人類詰みかけソシャゲで、問題児に囲まれても生き残りたい 作:つみそ
創作に置いて、最強キャラってのは大事なポジションだ。
最強キャラが魅力的であるかどうかで、作品の出来も変わってくるからな。
ちなみに、最強キャラってのは具体的に定義するなら、創作に登場する味方組織で一番強いキャラだ。
某進撃の巨人の某兵長とか、某呪術の某目隠しが代表例になるだろうか。
何にしても、漫画やゲームに一人くらいは存在しているポジションで、こういうポジションのキャラが魅力的だと作品の魅力もぐっと高まる気がするよな。
『アルテミック・ウェポン』にも、最強ポジションのキャラは存在する。
名をアシュラ。「EUNOIA」が誇る文句なしの最強戦力。問題児の多い『アルテミック・ウェポン』においては珍しい、品行方正を絵に書いたような真面目な男だ。
前にも言ったが、『アルテミック・ウェポン』は男女両方プレイアブルになるタイプのゲームである。そして、男キャラも人気のあるタイプのゲームだ。
主にお姉様方からの人気だが、男のオタクにもこういう男キャラってそこそこ人気は出るものだ。
特にアシュラは「EUNOIA」の良心と呼ばれるくらい性格的に安牌だ。強さの描写も最強キャラに恥じぬものになっており、ゲームにおける性能も優秀。人気でないわけがない存在なわけだが。
リアルで知り合いになると、少しこまったところもあるんだよな。
ゲームだと、そういうところも人気要素の一つだったんだが――
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「――やあ、カケル。昨日は大変だったみたいだな」
廊下を歩いていると、二メートル近い身長のがっしり体格な、金髪イケメンに声をかけられた。いかにもな雰囲気の好青年。
こいつが、アシュラだ。
「おはよう、アシュラ。本当に大変だったよ、一日カオスの相手をすることになったからな」
「アレで、君のことを心配しているんだと思うよ。君は、何も無いオフだと部屋から出てこないからね」
「物は言いようだな」
そういう側面が無いわけではないだろうが、カオス本人は絶対意識してないぞ。断言していい。
だが、アシュラにそれを言ってもしょうがない。アシュラはわざわざ性格が悪いカオスの利点を一つでも上げようとしているのだ。
むしろ、それを無碍にするのも悪いだろう。
「ところで、聞いた話だとこの後は訓練室で身体を動かすそうだね。私も同行させてもらっていいかな?」
「……それ、どこで聞いたんだ?」
「ははは」
ははは、じゃない。
「そういえば、最近カケルはタルタルのチキンサンドにハマってるそうだね。私も食べてみたんだが、たしかに美味しかったよ」
「だから、それをどこで聞いたんだよ」
「ははは」
ははは、じゃない!
「相変わらず、お前のリサーチ力はどうなってるんだ」
「今、私が誰よりも興味があるのは君だ、カケル。君のことをもっと知りたいんだよ」
――一言でいうと、アシュラにはストーカー癖がある。
というかぶっちゃけほとんどストーカーみたいなもんだ。原作においては、主人公と知り合って以降何かと主人公に意識を向けてくる。ファンの間では、ストーカーしてるときのアシュラってちょっとキモイよね、みたいな扱いを受けていた。
別に不評というわけじゃないぞ? それほど感情を向けるくらい主人公を評価しているのだ。実際、主人公はいずれ世界を救うかもしれない大業を成し遂げるわけだからな。
そしてどういうわけか、この世界では俺に対してもその執着してくる。
ちょっと怖い。
「私が君に興味を抱く理由は、言うまでもないだろう? 『EUNOIA』の戦力におけるツートップ、私に並ぶもう一人の最強――カケル・トオミくん」
「過大評価だな。模擬戦で俺がアシュラに勝ったことは一度もないじゃないか」
とはいえまぁ、興味を向ける理由自体は単純だ。
俺が強いから。いやまぁ、実際のところ才能って面ではカオスやアシュラには到底及ばないんだけどな? それを覆せるくらいイン・エコーズは強いんだ。
それを含めても、模擬戦だとアシュラの方が圧倒的に強い。
「だからこそ私は、君の強さに恋い焦がれてしまっているのだけどね」
「その言い方はやめてくれ、怖い」
「ははは」
ははは、じゃないって!
とにかく、完全にアシュラは俺についてくるつもりのようだ。というか、このまま模擬戦するつもりだろう。原作知識活用のため、無断出撃やら独断専行やらで組織内での評価を落とし、ある程度身軽な立場を意図して確保している俺とは違い。アシュラは組織の中核だ。というか、この組織はアシュラともう一人のトップの二人体制で運営されている。
忙しい身の上なのに、わざわざ俺と模擬戦するために書類仕事とかを片付けてきているだろうからな。
怖いけど、無碍には出来ない。
本当にストーカー気質な所以外は、真面目でいいやつなんだ。いいやつ過ぎて最終的に組織を離反するけど。
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訓練室。VR技術によって、各種UMウェポンの挙動を再現できる場所。
そんな訓練室には、無数の「EUNOIA」職員が集まっていた。
戦闘員、非戦闘員関係なく。大多数が、だ。中にはカケルと懇意にしているアズサの姿も見える。カオスの姿はない、自分が壊した端末の始末書に頭を悩ませているところだ。
そんな観客たちの前で二人の最強が激突していた。
「イン・エコーズ!」
「カルマカルマ!」
両者が、自身の得物の名を呼んでそれをぶつけ合う。カケルのそれは、言わずもがな赤黒の血煙を溢れ出させる杖。対するアシュラは、黒と白の双剣だ。
最強同士の激突ともなれば、その戦いは壮絶なぶつかりあいとなるだろうか。――答えは否だ。現在、カケルは一方的に押し込まれていた。
「っく! 全開放もイン・エコーズの固有もなしじゃ全然だな!」
「だが、以前と比べて圧倒的にその動きは洗練されている! 素晴らしい!」
カケルとアシュラの間には、圧倒的な才能の差がある。
抗体値と呼ばれる、抗体者の体内にある抗体の量による差だ。その量は生まれつき決まっており、人命に関わらない方法で成長させることはできない。薬などで寿命と引き換えにブーストすることは可能だが。
生存を第一とするカケルが、そのような方法を取るはずはない。
であれば、如何にカケルがアシュラと対等に上り詰めたか?
答えは、カケルの言葉にある。
「……基礎訓練はこんなものだな、ここからは全力で行くぞ!」
「ああ、来たまえ! ゾクゾクしてきたなぁ! 君の全力はいつだってそそる!」
舌なめずりをするアシュラに、少しだけ顔を引き攣らせつつカケルは全力――イン・エコーズの能力を開放した。
――UMウェポンには、それぞれ固有の能力が存在する。
フウスイであれば、風と水の遠距離攻撃。ベルクであれば、一時的な攻撃力バフ。それぞれ、カースとはまた違う固有能力だ。
では、イン・エコーズは? イン・エコーズは常に杖の先端から赤黒い血煙のようなものを垂れ流している。カケルはそれを――
「
杖そのものが、赤黒い血煙に覆われたかと思うと、フウスイ――拳銃の形に変化する。
以前、カケルはこの血煙を斬撃にしていたが、変化できるものはそれだけではない。杖の形状そのものを変化させることもできるのだ。
当然、その機能も。
カケルは距離を取ると、拳銃から無数の血煙を弾丸のように飛ばした。引き金を一つ引くと、カケルの周囲にも血煙が出現する。これはフウスイの特殊な攻撃方法だ。
ゲームにおいて、戦闘時のスキルとして使用される攻撃。
カケルは、この戦闘スキルをイン・エコーズの固有能力で再現できるのだ。
物理的に再現可能なもの――相手を攻撃する戦闘スキルに限るが、それでもかなりの数の戦闘スキルを再現できる。
なにせ、前世においてカケルはこの戦闘スキルを
これがカケルの恐ろしいところ。イン・エコーズによる戦闘スキルの再現はゲームにおいても何度かカオスがやっていた。
何を隠そう、カオスはUMウェポンを扱う天才である。だからこそ、カケルはカオスのイン・エコーズを自分が使っても、カオスなら別の武器を使えると考えたのだ。
そんなカオスですら、再現度は完璧ではない。
だが、カケルは完璧だ。
ゲームとして、俯瞰した視点を持っていたのが幸いしたのだろう。頭の中でイメージを膨らませ、それをゲーム画面のように再現する。この方法でカケルは、ゲームとほとんど同じ戦闘スキルを再現していた。
「相変わらず、器用だな!」
対して、アシュラは自身の武器を構える。
迫りくる血煙の弾幕にたいして――剣を添えるように当てて、
跳ねるような、甲高い音が響く。カルマカルマの固有能力だ。
「相変わらず、インチキ染みたパリィだな」
「研鑽の結果さ。君との模擬戦のおかげでもある!」
カルマカルマの固有能力は、適切なタイミングで剣を敵の攻撃にぶつけるとそれを
ただしその入力猶予は非常に短く、カルマカルマより格の低い武器、もしくは攻撃でないといけない。
具体的に言うと、こうして血煙で再現された武器はパリィできるが、イン・エコーズ本体を殴打に使用したりするとパリィできないのだ。
恐ろしいことに、原作でアシュラはこのパリィを一回も
これこそがアシュラが『アルテミック・ウェポン』にて最強たる所以なのだが――本番はここからだ。
「さぁ、これはどうする!」
アシュラが弾丸をパリィした瞬間。何も無い虚空から、不可視の斬撃が飛んでくる。
これこそカルマカルマの真骨頂。カルマカルマはパリィした攻撃を、反射するような形で返せるのだ。
だが、カケルもまたそれだけでは終わらない。
「ツチクレ!」
現在使用している武器――フウスイとは別の武器を起動させたのだ。
ツチクレ、「EUNOIA」が所有する汎用的なUMウェポンで、起動すると周囲に土の盾を展開する。
その数は――アシュラがパリィした弾丸の数と同数。
カケル最大の強みは、まさにこれ。
複数の武装を同時展開すること。
これもまた、原作のカオスでは不可能なことだ。なにせ、その武器に対する知識がなければ同時展開は不可能だからだ。『不理解』により、他者と交流できなかった原作カオスではできないこと。
何より、カケルはこの世界の武器を、「ゲーム上の数値」として理解している。その理解度は、この世界の人間では絶対に敵うことはない――!
――そこからは、目まぐるしい応酬だった。
カケルが無数の武器を再現し、アシュラがそのすべてをパリィする。
しかしアシュラの反撃も、カケルには届かない。反射に寄る不可視の斬撃は盾に防がれ、接近しようにもカケルの弾幕が厚すぎた。
これが、カケルがアシュラに一度も勝ったことのない原因。
そしてなにより、アシュラが一度もカケルに勝ったことのない原因。
――完全な千日手。
無論、カケルにもアシュラにも、ここでは使っていない切り札はある。だが、それらは使用することで命の危機が発生するような危険なもの。
模擬戦で使えるものではない。
「――もし、私とカケルが命をかけた戦いをしたら、どうなるだろうなぁ」
「ありえない仮定だな。俺とアシュラはこうして同じ勢力で肩を並べて戦う立場だろ?」
「そのわりには――カケルは私と全力で戦った時、どうするかを考えているように見えるが?」
その言葉に、カケルは答えない。
しかし、その場にいる誰もが思うだろう――事実だ、と。正確にはどう戦うかではなく、どう”生き延びるか”なのだが。アシュラという最強を前にした時、それはどちらも同じ意味にになる。
何にせよ、この場にいるものは誰もが感じ取った。
――カケルはアシュラに、本気で勝つつもりだ、と。
この模擬戦においてもなお、一瞬でもアシュラが隙を晒せばその喉元を掻き切るつもりだと。
無論それは、アシュラとて変わらない。ただアシュラにとって、それは当然のことだ。才能があり、最強なのだから。
しかしカケルは違う。カケルには才能がないのだ。抗体値が、平均的程度しかないのだから。戦闘要員としては十分な量がある。しかし、天才と呼ばれる存在――アシュラやカオスといった者たちと比べたら、天と地の差がある。
この世界は理不尽だ。弱者は簡単に食い物にされ、強者ですら自分の思う通りに生きられない。
だから、普通の人間なら才能を理由に、諦めることを覚える。妥協してしまう。食い物にされても仕方がないのだと受け入れる。
しかし、カケルは違う。
たとえどれだけ才能がなかろうと、絶対にそれを理由に諦めることはない。
才能を補うための武器を手に入れ、才能以外の方法で能力を獲得する。そうして、本物の最強たるアシュラに肉薄するのだ。
「ああ、素晴らしい。素晴らしいなあカケル! 君は本物だ!」
アシュラは笑みを深める。心の底から、眼の前の存在に歓喜する。これこそが、人の美しさ、輝かしさ、存在する価値だと。
自分のように、才能があるから強くなっただけの存在ではない。
才能を理由に諦めた存在ではない。
「君こそが、本物の強者だ!」
それこそが、多くの天才がカケルに執着する理由だ。
天才、最強、この世界において力をもって生まれた人間は、その多くがカケルを眩しく思う。決してその生まれは弱者ではない、強くなろうと思えば強者に至ることはできる。
だが、最強との絶対的な壁を破ることは、普通ならば不可能だ。
いや、正確に言えば。
この世界のおそらくすべての普通の人間は、自分はアシュラのような最強にはなれないと思っている。カケルだけが例外なのだ。
だからこそ、そんなカケルに対して周囲が抱く感情はなにか。
アシュラに対して壮絶な千日手を仕掛けるカケルを、周囲がどう思うか。
嫉妬? そうではない。羨望? それも違う。
答えは、恐怖。
誰もが思う。カケルのその執着は、人の域を越えている。
どうしてそこまでして、カケルは限界を越えようとする? どうしてそこまでして、カケルは何かに執着している?
その
そこまでは、間違ってはいても理解できる。
だが、
どうしてそこまでして、カケルは自分を投げ打って世界を救おうとするのか。生存しようと生き足掻くのか。
その根本にあるものを理解する人間は今のところ、この場にはいなかった。
阿修羅をも凌駕する存在みたいな最強キャラです。