【完結】召喚された異世界でアサルトライフルをぶっ放す   作:はるゆめ

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第十一話 決行前夜

 バストリア王国の王城。

 

「ウルングルからの連絡はないのか」

「はい。エルフ王国との国境へ痕跡が続いてるのが見つかりましたが……」

「しくじったと見るべきか」

「恐らく」

「第一騎士隊と第二騎士隊を統合せよ。国境付近の伯爵、侯爵へ兵を出せと伝令を」

「まずは国内の掌握が先かと」

「エルフどもと結んだ条約、我らは長きに渡って忍耐を強いられたではないか」

「国内が納得しますかどうか」

「余が新しいバストリアの歴史を築いて認めさせれば良い。世も出陣して腰の引けた諸侯を鼓舞しよう」

 

 第三王子と宰相の地位についた側近の会話。

 国境周辺の貴族達は渋々兵を出した、不自然にならない程度に。士気は低く、周辺農村での物資徴発も遅々として進まない。住民は全て非協力的なのだ。

 

 王国民はエルフの国から嫁いできた美姫が王太子や第二王子に手をかけたという第三王子の公告を微塵も信じていない。これはまた国境周辺に領地を持つ貴族達、つまり中央の権力闘争とは無縁の者達も同様である。

 

 一方、エルフ王国の王城。

 ユウコワの見立ては大きく外れていた。彼女の父親ルケンは国内でもタカ派筆頭の大臣。溺愛する娘を差し出す羽目になった状況が彼を突き動かした。

 

 また密かにユウコワへ想いを寄せていた軍の総指揮官である青年がルケンと共に、戦争被害の大きかった国境周辺の村長達に粘り強い説得を続け『バストリア討つべし』の気運を高め、王へ働きかける。

 

 王城内に厭戦ムードはあったが、取り巻く周囲──特に軍部──はそうではなかったのである。体系化が遅れていた魔法戦術の運用を進めつつ、様々な演習を繰り返していた。

 

 この辺りの事情をユウコワが知らなかったのも無理はない。彼女はエルフ王の護衛。所属は王城。軍との関係が薄いのである。

 

────────────

 

 俺達は国境を越えてしばらく進んだ後に徒歩へ切り替えた。エンジン音が大き過ぎるからだ。山林の中ならある程度の音は吸収されるが、ターボチャージャーのタービンが奏でる高音はなぁ。

 

 喚び出したものは消えるのも一瞬だ。

 七四式が一瞬で消えるのを見て魔法の凄さを今更ながら思い知る。

 

 俺もユウコワもフードを目深に被り、俺はこっちじゃ目立つ日本人顔を、ユウコワは特徴的な耳を隠す。

 

 ユウコワに聞いたがある程度の街へ行けば馬車をチャーター出来るってことで、歩き続けてここまで来た。目の前にはそこそこの規模の街がある。

 人口一万人ほどか。

 

「そりゃダメだなぁ。二日後には伯爵様へ馬車を供出することになってるからねぇ」

 

 馬車の持ち主である壮年の男は渋顔だ。

 

「何でもエルフの娘を捕まえにってことだけど、やれやれ」

 

 俺は事前にユウコワから渡された指輪を渡す。男の目の色が変わった。

 

「これは……」 

「出所の詮索は無用に頼む。あとこのことは内密に」

 

 男はちらっとユウコワの方を見た後に頷く。

 

「わかったよ。口止め料にしちゃ過ぎたものだが……誰にも言わねぇよ」

 

 馬車を手に入れた俺たちは食料などを買い上げた後、潜伏先を探して山道を進む。

 馬車といっても簡素な荷車。ユウコワと並んで座る。

 

「行きたいところってあるか?」

「誰も近寄らない山の中がいいわ」

「わかった」

 

 クロは荷台で丸くなってる。こいつはいつまで付いてくる気だろうな。

 

「第三王子が来るかどうかだな」

「王位簒奪をした人間には功績が求められる。それは必須。必ず来るわね」

 

 ユウコワを守る。その為には第三王子をどうにかするしかない。神輿がなくなれば瓦解するだろうとの作戦だが、ハードル高いな。影武者とかも用意してるかもしれないし。

 

 七四式戦車は……ないな。俺一人なので主砲を撃つ時には動かせない。軍に正面からぶつかってもグダグダになるだろうから、スマートに第三王子だけを狙うことにする。

 

 王都からこの辺まで軍の速度だと二日の距離らしいから思ったより近い。

 

 それから一週間。

 国境付近でエルフ王国とバストリア王国の小競り合いが始まった。

 馬車を売ってくれたおやじさんに情報収集したところによると、バストリア王国は『ユウコワを匿っているだろう』、エルフ王国は『ふざけんな! お前らはそれを口実に攻めてきてるだろうが』という主張のぶつかり合い。予想外にエルフ王国が好戦的な事態にユウコワは驚いていた。

 

「王が乗り気でなかったのは確かよ」

 

 実際の戦闘を何度か偵察に行ったが、バストリア側は飛び道具をフルに使ってて、エルフ側は広範囲に及ぶ魔法で対応していた。精神に干渉する魔法だろうか、バストリア軍が同士討ちを始めたり、霧が戦場を覆ったり、突如兵士や馬が崩れ落ちたり。

 

 第三王子の陣も確認できた。派手な赤い陣幕で囲ってるからよく分かる。第三王子らしきやつも確認した。遠目でもよく分かるが一際派手な衣装を纏っている。それをM24のスコープで観察、顔の特徴をユウコワに伝えたら、間違いなく本人だろうと。

 

 何故かって?

 やつは報告に来た指揮官らしき騎士の首を問答無用とばかりに跳ねたからだ。おいおい。とんだ王子だな。そのうち寝首をかかれるぞ。

 だが王族の権威は絶対で、王族に逆らうことは一族全員に死をもたらすことと同義だそうだ。

 

 何度目かの偵察。第三王子の陣には常に物資を運び込む馬車が常に出入りしてる。食料か?

 

 決めた。

 早めにやる。

 狙撃だ。

 今の俺は買い取ったシーツを頭から腰の辺りまで巻きつけている。これは迷彩効果を期待してだ。

 

 悪友が俺に語ったことーー合コンじゃ役に立たない無駄知識ーーによると、第二次大戦でナチスドイツが力を入れていたのが迷彩ということ。当時他国を大きくリードしていたらしくて、冬の戦線で全身、銃までも白で統一し雪に紛れ、米軍の度肝を抜いた、というエピソード。

 

 この世界じゃあんな派手な戦装束を纏ってるぐらいだ、迷彩効果なんて考えたこともないだろう。それを利用させてもらう。

 

 決行は明日。そう決めてゆっくりと後退。これも悪友の話を覚えていたからだ。風景に溶け込むスナイパーはとにかくゆっくりと動くらしい。それはまぁ納得だ。動くものって目を引きやすいからな。

 

 ユウコワにそのことを話す。彼女は特に異論は無し。エルフ側の攻撃は“防ぐ”ことに特化していると思う。だからバストリア王国へ攻め込み、王子を撃破なんて芸当は無理だろう。

 そう考えたらユウコワの父親が教えた神獣召喚魔法ってすごくないか?

 

「秘術の部類に入る特殊な魔法よ。父の命によって魔法研究機関から秘密裏にもたらされたもの」

「娘可愛さにやったんだな」

「最後まで私が王太子妃になるのを反対していたのも父だった。予感していたのね、こうなるかもしれないって。『人は権力をめぐって争うことに躊躇しない愚かな生き物だ』が口癖だった」

「まぁそうだ。それはどこも同じだな」

 

 そんな話をしながらも、焚き火に照らされるユウコワの顔に見惚れてしまう。

 

「明日は私も着いて行く。魔法が必要になる場合に備えたいわ」

「それでは寿命が」

「対価にすると言っても全てってわけではないの。おそらくね」

「どんな魔法が使えるか、全て教えてもらっていいか?知っておきたい」

 

 聞いて驚いた。ユウコワってスーパー魔法少女かってぐらいあらゆる魔法が使えるのだった。

 

「だからエルフ王の護衛として抜擢されたのよ」

「すごいな。エルフは皆そうなのか?」

「一つしか使えない人もいれば、もっと使える人もいる。多い人で七つか八つぐらい」

「第三王子がユウコワを何としても抹殺したい理由は、首謀者を確保って理由以外にそれがあるんじゃないか」

「そうかもね。でも命を対価としないと使えないのも知っているから、そこまで脅威とは思っていなかったと思うわ。けど追手を殲滅したことで、見方を変えたでしょう」

 

 人間をやめて兵器と化した三人を思い浮かべる。あそこまでやらないと対抗できないときうこと、つまりバストリアはエルフの魔法にすごく苦戦したんだろう。

 

 俺はM24を指差しながら、

 

「これの射程は七百から八百メートルらしいが、確実に仕留めるために三百メートルぐらいに近づきたい。ユウコワはもっと後ろに隠れていてくれ」

 

 ユウコワは頷く。そして俺の頬を両手で挟む。

 

「今更だけどごめんなさい。あなたには辛いことばかりよね」

「うん? そのあたりはもう割り切ってるし、不思議と辛いとは思わないんだ。『これが俺の仕事』だと思うとやる気が出るし……その、まぁあんたは俺の好みだし……」

 

 不意に唇が塞がれる。俺は抗えない。そのまま互いに身体を求め合う。月だけが俺達を見てる気がした。

 

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