カードゲーム世界に転生したが、どうやら俺はモブらしい   作:ドラゴンスキー

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※一部変更があります
BP → DP
ソウルで受けたとき任意のエネルギーを1回復する


第二話 テレビの中のあの人

『くそっ・・・・・・!こんな・・・・・・!』

『チェックメイトみたいですね。『光騎士(こうきし)ランスロット』行きなさい』

 

ランスロットと呼ばれた機械(ロボット)の騎士が戦場を駆ける。

敵にはもうランスロットの攻撃を防ぐことができるスピリットは存在しない。

 

『ソウルで、受ける・・・・・・ッ!』

 

ランスロットの剣が敵の最後のソウルを砕き、勝敗を決する。

 

「おー・・・・・・」

 

そんなテレビの画面を見ながらボサボサの髪で眠たげな顔をして、母親に出された朝食をモグモグと食べている男の姿があった。

そうこれが井上一(いのうえはじめ)の何気ない朝の時間だ。

父親はすでに家を出て会社に行ったらしい。社会人というのは、どの世界でも大変だ。

 

『見事に薄月影人(うすづきえいと)さんに勝利したのは!光の貴公子(ひかりのきこうし)こと、星川光輝(ほしかわこうき)さんでした!』

『さすがですねー』

『デュエルトーナメントでの星川光輝さんに注目ですね!さて、続いてのコーナーですが―――』

 

「はじめー?まだご飯食べてるのー?早くしないと学校に遅刻しちゃうわよー?」

「ふぁーひ」

 

ボーッとニュースを見てたらもうこんな時間かよ。

口の中に入っていたモノを牛乳で流し込み、ごちそうさまを宣言するぜ。

そのまま食器を台所まで運び、水につける。

いつも洗い物してくれてありがとうお母さん。このくらいはさせて貰うぜ。

なんていい試合を見たせいか、変なテンションになっているのはそのままに朝の準備を続ける。小学生男子の支度に時間が掛かるはずもなく、3分もあれば済ますことができる。

 

「行ってきまーす」

「はい、いってらっしゃい。気をつけてね」

 

いつものように見送られながら学校へ向かう。

この時間なら歩いていても余裕で間に合うが、たまには走っても良いだろう。

小学生の体力はすごいものだ。

このランニングみたいなペースであれば20分もかからずに学校へ着くだろう。

 

「あ、はじめじゃない」

「お?」

 

名前を呼んだ方を見ると、昨日スピードった土屋広美(つちやひろみ)がいた。

 

「おはよう、()()()

「ああ、おはよう。()()

 

昨日の最後を思い出して互いにジッと目を見つめるが朝の登校中なので走るのは止めて一緒に歩き出す。

 

「別に遅刻するような時間じゃないのになんで走ってたわけ?」

「あー・・・・・・、それはあれだ。星川光輝のバトルをみたからじゃないか」

「朝の【スピードニュース】のやつね。私も見たわ」

「お」

 

広美も観たのか。

いやー、良い試合だった!

星川光輝。俺たちと同じ小学5年生にしてスピードでは有名人。【光の貴公子】の2つ名で知られ、キーカードとなる『光騎士ランスロット』は強力なカードだ。機械の身体に剣と盾を装備した騎士の名にふさわしい姿だ。ドラゴンも良いけど、カードゲームのロボはなぜこんなにもかっこいいのだろう?

 

「・・・はぁ、あんたもオトコノコってわけね。ま、確かにいいバトルだったけど」

「ん?どゆこと?」

「別に?・・・・・・ああ、そう言えば烈火も観たでしょうからきっとうるさいわよ?私は別のクラスだからいいけど」

「・・・・・・たしかにありそうだな」

「いつものことよ」

 

烈火のことだから「さすがは俺のライバルだぜ!」とか言ってそう。

そんなこんなで歩いていると学校に着いた。

 

「じゃあ私こっちだから」

「ああ、またな」

 

クラスの違う広美とは昇降口で別れて自分のクラスに向かう。

5年生のクラスは2階にあるので階段を上っていく。

・・・・・・なんかもうガヤガヤとうるさいんですけど。

絶対にウチのクラスなんだよなあ、これ。

扉をガラッと開けて中へ入る。

 

「おはよ―――――」

「――――そこでさー・・・・・・ってはじめじゃねーかおはよう!はじめは今日のスピードニュース観たか!?観たよな!?くぅ~~!痺れたぜ!あんな熱いバトルを見せられたらな!序盤はブロッカーを残しつつ着実に相手のソウルを砕いていく堅実なスタイル!相手とのターンを重ねて相手の動きを読んでからのスペルによる防御!そこから流れるようにスピリットを展開してからの反撃!どれを取っても一流!さすがは星川光輝、俺のライバルだぜ!でもいずれ星川光輝をも倒し!ナンバーワンになるのはこの俺だ!―――――はじめもそう思うだろ!?」

「――――お、おう。そうだな」

 

予想以上にうるさいんですけど。

そんなに良い笑顔で言われてもなあ。てか予想当たってたけど、会ったことないのにライバル認定してるんすか烈火さん。てか、やべホームルーム始まるじゃん。席についとこ。

そんな俺を見て、時間のことに気づきだしたクラスメイト達が今なお熱く語る烈火を残して席に着き始めた。

 

「―――でも対戦相手も勝負を焦ったよなー。あそこでランスロットとのバトルを選ぶんじゃなくソウルで受けてたら―――――」

「――ホームルームはじめるわよーって烈火くん!もう時間なので席に着きなさい!」

「・・・・・・!?お前ら、いつのまに席についたんだ!?」

 

君が一人でマシンガントークしてた時です。

 

「もう。スピードもいいけど、しっかり勉強もね?特に烈火くん。このままの成績だと親御さんと話さないといけなくなるし、居残りもすることになるわよ?」

「げぇ!」

 

そんなーと机に突っ伏す烈火であった。烈火は体育とか美術とかの副科目は好成績を収めているが、国語を始めとした科目はダメダメなのだ(算数だけは平均を超えてる)。でもやっぱりこういう姿をみると主人公だなって思うわ。

 

 

 

 

 

 

 

「終わったー・・・・・・」

 

今日も一日を乗り切って、やっとたどり着いたぜ放課後。

さて―――。

 

「―――んじゃあお先!」

 

音を置き去りにするくらいの神速で教室を後にする烈火。

俺でなきゃ見逃しちゃうね。

席を立ってから後ろの棚から荷物を取る。

今日も『ねこや』に行くか。

 

 

 

 

 

 

 

「はじめくん今日は一番乗りね!」

「え、烈火のやつ来てないんですか?」

 

優香さんは烈火は来ていないという。

あいつあんなにダッシュで行っていたのに道草食ってんのかよ。

ま、別にあいつの勝手だが。

 

しばらく優香さんと話しているとだんだんと人も増えてきたみたいだ。

 

 

「はじめくん」

「ん?・・・・・・海人か」

 

名前を呼ばれた方向を見ると海人がいた。

見たところ、今日は一人で来たようだな。

 

 

「僕もデッキ作ったんだ」

「そっか。よかったな」

「それで、その」

「?」

「リベンジ、したいんだけどいいかな?」

「・・・・・・ああ、もちろん!」

 

ということでバトルスペースに移動する。

 

「それじゃ、はじめるか」

「うん!」

「「じゃんけんぽん!」」

 

ぐっ、負けた・・・・・・!

 

「それじゃあ先行はもらうよ!スタートフェイズ!ドローフェーズ!メインフェイズ!1エネルギーを使用して『魚人ウオル』召喚!続けて2エネルギー支払って『ガードマン』召喚!」

 

ガードマンのイラストには水の模様が描かれた大きな盾を持った人物が描かれている。

ガードマンはコスト3で軽減エネルギー1の水属性スピリット。DP(デュエルポイント)2000で、相手の攻撃を防御(ブロック)する際にDPを2000増やす効果を持つ。順当に守りを固める訳ね。

 

「ターンエンド!」

「スタートフェイズ、ドローフェイズ!エネルギーフェイズで使用可能エネルギーを4つに!メインフェイズ!1エネルギーを支払い『シャイニードラ』召喚!さらに1コスト軽減してコスト4の『小天使(しょうてんし)ララエル』を召喚!」

 

まだ幼い天使の風貌をした少女が描かれたイラストのカードが召喚される。小天使ララエルはコスト4軽減2でDP3000の光属性スピリットである。

 

「小天使ララエルの召喚時効果を発動する!デッキからスペルカード1枚を選び手札に加えることができる!俺は『風の翼』を手札に加えるぜ!」

 

コスト5で軽減が2のブロック無視効果を持つスペルを手札に加える。

 

「ターンエンドだ」

「僕のターンだ、スタートフェイズ!ドローフェイズ!エネルギーフェイズ!リカバリーフェイズ。そしてメインフェイズ!『セイバーシャーク』を召喚!」

 

コスト3、軽減1の剣のようなサメの水属性スピリットだ。

 

「このままバトルフェイズ!セイバーシャークで攻撃!セイバーシャークは攻撃時DPをプラス1000する効果があるからこれでDPは4000!」

「ふむ、ソウルで受けるか」

 

エネルギーゾーンのカードを1枚回復させ、指定されたソウルゾーンのカードを取る。

 

「おっと、ソウルカウンターだ!『エンジェルアロー』!DP3000以下のスピリットを一体破壊できる!ガードマンを破壊!」

「うぐっ!」

 

ソウルカウンターが発動しノーコストでエンジェルアローの効果が発動する。エネルギーを支払えば追加効果を発揮出来るが1エネルギー足りないので使用できずエンジェルアローは墓地(セメタリーゾーン)へ送られる。

これで海人を守るスピリットは『魚人ウオル』だけだ。

 

「ターンエンド・・・・・・!すごいよ、はじめくん!」

「どーもありがとう、スタートフェイズ!ドローフェイズ!エネルギーフェイズ、リカバリーフェイズ!そしてメインフェイズ!『魔女見習いサラ』を召喚!5コストだが2軽減して3エネルギーだ!」

 

バトルフェイズのスペルに限り必要エネルギーを1減らすことができる魔女っ娘が召喚される。

 

「バトルフェイズ!魔女見習いサラで攻撃(アタック)!」

「ソウルで受ける!」

 

残りソウル4。

 

「さらにシャイニードラで攻撃!」

「魚人ウオルで防御!」

 

お互いのDPは同じなため、相打ち。

 

「小天使ララエルで攻撃!」

「ソウルで受けるよ!」

 

残りソウル3。

 

「ターンエンド。ソウルカウンターはないみたいだな」

「これではじめくんのブロッカーはいない!僕のターンだ、スタートフェイズ!ドローフェイズ!エネルギーフェイズ!リカバリーフェイズ!メインフェイズ!」

「よし、こい!」

「魚神ウオル2体召喚!そして『水龍アクアドラゴン』召喚!」

「お」

 

なんかかっこいいドラゴンきた!

多分キーカードか?

水龍アクアドラゴン――名前の通り水の龍って感じのイラストだな。

コスト6、軽減3でDP5000か。

 

「アクアドラゴンの召喚時効果発動!手札のフィールドカードをコストを払わずに展開できる!手札から『激流海域』を展開する!」

「水属性の攻撃、防御する際にDPプラス1000効果と、水属性スピリットが相手だけを破壊したときに1枚ドローするフィールドか」

 

早速使いこなしてるなー。

海人の成長は早いぜ。

 

「バトルフェイズ!魚人ウオルで攻撃!」

「ソウルで受ける!」

 

エネルギーを1回復する。ソウルカウンターなし。

俺の残りソウル3。

 

「もう一体の魚人ウオルで攻撃!」

「それもソウルで受ける!」

 

残りソウル2。

 

「セイバーシャークで攻撃!」

「ソウルだ!」

 

残りソウル、1。

 

「これで終わりだ・・・・・・!水龍アクアドラゴンで攻撃!!」

「いや、まだだ!インスタントスペル『ライフポーション』使用!指定したスピリット1体を回復させる!小天使ララエルを指定!」

「くっ・・・・・・!」

「回復した小天使ララエルで防御!」

 

アクアドラゴンのDPには勝てずララエルは敗れるが、これで俺のソウルは守り切ったぜ。あと1体出されてたら危なかった。

 

「・・・・・・ターンエンド!自分のエンドフェイズ時に、自分のバトル場にフィールドがある場合、行動不能状態のアクアドラゴンは回復する!」

「フィールドカードを最大限に利用するコンボね、良いカードだ。次は俺のターンだ!スタートフェーズ!ドローフェイズ!エネルギーフェイズ、メインフェイズ!シャイニードラと小天使ララエルを召喚!」

「また小天使ララエルか・・・・・・!」

「そうだ。召喚時効果でデッキから『ライフポーション』を手札に加える!」

「・・・・・・!」

 

さっき体験したばかりのスペルだ。効果はよく分かっているな。

 

「バトルフェイズ!魔女見習いサラで攻撃!」

「アクアドラゴン、防御(ブロック)だ!激流海域の効果でDPにプラス1000!合計は6000だ!」

「インスタントスペル、『風の翼』を使用!魔女見習いサラの効果で必要コストは1軽減だ!魔女見習いサラを指定!このターンの間、指定されたスピリットは相手のブロックを無視して攻撃できる!」

「な、なんだって・・・・・・!?そうか、そのカードは最初のララエルの時に・・・・・・!」

 

ふふ、気づいたか。

だがもう遅い。コンボカードは揃っているのだよ!

 

「ソウルで受ける!」

 

海人のソウル、残り2。

 

「・・・・・・!ソウルカウンター発動!『守人の加護』!小天使ララエルを指定!指定した相手を行動不能状態にする!これで動けるのはシャイニードラだけだ・・・・・・!」

「それは違うぞ?」

「!?」

 

風の翼の効果とかソウルカウンターを発動したせいでその前のことを忘れているな?

 

「続けてシャイニードラで攻撃!インスタントスペル、『ライフポーション』を使用!魔女見習いサラを回復させる!」

「ああ!それがあったか!」

 

直近の出来事に気を取られてその前のコト忘れるのあるあるだよね。

 

「ソウルで受ける・・・・・・!」

 

残り1。

 

「ソウルカウンターは・・・・・・、ない・・・・・・!」

「これで終わりだ、サラで攻撃!」

「ソウルで、受けます」

 

残り0。

 

「~~!・・・・・・はぁ。ありがとう、はじめくん!楽しかったよ!」

「ああ、俺も楽しかった。あと1歩だったな」

「悔しいな・・・・・・。何が足りなかったんだと思う?」

 

カードゲームは運も絡んでくるから自分は最高のプレイングをしていても負けるときは負けるんだよなー。

こうやって負けた後でも素直に聞けるのはすごいことだと思う。

 

「そうだな・・・・・・。相手のスペルやソウルカウンターをケアできるプレイングが少し足りていなかった気がするな」

「そっか・・・・・・。うん!次からもっと気をつけるようにするよ!」

「ま、結果論だけどな」

 

俺にスペルなかったらそのまま勝ってたわけだし。

 

「もうこんな時間か。今日はここで帰るわ」

「うん。ばいばい、はじめくん」

「おう。海人も気をつけて帰れよ」

 

そういってカードショップを後にする。

結局、烈火のやつ来なかったなー。

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

と、思ったら烈火がいた。

烈火は一人、公園のベンチに腰掛けている。

 

「よう。どうした、こんなところで?」

「・・・・・・ああ、はじめか。別に、なんでもねーよ」

 

まじでどうしたんだよ。全然元気ないじゃん。

ま、原因は分かるけど。

 

「・・・・・・で、誰に負けたんだよ?」

「・・・・・・!誰がスピードで負けたなんて言ったよ」

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「・・・・・・!!」

「違うのか?」

「・・・・・・違わないけど」

 

烈火ははぁと息を吐いて頭をガシガシとした後観念するかのように答えた。

 

星川光輝(ほしかわこうき)だよ」

「・・・・・・!」

 

朝のニュースでやってたロボ騎士使い!

 

「星川光輝がきてたのか!?」

「ああ。それで、勝負を挑んで――」

「――負けちまったわけか」

「・・・・・・・・・・・・」

 

烈火はうつむいたまま顔を上げない。

烈火は別にスピードが強いが、無敗というわけじゃない。

これまでにも何度も負けてきた経験はある。

 

「あいつには」

「ん?」

 

うつむいたままぽつりぽつりと話始める。

 

「あいつには、俺が見えていないものが見えてた―――そんな気がする」

「見えないもの?」

「カードの真の力とか・・・・・・カードの声とか・・・・・・、よく分からないことを言ってた」

「・・・・・・・・・・・・」

「俺は、あいつのソウルを1つしか削ることができなかった。・・・・・・手も足も、出なかったんだ」

「だったら次勝てばいいんじゃねーか?」

「・・・・・・!!」

「これまでだってそうしてきたんだろ?負けたとしても、次は勝つ!それでいいじゃねえか。それとも、諦めるのか?」

 

烈火の顔が上がる。

 

「いずれ星川光輝をも倒してナンバーワンになるって言った言葉も撤回するか?」

「・・・・・・・・・・・・だろ」

「え、聞こえないんだけど」

「撤回するわけないだろ!!ああ、くそ!カードの声がなんだ!真の力がなんだ!」

 

そうだ。

それでいいんだ。

 

「見てろ!ぜってー次は俺が勝つ!!」

 

この炎のように燃え上がる心こそが龍神烈火なのだ。

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