ホシノの同級生になっていた話 作:キヴォトス一般人
「――いやぁ一、悪かったってば、アヤネちゃーん。ラーメン奢ってあげるからさ、怒らないで、ねっ?」
「怒ってません……」
「はい、お口拭いて。はい、よくできましたねー☆」
「赤ちゃんじゃありませんからっ!」
あのあと対策会議はアヤネの怒りの叫びで終了となり、一旦解散と思われたが、ホシノ達はセリカがアルバイトをしている柴関ラーメンに足を運んでいた。
「なんでもいいけどさ……なんでまたうちに来たの?」
セリカの言葉はご尤もなものであったが、当の本人達はアヤネの世話のようなことをして機嫌取りをしていた。
「アヤネ、もっとチャーシュー食べる?」
「ふぁい……」
あれこれと機嫌取りをしている一同はセリカの言葉をスルーしていた。それを見たセリカは軽くため息を付くのであった。
「はぁ……ところで、セレネ先輩は?」
ふと、セリカが席を見回すともう1人の先輩であるセレネが見当たらないことに気づき、問いかけた。対策会議のときは居たのでてっきり一緒に居るだろうとセリカは思っていた。
「セレネちゃんは何か急用があるとかで、先にどっか言っちゃった」
「詳しくは聞いてないんですけど、急いでいる様子でしたね☆」
「ん……」
セリカの疑問にそう答えるホシノ達。
セレネがいつも忙しそうなことは全員が知っていることだが、それくらいアビドスのために頑張ってくれていることも分かっているものの、それでも心配は尽きないでいた。
「セレネ先輩ってホシノ先輩の同級生でしたよね」
「そうだよーノノミちゃんも知ってると思うけど」
「そうですねー」
「ん……私も知ってる」
「あ、そっか。ノノミ先輩とシロコ先輩は昨年もセレネ先輩とホシノ先輩と一緒でしたね」
今年入学で1年として通っているセリカとアヤネはまだそこまで長い付き合いではないが、シロコとノノミの場合は1年ときもセレネ達と一緒に居たため、そこそこ長い付き合いであった。
一番長いのは当然ながら、同級生であるホシノなのだが。何ならホシノが1年のときは最初は3人だったが、その後は2人でアビドスを切り盛りしていた訳である。
「セレネちゃんは昔から色々としてくれたからね」
(本当に感謝しきれないかもしれないねぇ)
セレネが居てこそのアビドス、と言っても過言ではないとホシノは思っている。もしセレネが居なかったらホシノ自身がどうなっていたかは分からない。
「本当にね」
だからこそ、ホシノはセレネのことを心配している訳だが。今回の急用というのも、出来ればついて行きたかったというのがホシノの本音だった。
ホシノの頭に思い浮かぶのは黒服のことであった。ホシノが知っている範囲ではセレネが黒服と接触していることはなかったはずだが、何故かどうしようもない不安もあった。
黒服の取引については断ったホシノだが、ホシノもあの黒服がすんなりと諦めるとはあまり考えておらず、もしかすればセレネに接触してくる可能性も考えていた。
(セレネちゃんにも手を出すなら私は――)
「あのぅ……」
「いらっしゃいませ、何名様でしょうか!」
「ここで一番安いメニューは何でしょうか?」
そんなことをホシノが考えていると、柴関ラーメンに4人の客が入店してくるのであった。
*****
「……」
結局のところ、便利屋68には依頼が出来ませんでした。
通話が繋がらなかったというのもありますが、対策会議のことを思い出しまして、そこで知識と合わさって邂逅する時間軸だなと気付きました。
恐らく既にホシノちゃん達は便利屋68の面々と柴関ラーメンで出会ってしまっているでしょうね。そこで便利屋68とホシノちゃん達アビドス組が交流するはずです。
「……この場合に取れる選択肢は」
便利屋68との戦闘は回避できないでしょう。
しかし、そこでわたしはふと思いました。便利屋68が雇えないのであれば、その便利屋が雇った傭兵を雇えばいいのではないかと。
「恐らくお金がなくて便利屋には値切られているはずですしね」
傭兵とはお金さえ払えば誰の味方にもなるし敵にもなります。好条件で雇い直せば平気で裏切ることもあるでしょうしね。
つまりそこを狙います。
「……便利屋68には申し訳ありませんが、アビドスの皆に怪我をさせられては困りますので」
わたしは確かに中途半端な知識を持ってこのキヴォトスに生徒として転生しました。普通に見れば異質な存在でしょうが、セレネとして過ごしている記憶の方が上回っています。
そしてアビドスが好きというのも変わっていません。わたしはわたしなのですからね。だからこそ、そんな好きなアビドスや対策委員会の皆の為にやれることはやります。
「……心残りはユメ先輩ですね」
彼女も救えてたらもっと変わっていたでしょうが……いえ、まだ諦めてはいけませんね。知識通りに進んでいるところもありますが、変わっているところも結構あります。
――だから今でも信じていますよ。
ホシノちゃんとユメ先輩とわたしの3人で切り盛りしていた頃のこともはっきりと覚えています。宝探しをしたり、色々と悪ふざけとか、ユメ先輩との記憶だって残っているのですよね。
「懐かしい思い出がよみがえりますね……」
ふと、わたしは何を思ったのかカバンの中からくしゃくしゃになってしまった1枚の紙を取り出します。それから破れかけの紙も一緒に。
「……」
こっちのくしゃくしゃにはなってはいますが、ちゃんと形が残っている紙の方は嘗ての思い出の1枚です。宝探しをしたときの地図。
もう1枚はユメ先輩が持っていたポスターの残骸というか、ホシノちゃんが破ってしまったポスターの残骸です。ホシノちゃんにとってはトラウマの元でもありますね。
「まあ結局は宝の地図の方はハズレでしたが」
ユメ先輩に流されてきらきらしていたホシノちゃんが思い浮かびますね。わたしは胡散臭いって言ってましたけど。
「……」
何故これを持っていたのか……単純にユメ先輩、いえ梔子ユメが居たという事実を残しておきたかっただけです。ちなみにホシノちゃんには内緒です。
宝の地図はともかく、こっちのポスターは見せる訳には行きませんしね。
さて、変な思い出語りをしてしまいましたが……わたしは取り出しれそれらをカバンの中にしまい直し、今後のことを考えます。
……そうです。今やることは傭兵をどうにかすることです。
傭兵が居なければ恐らくわたしが居なくても対策委員会の5人でもやりあえるでしょうしね。もちろん、事が終わったら合流はしますよ。皆だけに戦わせる訳には行きませんしね。
傭兵を雇い直す方向で行くとして、今がどのタイミングなのかまでは分からないのですよね。ただ、あの会議の後に怒ったアヤネちゃんと一緒に柴関ラーメンに行くのは分かります。何ならそんな感じで進んでいましたし。
わたしはちょっと急用ということで抜け出しているのですが……しまったな。抜けない方がよかったでしょうか?
「いえでも、抜けないと傭兵を雇うチャンスがなくなりますし」
それにもう過ぎたことですね。既にこうやってわたしは離脱している訳ですからね。とはいえ、あまり長い間留守にしていると皆に心配させてしまいますね。
さて、それではわたしも動きましょうかね。
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