原作者は複数いるッ   作:電撃アーム

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集え!水禁オフ会

立ち上がり、椅子に座り直すとまた通知が来る。

[何か水禁作者同士でのオフ会やるみたいです]

アプリを開いて、返事を送る。

[自分も行っちゃっていいですか?]

[それなんですが、もう約束しちゃいました]

嬉しい知らせだった。

このタイミングで全員に許可を貰えれば、『不遇水魔法使いの禁忌術式』の漫画化が出来る筈だ。

 

数日後、先にチーズさんと合流し、目的地に向かう。

「漫画のジャンルで好きなのありますか?」

無言も気まずいので、質問してみる。

「ファンタジーとかですね」

「自分もです。気が合うかも」

漫画の原作者と作画担当は波長が合う方が良いだろう。

大袈裟だが、希望が見えた様な感じだ。

 

会話をしながら歩いていると、目的地を見つけたチーズさんが話を切り上げて言う。

「ここです。貸切にしてあるらしいです」

結構大きなサイズの店だ。

「凄いですね」

「ええ、凄いですね」

 

中に入ると、夢かと思う程、刺激的でファンタスティックな光景が広がっていた。

男性ばかりかと思い込んでいたが、予想を裏切り女性ばかりで、逆に男性は僕一人だ。

このシーンを漫画にするなら見開きページだろう。

 

知り合いを見つけたチーズさんがその隣に座り、僕にもその隣に座るよう促す。

まだ困惑しながら席につくと、チーズさんが紹介してくれる。

「なろう版作者の利根山(とねやま) 喜一さんです」

紹介された女性は、続いて名乗る。

小柄で、こまめに手入れをしているだろう長髪の女性だ。

大きめの魔法瓶を抱えているのも、印象に残る。

「は…初めまして、ボクは利根山 いちごです」

「自分は長岡(ながおか) (すい)って言います。よろしくお願いします。」

「あ…本名。じゃあ私も改めて、望月(もちずき) 千鶴(ちづる)です」

 

それぞれの自己紹介が終わると利根山さんが質問する。

「話は聞いたんですけど…ネタじゃなかったんですか?」

「ガチです」

「ボクは全然okですけど。にしてもいいなぁチーズさん、ていうか望月さん。ボクのも漫画になってくれないかなぁ」

「許可ありがとうございます。利根山さんの『水禁』も面白かったです。」

「あ、さん付けはあんまり、うん、ありがとう」

「今度、ストーリーの作り方とか教えて貰いたいです」

「うん、じゃあ一応」

そう言いスマホの画面を差し出す。

LINEを交換して会話を終えた。

その後はチーズさん改め、望月さんと利根山さんは、談笑していた。

 

こっちは次だ。

一度立ち、先程の席から二番目に近い女性に話しかける。

少しカールがかかっている黄緑色の長髪で綺麗と言うより可愛いという印象の人だ。

「あの、お話いいですか?」

「ああ、こんにちは、あなたは何版の作者さんですか?」

「いや、自分は違くて、相談があるんです」

「相談というのは?」

「『水禁』を漫画にしたいんです。作者全員の許可が欲しくて」

「まさか私の?ていうかプロ?名前は?」

「えっと」

質問責めに少したじろぐが、あちらは落ち着いたのか、話し始める。

「ええっと、一つずつ行きましょう」

「取りあえず、まずは私の自己紹介から。私は青木(あおき) (みどり)。アルファポリス版の『水禁』作者です」

「僕は長岡 水です。好きに呼んでください。漫画家志望なだけでプロでは無いです」

状況を把握した様で青木さんは返事をする。

「許可は私はいいですよ、折角の『水禁』仲間なので頑張って欲しいです。私の『水禁』原作にするなら面白くしてくださいね」

「ありがとうございます。連絡先交換しときましょう」

 

次だ。急がないと日が暮れてしまう。

「初めましてこんにちは、長岡 水と申します」

焦りがそのまま口から出た様に早口になってしまう。

「あっこんにちは、わたしは(りょう) 葉月(はづき)です。ハーメルン版作者です。あなたは?」

「自分は漫画家志望で、『水禁』を漫画にしたいので作者全員に許可を貰っている所で」

梁さんはなるほどといった顔で尋ねる。

「お金関わらないなら、許可は取らなくても良いと思うんですが、そこはどうなんです?」

盲点だった。

「ああ…確かに、そうですね。でも一応聞いていいですか?」

「大丈夫ですよ」

連絡先も貰って話し終える。

よしっ、次だ。

 

近き者から話す。第5のターゲットを探していたが、ぶつかってしまう。

ぶつかった人もまた女性で、サラサラとした髪が綺麗だ。

ぱっつん前髪も似合っている。

ぶつかられた側ではあるが、思わず謝ってしまう。

「あっすみません」

「あああ、あのぅ…すみません…大丈夫ですか?」

「大丈夫です。名前教えてくれますか?」

「私は『放浪の水魔法使い(アクア)』と『水禁学園』の作者で、(みなみ)(なみ)と申します。あなたは?」

「自分は作者じゃないんですが、相談があって…」

説明をしようとした時オフ会の終了を呼びかける声があり、遮られる。

「ではそろそろ終了にします」

知らない顔だったが、あの人も作者なのだろう。

 

最大のチャンスが終わってしまったのに、許可を貰えなかった作者さんが、あと15人も居る。

道のりは思っていたより長いらしい。

 

店から出た後に、食事をしていない事に気付き、独り言を漏らす。

「お腹すいたな…」

「私もです」

返事が返ってくるとは思わなかったので、思わず振り向くと南さんが立っていた。

「ああ、南さん、どこかに食事行きませんか?相談の事もあるし。」

まあ初対面で了承はされないだろうが、言ってみると意外に良い反応だった。

「奢ってくれます?」

「もちろん」

 

今の時刻で開いている一番近い回転寿司に行く事になった。

南さんから話し始める。

「相談って何ですか?」

何度も繰り返している説明と自己紹介なので省略

 

「少なくとも私は良いですよ。誰のかは分かんないですけど」

「にしても、助かりました。お話に夢中でご飯全然食べてなかったので」

「僕も同じ状況で…僕達似たもの同士かもしれませんね」

「むむ、中々積極的ですね…あっエビが」

取り逃したエビを取って渡す。

「ありがとうございます」ムシャムシャ

さっきの店とは一転して無言の時間が続く。

 

会計を終え、外に出た。

格好つけには痛みか、財布の痛みが伴うものだ。

「奢って頂きありがとうございます。全員に許可取るなら、私も何人か繋がってますし、協力しますよ。それではっ」

「また今度お願いします。さよならー」

南さんは一瞬転けそうになっていたが、小走りで帰っていった。

 

家に帰り、スマホを開いた時、5人もの女性と連絡先を交換した事に気付き、恥ずかしさで少し唸った。

 

数日後、南さんから連絡があった。

[何人かの水禁作者さんと遊ぶ事になりました。一緒にどうですか?]

[行きます!]

即答してしまったが、じわじわと月末が不安になってきた。

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