カードゲーム世界に転生したが、どうやら俺はモブらしい   作:ドラゴンスキー

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チュートリアル

 

トレーディングカードゲーム世界というのは、言うまでもなくカードゲームの勝敗が重要視される。

カードゲームをしている人は、所謂オタクと呼ばれる人だけでなく、子供も大人もおじいちゃんもおばあちゃんも遊んでいる。

やれどっちの映画を観るかとか、給食のプリンのあまりは誰が貰えるかなど、じゃんけんで決めたりすることをこの世界ではカードゲームの勝敗で決める。そんな世界だからこそ世界の命運を賭けた戦いでもカードゲームの勝敗によって決めることだろう。知らんけど。

 

俺がそんな世界に転生したことに気づいたときはそれはもう胸が躍ったものだ。

前世ではそれなりにTCGを嗜んでいるオタクだったし、これから起こる事件などに巻き込まれたり可愛い女の子とのアレコレとか切り札を託されたりする激アツイベントとかそういったことが起きるのだろうなと頭のどこかで思っていた。

 

そう思っていたんだ。

でも転生してから11年近く、小学5年生になった俺は気づいたのだ。

いや、もっと早く気づいていたけど事実から目を背けていたのだ。

 

俺は、主人公じゃなかった――――――――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「転校生を紹介しまーす!」

 

小学5年生になってから2ヶ月ちょっとの時間が経ったある日のホームルームで担任の先生のその一言で教室がざわついた。

 

「転校生だって!」

「どんな子かな!?」

「どんなデッキ使うのかな?」

「先生、早く紹介してくださーい!」

 

多少のカードゲーム世界の要素がある質問がとんだが、おおよそ俺がいた世界と同じような反応をする奴らが大半を占める。かっこいい男子がいいなーと話す女子や、早く帰りたいと転校生に興味を示さないヤツが出始めてクラスのざわつきが頂点に達したとき先生がみんなを落ち着かせようと口を開こうとしたその時、「はい!」と周りのざわつきをもかき消すかのごとく元気の良い声が挙手とともに教室の中に響いた。

 

「なにかな、龍神烈火(たつがみれっか)くん?」

 

龍神烈火。名前からして普通ではない。

普通ではないのは名前だけでなく、クラスの連中の髪色が黒やブラウンが大半の中、コイツだけが唯一赤色の髪色をしている。

いや、コイツやん。

コイツが主人公やん。

この世界でたくさんの人が遊んでいるカードゲームの属性の1つである火の属性の髪色と火に関係する名前を持っていて、おまけに昔カードゲームの大会で3連覇を果たした父親の形見である真っ赤なリストバンドを常に身につけている。

性格は元気で明るくちょっとおちゃらけているところもあるが、いじめを許さないような正義感を持ってて「全身全霊だ!」とどんなことにも真っ正面からぶつかっていく。

それが俺の思う龍神烈火という人物だ。

 

ここまで主人公属性てんこ盛りで主人公じゃないことある?

いやない。(反語)

 

そんなことを考えていると烈火は机に手をバンとついて立ち上がった。

 

「転校生は朝比奈南(あさひなみなみ)ちゃんですか!」

「そんな訳ないでしょ!」

 

さっきまでの教室内のざわつきとは違って「バカだな~」と烈火を笑う声に変わる。朝比奈南とは今世間を賑わせている天才子役であり、南ちゃんは俺たちと同じ小学5年生だがピンポイントで転校してくるようなことはないだろう。先生の「はいはい、烈火君は席について、みんなも静かにね」という声でようやくクラスが落ち着きを取り戻した。烈火も「はーい」と返事をして席に着く。烈火が転校生についての発言をしたのでみんなの視線は自然と転校生が入ってくるであろう教室のドアに集まる。

 

「ごほん。じゃ、入ってきて!」

 

担任の先生に呼ばれた転校生君は「し、失礼します……」と教室のドアをガラガラと開けて中へと入ってくる。

 

「うお……」

 

気づけばそんな言葉が俺の口から出ていた。

なにせ烈火に続く派手な髪色を転校生はしていたからだ。

見ただけで水属性使いだな!とアニメで出てきたらデッキを見るまでもない様な青色の髪色をしていた。

 

「じゃあ、みんなに自己紹介お願いね。あ、黒板に名前を書いていいから」

「は、はい」

 

転校生はチョークを持って黒板にカツカツと名前を書き込んでいく。

 

「初めまして、だ、第三小学校から来ました。天水海人(あまみずかいと)と言います。よろしくお願いします」

 

はい、よろしくーと先生の拍手につられるようにつられるようにみんなも拍手をして転校生を歓迎する。そして俺も拍手をしながら思考を巡らせていた。

 

 

 

カードゲーム世界が舞台になっているアニメにおいて、主要な人物は名前が特徴的だったり、どんな髪型だよとツッコミを入れたくなるような髪型をしていたりする。主要な人物だとはっきりとわかるようにモブとは明確に違うのだ。

 

かという俺はいかにもモブというような黒色の頭髪で名前も「井上一(いのうえはじめ)」という前世にいても全然普通の名前をしていた。

モブ、なんだよね俺。

主要な人物になりたいからといって赤とか青とか派手な色に染める勇気は俺には無かった。

別に校則違反とかではないのだけれど。

烈火の髪色は地毛らしいし、染めて赤になってもなあ。

 

「はあ」

 

ため息をついて気持ちをリセットする。

カードゲームの主役や主要人物になってのアレコレや胸のドキドキやわくわくなんてものは烈火に会ったその日に粉々になった。

まあ烈火に会う前からもなんか特徴的ななにかがあるわけじゃないし普通だなーと若干違和感は感じていた。

だから俺は決めたのだ。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

せっかくこの世界に転生できたんだし、大人になったらカードゲームショップを開いたり、プロカードバトラーになるのもいいなー、なんて将来設計(みらい)をみんなに質問攻めにあっている転校生を横目に見ながら考える。

まあ、そんな人生も楽しいだろう。

 

だから、全然悔しくなんかないんだから!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あっという間に放課後になり、カードゲームショップ行こうぜーとかそれぞれの帰路につき始めた頃、転校生である海人の元に烈火がいた。

 

「な!海人は『()()()()』やってないんだろ!やってみないか!?」

「う。うん……」

 

烈火のぐいぐいとくる行動に海人は気圧されているようだ。

スピードというのはこの世界で流行っている『スピリットワールド(カードゲーム)』のことであり、日常的にスピードのバトルが行われていた。もちろん、今日の給食のデザートはスピードで勝った烈火が持って行ったらしい。

 

朝のホームルームでの質問タイムで当然のことにスピードに関する質問がされたが、海人はやってないと応えていたらしい。なんでもすごい田舎から来たからやる相手がいなかったとかなんとか。

将来のことについて考えていた―――――もとい、現実逃避していた俺は転校生の情報については聞き流していたのであんまり頭の中にはいっていない。

 

 

それにしても海人はスピードをやってないのか。

この世界でスピードをやってないのは珍しいことだ。

子供も大人もおじいちゃんもおばあちゃんもスピードをやる。なんでも大人は接待バトルをしないといけないとかなんとか(父親談)。

 

 

ま、転校生イベントなんてアニメでいったら序盤も序盤だろうし、今日始めるんだろうな。

俺には関係ないことだと思い席をたった。

 

「じゃあ、やってみようかな」

「おし!んじゃ、早速いこうぜ!商店街に『ねこや』っていうカードショップが―――」

 

烈火達の会話は最後まで聞かず教室を出る。

俺もカードショップねこやに新作のデッキケースを取り置きしてもらっているのでこのままでは烈火達の後ろをついていくことになるので早速向かうことにする。

 

なお、カードショップに向かう俺を海人の手を引っ張って走っていく烈火に抜かされたので結局烈火達の後から入ることになるのだが。

 

 

 

 

 

 

それから20分弱かけてようやく目的地に着いた俺はカードショップの中に足を踏み入れた。

いらっしゃいませーとの店員の挨拶を受けたのでぺこっと頭を下げて店内を進む。

すると奥にいた店長である優香さんが俺に気づいたようだ。

 

「あ!はじめくん、いらっしゃい!」

「こんにちは、優香さん。それで、取り置きしてたものあります?」

「あるよー。ちょっとまってねー」

 

カウンター奥に入ってすぐのとこに商品を置いておいたようで時間がかからず優香さんは出てくる。

 

「はい、これでいいか確認してもらってもいい?」

「……はい!これで大丈夫です!ありがとうございます!」

「ふふ、お礼を言われるほどのことじゃないよー」

 

ふぅおおお!かっけー。

『Spirit World』のロゴとドラゴンが描かれたデッキケースを手に思わず口角が上がる。

いやー。

やっぱりカードゲームのドラゴンかっこいいな!

カードゲームのドラゴンからしか取れない栄養素もあると思う。

 

「はじめくん、そんなに嬉しい?」

「え?顔に出てました?」

「出てたよ。ふふ。歳の割に大人びてるなーと思ってたけど、歳相応の反応もするんだね」

「まだ小学5年生ですからね。当たり前でしょう?」

「そういうトコなんだけどなー」

 

言いながら店長の優香さんは他にも仕事があるので戻っていった。

 

「さて」

 

目的は達成したし、これからどうするか。

せっかくここまで来たしこのまま帰るのはもったいない。

どこかの野良試合にでも混ぜて貰うか―――――。

そこまで考えてバトルスペースに目を向けると、そこには俺より後に教室を出たのにも関わらず、先に着いていた烈火と海人がいた。

 

「―――――――てな感じだな!分かったか?」

「う、うーーん」

 

スポーツや運動を感覚でやるタイプの烈火の説明は海人には少し難しいらしく、声をうならせて必死に覚えようとしていた。

 

「ま、慣れるより慣れろってやつだな!実際にやってみたらわかるかもしれないしな!」

「それを言うなら、習うより慣れろだと思うけど……。やってみるよ」

「んじゃ、さっそくデッキを……って持って無いんだったな。ココはレンタルデッキ借りられるから借りに行こーぜ!」

 

レンタルデッキを借りるべくこちらに歩いてきた烈火がレジ近くにいた俺の存在に気づいたようでよっ!と手を挙げた。

 

「はじめじゃねーか!お前も来てたのか?」

「ああ。新しいデッキケース買いに来たんだよ」

「あのドラゴンが描かれたやつだろ!後で見せてくれねーか?俺も買うか迷ってんだよなー」

「それはいいけど、なんか用事あったんじゃない?」

「そうだった!レンタルデッキ!」

 

忘れてたと言わんばかりに烈火は手をぽんと叩く。一つのことに集中しがちな烈火はスピードに夢中になり、宿題を忘れることが多くよく先生に怒られている。

烈火はレジにいる店員に声を掛けて店員を呼ぶ。

 

「すみませーん!レンタルデッキを―――」

「―――ちょっと!」

 

――――借りたいんですけど。

そう最後まで言葉にすることはかなわず、女の子の声に遮られた。

目を向けるとブラウンの髪色のツインテールが仁王立ちしていた。

 

「ちょっと烈火!今日は私のリベンジに付き合う約束でしょう!?」

広美(ひろみ)!?やべっ、忘れてた!」

 

この少女の名前は確か土屋広美(つちやひろみ)

クラスは違うが、烈火の幼馴染みというやつだ。

茶髪だし、土だし、コイツも主要人物という予測はつく。

というか幼馴染みの女の子枠が普通のモブの訳がないんだよな。

 

「ハア!?あんた忘れたわけ!?あたしのことなんて眼中に無いってそういうコト!?」

「い、いや!そういうわけじゃねーよ!ただ、今日は転校生が―――」

「――――()()()?」

 

広美と呼ばれた少女が目を向けると烈火の後ろに海人が立っていた。

 

「そっか。あんたのクラス転校生が来たんだ」

「ああ。コイツは土屋広美。俺の、まあ、幼馴染みってやつになんのかな」

「腐れ縁ってやつよ。幼稚園から一緒だし」

 

幼稚園の頃からの付き合いなんかい。

 

「は、初めまして。天水海人と言います。よろしくお願いします」

「もう紹介してもらったけど。土屋広美よ。よろしく」

 

挨拶し終えた広美はさて、と改めて烈火に向き直った。

 

「それで?私との約束を反故にする気じゃないでしょうね?」

「そんなわけないだろ!でも、海人に教えるって約束しちまったしな……」

 

どうしたもんかと頭を悩ませている烈火を横目に、そろそろ俺もバトルスペースに移動しようと考える。

そんな俺をみて烈火が「そうだ!」とこちらをみて声を上げた。

……おいおい嫌な予感がするぜ。

 

「はじめに教えて貰えばいいじゃねーか!」

 

予想は当たったみたいだが、こんな予想は外れていいんだよ。

 

「俺?」

「ああ!はじめは結構スピード上手だし!俺より頭良いから教えるのも上手だろうしな!」

「俺よりって………井上くんは学年トップじゃない」

「マジで!?」

 

知らなかった!と烈火は驚く。前世で高校生だった俺には小学生の問題は簡単すぎる。学年でトップをとるのも難しくない。

まあ、そんなのが続くのはせいぜい中学生ぐらいまでだろうけど。

 

「だったら尚更じゃねーか!な、はじめ!いいだろ!?」

「あー………、まあ、いいよ」

「ホントか!?」

 

助かるぜ!と烈火が喜ぶ。

その後ろで海人が心配そうな顔で俺に質問した。

 

「その……いいの?」

「ああ、適当にバトルする相手でも探そうと思ってたところだし、別にバトルは教えた後でもできるしな」

「その、あ、ありがとう!」

「気にするな」

 

こうして巻き込まれてしまった以上は諦めるしかないし、直接頼まれたので無下にもできないしな。

 

「良いタイミングね。ちょうど空きそうよ」

 

そうこうしてるうちに特殊なバトルスペースの戦いが終わろうとしていた。

 

「あれのモニターはなに?」

 

海人が指さしているのは普通のバトルスペースにはない特殊なバトルスペースの後ろについているモニターのことだろう。

この世界はカードが広く扱われることもあってカードショップの数は前世とは比べられないぐらいあるし、バトルを盛り上げるための設備などが開発されたりもする。

 

「あれはバトルモニターでな、自分が召喚したスピリット――――モンスターが実際に映像として見られるんだ」

「へえ、すごいね!」

 

海人はキラキラとしたまなざしでモニターを見つめている。

こういうところをみるとバトルしたことなくてもスピードに関係する主要人物なのだなと改めて実感する。

 

「あそこは人気あって利用するのにも基本予約したほうがいいし、100円支払う必要があるけどな。俺たちもそろそろやろうか?」

「うん!」

 

海人はコクコク頷くと俺の後ろについてくる。

まあ100円で利用できるなら安いよなあ。子供にはありがたい。

 

「すみません、レンタルデッキをお借りしたいのですが」

「レンタルデッキですね。かしこまりました。どのデッキをお使いになりますか?」

 

店員が貸し出しできるデッキを見せてくる。

この世界に住む人は大体がマイデッキを持っているのでレンタルデッキを使う人はあまりいない。大会に向けて相手が使ってきそうなデッキを使ってみたりするのがレンタルデッキの主な役割だろう。

 

「海人、どれにする?」

「ボクが選んで良いの?」

「ああ。あ、初心者におすすめって書いてあるところからな」

「うん。わかった!」

 

初心者デッキにあまり大差はないし、ホントにどれを選んでもあんまり変わらないんだけど。

でもまあ、水属性だろうなあ(確信)……。

 

「じゃあ、この、水属性のデッキでお願いします」

 

やっぱりな。

 

「かしこまりました」

「あ、すみません、それもう一つお願いします」

「え、はじめ……くんも、レンタルデッキを使うの?」

「ああ。同じデッキの方が理解しやすいかと思ってな」

 

おぉと何かに感心するかのような声をだす海人とともにレンタルデッキを店員から受け取りバトルスペースに移動した。

 

「じゃあ実際にやりながら解説するから。分からないことがあったら遠慮せずに言ってくれ」

「う、うん。よろしくお願いします!」

「まずはデッキ――――このカードの束をデッキと言うんだけど。デッキをシャッフルして中身を混ぜます」

「はい」

 

いいながらデッキをシャカシャカと混ぜる。この世界のカードはやたら丈夫だし、よほどのことがないと傷つくことはない。

ショットガンシャッフルしてもカードは傷まないぜ。

また、防水性もあるようで水に濡れても平気だ。

どんなテクノロジー使ってんすかね。

 

「デッキをシャッフルし終わったら右上のここに置く。ちなみにデッキは40枚以上なら何枚になっても良いんだ。同じカードは基本的に3枚までしか入れてはいけない」

「うん」

「よし、置いたな。次にデッキの上から5枚裏側のまま取ってしたのスペースに並べて置く。これは、ソウルと言ってこれが0枚になったら負け、ということだ」

 

ふんふんと海人は頷く。

 

「次にデッキの上から8枚引く。……ちょっと手札見るぞ、そうだな……これと……これと、これを表側のままこのスペースに置くんだ」

「置いたよ」

「今置いたのはエネルギーゾーンと言って――――――カードにはスピリット、スペル、フィールドの3種類のカードがあるがどれも使用するのにはエネルギーがいるんだ。そのエネルギーを作り出すのがエネルギーゾーンの役割だ。残った5枚はそのまま手札となるんだ」

「う、うん。ちょっと覚えることが多い、かも……」

「まあ、やってみれば自然と覚えるさ。ここまできたら準備完了だ」

「5枚のソウル……を裏側にして並べて、8枚デッキから引いてその中から3枚エネルギーゾーンに出す……」

「そうそう。飲み込みが早いな」

 

さすが主要人物だな。

成長が早いタイプかもしれない。

 

「さてここで先行と後攻を決めるためのじゃんけんを行うんだが、今日は俺が先行を貰うからよく見ておいてくれ」

「うん!」

「まずは【スタートフェイズ】……これは、自分のターンが来たことを宣言するんだ。次に【ドローフェイズ】……デッキの上から1枚引く」

「スタート……ドロー……」

「続けるぞ。次に【エネルギーフェイズ】。手札から1枚エネルギーゾーンにエネルギーとして置くことができるぞ。必ずしも置く必要はないが、そのターンに置かなかったからと言って次のターンに2枚置く。なんてことはできないから注意が必要だ」

「手札から1枚をエネルギーゾーンへ…」

「そうだ。しかし先行の1ターン目は【エネルギーフェイズ】はない。そのためスキップして、次に【リカバリーフェイズ】。これは行動不能状態になっているスピリットやエネルギーなどを回復するフェイズなどで、今は意味が無い」

「あ、じゃあ先行と後攻の最初のターンは【リカバリーフェイズ】は意味がない……?」

「そうだな。意味が出てくるのは早くて3ターン目だろうな」

 

ブツブツとつぶやきながら海人はルールを覚えようと頭を回転させている。

集中力はもしかしたら烈火と並ぶくらいあるか……?

 

「そしていよいよ【メインフェイズ】。ここではさっきのエネルギーを使用してスピリットを召喚したり、スペルを使用したり、フィールドを出したりできる。俺は……『魚人ウオル』を召喚する。このカードに書かれている左上の数字を見てくれ」

「左上……1って書いてある」

「そう。それは召喚するのに必要なエネルギーの数を表している。この場合は1エネルギー必要だということだ。……ああ、ちなみにカードの属性と同じ属性のカードのエネルギーが必要だから、そこには気をつけないとな。複数の属性が入った混合デッキだと気をつけなければならない」

「うん」

 

俺はエネルギーゾーンに置かれたカードを1枚横向きに置き換える。

 

「横にしたのは1エネルギー使用したから?」

「これから説明しようと思ったんだが……、飲み込み早くて助かる。そうだ。使用されたエネルギーは横向きにして、使用できない状態になる。これは―――」

「――――【リカバリーフェイズ】になったら縦向きにして、使える状態になる?」

「…………ああ」

 

へえ。

ここまで飲み込みが早いとはな。

そして説明を始めてからオドオドとした態度がなくなっている。

こういう戦いになると雰囲気が変わるキャラって結構すきなんだよな。

 

「続けて『セイバーシャーク』を召喚」

「左上の数字は3だから………あれ?さっき1エネルギー使ったから使えるエネルギーは2しかないけど……」

「いいところに気づいたな。数字の横にマークがあるだろ」

「うん。水滴みたいなマークが一つある」

「これは軽減できるエネルギーを表していて、マークが一つだからバトル場に水属性スピリットがいれば使用するエネルギーを一つ減らせる。今俺のバトル場には『魚人ウオル』がいるから必要エネルギーは3ではなく2だな」

 

そういってエネルギーゾーンのカード2枚を横向きにする。

 

「さてこれで使用できるエネルギーがなくなったから俺の【メインフェイズ】は終了。この次は【バトルフェイズ】。ここではスピリットで相手を攻撃できるんだが、先行の1ターン目は【バトルフェイズ】はスキップする。そして最後に【エンドフェイズ】を宣言する。これは自分のターンが終わったことを宣言しているんだ。宣言されたら今度は相手の【スタートフェイズ】からこの流れを繰り返していくんだ」

「先行の1ターン目でスキップするのは【エネルギーフェイズ】と【リカバリーフェイズ】と【バトルフェイズ】の3つだね」

「理解できているようでなによりだ」

 

うんうん。

こうして主要人物に指南できただけでも俺にとってはいい思い出になるから引き受けて良かったのかもな。

 

「じゃあ、実際にやってみよう。分からないことあったら言ってくれ」

「うん。………えっと、スタートフェイズ。ドローフェイズで1枚引いて、エネルギーフェイズでカードを1枚エネルギーゾーンに………うーん………じゃあ、これで」

 

そう言って海人は1枚エネルギーゾーンに置いた。

なるほど、コスト7のカードを送ったか。

コスト7だと序盤では必要なエネルギーが足りず使用できない。

俺に聞かなくても自分なりに考えながらできているようだ。

 

「リカバリーフェイズは飛ばして……メインフェイズ!『魚人ウオル』を2体、『セイバーシャーク』を1体、召喚!」

「うお」

 

いきなり飛ばしてくるなあ。

海人はエネルギーゾーンのカード4枚全てを横向きにし、召喚を完了する。

 

「で、バトルフェイズ……なんだけど」

「ああ。バトルフェイズではエネルギーと同じようにカードを横向きにして攻撃できるんだ。その前にカードのとこにDPと書かれた数字があるだろ?相手が攻撃をスピリットで防御してきたらDP……デュエルポイントを比べて低い方が破壊されてセメタリーゾーン……墓地へといくんだ。数字が同じ場合は相打ちとなってどちらもセメタリーゾーンへ送られる」

「なるほど」

 

海人がカードを確認すると『魚人ウオル』には1000という数字が『セイバーシャーク』には3000という数字が書かれていた。

海人はじゃあ…と続けて。

 

「『セイバーシャーク』で攻撃するよ」

「『セイバーシャーク』は攻撃時、デュエルポイントを1000増やす効果があるから足して4000……。ふむ……、ではソウルで受けよう。俺のソウルゾーンに置かれたカードを1枚選んでくれ」

「えっと……これかな」

「これだな」

 

左端のカードを指されたのでそのカードを手札に加える。

 

「敵の攻撃をソウルで受けたときはそのカードを手札に加えるんだ。このとき加えるカードに『ソウルカウンター』の効果があればその効果をエネルギーの消費なしで使用することができるんだ。今回はなかったのでそのまま手札に加える。そして自分の任意のエネルギーを一つ回復できる。こうやってどんどんソウルがなくなっていってソウルがなくなったら敗北だ」

「うん、分かったよ」

「じゃあ続けていいぞ」

「うん」

 

(ボクの残りのスピリットは『魚人ウオル』が2体……。相手は『魚人ウオル』と『セイバーシャーク』が1体ずつ。このまま攻撃しても1体は『セイバーシャーク』によって破壊される。ここは……)

 

「エンドフェイズで」

「いいのか?まだ攻撃可能なスピリットは残ってるが」

「うん、いいよ」

「そうか」

 

(このまま攻めても得策ではないと見たか。良い判断だ)

 

やはり指導することを受けて良かった。

こんなにも楽しいバトルをすることができるのだから。

 

 

「俺のターンだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『セイバーシャーク』で攻撃」

「…………ソウルで、受けます」

 

最後の攻撃が決まり海人のソウルが0になる。

これでバトル終了だ。

 

「ありがとうございました」

「ありがとう、ございました……」

 

いやー、危なかった!

同じレンタルデッキを使っている以上プレイングと運でしか差は出来ない。

長年やってきた故の状況判断があったから勝てたが、まさか初めてのバトルでここまでできるとはな……。

 

「負けちゃった……」

「いや、良かったぞ!初めてとは思えないほどだった」

「ホント?」

「ああ」

 

そっか、とつぶやいて海人は目を閉じる。

今の戦いの感覚を噛みしめるように。

 

「悔しいな……」

「またやろうぜ。今度はレンタルデッキじゃなく、互いのデッキで」

「うん。……それでね」

 

それで?

何だろうか。デッキ買いたいから金を貸してくれとか?

今日はデッキケース買ったしあんまり金持ってきてないんだよな……。

 

「それで……。次は、勝つよ」

「………!!」

 

もう海人は初心者などではなく、立派にカードバトラーだった。

カードバトラーの、目をしていた。

それが少し俺にはまぶしくて。

 

「………あぁ。俺も、負けない」

「………うん!」

 

2人で握手を交わす。

互いの健闘を称える大切な儀式だ。

 

「「「「うおおおおおおおおおおおお!!」」」」」

 

「「!?」」

 

握手をしているとどこからか沸き起こった歓声に驚いた。

そちらに目をやると、烈火と広美が歓声の中心にいた

どうやら烈火と広美の決着も付いたらしい。

 

「あ~~~~~!また負けた~~~~!!」

「へへーん!どんなもんよ!」

「くそ~~~~!!」

 

くやしそうに広美は地団駄を踏む。

しばらく踏んで立ち直ったのか広美はビシッと烈火に指を指す。

 

「次こそは!絶対にぎゃふんと言わせてやるんだから!覚えておきなさいよ!」

「おう!いつでもこい!」

 

そう言って広美はカードショップから走って飛び出した。

多分どっかで特訓でもするんだろうな。

 

「海人!ルール覚えたか!?」

「う、うん。はじめ君が教えてくれたから」

「やっぱり教えるの上手じゃねーかはじめ!やるな!」

 

そうバシバシと叩くな。

痛いだろうが。

 

「じゃあやろうぜ!『スピード』!」

「……!!うん!」

 

 

俺は主要人物ではなくモブなのかもしれない。

それでもいいと、今は思ってる。

モブならモブらしく気楽に楽しんで生きていたい。

だけど――――――――――――――――

 

 

2人を見ていると俺の胸の内から何かがあふれそうになってくる。

そのナニカに突き動かされるように俺は次の相手を求めてバトルスペースへと向かった。

 

 




久しぶりにカードゲームをやったので、書きました。

バリバリカードゲームやってたあの頃が懐かしい....。


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