早めに待ち合わせの場所につくと、そこには、じゃらじゃらキーホルダーをつけたバッグを背負った
何というか、大きいバッグのおかげで、胸とバランスが取れている様な立ち姿だ。
「こんにちは。」
「こんにちは。お久しぶりですね。……名前って?」
よく考えると初対面の時、名前を言っていない。
「僕は
「感謝するほどの事でもないですよ。…水君って呼べば良いですかね」
しばらく二人だけの時間が続く。
「それ、良いですね」
なんとなく目についた犬のキーホルダーを指差し、言ってみる。
「いやあ、こういう類いの物は目につくと、すぐ買っちゃうんですよね。欲しいんだったらあげちゃいますよ」
「いいんですか」
「うん」
後ろに周り込み、自分の背負っているリュックにキーホルダーを付けてくれる。
「この辺かな~」
その時、胸が当たった気がするが、平常心を保つ為、考えないようにする。
「よし、いい感じ」
そこに新しい人影が近づく。
「もう二人来てる…」
「あ!
見つけた葉月さんが声をかける。
「あ、葉月さん。それと、えっと」
「長岡 水です。あなたは?」
「私、
「トビウオ版作者、です」
少しボサッとした髪と白い肌の、おっとりとした雰囲気の女の子だ。
「自分が何で来たかと言うと『水禁』の漫画化の許可を頂きたくてですね」
本題に入る。
「えっそうなんだ。私は、良いよ」
一瞬目を丸くしていたが、すぐに元の眠たげな目に戻る。
「ありがとうございます。」
物静かな雰囲気で中々会話が続かない。
今度は葉月さんが話す。
「久しぶりだね」
「お久しぶりです」
向き合ってるのを見ていると、対比と言う言葉が似合う。
背の高さや喋り方、あと胸の大きさが。
そうこうしてる内、約束の時間ぴったりにもう一人だ。
「こんにちはー」
癖一つもないストレートヘアーのその女性は、綺麗でどこか高貴そうな印象を受ける人だった。
初対面なんだからまずは挨拶だ。
「僕は長岡 水です」
「私は、梨良。
「よろしくお願いしますね、水さん」
挨拶が丁寧な人には好感が持てる。
「早速なんですけど、『水禁』を漫画にしたくて、許可が欲しいんです」
「へえ、初めての漫画版『水禁』ですか。凄い良いですね、楽しみです」
しばらく談笑して十分後。
真冬さんが「遅いな…」と呟いた時、女性が走ってきた。
眼鏡と整いきっていない髪がまたチャームポイントという感じだ。
「すみません!遅れちゃった」
「いや、色々してたら、頭から抜け落ちてて…」
葉月さんがすぐにフォローに入る。
「気にしてないよ。皆集まったし行こうか」
出発した後、隣りで歩きながら名前を聞いてみる。
「はじめまして。僕は長岡 水です。名前教えてもらえますか?」
「私の名前は
「音さんは何版の作者ですか?」
「さん付けしなくて良いよ。ハーメルンの柔の章。まだ一話だけど。君は?」
「僕は言うなれば、漫画版作者というか…漫画化の許可を取りに来たんです」
「そういう事なら全然OKだよ。今度絵とか、見せてくれたら嬉しいな」
「ありがとうございます」
目的地についた。
今日の予定はショッピングと食事だ。
最初に雑貨屋に入ってみると、葉月さんが人が変わった様な、状態で見つけた物を片っ端から買いまくっている。
だが、暴走という感じでもなく、いたって冷静に。
「これいいな」と言いながらどんどんかごに入れていく。
店から出た時、我を取り戻した様で
「またやっちゃった…」
と呟いて頭を抱えていた。
次に入ったのは、真冬さんの希望でペットショップだった。
「魚、好きなんです。見てると、落ち着くので」
そう言ってじっと魚のコーナーを見ている。
つられて同じ水槽を見ると、これは見蕩れるのも分かる。
気ままに泳いでいるのが、中々可愛い。
「ちょっと、近くない?」
真冬さんに指摘されると、同じ水槽を見ていたので、頭同士がかなり近くなっていた事に気付く。
意識してみると良い匂いも感じる。
「えっと、可愛いなって思って、つい近づいちゃいました」
これ以上は危険だ。慌てて弁明する。
「へっ?」
真冬さんは間が抜けた声を出し、顔を赤くしている。
自分は何か失言をした様だ。
「何かすみません」
「だ…大丈夫、だけど」
若干気まずいが、嫌われた訳では無さそうでひとまず良かった。
次に向かったのは本屋だ。
やはり皆物書きではあるので、多少ジャンルの違いはあれど、本が好きらしい。
賛成多数で決定だった。
漫画コーナーのほうに行ってみると、梨良さんも同じ方に来ていた。
「梨良さんはどういう漫画が好きですか?」
「なんだろう、ジャンプ系とか?有名な物は粗方読んでますよ。水さんはどうです?」
「自分は最近、なろう系のコミカライズ読んだりしてます」
「やっぱり当たり外れありますし、これとかオススメですよ」
財布は不安だが、勧められたのに買えないと言うのも情けない。一巻はとりあえず買う事にした。
「おすすめありがとうございます」
「そろそろご飯食べに行かない?」
音が言った。確かに丁度いい時間帯だ。
フードコートに着くと、各々買って食べる事になったが、財布の中を確かめると一食分の金はギリ無い。
「あの…誰か…シェア出来るもの、一緒に買いませんか…?」
少しの希望に賭けて、恐る恐る言ってみる。
「じゃあ、タコ焼きでも買う?」
救いの手を差し伸べてくれる人が一人。
「音さ…ありがとうございます。」
「ふふ。なんか引っかかるしさ、タメ口で良いよ。」
「じゃあ、そう…する。」
その後一番大きいサイズのタコ焼きを買って椅子に着く。
(美味しいな…これ)
共感を求めようと音の方を見ると、取り分けた分にまだ手をつけていない。
「食べないの?」
「アイデア思いついてメモ中。」
スマホを片手にそう言っていたので、納得したが、気まぐれに爪楊枝を音の取り分の一つに刺し、差し出してみる。
「あ、ありがと。」
音はスマホをしまって、一つ目を食べ終えた後、期待している様な目でこちらを見ている。
「また、あーんってしてよ。」
リクエスト通り、食べさせる。
「美味しいね、これ。」
「そうだね。」
中々ゆったりした時間を過ごせたが、時間と金の問題で、先に帰る事になった。
「じゃあ、皆さんまた今度、さようなら。」
「じゃあね~。」
「また会いましょう。」
「じゃ、さようなら。」
「バイバーイ。」
最近良い事ばかり続いている。
そろそろ何か悪い事でも起こるかもしれない。