ホシノの同級生になっていた話 作:キヴォトス一般人
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(おや)
いつもの部屋に黒服は座っていた。
しかし、そんな黒服の前に1人の小さな人影が姿を現す。黒服はその……彼女のことはよく知っている。いや、知っていたというべきだろうか。予想外の訪問者に黒服は少しだけ驚いた。
「お客様を招いたつもりはないのですがね……」
「……」
黒服はいつも通りに対応する。そしてそのまま少女の方に目を向ける。
「今お茶を用意しましょう」
「それは大丈夫です。変なものを入れられても困りますしね」
「それは心外ですねえ……」
(……)
黒服は平常心を装っているものの、目の前の少女から発せられているその殺意や怒りといった敵意を肌で感じていた。いや、敵意を向けられること自体は黒服も慣れているものの、殺意までは黒服にとっては予想外であった。
「それで何か御用でしょうか。――アビドス高等学校のもう1人の生徒会副会長、星月セレネさん」
アビドス生徒会は今のアビドス廃校対策委員会の前身である。
当時の生徒会長が消息を絶ち、アビドスは一時期不安定な状態となっていた。治安も悪化しており、アビドスの土地もかつての姿は残っておらず、ほんのわずかのみ。
黒服が前々から目をつけていた小鳥遊ホシノ、彼女を手に入れるため、今が好機ともいえる状態でもあった。
しかし本人の答えはイエスでもなければノーでもなく、保留というものであった。黒服はいずれイエスと答えるだろう考え、ずっと取引を持ち掛けていたが、不安定な状態はそんなに長く続かなかった。
それがアビドス生徒会の権限などをそのまま引き継いだ”アビドス廃校対策委員会”の発足である。
当時の所属はたったの2人ではあるが、正当な手続きによりアビドス生徒会の役割を引き継ぎ、正式な組織として連邦生徒会に認可され、確立した組織となった。
「生徒会ではないけれど今は対策委員会の副委員長ですよ」
「これはこれは……そうでしたね」
確かに生徒会ではない。
しかし、対策委員会の前身はアビドス生徒会であり、その権限や役割等を全て引き継いでいるため、名前を変えただけの生徒会そのものである。
これが黒服にとっては厄介なものであった。不安定だったアビドス生徒会は対策委員会と名を変えて、生徒会に準ずる組織として確立。不安定だったアビドス生徒会は確立した組織となり地盤を固めた。
「わたしがここに来たのは一言言おうと思ったからです」
「聞きましょう」
そう返した瞬間、黒服は戦慄を覚える。あまり動じるような人種ではないものの、このときは恐ろしい何かを感じ取ったのだ。
「ホシノちゃんに手を出したら許しませんから」
(これは……)
「ホシノちゃんもそうですが……アビドス高等学校に手を出すことも許しません」
「ククッ……そうですか、そうですか」
何もないはずの……小鳥遊ホシノのような神秘もない彼女の圧に黒服は若干ではあるものの気圧されていた。
「それだけです。では」
徐々に離れ行くセレネを見る。部屋から彼女が完全に退出したことを確認した後、黒服は一つ深呼吸をした。
「いやはや……恐ろしいものを感じましたね」
常人には出せないような圧とオーラ。そして殺気や怒り……色々と混ざって1つの敵意としてそれは黒服に向けられていた。
「いや……あれは私だけではなさそうですね」
恐らく、黒服自身を含む組織全体……ゲマトリアに向けられたものだろう、と黒服は考える。しかし、彼女のその敵意がゲマトリアに向かっている理由を黒服は分からない。分からないが、それでも予想することは出来る。
「……」
あの敵意の大きなポイントの1つは小鳥遊ホシノであること。
しかし、黒服にはそれ以上のことは分からない。小鳥遊ホシノを狙っていることからの敵意以外にも何かがある、それだけは黒服でも分かった。
「星月セレネ、ですか。もう少し調べてみる必要がありそうですね」
一人、黒服は呟いたのだった。
******
「ただいま帰りました~」
「セレネちゃんお帰り~」
「ホシノちゃん、めっちゃくつろいでますね……」
「うへへ~ いや特にこれと言ったことは起きなかったからおじさんは暇になってしまったのだよ」
セレネの記憶が正しければ、今ホシノが使っているクッションはなかったはずだ。どうやらいつの間にかホシノが持ち込んでいたらしい。
「まあ、そうやってクッションに抱き着いてゆったりしているホシノちゃんも可愛いですけど」
「……またそんなこと言うー」
「本当ですよ? ……弾薬関係の補給は何とかできましたよ」
「おー」
セレネはそう言いながらリュックの中から購入したものを出していく。
セレネが黒服に会いに行ったのはついでではあるが、ホシノに話すつもりはなかった。ホシノのもホシノでホシノ自身が黒服と会っていることなど、セレネは知らないはずであり、隠していることに気が引けているものの、何も言わないでいた。
それはこれ以上、セレネに負担や心配をかけたくないという純粋なホシノの気持ちでもあったが。
とは言え、セレネは実のところを言えば、ホシノが黒服と会っていることは知っているのだが、それを口にすることはない。
「結構買ってきたんだねえ」
「はい。とはいえ、弾薬関係以外もありますけどね。それにこの数ではまたすぐ無くなるでしょうし」
「だろうねえ」
治安の悪化はどうしようもないにしろ、対処しない訳にも行かずセレネとホシノは相も変わらず、そういった対応に追われていた。そこに借金事情が加わって、結局厳しい状況は続いている。
「たまにはホシノちゃんと一緒にお出かけとかしたいのですけどね」
「うへ? それって」
「デートですよ」
「で、デート!?」
「はい。友達と出かけることをデートと言うのですよね」
「うん……まあ、間違ってないのかな?」
(……セレネちゃんって抜けてるところもあるよね)
普通に見れば完璧。何でもこなすし、戦闘も得意、学校の教師が居なくても自力で知識をつける。ホシノもセレネに色々と教えてもらったりして勉強をしているが、それでもやはりセレネは凄いと思っていた。
「とはいえ、そんな余裕がないのが現実なんですけどね」
残念そうにするセレネを見るホシノ。
「そんなに出かけたいの?」
「息抜きも必要かなと思いましてね。それにやっぱりホシノちゃんとこう、ぱあっと遊びたいじゃないですか」
「そ、そう……」
「ホシノちゃんはわたしと出かけるのは嫌ですか?」
「うへ!? そ、そんなことないよ!」
(その言い方はずるいよ、セレネちゃん)
「学校を空ける訳にもいかないですしね」
「そうだね……」
不良生徒たちに占拠されてしまう恐れがあるため、必ず何処かに行くときは片方が学校に残るようにしているのだが、結局は単独行動となってしまっている。2人しか居ないから仕方がないというのもあるが、それでも単独行動も安全とは言い難いのだ。
「まあ今まで通りだね」
「ですね」
そうやってまた1日が終わり、また始まるのであった。
デート……。
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