【完結】召喚された異世界でアサルトライフルをぶっ放す   作:はるゆめ

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第四話 月夜の戦い

 俺はユウコワが眠るサファリを見下ろす小高い丘の上に陣取り、森の方を監視する。

 

 月明かりを地面の雪が微かに反射して、黒い人影が用心深く動いてるのを浮かび上がらせる。どうやら五人ずつに分かれてるようだ。

 クレイモアのリモコンボタンに添えた指に神経を集中させ、そのタイミングを待つ。

 比較的歩きやすそうな場所を選んで設置した。

 そして盾を構えてくるだろうと予想し、奴らの横っ腹を狙える向き。

 

「ぐるりと円になったよ」

 

 黒猫娘の声が耳に流れてきた。魔法みたいなものか。両手でクレイモアのリモコンボタンを次から次へと押す。

 爆発。爆発。爆発。

 一瞬だけオレンジの爆炎が周りを照らし、続いて奴らが悲鳴や怒号。

 

「ああああああっ」

「いっ痛い痛い!」

「うぐおおぉ」

 

 阿鼻叫喚とはこのことだなと頭の中は妙に冷静だ。丘を駆け下りサファリに乗り込む。ユウコワは目を覚ましていた。

 

「大きな音」

「悪いが予定変更だ。奴らが数を揃えて来たからな。とにかくあの道へ逃げる。どこに通じてるんだ?」

「エルフ王国へ」

「なら決まりだな」

 

 ライトをつける、フォグランプも、サーチライトもだ。実は自分の愛車が召喚出来てる。普段は使い途のないサーチライトがありがたい!

 

 積雪は十センチあるかないか、ATタイヤで余裕だ。アクセルは控えめに。

 

「これ、面白い」

「いつの間に?」

 

 助手席には黒猫、いや黒猫娘が座ってた。妖怪だよな?

 

「シートベルトしとけよっ」

「どうやるの?」

「これをっ、そこへっ」

 

 乱暴に装着させる。

 

「窮屈」

「我慢しろ、それがお前を守る」

「我慢する」

 

 慎重にステアリング操作をしながら雪道を走る。ここで事故ったら終わりだ。やたら明るいフォグランプとサーチライトのおかげで視界は良好。

 ただ地面はかなり抉れている箇所もあり、スタックが怖い。一旦止まってフロントスタビライザーの解除レバーを引く。こうするとロールは大きくなるが足はより伸びるようになるからオフロードでは有利になる。

 

 不意に黒猫娘が呟く。

 

「前にいるよ。私を捕まえてた奴が」 

「誰だ?」

 

 黒猫娘の姿が消えてる。

 いきなり衝撃。

 止められた?!

 ライトに照らされたそいつは、顔は人間、身体は毛むくじゃらで大きな体躯、熊に人間の顔を貼り付けたような……化け物か!

 バックしようとRレンジに入れてもビクともしない。

 

「おやぁ! エルフのお嬢さんを捕まえに来たら! 逃げた猫さん! これは僥倖! あなたも研究させてください!」

 

 そいつは気色悪い笑顔で喋り続ける。

 

「それにしても奇妙な乗り物ですね? 光って唸る。透明な板! 研究したいですね!」

 

 初老の男なのに車を止める怪力。前にも後ろにも動けない。

 俺はドアを開け飛び出す。

 武器は……あれだ!

 手の中に召喚される八九式。

 相変わらず頭の中は落ち着いてる。

 五・五六ミリ弾がアレに有効なのか?

 距離を取り、初弾装填、セレクターを『レ』に回しフルオート掃射。

 

 熊男は咄嗟に顔を庇ったので胴体にしこたま撃ち込んだ。

 次のマガジンを喚び出しリロード。さらに撃ち込む。

 

「痛い! 痛いですねぇ、それ。」

 

 こっちに歩いてくる。

 やはりあまり効いてない。

 悪友が言ってた。

 

『猪や熊は毛皮と皮下脂肪と筋肉が鎧みたいになってる。だから小口径高速弾じゃ仕留められないだろうね。あれはあくまでも人間専用』

 

 悪友の言う通りだ。これより強力なのは……。

 その時。

 奴の背後から黒猫娘が現れる。

 手には大きな、まるで死神が持ってそうな鎌。

 

「神の声聞く者から術を奪った罪を贖え』

 

 一閃。

 奴の頭がゆっくり落ちる。

 

「……死んだよな?」

「こいつと熊の魂は離れていった」

「よし、乗れ! 急ぐぞ」

 

 ユウコワが黒猫娘を見て少しだけ驚く。

 

「あら珍しい」

「エルフの娘、お前のおかげで私は神の声聞く者の仇が討てた。感謝」

「なぁ、お前さんは何なんだ?」

「ただの猫」

「ただの猫が人間の姿になるのかねぇ? 俺のいた世界じゃ……」

 

 と言って化け猫の話をする。

 

「それは人が想像したもの。私は森に住む猫。そもそも私は人とは関わらない。けど、あいつが神の声聞く者を攫ったから私は取り戻しに行った。そしたら逆に捕まって……」

 

 黒猫娘の語ったところによると、さっきの化け物はチャドス・スノク。王国の研究者だそうだ。奴が黒猫娘の住む森に現れたのが二年前。

 

 森の中に集落があって、そこに代々伝わる秘術を神に認められた者、つまり神の声聞く者が受け継ぐ。熊の身体を得るという術。

 それに目をつけたチャドス・スノクは、自らの力とすべく、神の声聞く者である若者を拉致、王都へ連れ去った。

 

 黒猫娘は森に住み、基本的に人とは関わらず暮らしているが、神の声聞く者を遠くから見守るのが役割らしい。

 

 連れ去られた若者を追って王都へ行ったものの、あらゆる術を使いこチャドス・スノクに捕まってしまう。あれこれ身体を調べられたそうだ。

 どうにか隙をついて逃げ出すことに成功したが、そこで若者が殺されていることを知る。

 その日以来、チャドス・スノクを討つ機会をずっと狙っていたとのこと。

 

「私は調和を乱す者の命を狩るのが役目。たまに現れるこの世から外れた生き物とか」

「突然変異とか?」

「そうではない。それもただの命。この世の理の外にいるもの」

「よくわからんな。で、どうする?」

「エルフの国についていく」

「いいのか?」

「いい」

「わかった。乗せてやるから、ユウコワを守るのを手伝ってくれるか?」

「手伝う」

「それは助かる。俺が喚び出す武器は近接戦には向かないんでな。そういうのが来たらお手上げだと思う」

「あの音がうるさいやつ?」

「そうだ。近づいて使うものじゃないんだ」

 

 ベトナム戦争の映画を思い出す。塹壕へ次々と突撃してくる敵にライフルは役に立ってなかった。

 ミリタリーマニアの友人も教えてくれたもんだ。

 

『塹壕で一番強いのはスコップなんだぜ』

 

 それは何となくわかる。近い場合は殴る蹴る、或いは打撃武器か有効だろう。銃器は近寄られたら、その道のプロじゃない限りおしまいだ。

 かと言ってそれに該当するものは喚び出せるとは思えない。

 

 黒猫娘に、次に会敵した時に互いどう動くかの打ち合わせをする。

 追手がさっきの熊男チャドス・スノクだけとは思えない。まだまだ手練れが追ってくるだろうから急がないとな。

 

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