三つの女冠を手に、眩い憧れを目指して   作:ドーンローシェン

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スティルさんやば……


凪いだ後のそよ風

「……ということで、トレーナーを探してる」

 

「へ、へえぇ……」

 

 トレーナーを探せという、皆からの要望はあったのだけれど。

 私基本的におサボりっ子だからね、そんなウマを担当したい物好きはそうそう見つかるわけがない。

 

「だれか、私でも担当してくれそうなヒト、いない?」

 

「えっ?」

 

「?」

 

 今話しかけているのは、偶然見つけたあの時の小さいヒト。

 いつにもましてそわそわしていて、幼子っぽい。

 

「えっいや、あの……えっと」

 

「言いたいことあるなら、言って」

 

「……」

 

 俯いちゃった、調子悪いの?

 

「大丈夫?」

 

「わ、私もトレーナーだよぉ……?」

 

「ん」

 

「ほんとに聞きに来ただけなのっ!?」

 

「……ん?」

 

 トレーナーのことはトレーナーに聞くのが一番。

 

「最初に出会ったヒトに話しかけただけ」

 

「……そっか、そっかぁ……」

 

 ……何故落ち込まれなければならないのだろうか。

 意味不明。

 

   すう、はぁーっ……よしっ」

 

「?」

 

「ユズノキさん!」

 

「ん」

 

「あなたを、スカウトしたい」

 

「わかった」

 

「私はあの時、あなたの……って」

 

「?」

 

「え、ええぇっ!? え、受けてくれるのっ!?」

 

「……トレーナー、探してるって言ったけど」

 

「でもそれって、私のことじゃないんじゃ……」

 

「? さっきも言った、偶然見つけただけって」

 

 キング達に言われなきゃ、トレーナーなんて自分から探すつもりなんてない。

 誘ってくれる相手がいるのなら、それが手っ取り早いし。

 

「な、なんか適当……一生懸命考えて来たのにぃ……」

 

「……ご苦労、様?」

 

「また上から目線っ!」

 

「ん」

 

 ……こうして、この学校の中でも1、2を争う程に小さい担当とトレーナーのペアが完成したのだった、ちゃんちゃん。

 

 適当? それはそう。

 

 

 

 


 

 

 

 

   というわけで、これがユズノキのこれまでのデータだよ!」

 

「おー」

 

 少ない情報が綺麗にまとめられている。

 トレーナー、几帳面。

 

「……追込」

 

「うん、これまでのデータと、さっき触らせてもらって見た感じだと……ユズノキは足の筋肉が弱いから、追込じゃないと持たないと思う」

 

 偶然にも、今まではその適した走り方で走っていたらしい。

 

「ん、わかった」

 

 

 

 

 

「ほっ……はっ   !」

 

 グラウンドを、蹴って、走って、走る。

 

 トレーナーに起こされて、計画を立てて、順調に力が付いている。

 でも……。

 

「まだ……」

 

 あの景色は、見えない。

 私が駆り立てられた、黄金色の景色は。

 

「ま、だっ!」

 

 さらに足へと力を込めようとして   

 

「っ……!」

 

 鈍い痛みに、邪魔された。

 ここらが限界らしい。

 

「ユズノキ!」

 

「……ん、休憩」

 

 私の足は弱くて繊細な方、らしい。

 今まではほとんど走らなかったから、問題なかったとも。

 

「大丈夫、足の痛みは続いてたりしない? 他に以上は……わああっ!?」

 

「あ」

 

 ばたり、ひゅーん。

 足がもつれて転けちゃった、トレーナーが。

 ついでに持ってたスポドリが宙を舞ってる。

 

「きゃっち」

 

「あ、いたたぁ……!」

 

「大丈夫?」

 

 顔から地面に向かってたけど……。

 

「はい、手」

 

「あ、ありがとぅ……」

 

「足元には気を付けて。……私たちが走った後とかは、特に」

 

 脚力すごい子とかは、でこぼこだらけだったりする。

 私? 真っ平。

 

「……保健室に行ってきた方が、良いんじゃない」

 

「え? あ」

 

 今ので足を擦りむいてる。

 

「あ、ごめんね! 先にトレーナー室に戻ってて!」

 

「ん、わかった」

 

 そう言ってふらふらと保健室へ向かうトレーナー。

 ……おっちょこちょいだねほんと。

 

「……うん、面白いトレーナーだ」

 

「!」

 

 背後から話しかけられた。

 

「……あなた、誰?」

 

「……」

 

 黒くて、小さいウマ娘だった。

 

「小さいのは君も同じだよ?」

 

「ん、特徴を口にしただけ」

 

 ところで、あなたは誰なのか。

 

「私は   

 

「ユノスの木、だろ?」

 

「……ユズノキ」

 

 なんか、調子の崩れる人だ。

 

「良い風を感じて、一瞬だけ戻って来たけど……なるほど、これは確かに」

 

「風?」

 

 風は確かに心地いいけれど。

 

「……眠たくなる様な風は、偶に感じる」

 

「ふふ、確かに君の周りは、静かな風を感じるよ」

 

 ……って、そうじゃなくて。

 

「あなたは   

 

「黄金色の世界(かぜ)は感じられたかい?」

 

「え」

 

「……時間もないし、ここまでだ」

 

「な、ちょ」

 

「それじゃあね」

 

 走り去っていった、謎の黒いウマ娘が。

 ……いや、だから。

 

「名前……」

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