【完結】召喚された異世界でアサルトライフルをぶっ放す   作:はるゆめ

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第六話 やるなら徹底的に

 運転しながら考える。美女とーーおまけの猫がいるがーーこうやって逃避行とは人生何があるかわからんもんだなと。

 いつか観た映画を思い出す。まぁその美女は後のラゲッジルームに寝転がってるがな。

 

 心が擦り切れて味気ない毎日を漫然と過ごしていたのが寧ろ夢みたいだ。

 ああ、俺は生きている。

 

 段々と標高が高くなってきた。植生が針葉樹林へと変わる。

 

「国境がどの辺かわかるか?」

「あそこに見えている尖った山、見える?」

「あれか?」

 

 指さす。

 

「そう。あの山の北側の斜面からはエルフ王国の領土よ。国境には結界と呼ばれる魔法がかかっていて、許可なく入るとずっと道に迷うのよ」

「あーそういうセキュリティか」

「猫さんには意味ないけどね」

「お? クロは大丈夫なのか?」

「問題ない。私にはエルフの魔法は効かない」

 

 とすまして答えるクロ。さすがは妖怪だな。

 

「なら国境をさっさと越えないと。追手は……まぁ来るだろうなぁ」

「私の身柄を確保しないと第三王子は面子が立たないわ。私の偽物を用意出来ないでしょうし」

「そりゃまぁ特殊メイクなんて存在しないだろう」

「ニコフの観た映画はその特殊メイクを使ったものばかりね?」

「ホラーとSFが大好物だからな。こっちにゃそんな娯楽あるか?」

「そうね、英雄譚の幾つかには怪物が登場するのもあるけど。猫さんもその仲間よ」

「何? やっぱり化け猫か!」

「違う。猫は猫。ずっと森に生きる猫」

「他にもいるのか?」

「いる。私とは違う役目だけど」

 

 不意にクロが振り向く。

 

「来た」

 

 ルームミラーに映るのは馬に乗る男。すぐに追いつきそうな勢いだ。俺はサファリを止め、八九式を喚び出し外へ飛び出る。

 

 狙うは馬だ。

 

 鎧っぽいものを装着してる馬だが、脚にそれは無い。フルオート掃射で撃ち抜く。

 馬は座り込むように胴体を地面に擦り付け、騎乗していた男は飛び降りた。全身金属鎧の男だ。そいつにもフルオートを喰らわせる。

 

 甲高い金属音が鳴り響く。へこんでいるが貫通した様子はない。

 

 八九式からM24へ。頭部を狙う。

 四発目で兜が吹き飛んだ。よしっ効いた!

 兜が脱げて現れた顔は無表情そのものの男。その目からは何も感じられない。そしてそいつは歩みを止めない。嫌な感じだ。

 

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 数時間前

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 騎士隊長ウルングル・パドメは、第三王子の命令により、二人の私兵を先に行かせた。

 気は進まないが命令は命令。

 

 ユウコワ・ベタノクフを捕縛すべく、第二陣は五十名を向かわせたが、何の連絡も来ない。やはり全滅したのだろう。魔女は寄せ集めとはいえ五十名の兵を全滅させるだけの魔法を使う。これは確定だ。

 

 チャドス・スノクは身体を熊のように変化させたかと思うと、猛烈な勢いで駆け出していった。

 畑を荒らす大熊の討伐任務に就いたのを思い出す。弓兵の波状攻撃も効果を示さず、槍を何本も突き立てても動きは全く衰えず、部下も大勢失った。

 丸々二日戦い続けてようやく仕留めることが出来た苦い記憶。あれならユウコワ・ベタノクフが使う魔法でも簡単にやられはしないだろう。

 

 そしてもう一人。全身鎧の男。第三王子の私兵であることは間違いないが、何の情報も来ていない、名前すらも。何も喋らず、問いかけても一切答えず騎乗したまま出発した。何だあれは。

 

 指揮など到底無理だとため息を吐きつつ、騎士隊長ウルングルも出撃した。連携も全く出来ない二名と一緒には行動出来ない。彼らがユウコワ・ベタノクフを捕縛出来ればそれで良し。出来なければ自分がやるだけだ。これ以上部下を失うことはない。

 

 騎士ひとりを一人前にするには相当な手間と時間が必要なのだ。上は騎士を希望する者がまるで畑でいくらでも収穫できる野菜のように無限にいると思ってるのが腹立たしい。

 

 そんなことを考えながら馬を走らせる。

 

 ユウコワ・ベタノクフが猟師に目撃され、捕縛第一陣が向かい、その後第二陣も向かった現場へ着く。

 

 雪の上におびただしい血の跡。それは小屋の周囲、森のあらゆる場所に見られた。

 兵の遺体は領民が総出で埋葬作業中だ。ウルングルを見ると頭を下げ、また作業に戻る。

 騎士隊長ともなれば派手な鎧を義務付けられるので、彼らにも一目でそれとわかるようになっている。

 

 魔法の恐ろしさが垣間見えた。あれだけの騎士や私兵を殺戮する、それもたった二人でだ。

 軍事力を誇るバストリア王国がエルフ王国を征服出来なかった原因を見た気がした。

 

 道には雪の上に奇妙な轍が残っていた。馬車よりも幅が狭く、車輪よりも太い轍。それに重なるように熊と馬の足跡。チャドス・スノクと全身鎧のものだろう。ウルングルは馬を走らせた。急いで。

 

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 鎧男へさらに数発撃ち込む。穴が空き、そこから血が滴り落ちるが、歩みは変わらない。

 足を狙う。太腿に三発、右膝に一発。

 少しギクシャクするものの、まだ歩いてる。無表情のまま。

 

「痛みを感じないのか!」

 

 無意識のうちに避けてた頭へ撃ち込む。妙な音がした。金属音だ。そして弾かれてる?!

 顔は集中して撃つ。何発も。顔の肉は剥がれ、金属質な骨がのぞく。こいつの頭蓋骨は金属製ってわけかよ。

 

 目に命中、やっと奴は倒れ伏す。

 俺はM24の銃口を向けたまま近づいて、生死を確認する。

 

 額のあたりに縫合跡。頭を一周している。そうか外科手術で頭蓋骨を覆うように金属製のカバーを無理やり埋め込んだのか。そしてロボトミーみたいな処置もして人間性を奪い、ひたすら戦うだけのマシンに仕立てた、と。

 えぐいな。さっきの熊男も大概だが、バストリア王国に人権は無いらしい。分かってはいたが、本当に命が軽い。

 

「哀れな命」

 

 気がつくと横にクロが来ていた。

 

「悪趣味だ。胸糞が悪いことしやがる」

 

 正直、この鎧男と熊男が同時に来ていたら、どうなったかわからない。

 

「次が来ると思う。これだけで終わりじゃない」

 

 俺は道沿いにありったけのクレイモアを仕掛けて待ち伏せーーアンブッシューーすることにした。

 

 

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