ドンッ_
後ろのほうからドンという音が微かに聞こえて、思わず一定のペースで地面を蹴っていた両足を止めて振り返る。
「(…ここからでもちゃんと見えるんだな)」
すっかり暗くなった川沿いのサイクリングロードと地上の灯りの奥で、煌びやかな花火が小さく夜空に打ち上がり、暫し遅れて小さな轟音が耳に伝う。この辺りは街から離れていて高い建物もなければ川の線形も割と真っ直ぐで見通しがいいから、距離にしてはちゃんと花火を観ることができる。
「(って、普通に観てどうすんだ俺)」
いつの間にかランニングを中断して遠くの花火に見入ってしまっている自分に気がつき、小さく打ち上がるスターマインから背を向けて止めていた足を動かして少し先に見えた折り返し地点にしている橋を目指す。
タッ_
花火大会。お祭り。思えば小6のときに同じクラスの奴と一緒に行ったのを最後に、そういう類のものに俺は一度も行ってない。理由は単純で、中学に上がって柊仁と同じ学校へ進んだことで遊ぶ暇がなくなるほど日常の中心がバドになったからだ。柊仁が強いだけのクラブチームと、柊仁みたいに全国レベルの試合でも戦える人が何人もいる屈指の強豪じゃ、練習メニューも向き合い方も全然違うから当然だった。
タッ_
佐知川での練習は楽しかった。日を追うごとに、今までとは比べ物にならないくらい自分自身が強くなっていく感覚があって、スタミナ的にキツいときもあったが弱音を吐こうなんざ一度たりとも思ったことはなかった。
タッ_
弱音や愚痴を吐こうものなら柊仁には二度と勝てないと思ったから、ひたすらに向き合うしかなかった。
「本気で楽しもうぜ。晴人」
「驚いた……上手くなってて」
それでも試合に負けるのは死ぬほど悔しくて、負けが続けば続くほど悔しさは増大していき、怒りとなって心を黒く染めていく。どんなに体力が上がろうと、スマッシュの命中率が上がろうと、フェイントが上手くなろうと、佐知川にいようと栄明にいようと俺の前には必ず
「私がしたいのは一年っていう大きい差を認識した上で、それでも“やってやろう”って思ってる人が私みたいな人の地位を脅かすって話よ」
だからと言って腐らずに努力を続けたとしても、それが実るとは限らないのがスポーツの世界。蝶野先輩が言っていたことを有言実行しようとしても、決して簡単な話じゃない。きっと俺は柊仁みたいに才能があるわけではなく、
「君のこと。ちょっとだけ見直した」
だから周りが練習終わりに羽を伸ばしに行っているときも、俺だけは花火に背を向けて走る。あいつらのことが羨ましいなんざ1ミリも思わない。楽しむ気持ちで負けているのなら、向き合う時間で勝って補う。そして
もうこれ以上……
「…ふっ…」
折り返しの橋に辿り着き、花火の音から逃げるようにここまで走ってきた足を止めて呼吸を整える。家から5キロの道程へ振り返ると変わらず夜空の先に花火が打ち上がり、時差で轟音が小さく伝ってくる。今ごろあの場所では、体育館で練習している面子が別々ながらも揃って花火を間近で観ているのだろう。
当然その中には花火大会へ行くと言っていた蝶野先輩もいる。あの
「……」
花火大会ってことは浴衣とか着て来てんのかな?
「(…いや、俺には関係ねえだろ)」
遠くに見える花火を見て邪じみたことを考えようとした頭を無理やりリセットさせて、俺はそのまま立ち止まることなく家まで走った。
「(…あ)」
花火大会もあっという間に終わり、路線バスで来た結をバス停で見送った後の帰り道。蝶野家まで歩いて5分くらいのところで、りんご飴の屋台の前で見た花柄の浴衣を羽織った後ろ姿が見えた。そういえば部活が終わって家に帰るまでの途中で急に後ろから雛姉がちょっかいを掛けてくることが何回かあったが、今は逆だ。
「(たまにはこっちからも仕掛けてみるか…)」
普段やられているからとかじゃないけれど、俺は足音を気にしながらゆっくりと雛姉へ近づく。何故だろう、やっていることは雛姉と何ら変わらないはずなのに不審者感が半端じゃない。
「だ~る~ま~さ~ん~が~ころんだっ」
そうやって親戚へのおふざけと俯瞰で見た現実に葛藤しながらそろりと距離を縮めていたら、前を歩く雛姉が急に“だるまさんがころんだ”を始めてサッと真後ろへ振り返る。つい反応して、俺はその場でフリーズする。
「なぜバレたし?」
「蝶野雛さまだから」
馬鹿正直にフリーズしたまま聞く俺に、雛姉は口元に手を当て嬉しそうに答える。時間にすればせいぜい1,2時間ぶりくらいだけど、まだちょっと見慣れない浴衣姿のせいか1週間ぶりに会ったかのような感覚を覚える。というか相変わらず空間把握能力がバグってんなこの人。
「その360度カメラってぐらい視えてる空間把握能力ほんのちょっとでいいから分けてくんね?」
「いくら飛鷹くんでもそれは駄目だよ。ていうか動かないの?」
「“だるまさんがころんだ”は鬼がタッチするまで終わらないのがルールだろ?」
「止まってる飛鷹くん動画にして菖蒲ちゃんに送ろうかな」
「それはやめろ絶対バド部に拡散される」
というわけで夜の住宅街のど真ん中でフリーズしている姿を危うく世話になっている先輩達へ拡散される前に悪ふざけを終わらせて、雛姉と一緒に家路を歩く。
「花火は楽しめた?」
「おう。めっちゃ花火綺麗だったしやっぱ近くで見ると迫力も半端なかったわ」
「あの身体に響く感じは近くじゃないと味わえないからね」
「“えびす講”思い出したわ見上げてて」
「えびす講?」
「この前話した
「あ~話してたねそれ」
音という音が途切れることのないさっきまでの賑わいが夢だったかのように、シーンと静まる住宅街に自分と雛姉の声だけがこの耳へ届く。
「俺さぁ、こういう祭りが終わった後の帰り道って結構好きなんだよな。余韻に浸ってる感じとか」
「それ私もわかる」
「やっぱ価値観合うよな俺と雛姉」
「ふふっ、何でだろうね?」
祭りが終わったあとの、余韻に少しの寂しさが混じった帰り道。例えるなら遠足や修学旅行が終わって学校や駅から家に帰る間の何とも言えない空気が静かな会話と共に流れてやや感傷的になる。
「しかし、花火大会が終わったらすぐにインターハイかぁ…」
花火の代わりに夜空を照らす月を見上げて、雛姉が呟く。7月も終わり、8月に入ると夏休みを満喫する暇もなく早くも全国大会への切符を手にした人たちにやって来るのが、インターハイという一度は夢見るであろう大舞台だ。
「インターハイ……来年は応援じゃなくて選手で出たいな」
「それは出れるといいね」
「マジでそれ」
考えるまでもなく、俺が口にした6文字と雛姉が口にした
「今年のインターハイの目標は?」
「もちろん優勝しかないでしょ」
「いやぁさすがっすね蝶野雛先輩っ」
「その調子でもっと雛さまを褒め称えたまえ1年生」
「雛さましか勝たんっ」
「(ギャル?)」
一番近くにいる
いま隣を歩く俺にはまだ、雛姉にとってのインターハイがどれほど重大なものなのか、きっと理解できていない。
「…ところで飛鷹くんはバドミントンの選手としてどこまで行くのが目標?」
一呼吸ほどの沈黙を挟んで、雛姉が前を向いたままどこか意味深そうに目標を聞く。いきなり問われた、どう答えるのが正解なのかもわからない漠然とした目標。
「どこまでか……いざ聞かれるとめっちゃムズイ質問だな」
「そんなに難しい質問かな?例えばインターハイに出るとか、インターハイに出て誰よりも試合を楽しむとか、色々あるじゃん」
少なくともこの間まではバドを楽しむことだけを考えていたエンジョイ勢なりに頭をフル回転させながら言葉を紡いでみるも、答えらしい答えが思いつく気配はない。
「それも一瞬浮かんだけど、雛姉の言ってる目標がインターハイかって言われたら違う気もするんだよな……なんつーか、あんま俺ん中でゴールは決めたくないっていうか…」
インターハイに出たい。そこで誰よりもバドを楽しみたい。ちょっと前の俺だったら迷うことなくそう言えていた。
「目の前の相手が今の自分じゃ到底敵わないような人だとしても、身の程知らずだって言われようが“この人には絶対負けたくない”って気持ちだけでコートに立ってもいいって、俺は思う」
「羽鳥君が栄明を選んだのも、俺みたいにどうしてもっていう譲れない理由があったからなんじゃない?」
「そんなこと考えたって時間の無駄だろ。現実にもしもなんてありはしないんだから」
「来年は一緒にインターハイ行こうよ。誰にも負けないくらい私も強くなるから」
だけど栄明に入って色んな人と巡り会って、その中で得たものを通じて改めてバドミントンというスポーツに自分なりに向き合い続けてきた中で、自分の中で
「飛鷹くんが蝶野家に来てくれて、すっごく感謝してるんだ」
その
「とにかくまあ、行けるとこまで行って燃え尽きる。って感じ」
「燃え尽きるのは前提なんだ」
「おう。完全燃焼するまで楽しむのが俺のモットーだしな……それがインターハイなのか、
考えに考えた末で口から出てきた、答えになってないような答え。
「…変わったね。飛鷹くん」
その曖昧な答えを聞いた雛姉が、静かにそう言って小さく微笑む。
「
そして車道側を歩く俺に視線を送って、嬉しそうな表情で逆に問う。さっきまで感じていた花火大会の余韻は、もうすっかりと消えていた。
「中学んときより自分のプレーが良くなってる感覚はあるし、強くはなれたよ。俺なりに」
こう聞かれたら、そりゃあ普通に俺はこう答える。少なくとも栄明に入る前で今以上にメンタルが弱い俺がもし遊佐さんと戦っていたら、間違いなく何も出来ずに負けていた。でも今なら自分のセンスだけに頼らず、自分より強い相手だろうと最後の最後まで諦めず正々堂々と戦えるようになった。1年前の今頃の自分と比べたら、自惚れでも何でもなく強くなれたって、そう言える。
「けど、まだ全然足りてねえって感じ…」
消え去った余韻と入れ替えで押し寄せる、俺がいる現在地。雛姉が言った通り、俺は強くなった。でも、当たり前のようにインターハイの切符を掴んだこの人の隣に堂々と立てるほど強くなれたかと言われたら、まだ全然足りない。
「…煽てたら調子乗るかと思った」
「そう簡単には乗らんよ。俺は強くなったからな」
「あ、乗った」
「今のはセイでしょ」
「せい?」
見事に引っかかった俺を見て、隣で雛姉が悪戯そうに笑う。横顔を見て思うのは、この人にとっての俺はどこまで行っても“1コ下のはとこ”だということ。もちろんそれは俺にとって悪いことなんかじゃないし、身内にしか見せない顔を見せれるくらい打ち解けている何よりの証拠だからむしろ良いことだ。
「逆に聞くけど、雛姉は新体操の選手としてどこまで行きたい?」
小5のときと変わらず
「…もちろん。
向けられた問いかけに、雛姉が顔をこっちへ向けて声を1トーンほど落としてクールに微笑み答える。割と本気で身構えた割に返ってきたのは、“行けるところまで”という俺と同じく曖昧な返答だった。
「雛姉もハッキリしてないじゃん」
「当たり前だよ。いまの目標はインターハイで優勝することだけど、自分が体操選手としてどうなっていくかとか最終的にどうなりたいとか、ハッキリと決められるほど私はまだ偉くないし」
思わず軽くツッコんだ俺を優し気な表情で一瞥して、雛姉は曖昧な目標の裏側を話す。口ぶりと表情は穏やかなまま、前を見据える眼つきだけが徐々に雛姉から“蝶野雛”へと変わっていく。
「どんな選手になりたいか考えるのはインターハイで優勝してから……って私は決めてる」
「たはっ、やっぱ強えな雛姉は」
雛姉にとってインターハイは、
「俺もそんなふうに言えるくらい強くなりてえわ…」
俺はもっと、
「…有言実行は簡単じゃないよ?」
誰に向けて言うでもなく呟いた独り言に、雛姉は静かに笑って同じくらいの声量で呟き返す。気が付くと帰り慣れた
「知ってるよ。でも挑戦しないと絶対勝てねえじゃん」
家まであと10歩のところで、俺は呟きへ自分なりの答えを返す。思っていた以上に、何だか宣戦布告したみたいになってしまった。
「そう言うんだったら、期待しちゃっていいかな?」
「見とけよ雛姉。俺も行けるとこまで行ったるから」
「君も中々の戦闘民族だね」
「おうよ」
なんてふうに向こうも思ったのかはわからないが喧嘩を買ったとばかりにほくそ笑む雛姉に、俺も気をよくして少しだけビッグマウスになる。
「正直俺さ、
小4から抱えているスイミングスクールをやめるきっかけになった
「ちょっと軽く走ってくる」
「早速やる気になった?」
「まー、そんなとこ」
「あんまり遠くには行かないでね」
「10分くらいで戻るわ」
一足先に玄関先へ足を踏み入れようとする雛姉へ、軽く10分ほど走りに行くと断りを入れる。
「おっけー。お母さんに伝えるね」
時間も時間か、振り向いた顔と瞳が軽い口ぶりに反して少しだけ心配そうに見つめる。
「あ、走る前にこれだけ雛姉に言っとく」
きっとこれで下手をすると1年後の花火大会までお預けになるであろう浴衣姿のはとこへ、とうとうここまで言いそびれていた言葉を告げる。
「今日の雛姉……めちゃくちゃ可愛いな」
どんな
タッ_
雛姉のリアクションを見ずに走り出したのは “可愛い”と言ったら盛大に笑われた小5の記憶があるからではなく、あとコンマ1秒でもあの場所に留まっていたら緊張と恥ずかしさでどうにかなってしまいそうだったからだ。
タッ_
蝶野家に帰れば毎日見ている顔と聞いている声なのに、言いたかったことをただ言っただけで今まで生きてきて体感したことがないほどの
「浴衣可愛いな」
親友の千木良、いや結には何の躊躇もなく言えた一言。芸能人で栄明にいた頃は“栄明の王子様”と呼ばれていた兄の黎さんと並んでも引けを取らないビジュアルと誰とでも仲良く接してすぐに打ち解ける底抜けの明るさを持ち合わせる結は、今や栄明では千夏先輩や雛姉と比べられるくらいクラスや学年の枠を超えて名前が知られている人気者だ。もちろん俺も結が美人だと周りから呼ばれるのは余裕で納得してるし、結のことは普通に可愛いと思っている。
「それは私たちが親友だからじゃない?」
ただ俺が結に対して感じているのは、思っていることを腹を割ってすんなりと話せる気楽な心地良さ。誤解を恐れずに言うなら、俺にとって結は異性ではなく恵介と全く同じ括りの親友。だから雛姉と同じくらい浴衣が似合っていた結には、普通に見て思ったことを言えた。
「どうしたの飛鷹くん私の顔じっと見て?」
けれど同じく浴衣を着て花火大会に来た雛姉をこの眼で見たとき、言えたはずの言葉が喉の奥で詰まって、結局言えなかった。雛姉が結と比べてだとか、他の先輩たちや同期の連中が周りにいたせいで恥ずかしさが勝ったから言えなかったんじゃなくて、言おうとした瞬間に酸素が薄くなるような感覚がして、我に戻ったときにはタイミングを逃していた。
「やっぱり雛先輩じゃん」
「“やっぱり”って何だよ」
「だってひだっち。りんご飴買うときちょいちょい雛先輩がいた後ろのほう気にしてたし」
その感覚を味わったのは今日が初めてではなくて、蝶野家に来てから何度かあった……というか、もっと遡ると小5の夏に初めて俺は雛姉に対して
「飛鷹くんなら絶対大丈夫だよ……だってこの蝶野雛さまがついてるんだから」
知らなかったのは、今日まで
「はぁっ……はぁっ…」
雛姉に教えてもらった神社が視界に入り、境内の入り口を過ぎたのと同時に全力で駆けていた足のペースを緩めて立ち止まる。生まれついての運動センスと水泳とバドで鍛え上げたスタミナがあればこんなせいぜい2、300メートルの距離なんてダッシュでも余裕なはずなのに、まるで10キロの道のりをペース配分無視で走った後みたいに酷く息が上がっている。
「……はぁ」
予想外に上がった息を整えて蝶野家からここまで走ってきた身体が冷静さを取り戻すと、入れ替わりで後悔と恥ずかしさが入れ交じった感情が襲い掛かって、俺は人目も気にせず溜息と共に堪らずその場で頭を抱える。
「(これ……家戻ったらまあまあ気まずいやつやん…)」
シンプルにやってしまった。雛姉に“可愛い”と言葉にして伝えた。ここまでは百歩譲っていいとしよう。ただどうしてあの後、雛姉の反応も見ずにここまで逃げるように走り出してしまったのか。どうして平然を保てなかったのか……というか白状すると、可愛いの前に“めっちゃ”を付けて気持ち盛った始末。
「…ぁぁ~」
自分の行動を振り返ったら、言葉にならない声が出た。考えれば考えるほど、恥ずかしさは増して行く。何ならタイムマシンを使って本気で昨日に戻ってやり直したいくらい、めちゃくちゃ恥ずかしい。マジで何してんだ俺。てか俺、どんな顔してた?
「…ふっ」
とは言っても、過ぎてしまったことはもうしょうがない……と、息を吐き夜空を見上げて無理やり気分を立て直す。気まずくなっているのは俺の勝手で、案外雛姉のほうは何とも思ってないかもしれない。きっとそうに決まってる。こんなのよくある話だろ知らんけど。
「…っ~」
いやいやいや無理だってこれ。そもそも“今日の雛姉、めちゃくちゃ可愛いな”って何だよ?もっと普通に言えっつんだよ!しかもこの時点でまあまあやっちゃってるのにそのまま神社まで全力疾走て、大会当日にラケットとシューズ一式を家に忘れて試合会場に行くレベルでやらかしてねえかこれ!?……いや、さすがにここまでじゃないとは思いたいけど。
「……」
なんて強引に自分の中でコメディーにして茶化そうとしたところで、もうこの気持ちは誤魔化せないことはわかっている。“10分くらい走ってくる”と雛姉に言ったのも花火大会終わりのランニングではなくて、
「(…10分で戻るとか言わなきゃ良かったな)」
とにかく今は、受け入れるまでの時間が切実に欲しい。もちろんこういう気持ちになることに全く興味がなかったわけじゃない。むしろ中学のときにそこそこ仲が良かった同じクラスの
「はぁ……どうしよマジで」
最初は本気でそのつもりだった。でも季節が春から夏へと移り変わる中で、
どうして
「なあ神様……俺はどうすりゃいいんだ?」
境内の入り口に立ち、本堂があるほうへ向かって意味もなく問いかける。こんなことしたって何の解決にも慰めにもならないことぐらいわかっている。
だが俺の心はいま、人生史上最大に混乱している。
「……どうすりゃいいんだよ」
補足ですが、現時点で飛鷹は大喜と千夏が付き合っていることをまだ知りません。
ということで、私としてはこの作品を書き始めたときからずっと書きたかったところまでやっと辿り着いたって感じです。もちろん書きたいと思っている展開はまだまだ先に幾つも残っていますが、ひとまず最初の目標は達成しました。
ここまで続けられているのもこの作品を読んでくださる読者の皆さまのおかげです。本当にありがとうございます。
飛鷹は雛に。結は飛鷹に。2人がそれぞれ心を許せる人へ抱いてしまった想いの結末はどうなるのか……まだ時間はしばらく掛かってしまいますが、自分なりにしっかりと書いていきますのでこれからも拙作をよろしくお願いします。
と宣言した傍からですが、次回から3話にかけて過去の話をします。誰の過去なのかは次回をお楽しみに。