも混乱させると思ったんでな」
「村へ……? なにをしに……いえ、それ以前に、ロズワール様の言いつけを聞いていなかったの? 今夜、ラムたちは屋敷を任されているわ。その意味がわかっていないというの?」
反論するラムの視線が鋭くなる
「押し問答してる時間も惜しいから、単刀直入に言うぜ。――あの村に悪い魔法使いがいる。そいつの正体がわかったから、行かなきゃいけねぇ」
「……その子どもの言い訳みたいな理由で認めろと?」
「他に言い方ねぇんだからしょうがねぇだろ。それが事実だってのはベア子にでも聞いてくれりゃ証言してくれる。あとは……」
「姉様――」
なんて言おうかと考えていた時、晩御飯の準備をしていたであろうレムが顔を出した
「姉様、これは……」
「村にいる悪い魔法使いを退治するから、外へ出してくれと仰せよ。――どうしたものかしらね、レム」
「姉様、姉様。スバル君てばずいぶんとつまらない冗談を言いますわ、レイン様もスバル君の冗談に騙されてますね」
「レム、レム。バルスったらピエロとしての才能は一流なことを言うわ」
「ラム、レム。俺はいつもふざけちゃいるが本気で話すときもあるんだ」
「レムラム、お前らが任されてるのは屋敷と何だ?」
領主不在の際は、エミリアの安全はレインが屋敷と領地を守るのはレムとラムの仕事だ
黙る2人を見てスバルが口を開く
「信じ難い話なのは認めるし、現状で急に動き出す俺を信じろって言われても難しいってのもわかってる。だから無条件で見送れたぁ言わない」
「俺はこれから村に行く。怪しむってんならついてきて構わない。俺を見極めろ。ただし、エミリアたんをひとり残しては行けねぇ。レインは付いてきてもらうし、もしついてくるなら片方だけだ」
「勝手な仕切りを……そもそも、ロズワール様のご命令を守るなら、スバルくんにレムや姉様がついていく理由は……」
「ああ、ないとも。夕方のロズっちの命令を守るってだけならな。けど、ロズっちから出てる俺への命令はそれだけか?」
痛いところをつかれ黙るレム
「わかったわ、バルス。あなたの独断行動を認める」
それを見てか、納得したからかラムが口を開いた
「姉様――!?」
「ただしバルスもわかっている通り、ひとりで行かせるわけにはいかない、かと言ってレイン様をエミリア様から離れさせるわけにも行かないの、ここでバルスとレイン様の2人での行動を許すと、ロズワール様の命令に背くことになるから」
「エミリア様の安全の確保なら、危険を取り除くって事で出来るだろ」
「ラムはロズワール様から何かあった場合、エミリア様とレイン様を離れさせるなと命令されているのよ」
初耳な情報に困惑する
「――癪な話だけど、さっきのバルスの申し出に乗るしかない。ラムが屋敷に残る。レムがバルスについていく。怪しい真似をすれば……それが条件」
「それは」
ある意味危険なんじゃないのか、そう言おうと思ったがスバルの言葉が先に来た
「レインが来れないのは納得した、願ったりかなったりだ」
「…分かってるのか」
レムがスバルを警戒している事を
「分かってるよ」
記憶にない間に何があったのかを聞く暇も勇気もない
ただ真っ直ぐな目を見てこれ以上何か言うのをやめた
「レム、そういうことだからお願い。ベアトリス様への確認と、エミリア様の方はラムとレイン様が守るわ、そっちのことも、ちゃんと視てるから」
「姉様、あまりその目は……」
「言っている場合でもない。必要なら使う。レムもそうしなさい」
「スバルくん、詳しい話が聞きたいところです」
「道中でな。ひょっとすると、かなりマズイ事態が進行してるかもしれねぇ」
もし先にスバルが死んだらまたスバルは孤独に何かをする羽目になる、そう思うと頭が痛くなる
覚えていない理由が分かった時の何とも言えないあの顔を見るのが嫌だ、例えこの記憶が無くなっていたとしても
「――スバル、どこか行くの?」
階段の上、不思議そうに見つめているエミリア
「大きい声が聞こえたから降りてきてみたら……なにかあったの?」
「なにかあるかも、なんだよ、エミリアたん。まぁ、心配しないでくれていい。あ、でもちょっとは心配してくれてると嬉しい」
「また、危ないことしそうな顔してるわよ」
鈍感なのか鋭いのかよく分からない洞察力を見せられる
階段を降りてくるエミリアを見てスバルの方に向き直る
「何かあったらすぐ戻って来い」
「分かってるよ」
「はい」
頼りにしているでも言いたげに言い放ったスバルと不安げな返事をしたレム
2人を見送る
ーー
2人が戻ってきた
ボロボロでスバルに関しては意識がなかった
ーー
ラムと話し終えたであろうスバルの元に行く、待っていたわけじゃない、ただタイミング的にそうなっただけだ
「怪我は」
「エミリアたんのおかげで」
平気アピールなのか腕をあげている
「そーかよ」
「もしかして心配してたりした?」
「するかよ」
ニヤニヤと笑っているスバル
「悪いなレイン、イケメンのツンデレとか俺的に徳はねぇんだよな!」
『イケメン』『ツンデレ』という言葉の意味は分からないがなんかムカついたので頭を掴む
「地味に痛いんだよ!」
怪我人なのも合ってすぐにやめた
ーー
レムがいなくなった、それに気づいたラムとスバルは森に入った
本当ならレインも同行したかったが1人で眠っているエミリアを置いていくわけにもいかないため、村に残った
「どうして言ってくれなかったの!」
起きたエミリアに状況を話せば、可愛らしくそう怒っていた
「エミリア様はオドを削っています、これ以上無理をさせるわけにも行きません」
やっぱりなとでも言いたげなレインが態様をしていた
「それでも」
眉をひそめ悲しそうにそう呟いた
「リア落ち着きなよ」
レインだけじゃ無理と判断したのか、パックが出てきた、その事により一時的にエミリアを落ち着かせる事には成功した
ーーー
日が落ち始めたぐらいに、ロズワールが村にやってきた、屋敷に誰もいない事を疑問を持ち来たらしい、状況を説明すれば、急いで森の方に行った
こいつは相変わらずよく気絶しているそう思いながら、治療を受けているスバルを眺める
ーー
昨日起きた魔獣騒動もなんとか落ち着かせ、ようやく屋敷に戻ってきた、そんな時だった
「レイン様」
いつもとは違い柔らかい声で名前を呼ばれた
振り返ればいつもは睨んでから瞳が違う誰かに向けるような優しい目つきになっていた
「レイン様、今まで申し訳ありません」
頭を下げた
そんな様子を見てただ、困惑して声も出なかった
「レムはスバル君を信用します、だからスバル君が信用しているレイン様も信用します」
そう言い切ったレムを見て困ったように頬を掻いた
「好きにしろ」
それだけいい歩き進めた