人類詰みかけソシャゲで、問題児に囲まれても生き残りたい 作:つみそ
襲撃を対処した後、「EUNOIA」は「SLAVE」のヒャッハー共から「SLAVE」の拠点を聞き出すことに成功した。原作じゃ何があっても拠点の場所を明かさなかったのに、この世界の尋問班は優秀だな。
結果、その拠点が思った以上に近かったため、再度の襲撃を警戒して「EUNOIA」は戦力を派遣することに決定。
選ばれたのは――
「カケル、暇。えっちかころしあい、しよ」
「車に乗ってるのにできるわけないだろ、そもそも絶対にやらない」
カオスと俺だった。なんでプロフェッサーはいつも俺とカオスを組ませようとするんだよ。俺以外に御せる人間がいない? まぁそうね。
とにかく、俺達は車を運転してヒャッハーの拠点に向かっていた。俺が運転で、カオスは暇そうに携帯端末を弄っている。ゲームでもやってるみたいだ。
「それで、その、すらべ? って、どういう、組織?」
「スレイヴ、な。前にも話しただろ」
「そうだっけ?」
「……『SLAVE』は結構歴史のある組織でな」
そもそもの始まりは、UMウィルスによるZOMBIEパンデミックが始まったばかりの頃。
人類の中に、ZOMBIEにならない抗体を持った者たちが現れた。んで、当然ながらそいつらは差別される。その差別を推進したのが「SLAVE」の母体だ。
「自分たちは、その抗体持ちから作った血清で人為的に抗体を得てたのにな」
「くそそしきだー」
めちゃくちゃざっくり言えば、暗黒金持ちが抗体持ちを管理して利益を得るための組織だ。そんな組織を母体にしているから、先日の襲撃でヒャッハー共が旧時代の武器を使ってたんだな。
自分たちは人類である、というプライドから抗体者を戦力として使おうとしないのだ。
そして、貴重な抗体者や抗体値の高い人間を奴隷みたいにあつかっている。ただ、派閥争いに負けた連中も、組織の中では奴隷と同じ扱いだ。もし今回みたいに拠点の位置を吐いた後にまた「SLAVE」へ戻ることがあったらどうなるか……
だから原作で、「SLAVE」のヒャッハーは拠点の場所を吐かないんだが。どうしてかこの世界では比較的普通に吐いてるんだよな。なんでだ?
「ちなみに、その血清による抗体は不完全で、暗黒金持ち共は逆にZOMBIEになって全滅したぞ。今はただのチンピラの集まりだ」
「ざまぁ」
それはそれとして、本当にカオスは性格が悪いな。
「とはいえ『SLAVE』の厄介な点は抗体者を人間だと思ってないことだ。さらって奴隷みたいに扱うからな、『EUNOIA』としては近くに拠点を持ってほしくないんだよ」
「ころしても、いいってこと?」
「それはダメ」
「ちぇ」
そのせいで、アズサさんの妹が攫われてアズサさんはいいように扱われたりするんだ。
原作ではメインストーリーの二章で組織丸ごと壊滅するけど、今の時点だと健在である。できるだけ早く壊滅させたいんだけど、本拠地の情報が原作だと曖昧でなぁ。
今のところ、探してはいるんだが見つかってないのが現状だ。今回の拠点だって、本部ではない。
何にせよ、そろそろ目的地に付くところだ。
「……このあたりには、あんまり来たくないんだけどな?」
「? なんで?」
「なんでもない。それより――ん?」
と、そこで俺は異変に気がついた。続いて、カオスも端末をしまってその異変を確認する。
俺達の視線の先には、荒野の中に隠された「SLAVE」の拠点がある。これをどうにかするのが、これからの俺達の仕事――なんだが。
「――既に襲撃を受けている?」
拠点から、火の手が上がっていた。
よく見れば、拠点の外にはZOMBIEが溢れかえっている。
――なるほど、アウトブレイクか。
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「くそ、くそ! 何だってこんな時にネームドが入り込んでくるんだよ!」
「しかも、『EUNOIA』の連中が仕掛けてきやがった! ゴミ共が吐きやがったのか? ここを漏らしたら後でどうなるか、解ってるだろうがよ!」
拠点の中は、混沌としていた。
ヒャッハー共の怒号があちこちから飛び交っている。中ではどうやらネームドが暴れまわっているようだ。それにより一部のヒャッハーがZOMBIEになり、更にやばいことになってる……と。
んで、そこに加えて俺とカオスがUMウェポンを振り回しながら暴れているわけだ。まぁ、混沌とするのは当然だな。
「たのしい! カケル! たのしい!」
「あんまり暴れるなよ!」
恍惚とした様子で、カオスは周囲のヒャッハーを蹴散らしながらどこかへ行ってしまった。まぁ、制圧が目的なので、それでも問題ないのだが。
唯一の懸念はネームドだ、とはいえもし出くわしたらインカムから聞こえるカオスの声が狂喜乱舞するはずなので、問題ないだろう。
「さて、お前ら。死にたくないなら俺に投降しろ。そうすれば、このZOMBIEとネームドは俺達がなんとかする」
んで、俺はあちこちで銃弾をばらまいているヒャッハーに投降を呼びかける。
しかし帰ってきたのは――
「ふざけるな! 誰がお前達みたいなバケモンの言いなりになるか! 俺達はお前たちとは違う、人間なんだよ!」
罵声と、銃弾。
俺はそれをツチクレに変化させたイン・エコーズの血煙で防ぎつつ、ヒャッハーに近づいていく。それに対して、本気でヒャッハー達は怯えているようだった。
今も俺とは反対方向からZOMBIEが押し寄せてきていて、それどころじゃないだろうに。
「お前たちだって、今の時代を生き残れる以上最低限の抗体は持ってるだろ。昔とは違うんだ、なんでそう俺達抗体者と自分を区別しようとする」
「理由なんてあるわけ無いだろ! お前らが気持ち悪いんだよ! 近寄るな! 近寄るなってんだ!」
まったく、これじゃあどっちが悪者かわからない。
確かに、抗体者は化け物のような存在だ。抗体値の高い人間は、人間離れした身体能力を手に入れる。先日の俺のように、やろうと思えば巨大な怪物を一人で討伐することも可能だ。
それに対する得体の知れなさ、気味の悪さを受け入れられない人間はいるだろう。それは解る。
だが、「SLAVE」は本当にクソみたいな組織だ。なにせ――
「なぁ、俺の記憶が正しければこのあたりにこんだけの数のZOMBIEはいないはずなんだよ。
「こ、光栄に思えよな! 俺達人間を守る盾になれたんだぞ!?」
そういうことを平気でする組織だ。仮にも抗体持ち、そう簡単にはZOMBIEにならない。だが、ならないわけじゃない。長時間ZOMBIEに群がられて、ゆっくりとZOMBIEにさせられて。
どれだけ、彼らが悔しかったか。こいつらが憎かったか。
こいつらが襲撃を仕掛けてくる前に、俺達がこの拠点を見つけられてれば、こんなことにはならなかったのに。
「……お前らを見ていると、反吐が出るよ。ああ本当に、何でお前らみたいなのを、生きて捕らえなきゃならないんだろうな?」
この世界は、やっぱりクソだ。
あらゆる存在が歪んでいて、醜い。
「SLAVE」みたいな連中は勿論、「EUNOIA」だって完全に正しいわけじゃない。
前にも言ったが、「EUNOIA」の最終目標はZOMBIEウイルスの根治。今、こうしてZOMBIEになっている人間を元に戻すことだ。
それは確かに素晴らしいことで、輝かしい理想なんだろうが。そのために、ZOMBIEを極力浄化しないという制約が発生する。もちろん、普通の人間を殺すのも可能なら避けたい。
だから先日のように、殺さずに「SLAVE」の連中を捕縛したわけだ。今回だって、わざわざ投降を呼びかけている。
「てめぇらだって、似たようなもんだろうが。捕まえた人間を洗脳して、利用する! 奴隷にするのと何が違う!」
「俺達のは純粋な取引だよ。『EUNOIA』に協力する意志があるなら衣食住を保証する。当然の措置だ」
「ああん? てめぇ何を言って……まあいい」
ん? 何か噛み合ってないな。まぁいいか、向こうも追求するつもりは無いみたいだし。
とにかく、「EUNOIA」だって正しいだけの組織じゃない。理想に傾倒するあまり、ZOMBIEの間引きみたいな本末転倒なことをしていたりもする。
だからこそ中には「人類浄化連合」みたいな、ZOMBIEを今滅して人類の新たな時代を作ろうって考えの方が正しいと思う連中も出てくるだろう。
「SLAVE」みたいな連中も、だ。
「てめぇだって、『EUNOIA』がお花畑の集まりだってことくらい、理解してるんだろ。だったら解ってるはずだ、俺達は間違っちゃいねぇ!」
「間違いはなくても、お前達がクズだってことに変わりはないだろ。自分たちのやってることを棚に上げるんじゃない。それと――」
俺は、銃弾を弾きながらヒャッハー共の横をすり抜ける。イン・エコーズを構えて――迫りくる”それ”にふるった。
激突したのは――猿のようなネームドのZOMBIE。
「――生きたいなら退いてろ、邪魔なんだよ!」
名前はモノケインとか言ったっけ? まぁサルって呼ぶけど。
たしか、どっかのイベストでZOMBIEを改造する研究所ってのが出てきて、その成果物だったはずだ。
これの厄介なところは、その研究所から脱走したサルは複数いるってことだ。メタ的な話をすると、イベスト以降の時系列ではモノケインが便利な中ボスとして時たま出てくる。
素材の使い回しはいいのだが、現実でも使い回されるほど数がいるというのは遠慮願いたい。
サルの初見殺しは比較的単純で、腕が伸びるというものだ。ネームドのZOMBIEの格は初見殺しの厄介度で変わる。サルはネームドとしてはかなり格下だ。
仮にもう一匹ここに乗り込んでいても、カオスなら容易に対処するだろう。
ともかく、俺はそんな初見殺しを警戒しながらサルとイン・エコーズで打ち合う。
「それと俺はな、自分の意志で『EUNOIA』を選んでるんだよ……!」
まぁ、理由はこの世界のまともな組織で――『EUNOIA』が最も戦力が多いからなんだけど。
なにせ『EUNOIA』は人を殺さない組織だ。捕らえた人間の中から、協力の意志がある人間は戦力に組み込むこともする。結果としてそれが、裏切りや離反を招くわけだが。それでも、戦力が尽きない程度には豊富だ。
これが『浄化連合』とかだとそうは行かない。
裏切りを防ぎ、戦力を確保する。そのために俺は『EUNOIA』を選んだ。最初に拾われた恩や、『EUNOIA』がまともな組織だからという理由もある。
結局それは、『SLAVE』みたいなくそったれとは違う、『EUNOIA』が所属したい組織だからなんだよ。
「お前らにとやかく言われる謂れは――」
フウスイの弾丸でサルを滅多打ちにして、伸ばした腕をカルマカルマで切り落とす。最後にイン・エコーズを元に戻して、サルの脳天にそれを――
「ない!」
――叩き込んだ!
サルが動かなくなり、消滅する。
そうして、息を一つついてから、後ろでほうけている『SLAVE』のクソ野郎へと振り返る。俺がサルを攻撃する間、こいつはこちらを撃ってこなかった。
もう戦う気はないんだろう。
「それで……投降するのか?」
「ああ、する。するよ、クソ。だから――」
イン・エコーズを下ろした俺のもとに、男は近づいてくる。
そして――
「死ね、化け物。――――
剣のUMウェポンを生成し――俺に突き刺そうとしてきた。
なぜ、この男がベルクを? それ自体はおかしくない。コイツラはUMウェポンを使わないというだけで、中にはUMウェポンを使えるくらいの抗体値を持っている人間がいてもおかしくない。
そいつが、UMウェポンを万が一のために隠し持っていてもおかしくない。
だから、ああ、本当に。
こいつは、何があっても俺を受け入れられないんだろう。救われたって、慈悲を見せたって。善意とか悪意とか、そんなこと関係ないんだ。
受け入れられないものを排除する、ただそれだけの理由で俺を排除する。
自分のことを棚に上げて、自分が化け物と呼ぶ存在と同じ得物を手に持って。
そうすることでしか、心を保てないから。
そして、俺は――
「……やっぱ、この世界クソだよ」
最初から解っていたように、弾き飛ばした。
男が、数歩後ずさってから逃げていく。弾き飛ばしたベルクは拾わずに、何だったらそれ以前に持っていた銃すら放り捨てて。
あのままでは、ZOMBIEに喰われて死ぬだけだろうに。
それを、俺が追うことはなかった。
「――本当に、くそったれだ」
なぜなら俺には、こいつを追いかける資格はない。
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『カケル、こっちも、おさるさん、倒した』
「やっぱり二匹いやがったか……まあいいや、そっちは終わったか?」
『ん……ちょっと気になるもの、見つけた』
あの後、「SLAVE」の連中を制圧しつつ、ZOMBIEをまとめてミンチにした。
中には俺が逃がした男の姿もあったが、今はそれがどこにあるのかすらわからない状態。再生には結構な時間がかかるので、この拠点はもう大丈夫だろう。
捕まえたヒャッハー共はふん縛って、この後やってくる回収部隊に引き渡す。多分、アズサさんがあとから来てくれるはずだ。
今は、別で動いていたカオスと通信をしているところ。カオスが何かを見つけたらしい。
「それで、変なものって?」
『ここから、逃げ出す、車。一台』
「俺達の車、パクられてないよな?」
『ん、別の。でも、同じの』
別だけど、同じの?
少し不思議な言い回しだが、聞いたところ要するに車種が同じらしい。そして、俺達が乗ってきた車は基本「EUNOIA」で生産されたものだ。
つまり――
「なぁ、さっき俺を殺そうとした『SLAVE』の男が、ベルクを使ったんだが」
『は? そいつ、殺す』
「もう死んでるよ、正確にはZOMBIEになった」
『殺し放題!』
「違う、ベルクがうちから持ち出されたってことだよ」
ようするに――「EUNOIA」の構造上どうしても起きてしまう事態が、今回も起きたということだ。
俺は携帯端末を使って、アズサさんに連絡を取る。
基本的に今の時代、広域の電波は飛んでない。通信が届く範囲は限られているので、この連絡が届くかどうかは運だ。まぁ、届かなくてもいいっちゃいいけど。
内容は、こう。
「制圧した拠点に、『EUNOIA』の裏切り者がいたかもしれない。これから追跡する」
返事は……ないな。やっぱり届かなかったか、移動中か。どちらにせよ、返事を待っている時間はない。
「カオス、その車どっちに行った?」
『私達がこなかった方』
「――チッ」
この拠点は、崖の間に作られている。だから、拠点へやってくるには崖の底を通行するしかない。片方の進路は俺達がやってきたほう。もし仮にそちらへ逃げていたら、アズサさんたちとぶつかることに成る。
もう片方なら――その先は行き止まりだ。仮にもこの拠点を使っていた人間が、それを知らないとは思えない。
つまり、その行き止まりに行く理由のある人間。
「追いかける、カオスはここに――」
「――ついてく」
「うお」
背後から、声。どうやらカオスは俺のところまでやってきていたらしい。
「ついてく、行きたい」
「……できれば来ないでほしいんだが」
「やだ、だって――」
さて、行き止まりに行く理由があるのなら、一体どんな理由があるのか? という話。
答えはとても――とても簡単だ。
「そこ、カケル、生まれたところ」
そこには、存在が秘匿されたシェルターがある。
知っている人間は、「EUNOIA」に所属していて俺のことをよく知っている人間か――俺と同じ、そのシェルターの出身以外に、存在しない。
洗脳は偉大(※吐かせた手段)