原素の水面に理想を映せ    作:テムテムLvMAX

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キール君の、ゲームで言うところのアーツ技とバースト技を考える回


四話 原素の申し子

「もう1年経過しましたね、予算が下りたことでキール君の研究はまた一段と進んだと思う所長です」

「私の見解を申し上げると煌術はまだまだ実用圏外ですが、その副産物で輝術の方が改良出来てます」

「じゃあ良い感じだねぇ!」

「ストラタ軍人の熱視線が凄く、私は困るんですが」

「一番恩恵受けてるからねぇ」

 

 大統領の件から1年経ち、私もまたひとつ歳を重ねた、8歳となると、私の感覚だと小学二年生、まだまだ尻が青い子供だが……子供でも私の場合精神は大人だ、やれることは色々とある。

 そうだ予算が下りてから出来ることが増えた、この1年は輝石を使った実験を増やし、今までより大掛かりな仕掛けを製作したり、煌術開発の副産物で既存の輝術に手を加えたり、輝石から原素を取り出す新しい方法を考えたり、輝石を再形成する実験だったり、充実はしていた。その分この体は使い倒した。

 

 自分でも良くやったと思う、なので今日は休息日にして国のための研究ではなく、本当に自分の為だけの物を研究しようと思う。構想や準備は前々から進めていた、今日で完成形に持っていけるだろう。

 多少規模の大きい実験もあるのでセイブル・イゾレから離れ、ストラタ砂漠のとある場所へ向かう、ジョシュも一緒に付いてきた。

 

「……凄い、砂漠の中に緑がある、これキール君が作ったんだな?」

「ええ、と言っても煌術の練習に使っていた場所がいつの間にかこうなった、と言うのが正しいですが」

「ふーむ、恐らく祖原素が場の原素濃度を引き上げて植物が定着しやすい環境になっていたんだろうね」

「私もジョシュさんとおおむね同じ考えです……ですが、祖原素がこの場を満たした所でこんなバランス良く原素が整うことあるのでしょうか、しかも超局所的な物です」

「それは……原素が……いや、そう言われると確かに、濃度が上がっても三要素のバランスまで変わるのか?」

「そこです、仮に祖原素が勝手に周囲の原素とのバランスを図っているとしても……分からないことだらけです」

 

 私が発見した祖原素だが、私自身も進展がなく困っている……私が祖原素を発見した理由は私の世界では素粒子と言う概念があったからだ、素粒子は分子の最小単位のようなもので質量がない、祖原素も同じとは言わないがどうにかして手を加えないと素粒子と同じくそこにあるだけで、人間のレベルで見れば何の意味もないものだ。

 私が私の世界で思索にふけるとジョシュが肩を揺らして現実へ引き戻す、どうやら長い間考え込んでいたみたいだ、一瞬だと思っていたが。

 

「それでキール君はここで何をしたいんだ?」

「そうでした、私も8歳になったのでそろそろ戦いの一つでも出来れば良いなと思い、子供でも扱える輝術をここで試行錯誤していたのです、あと……倫理的に人に言えないもの、とかね」

「怖い、見たい、やっぱりこわ……見たい!!」

「研究者の愚かさ全開ですね」

 

 私は倫理的な物は二の次なマッドサイエンティストでもないですが、しかし、思いついたらやりたくなる。

 

「それでキール君何から見せてくれるんだい!」

「輝術から行きましょう、今回は私が一から組んだ輝術で、調整が上手く行ってないのでジョシュさんの意見も下さい」

「分かった!」

 

 ジョシュの目の前で私は輝術の発動をする、手の内に収めた輝石から原素を取り出して詠唱、念じる。

 

「結集せよ火の精、これなるは焼き焦がす猛火の吐息! 『ラウンドバーニング』」

 

 火の原素が詠唱の通りに集まり、視線の先に密集し円状に火炎が広がっていく、火炎は踊り狂り砂を焦がして消えていった。

 

「どうですか?」

「良いんじゃないか? ただもうありそうな輝術だ」

「実はこれ原素の消費ほぼゼロなんです」

「は?」

「火の原素をメインに術で反応させやすくし大気中の原素とぶつかり合うことでさらなる範囲の拡大が可能です、なので、元の原素消費はほぼゼロと言えるんです」

「なーるほど、そうだな反応しすぎないように限界を決めたら良いんじゃないかな?それ以外は文句ないよ」

 

 次の輝術も見てもらおう、今度は風の輝石を手に持って詠唱し、念じる。

 

「風よ集え、旋風巻き上げ侵食せよ! 『ウィンドエロージョン』」

 

 対象にしていた岩石を中心に風が吹き込みそして小さな竜巻が巻き起こる、風柱となり集う風が高速で回転することで岩石を侵食し、砕いた岩石が砂になり更に岩石を削って行く、まさに風蝕。風が止む頃には跡形もなく削り取られ形がなくなっていた。

 

「ほう……これも中々、えげつないね」

「地味ではありますが、使い所は多いでしょう」

「原素の消費は?」

「さっきと同じ理屈ですが、さらにこれは対象を構成する原素に影響を与え急速に劣化、朽ちさせるため対象を選びません」

「……人に使うってことはないよね」

「その時の状況次第だと思います……なるべく人に向けたくないのは同じですから」

 

 さて、最後に残していた輝術を見せよう、ストラタと言えば水の原素、水の原素と言えばストラタ。水の輝術に関する研究が進んでいたのでその分この輝術は上手く組めた。自信作だ。

 

「水は流れ合流し、母なる星に満ちるもの、世界を覆う水精よ、その視座から裁定を下せ! 『ヴァッサーディサイド』」

 

 私の足元からいくつもの水柱が打ち上がり上空で巨大な水球となって留まる、その大きさは家屋が丸呑み出来るほど、そこから更に先ほど腐食させた岩石へ向かって砲弾として飛んでいく、最後にそれは着弾点で激しく反応し水蒸気爆発を引き起こし、周囲に爆風をもたらした。

 

「最後のは強烈だ……キール君、もしかしてあれも?」

「はい、実のところ消費は激しいです」

「やっぱりか、砂漠だもんね……いやだとしてもさっきの規模はおかしかったよ?」

「水のない所でこれほどの輝術を……と、言う場面ですよ。もちろん水の原素が豊富な場所なら消費はグッと抑えられます」

「海辺なら文句無しの強さになるね、これはそのままでいいと思う」

「分かりました、それとさっきのが最後です」

 

 と、ジョシュの反応を見ながらここから細かく調整を加えて戦闘に使える輝術になったと確信している、他にも既存の輝術を使えないこともないが、どうせ使うなら自分で考えたものを使いたい所。

 ジョシュは帰り支度をしセイブル・イゾレへ戻ろうとしていたので引き止めた、いやいやまだ終わってないんだぞ。

 

「これで終わりではないですよ?」

「えぇ? さっき最後だって言ったじゃないか」

「最後と言っても終わりじゃないでしょう、もう一つ見てほしいものがあります」

 

 どちらかと言えばこちらが本日のメインなのだが、ジョシュには伝えていなかったので仕方ない。

 私の腰の両方に差していた二つの筒、8歳が握るにはちょうど良い太さで長さも短い物と長い物を用意した。一見すれば何の変哲もない鉄パイプだがこれには一工夫加えてある。

 ジョシュもこれを見た瞬間、帰り支度を投げ捨てて目を輝かせ私に迫ってきた、ふふ、わかる人には分かるかね。

 

「おぉ! これは輝術が込められた道具! キール君こんなのも作ってたのかい!」

「えぇ、文献から得た知識を独学で再現、改良しています」

「何が出来るんだい?!」

「まずは見ていただけると」

 

 では長い方を長筒と短い方を短筒と呼ぼう、形状はシンプルな細筒だが短筒には幾つか仕込がある、短筒の片側は長筒の直径より大きくしてあり、長筒の中には同じだけ長い一回り細い杭を仕込んである。

 私が原素を籠めると薄っすらと文様が筒に浮かび上がる、これは前もって刻んだ輝術、無詠唱の研究をしていた副産物だ。

 

「で、短い方を取る」

 

 右手に取った長筒と左手に取った短筒、さて、どうなると思うかな? 答えはこうだ。

 短筒を前方を投げ、それに長筒を向けると長筒と短筒の先端を繋ぐ原素の鎖が形成され繋がる。長筒をぐいと引っ張れば短筒が手元に戻ってくる、そうだな、棒の長さが非対称で鎖が長いヌンチャクが表現として適切か。

 

「ほぉ、面白い武器だな」

「この状態を『ヌンチャク』と呼んでいます。短筒の方は触れると対象に含まれる原素と反応して爆発します、そしてこの鎖も巻き付ければ原素構成をよく理解したものでなければ解けない物です」

「……それだけじゃないだろキール君?」

「もちろん、まだギミックを仕込んでいます」

 

 鎖を解き短筒を回収、長筒と合体させる、短筒には長筒の直径より一回り大きくし嵌められるようにした部分があるのは説明した、そこをくっつける。

 

「これで剣として振るえるでしょう? 素直に『剣』と呼んでいます、で、ここをこうすると……」

 

 捻りを加えて長筒から短筒を外すと長筒に仕込んだ杭が短筒に固定されて引き抜ける、レイピアとパイプの二刀流もできる。

 

「おお!」

「これは『二刀』と、まだあるんですよ」

 

 また長筒へ杭を差し込み、長筒の反対側へ短筒を装着し一振すると中の杭が短筒側から飛び出し槍になる。

 

「『スピア』だ!」

「えぇ、その通り」

「すげぇな……流石にもうない」

「ある」

「ある!?」

 

 これがとっておきの仕込、短筒も長筒も一度元に戻す。で、短筒を前方に投げ捨てる。

 

「さ、逃げますよジョシュさん」

「え? えっ……え?」

 

 戸惑うジョシュの腕を無理やり引っ張り短筒から離れた場所へ行く、岩石の壁があるところまで逃げて来た、逃げて来たのだ。

 

「ジョシュさん、口を開け耳を両手で閉じて下さい」

「分かったよ……」

 

 ジョシュが態勢を整えたことを確認してから壁の陰に隠れながら長筒で地面に突く。

 

 トン。

 

「さん、にー、いち……」

 

 

ドッカァァァァァァァン

 

 

 眩いほどの閃光、続いて大気が震える轟音、終わりに熱波と砂塵を運んでくる爆風が岩石の壁を越えて熱を伝えてくる、不味いな岩石が溶けて来た……水の原素でジョシュを保護しておこう、熱の脅威が去るまで時間が掛かったが、想定通りだ。

 やっと壁から顔を出せるようになって爆心地を確認すると……ふむ、ジョシュがひっくり返っていた。

 

「あ、あ、あ、うひぁぁぁぁ! なんだこれ!?」

「あまりの熱にガラス化しているようですね、この世界でもこうなるんですね」

「えーっと……あの筒、何仕込んでたかって聞いていい?」

「倫理的に問題のある爆弾です」

「倫理的に問題のある爆弾!?」

「冗談ですよ、ただ輝石に限界以上の圧を掛けて解放しただけです」

「うわ……それであの破壊力……地形変わってないよね?」

「ロックガガンがいるのに今更ですね」

「それとこれとは違うって絶対」

「見せるもの見せたので帰りましょう、あの爆弾を当面使う予定は無いですから」

「キール君……たまに恐ろしい物作るよな……」

 

 本日は晴天だったが、さっきので曇りになった。日差しが暑かったので丁度よいですね、ククク……

 

 




因みに、キール君が使う輝術は全部オリジナルです、少なくともグレイセスには同名の輝術は無いはずです(見落としあるかも)
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