【完結】召喚された異世界でアサルトライフルをぶっ放す   作:はるゆめ

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第十二話 決着

 拠点とした洞窟内で目を覚ます。

 ユウコワはまだ寝入っている。擬装の為、入り口に立てかけた木の枝をどかし、外へ出ると既に明るくなっていた。息は白い。

 

 昨夜俺とユウコワは一つになった。後悔はない。ユウコワの見た目が女子高生ぐらいだから、少し戸惑いはあったが、あの物腰から考えると見た目通りの年齢ではないだろう。

 

 ユウコワを起こそうと洞窟の入り口へ振り返った瞬間、後ろから衝撃。

 なんだ!?

 これはネット?

 続いて何本もの矢が突き刺さる感覚。

 痛いなんてもんじゃない。

 俺はきつく拘束されたまま倒れ込む。

 

 数人の男達が現れた。

 一人が俺を足で踏み押さえつけ、数人が洞窟内へ入って行く。

 

「ぐっ」

 

 痛みでまともに声も出ない。肺にも刺さったらしい。

 

「魔女の相棒、大人しくしろ」

「ユウコワ……」

 

 しばらくするとロープで拘束されたユウコワが連れ出された。

 

「こいつの命が惜しければ魔法は使わないことだ」

 

 その瞬間。 

 何か黒っぽい小さな人影が見えたかと思うと、男達が声も上げず、血を撒き散らしながら次々と倒れ伏していく。

 

 クロだ! 例の大鎌を携えている。拘束され動けない俺とユウコワの方を向き、無表情なクロ。

 

「エルフのお前、昨夜この男の子種を授かった。お前達が神獣と呼ぶこの男とお前の子は歪な命を持つ。ヒトに邪魔はさせない。処分するのは私の役割」

 

 どういうことだ? くそっ声が出ない。

 

「私が狩るのは調和を乱す許されない生命」

 

 そういえばそんなこと言ってたな。

 俺とユウコワの子どもがそうなるってことか。

 なら。

 

「何故俺を狙わない?」

「お前に命はない。人の形に似せただけの傀儡」

「そうかい」

 

 俺は人ですらなかったらしい。

 それでも! ユウコワに惚れてしまったこの気持ちは本物だろうがよ。

 

「猫、やはり見張ってたのね」

「そう。その男とお前が契り、子を成す可能性があったから。お前はそれを狙ってた」

 

 聞きたくないことがクロの口から語られる。やめてくれ。もういい。

 

「ニコフ……ごめんなさい……私は」

「いい……俺は心が死んでた……ここへ来て色々あったが『生きること』を取り戻した」

 

 念じる。喚び出す。身動きは出来ないが手のひらは自由だ。

 クレイモア。クロの真下。雪の中。 

 点火。

 耳をつんざく爆発音。

 クロが吹き飛ぶ。物理は有効だな。

 

「ユウコワ! このネット、網を切ってくれ」

 

 二人を縛っていたものは消失する。

 

「逃げよう、ユウコワ」

 

 男達は恐らく第三王子の手の者。

 なんてこった! とっくに捕捉されてたのか。

 七四式戦車を喚び出す。

 これならクロにも手出し出来まい。

 乗り込むのに突き刺さったままの矢を強引に抜く。

 激痛に次ぐ激痛。

 だが息は出来るし、意識もはっきりしてる。

 血もほぼ流れていない。

 俺は人をやめてるどころか、人ですらなかったんだなと改めて実感する。

 

 エンジンを始動。

 第三王子の陣を目指す。

 真っ直ぐ全速力だ。障害物は無いに等しい。

 

 よしっ見えた。

 騎士や兵士を集めてるな。

 色々なものが飛んできて装甲板を叩いてるが、びくともしない。

 俺はガンナーの席へ移動。砲塔の後ろに設けられた席に座って試乗しただけ、それなのに当たり前のように射撃準備をする俺。

 

「これで終わらせてもらうぞ」

 

 発射。

 爆炎が上がる陣。

 もう一発。

 陣が吹き飛ぶ。周りを固めていた連中は、巻き込まれて吹き飛ばされるか、散り散りに逃げていく。

 

 俺は淡々と作業をこなす。

 砲塔を後ろから追ってきたクロへ向け発射。

 クロは粉々になった。

 妖精か化け猫か不明だが、あれじゃもう追って来られないだろう。

 

 ここに長居は無用。残った軍はエルフ王国に任せよう。そのまま国境の森を目指す。

 

「猫を葬ったのね」

「あれは結局何なんだ?」

「私達エルフは“調律する者”と呼んでる存在。滅多に見かけることはないけど。神に接触したのはエルフだけじゃなかった。獣もいたのよ」

 

 クロとユウコワは初対面の時以外会話をほとんどしていなかった。今になって思い出す。

 

「警戒していたんだな、クロを」

「ええ」

「俺はもうユウコワに惚れたし抱いた。神獣抜きにしてもずっと一緒だ」

 

 ユウコワは俺に縋り付く。

 

「私もよ」

 

 女は強い。男よりずっと。その思いに浸りながら森の中をひたすら走った。

 

 

 俺とユウコワはエルフの軍に接触したものの、戦時中ということもありそのまま後方、王都へ転移で行く。

 

 エルフ王、そしてユウコワの父親であるルケン氏と面談。それは三日に渡った。

 まず今までの経緯を全て話す。エルフ王、見た目は四十代の中年男性(日本基準)だが、全ての煩悩とは無縁だと言わんばかりの超然とした佇まいに俺は圧倒される。数百年の時を生きた人物に初めて会うが、京都の仏閣にも似た印象だ、変な例えだが。

 ケルン氏はやや暴力的な匂いのするおっさんだと感じた。タカ派らしい。

 

 クロの発言、つまりユウコワの受精について触れられた時、俺はルケン氏から目を逸らした。

 気まずい。

 しかしルケン氏の表情に変化はなく俺はホッとする。 

 

 王城へ泊まり、翌日は俺が喚び出せるものを要求され召喚する。エルフの技術者が多数集まり、色々と検証していく。『材料も技術も不明』と結論出していた。

 エルフは長命ということもあり、やたらとのんびりしている。日本のサラリーマンだった俺からすると、調子狂うが仕方ない。

 

 そして次の日。俺たちの処遇が告げられる。 

 まずはバストリア王国軍への打撃。

 エルフ側としては人間が不可侵を守り続けてくれるだけでいい、その為にもエルフへ手を出すということがどういうことか、恐怖を刻んでほしいとのこと。

 

 二週間に渡り、俺は七四式戦車の主砲を国境バストリア側、複数拠点へと撃ちこんだ。

 人的被害は敢えて出さずにやった。下手な遺恨は残さない方がいい。

 この恐怖体験も孫の代にはすっかり薄れていくだろう。日本の戦争体験の風化具合を見りゃわかるだろう?当事者以外にはそうそう伝わらないものだ。

 

 バストリア王国から書状が届き、王位継承者が訪れた。亡くなった王の王弟が王位を継承するとのことだ。

 ユウコワへの嫌疑は晴れ、第三王子並びに第二王妃の企てとして国内にも周知されたそうだ。

 実質の首謀者である第二王妃は処刑され、加担した貴族家も処刑、貴族位剥奪の処分が下された。

 

 その後、バストリア王国の王位継承者がエルフ王国へ訪問する際、エルフの女性は姿を見せないことが取り決められる。

 

 国境近くに小さな家を国から賜り、俺とユウコワには生涯に渡っての国境警備を命じられる。婚姻は無し。エルフの純血を守る建前を優先した形だ。

 

 ユウコワ・ベタノクフはただのユウコワに戻った。家の裏には王太子、第二王子、ベタノクフ家の墓が作られ、毎日彼らの冥福を祈っている。

 

 

「『……こうして神獣ニコフとユウコワは生涯を共に過ごしました』はい、おしまい」

「ねぇおばあちゃん、最後はどうなったの?」

「本には書かれてないけれど、おばあちゃんのお母さんから聞いた話じゃ、ユウコワが息を引き取ると同時にニコフの姿が消えちゃったそうなんだよ。召喚者が死ぬと神獣も消えちゃったんだねぇ」

「二人の子どもは?」

「それがねぇ、何も記録が残っていないのさ。なぁんにも」

「ふぅん。珍しいね」

「そうだねぇ。私らエルフの伝聞で記録が残らないってことはないからねぇ」

「私は今も森の中にいると思う」

「おや?なぜそう思うんだい?」

「なんとなく」

「ほほほ。そうかい。さ、夜も遅いからね、もうおやすみ」

「うん」

 

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