僕、長岡
絵に自信はあるけどストーリーはまったくと言っていい程書けない。
でもそんな悩みも今日で終わりだ。
一週間程前、あるWeb小説を見つけた。
タイトルは『不遇水魔法使いの禁忌術式』、略して『水禁』だ。
その作品を読んだ時、Web小説なんてどれも同じと言う僕の考えは変わった。
とにかく面白かった。
自分には絶対書けない物だった。
その作者にDMで頼み込み今日
最初に送った文面は[『不遇水魔法使いの禁忌術式』最高でした!是非あなたに漫画原作をやってほしいです。考えてくれるのでしたら、連絡ください。]とまあ胡散臭い物ではあったが、何度か連絡をして今日の約束に漕ぎ着けた。
浮かれているせいで約束の時刻より一時間も早く来てしまったが、そろそろ時間だ。
スマホの通知が鳴り、画面を見る。
[多分目の前に居ます]
そのメッセージを見て前を向くと、綺麗な黒髪に青のメッシュをいれ、厚めの学生服を着た女性がスマホを片手に持ち、立っていた。
何かのコスプレだろうか、まさかとは思うが目の前の女性に聞く。
「あの…チーズさんですか?」
チーズと言うのは件の『水禁』作者のハンドルネームだ。
「はい!そうですよ!」
チーズさんはニコッとした顔で答える。
「あなたはsuiさんですよね?」
suiは自分のハンドルネームだ。
良い返事をされれば、良い返事を返すのは礼儀だ。
「はい!そうです!」
女性だとは思っていなかったので驚いたが、いい人だ。
事前に予定を立てた通りに、二人は喫茶店に居た。
最初はチーズさんのほうから話し始める。
「suiさんって漫画編集者とかですか?」
「違います。漫画家志望なんですがストーリーがからっきしで…」
「なるほど、それで私に声掛けたんですね」
「その通りです。それで『不遇水魔法使いの禁忌術式』を原作に漫画が描きたくて。」
「ああ…それちょっと難しいかも知れないです…」
チーズさんがばつが悪そうに言う。
「どうしてですか?」
そう聞くとチーズさんは『不遇水魔法使いの禁忌術式』が出来た経緯を話してくれた。
「最初はですね。とある、掲示板に影響されました」
──────
「なるほど、意味分かんないですね」
「はい、そういう訳で、権利とかもあるし、他の作者の方にも相談しないといけないです」
なかなか道のりは長そうだが、丁度良く長期休暇にも入る。
「じゃあ、全員にok取れたら良いんですね?」
「は、はい、大変ですけどでも、一人は連絡先知ってますよ」
「そうですか、今度お願いします。今日はありがとうございました」
LINEを交換してその日は別れた。
次の日
『不遇水魔法使いの禁忌術式』を全て読み漁っている途中に、チーズさんからLINEが来る。
[何か全員会えるみたいです]
勝手に長い旅路を想像していた水はずっこけた。