あと主人公の容姿決めて無かったんでこの話で詳細出しときますね
私はウィンドル王国ラント領に足を運んだ。
バロニアに近い田舎、と言うのが素直な評価だ、ラントは政治的にも軍事的にも微妙な位置に存在しているが……その、領地単位での領主の権力と裁量が伝統的に強い、ので、要所であるのに要所らしくない、南にある大都市グレルサイドとバロニアを繋ぐ橋は堅牢な要塞があるのにも関わらずラントにはない、なぜフェンデルとの国境に金をかけないのか、現国王の危機管理能力を疑うぞ。
と言う事情を抜きにすれば風光明媚でのどかな街が人の心にも影響して気の良い穏やかな人が多い、そしてそこを治めるラント領主も立派な人間だ。
さて、私はそのラントへ訪れ、かつての約束を果たすために領主邸宅を訪ねることにした。
その領主邸宅には素晴らしい庭がある、程よい広さで噴水が両サイドにあり、邸宅前を花壇で飾っている。花、水、邸宅、色合いや私の庶民よりの感覚で言うと『そうそうこう言うのでいいんだよ』といいたくなる。派手さを求める貴族よりこう言う周囲の景観を意識した庭がよいのだ。
「バロニアに住む成金貴族に見せてやりたいな……慎ましやかで美のある庭だ」
「おい!」
しみじみと庭を見ていると声が掛けられた、大人ではない子どもの声だ。何かと振り返ると2人の男の子が私を見つめていた、恐らく兄弟だろう……1人は暗めの赤茶の髪の男の子、もう1人は青い髪の男の子、これは青い髪の男の子が弟だろうな、赤茶の男の子の背中に隠れている。しかし震えているのはなぜだ、ビビり過ぎだろう?
「おまえ! 人の家でなにやってるんだよ!」
「に、にいさんっ! そんな怒らせるようなこと言っちゃダメだよ……!」
……にいさんに警戒されているようだ、警戒心は立派だが私は悪い人ではない……早めに誤解を解かないと話が大きくなるぞ。
私は二人に向かって自己紹介をしようと近づくが、近づくとその分離れていく、じわりと近づくとじわりと逃げられ、離れると寄ってくる。ダメだ完全に嫌われているようだ。
しばらくこのやり取りをしていたら邸宅から老年の執事が登場し、このやり取りに不思議そうな顔をして声の掛け方に迷い、決心ついたのか声を出した。
「あの……坊ちゃま達? そちらはどなたでしょうか?」
「フレデリック! こいつ家の前で変なことブツブツ言ってたんだ! 絶対怪しいヤツだよ!」
「なんと!」
いやいやいや待ってくれそうなったか……!
「誤解だ、私にラント家を襲撃する予定はない!」
「あの……悪い人が悪い事をするって言うわけないし……」
「ヒューバートの言うとおりだ!」
あー、ややこしくなった。
しかし頭の周り弟と勇敢な兄には敬意を表する、しかし誤解は辞めてくれ……さっきフレデリックと言われた老年の執事も事の判断に困っているようで更に混迷極めそうだ。
しかし状況は一瞬で変化した、あの人が邸宅に帰ってきたのだ。そう、アストン・ラントである。
外へ用事に出ていたであろうアストン・ラントが部下を引き連れ邸宅に帰ってきた、そして私に目を合わせ……
「誰だお前は」
「えっ」
「この人怪しいんだって……!」
「ほう? ヒューバートの話は本当か? アスベル」
「そうだよっ!」
私だと気付いていないようでした。む、と言うかヒューバートにアスベルってもしかしてこの兄弟は……。
などと考えていたらアストン・ラントの部下たちが私の両脇に立ち、私は抵抗すると拗れそうなので大人しく捕まった。
「おい……お前たち、あの者を連れていけ、私の執務室で話を聞く」
「「はっ!」」
そして私は速やかに邸宅へ望まぬ形でラント家へお邪魔したのだ。
なんだこれは一体どうしたら良いのだ、何が正解だったのかと通された執務室で拘束されたまま考えていると、アストン・ラントが入室し奥にある書類が積まれた大きなデスクへと腰掛けた。
座ると同時に拘束を解く命令がなされ私は自由になった、私がアストン・ラントの顔を見るととてもだが客人を持て成そうとする目ではなかった。本気で私だと気付いてないようだな……少し、悲しい。
「お前は見ない顔だな、どこから来たのか?」
「アストン様、私は」
「今はこちらが質問する番だ、答えてもらおう」
「……バロニアでございます」
「バロニア? 私も何度かバロニアへは足を運んでいる、しかしお前のような者を見たことがない」
「本当にそうですか?」
「何が言いたい?」
やっと名乗れるタイミングだ、私はこれ見よがしに胸を張ってウィンドル式敬礼である胸に握り拳を当て、名乗る。
「私はキールです、キール・ライブラ。少し見てくれが変わったのですが、あの時と中身は変わっておりません。アストン様」
「あ……な……あっ……!」
私が名乗るとアストン・ラントはしばらく停止した、例えではなく思考と体の動作がピタリと動かなくなったのだ、それと同時に背後からバタン! と扉が勢いよく開け放たれドコドコと元気な足音が二つ聞こえた来た。
「嘘! おやじが前に言ってたキールさん!?」
「にいさん! ダメだよぉまだ話の途中だって!」
「だって話とぜんぜんちがうじゃないか!」
「でもにいさん……だからっておはなし途中に突撃するのはダメだよ!」
なんとあの兄弟だった、やはりアスベルとヒューバート、ラント家の兄弟だった。しかしなんだこのアスベルの反応は……まるで……こう……犬だ、そう犬のように跳ね回って私を見ている。それを見て我に返ったアストン・ラントはわんぱくな兄を叱る。
「……はっ! 辞めないかアスベル!」
「だっておやじ!」
「アスベル……くん、私は君の父上と話すことがある、ここは一旦退室して欲しいな、また後で話をしよう」
「むぅ……分かった! いくぞヒューバート!」
「待ってよにいさん!」
登場も慌ただしいなら去り際も慌ただしい、元気な兄弟だ。
それを見て笑う私と頭を抱えるアストン・ラント、ぽつりと聞こえてきたのは育て方を考え直すべきか……だった。父親は難しいな。
「すまない、あの子たちも悪気があった訳では無い」
「それは見れば分かりましたよ、元気な兄弟ですね」
「ヒューバートはまだよい、特にアスベルがな……いや、そんなことよりも驚いたぞキール君、その……そんなにも変わって居るとは思わなかった」
「おかしいですね、母や兄はすぐ分かってくれたんですが……」
「肉親はそうだろうが、私はあの時一度きりだったのでな……そうだとしても変わりように戸惑っている」
改めて自分がそんなに変わったのかと頭を捻る、分からない、子どもの成長は早いがそんなに面影が無かったのか、私は。
「正直、その年齢で……そのような白髪の者を見たことがない、その白い目も肌も、見たことはない……オマケに身長も私と変わらないな、男児3日会わざれば刮目してみよ、と、言う言葉では収まるものではない」
……言われてみれば、黒髪から完全な白髪になったし髪も伸び放題伸ばして今は腰くらいでまとめてるな……、身長も伸びたし170そこそこある、肌が白いのも屋内で研究してたからだ、仕方ない話なのだが……成長期と煌術研究の副作用で異常成長した上、目が白くなった。まだ10歳だが、無茶苦茶やりすぎたな……。
でもそうか、今まで自分の変化を気にしてなかったな……自分でその違和感を感じ取らなかったのは自分に無断着すぎるか……
「……アストン様に言われて初めて自分の変わりように気づいた気がします」
「はぁ~……なんというか、自分に無頓着な所は君の父上にそっくりだな」
そう言えば父もそうだった……確実に遺伝したな……。
私が私の変化を自覚した後は他愛もない話を続け、ストラタでの研究やその成果、今の自分のことやラントの現状など、有意義な会話だった。特にフェンデルにわずかだが動きがあった事が気になった、戦争を仕掛けるなら私が近くにいる間にすると良い、全部真正面から叩き潰してやるぞ、輝石を機構に組み込んだ銃程度簡単に無力化出来る、なんせ原素を直接抜き取れる
「ふむ……ストラタは今そうなっているのか……ありがとう、身のある話だった。我々の話はこれくらいにして珍しく律儀に待っているわんぱく息子たちに話をしてやってくれ」
「はい、そのために来ましたから」
「かなり前の約束だったがよく覚えていたな」
「それだけ気になる約束でしたから」
「気になる?」
「えぇ、気になる、です」
私は執務室から立ち去った、ラント兄弟に会いに行くために。
__アストンは出ていくキールの背中を見送り、それから一人になった時。彼は椅子から立ち上がり窓の外を見ていた、その目線の先には息子たちと楽しげに話すキールの姿があった。アストンはニヤリと笑い、誰にも聞こえない声量でつぶやいた。
「ふむ……気になる、か。狙って約束をしたつもりではないのだがね……その血がそう思わせるのだとしたら……兄上、私たちにも違う道があったはずだ」
アストンは静かに瞼を閉じる、かつての自分の兄とキールを重ね、家督争いの中で追い詰めて殺めてしまった兄の顔を思い浮かべた。肉親同士で血で血を洗うのは領主のみならず貴族なら通る道、あの時の行いはアストンに未だ重くのし掛かっている。
「もうあんな事をしたくはない、させたくもない……さて……どうするべきか……アスベルか……ヒューバートか……」
アストンは悩んだ、跡目で争い兄弟が引き裂かれることがないようにするにはどうするべきか、残すとして領主の素質があるのはどちらか、そして……どちらもいがみ合うこと無く幸せに暮らせる方法はなんなのか。彼の子供たち、またはラントの血筋に連なる者の血は見たくない、そんな切実な思いは『どちらかを養子に出す』と言う苦渋の決断に変わっていた。
「わんぱくなアスベル、おとなしいヒューバート……まだその時ではないが、せめてキール君との思い出をたくさん作って欲しいものだ……兄弟水入らずで、な……それにストラタへ行くことの拒否感も薄れてくれればよいが……」
アストンは再び席に着くと机の上に積み上げてある書類の中で最も重要な物を取り出した。
「……ストラタの名家オズウェル、まずは話を進めねばな」
その書面には我が子を養子に送ること、そしてその時守るべき条件を書き記し、それをストラタのオズウェル宛に出した。
それからオズウェルとの相談を重ね1年が経過していた……。