「改めてインターハイお疲れ様_」
朝のミーティング。インハイが終わり最初の練習日でもある今日は、男バドにとってはとても重要な日だ。
「_というわけで今日をもって代替わりになるのだが」
そう。
「新しい部長は匡に頼もうと思う」
インハイをもって引退した西田針生ペアと一緒に俺たち現役組の前に立つ監督が、匡先輩のほうに視線を送る。やっぱり次の部長は匡先輩ときた。
「大喜は副部長を頼むな」
「はい」
続けて針生先輩が、大喜先輩へクールに笑みを浮かべて副部長を託す。これまた俺の予想通りだ。
「まぁ匡のほうが視野広いし」
「落ち着いてるし」
「論理的だもんな」
「教えるのも上手いし」
「提出物もちゃんとしてる」
「さっきから俺の悪口言ってません!?」
監督と前エースとキャプテンが3人揃って匡先輩を
いや、俺のことじゃないから気にしているわけではないけど。
「頼めるか、匡」
おふざけは程々に、監督が穏やかながらも真面目な眼つきで匡先輩へ言う。
「はいっ」
大喜先輩と一瞬だけアイコンタクトを取って、匡先輩が答える。新部長誕生の瞬間だ。
「うおおおおっ!」
「新部長誕生だあ!」
「よろしくな新部長!」
「ランニングの時間減らそうぜ」
「却下」
「ですよね~!」
「もっと部員の意見を_」
どうやら
「(…こういうときに限って乗らないんだ。羽鳥のやつ)」
その盛り上がりから一歩距離を置いたところで、1年の中ではすっかり中心的な存在になっている羽鳥が小さく笑いながら盛り上がるみんなを珍しく達観していた。向けている視線の行き先をよく見ると、新部長の匡先輩ではなくその隣にいる大喜先輩のほうを見つめている。
同じ
「(もっと追い込まねえと、また離されるな…)」
「ほら準備してー練習始めるぞー」
「はーいっ」
代替わりのミーティングが終わり、早速新しい部長の指示でコートの準備を始める。同期のライバルを意識するあまり若干虫の居所が悪くなり出していた俺も、練習に向け心をリセットして準備に取り掛かる。
「あ」
「あ゛」
支柱を取りに倉庫へ足を進める途中、バド部と同じくついこの間にインハイがあった蝶野先輩と鉢合わせた。しかも目が合ったのが俺だと分かるや露骨に嫌な顔をされた。
「なんで俺と話すと濁点つくんすか?」
「どーぜんでじょあんなこと言われたらっ」
「あんなことって何すか?」
「“あなたのこといいなって思う気持ちが、こんにちはしてきたんですけど”って!」
「あー、言いましたね確かに」
なんで俺の顔を見たら機嫌が悪くなったかと思ったら、俺がついポロっと言ったあの一言だった。まあ先輩のこういうところも見てて面白いから、マゾってわけじゃないがそこまで嫌な気分はしない。
「ダメよ後輩くん。軽々しくああいうことを口にしちゃ」
「晴人」
「あ゛い゛?」
「“後輩くん”じゃなくて、俺、晴人って名前なんで」
そして案の定、蝶野先輩は俺のことは頑なに“後輩くん”か“君”呼びで“晴人”とは呼んでくれない。さすがにこれはちょっとだけ、名前で呼んで欲しいと思うところは正直ある。
「呼ぶ義理はねえ」
結局“君を名前で呼ぶなど100年早い”と言わんばかりの圧を掛けて、蝶野先輩は新体操部のコートへプンスカと戻っていく。相も変わらず、この先輩は俺に対しては一貫して心を開かない。
「(“義理はねえ”って、頑固なお義父さんか)」
蝶野先輩に対して“こんにちは”した気持ちは、あくまで恋愛とはまた違うものだと思っている。弱っている人がいれば迷うことなく手を差し伸べる優しさがある一方で、己の才能に驕ることなく常に地に足をつけて高みを目指し続ける強さと確たる自信を併せ持つ。そういう強いところが人として単純に“いいな”と思った。
「(…まさか根に持ってたとは)」
そもそも俺は恋愛なんかしたことないからどういうものかすらも分からない。だけど俺が何気なく放った一言をちゃんと
「仲良いじゃん雛姉と」
倉庫へ再び足を進めようとしたところで、先輩の親戚が入れ替わりで話しかけてくる。
「いまの見てそう思えるか?」
「おう。息ピッタリだった」
「なんか
「晴人って雛姉と話せると嬉しいん?」
「そういう意味で言ってねえ!」
やり取りをこっそり見ていたのか、羽鳥は俺と先輩が息ピッタリだったと言って飄々と笑みを浮かべる。状況が状況だけに、何だか親戚からウザ絡みされてるときみたいな気分だ。
「んなことより蝶野先輩のインハイどうだった?」
「え?やっぱお前って」
「これ以上ふざけんなら二度と口聞かねえからな」
「支柱持ってくの手伝うから許してや~」
「なんだその下手くそなエセ関西弁は」
イライラが練習に影響する前に、俺は話題を逸らしながら足を進める。
「準優勝だってさ。凄すぎてまだ夢なんじゃねえかって思うわ」
さすがに空気を読んだのか、ちゃっかり隣を歩く羽鳥は蝶野先輩のインハイの結果を誇らしげに俺へ明かす。
「これで日本で2番目に強い人が
インハイで準優勝した蝶野先輩のことを自慢しながら話す饒舌さに反して、前を見ている羽鳥の横目はほとんど笑っていない。口では
「せっかくここまで来れたのに全然バド楽しめなかったなって、もう俺のバドミントンは終わりかよって、ただただ不完全燃焼って感じでモヤってした気持ちがずっと
こういう顔をする羽鳥を見るのは、最初で最後の全中の話を俺にしていた体育祭のとき以来だ。
「…それはさぞ悔しかろう」
ウザ絡みしてきた仕返しも込めて、俺はダイレクトに図星を突く。
「当然。1位じゃねえから」
意図を察したのかただの気まぐれか、変に誤魔化すことなく羽鳥は声を1トーンほど落としてこう返した。悔しそうに笑い呟いた言葉は、自分と蝶野先輩のどちらに対しても言っているように俺には聞こえた。
「…お前って
「ん?何か言ったか?」
「いや、なんでもねえ」
こいつが
「つーか初めて晴人から同情された気がする」
「蝶野先輩に対してだ。お前じゃねえ」
「やっぱ仲良くしようとしてんじゃん雛姉と」
「別にそういう意味で話してねえよ先輩とは」
「ま、俺は反対しないけどなっ」
「なにが“反対”だほんと意味わかんねえ」
これ以上は掘り下げず、俺と羽鳥はいつもの口喧嘩みたいなやり取りをしながら支柱を運び、インハイ明け最初の練習を始めた。
市民体育館・コート_
パァァンッ_
高く上がった羽根を、渾身のスマッシュで打ち返す。
その羽根が相手の先輩がいるコートへ落ちたのを合図に、相手コートに背を向けて振り返る。
振り返った先には、アウトラインの外から私のスマホを両手に持って動画を回すコーチの姿。
タッ_
私は駆け足で近づいて、ちょうど全身が映るくらいの
「慧ーっ!」
私が弟の名前を大声で呼んだのを合図に、10人の女バド一同がコーチの構えるスマホのカメラの前に集まる。
「せーのっ!」
「「一本ーッ!!」」
明後日から試合がある弟へ送る応援動画。これにて撮影終了。←※テイク3
「多分ちゃんと撮れてると思う」
「ありがとうございますっ。というかスイマセン。みんな巻き込んじゃったみたいな形になって」
「いいっていいって」
タイミングやらコーチが開始ボタンを押してなかったやらで2度のやり直しを経て、練習の合間を使った弟に送るサプライズ動画の撮影も無事に終わってコーチから自分のスマホを受け取る。
『一本ーッ!!』
コーチが撮ってくれた動画をみんなで確認。問題なく普通にちゃんと撮れていた。
「あははっ、なんか甲子園でよく見るチーム紹介のやつみたい」
「これは慧くんも喜んでくれるんじゃない?」
「うん。そうだね」
一体どうして我ら女バドが練習時間の一部を使ってこんなことをしているかというと、今日の早朝に遠征へ出掛けた慧が明後日から全中の試合を控えている……という話を練習前の準備中に何気なくあかりんに話していたらそれが女バド全体に広まり、“だったら私たちでエールを送ろう”っていう形になったからだ。
「でも結の弟くんすごいよね~。去年も全中行ってるし」
「なにせ我が家自慢の末っ子なんで」
「結から写真見せて貰ったことありますけどめっちゃイケメンですよ」
「ホントに?」
「見せて見せて」
「えーっと確か……あった。これとか」
「えっホントにめっちゃイケメン!」
「無加工ノーメイクでこれはマジなやつだ…」
「下手なイケメン俳優よりイケメンだわ弟くん」
「自慢じゃないけどウチの兄がイケメン俳優なんで遺伝子めっちゃ引き継いでます☆」
「それはもう普通に自慢なんだわ」
「…ていうか結のお兄さんこの前CMで見た気がする」
「うん、イヤホンのやつ」
「やっぱり!」
「あと“ミスタ”のMVにも出てたよね?」
「えっ出てたの!?」
「うん、新曲のやつ」
「ていうか前世でどんな得を積めばここまで美男美女が揃うのよ…」
無事に撮影も終わったことで、女バドの話題は全中の試合を控える弟のイケメンぶりと、最近じわじわとバズり始めているお兄のことで盛り上がる。
「ねえ結の弟くんって高校どこに進むかって決まってたりする?」
「まだ決めてない。今はほら、全中で忙しいから」
「できれば栄明に来てほしいよね~」
「あははっ、会ったら言っときます」
「でも“神童”って呼ばれるくらい強いから佐知川とか行っちゃったりして」
「うわ~あり得るかもっ」
「って結じゃないウチらがそこ心配しても意味ないって話だけど」
実はまだ確定ってわけではないけれど、慧の進学先は本人の気が変わらない限りはもうほぼ決まっている。ただその進学先は例によって男バドからすれば
「栄明に入る前からモテモテだなぁ我が家の末っ子は」
「え?もしかして栄明に来るの?」
「んー、“無きにしも非ず”ってところ?」
「ははっ、めっちゃ意味深なこと言うじゃん」
何より慧が佐知川に進むとなったら、一緒にインターハイに行く約束をしたひだっちにとって遊佐さんと並んで一番の壁になる。もし同じコートで他校のライバルとして相対することになったら、姉としてはどんな気持ちで2人をそれぞれ応援すればいいのか悩ましくなるところだ。
「結の気持ち的にはどうなの?その辺?」
「まあどこ行くのも慧が決めることなんで、“頑張れ”って気持ちです」
去年の全中みたいにひだっちが同じ学校じゃなかったら、親友になっていなかったら、今みたいに素直に慧のことを応援できるのに……
「ハイ。あと1分したら練習再開するよ」
「「はいっ」」
練習そっちのけで雑談を始めた女バド一同を暖かく見守っていたコーチが“そろそろ休憩は終わり”とパチンと掌を叩きながら告げて、返事と共に各自が水分補給をしたりして1分後の練習に向けて気を切り替えていく。
「結っ」
「?はい」
自分のラケバに戻って水分補給をしていたところに、代替わりで部長になったのぞみ先輩の呼ぶ声。
「実はちょうど昨日うちのお姉ちゃんから“余ったから”って貰った遊園地のフリーパスが2枚あるんだけど、これ良かったら」
「えっ!?いいんですか!?」
「大会が終わったら弟の慧くんを連れてってあげな」
「あ、りがとうございます!」
振り返ると、のぞみ先輩の手元には遊園地のフリーパスのチケットが2枚。流れのままに受け取ったけど、突然すぎてリアクションがおかしくなった。
「あぁもちろん
「お友達……あ~あかりんたちってことですねっ!」
「ははっ、なんで照れてんの?」
「…あー、若干熱中症ぽいかもです」
「冗談なのかマジなのか分かんないって」
「やっぱ勘違いでした」
間髪入れずに“お友達”なんて意味深な言い方をされたから、動揺が重なってまたリアクションが変になった。少なくとものぞみ先輩を含めて2年生の先輩たちは私とひだっちのことを聞いてくるようなことはしない人ばかりだから、きっと単純な意味だ。
「ま、これはのぞみ先輩からのささやかなプレゼントってことで」
「ありがとうございます」
チケットを受け取ると、動揺が完全に冷めないうちにのぞみ先輩は部長らしく颯爽と自分のラケットを持ってコートに向かっていく。
「(…貰ったはいいけど、慧ってあんまり遊園地とか行くタイプじゃないんだよなぁ)」
正直、遊園地のチケットを先輩から受け取ったとき、慧よりも先にひだっちのことが頭に浮かんだ。
それは慧が小さい時から遊園地より博物館みたいな静かなスポットが好きで、中学に上がってバドミントンを始めてからはそれ以外のことはまるで無関心ってことではなくて、無意識に浮かんだ顔がひだっちだった。
「(そういえばひだっちと一緒にどっか行ったの、まだ花火大会だけだ)」
この週末が空いてたら、思い切ってひだっちと一緒に行くのもいいかも……なんて。
「のぞみ先輩からなに貰ったの?」
受け取ったチケットをボーっと見つめていた意識の左側から、ゆーづの声が聞こえて振り向く。
「遊園地のフリーパス。慧のために使ってだって」
「へぇ~粋なことしますなぁのぞみ先輩は」
「めちゃくちゃありがたいし嬉しいけど、慧ってあんまり遊園地とか興味ないんだよね~」
「そうなんだ」
「どっちかっていうと博物館みたいなところのほうが好きなタイプみたいな感じでさ。今は四六時中バド一筋だけど」
貰ったはいいけれど、喜んでくれる保証は出来ない2枚のチケット。
「でもお姉ちゃんからのプレゼントなら、慧くんも喜んでくれるんじゃない?」
どうしようか悩む私に、ゆーづは明るく笑って“慧なら喜んでくれる”と勇気づける。まあ喜んでくれたら嬉しいことに変わらないけど、断られたら断られたで弟っぽくもあるから大してショックは感じない。
「だと嬉しいけどねぇ」
心の中で思っていることが表へ出ないようにゆーづへ頷いて、私はチケットをラケバの中に入れてラケットを手に取りコートへ向かう。
あの花火大会からというもの、ふとしたことですぐにひだっちを過剰に意識してしまうようになった。そんな気持ちに襲われるたび、わかりやすく浮足立ってる自分が恥ずかしくなってくる。
「……」
でもやっぱり……弟より先に
「(ごめんね。慧)」
心の中で慧へ謝って、私はコートへ戻った。
自主練習が終わったあと、私は家に帰る前に立ち寄る場所があるからと同じく自主練に来ていたにいなたちと早々に分かれて学校の一番近くにあるコンビニを目指して歩いていた。
「(さすがに身体が重かったな…)」
1人で歩道を歩きながら、脳内で今日の反省会。インハイ帰りの翌日ということで今日の部活は自由参加だったけど、朝起きたら思っていたより疲れが取れてたし家の中でどうせストレッチとかをやるくらいならと出てみたはいいもののいざメニューをこなしてみたらいつもより身体の動きが少し重く、結局今日は元々考えていた練習メニューを変えて無理のない範囲での筋力トレーニングをメインに切り替えた。
きっとこれは疲れがまだ残っているのとインターハイがひと段落して若干気持ちが燃え尽きていることが関係していると、経験値が言っている。
「(…海かぁ)」
そんなお疲れ気味の身体に向けての“神のお告げ”なのか単なる偶然か、菖蒲ちゃんからのご厚意で男バドの“インターハイお疲れ旅行”に新体操部の私とにいなも参加することになった。
「新体操部だけどいいの?」
「ひなっちとになにながいないと女子が私1人になるのよ…」
「(家にある水着。確かワンピースだったはずだけど…)」
今週末のリフレッシュを思い出したら、一昨年に買った水着のことが気になりだした。
新体操という己を魅せる競技をやっているから説得力があまりないかもしれないけど、私だって女の子。水着はともかく男子から不可抗力でお腹の辺りとかを見られると正直ちょっと恥ずかしいのが本音で、中学の部活を引退したときに新体操部でプールに行ってから久しく着ていない水着がお腹周りの露出がないワンピースタイプであることを祈る私。
特にあのときの後輩くんみたいなパターンもあるし。
「(まあ飛鷹くんだったら水着姿くらいは全然恥ずかしくはないけど…)」
って、浮かれすぎでしょ私。
「……」
バド部の旅行で海に行くことになって浮かれる自分に軽く引いて我に返ると、いつの間にか“集合場所”のコンビニに辿り着いた。半分くらいが埋まった駐車場の一角に、まだ一度も乗ったことがない見覚えのある半年前に買い替えたばかりの白い車が私を待ち構えるようにエンジンを掛けたまま止まっている。
「合宿おつかれ」
「うん。雛も改めてインターハイお疲れ様」
コンビニには寄らず真っ直ぐに白い車の助手席のドアを開けて、運転席に座り待っていた夏季合宿帰りのお父さんへ一言掛けながらドアを閉める。ドアが閉まると同時に外から聞こえてくる音がスンっと消えて、車の中がアイドリングと控えめなラジオの音だけになる。
家族の中で1番強く遺伝子を感じる人が隣にいるのに、気まずい。
「わざわざ呼び出す形になってごめんな、雛」
一瞬生まれた気まずさを破って、お父さんは私をここに呼び出したことを謝る。
「ううん。だって飛鷹くんが家にいると今までみたいに反省会できないし、なるべく気も遣わせたくないし」
自主練終わりの私がお父さんの車の助手席に座っている理由はただひとつ。インターハイとこれからのことについて話し合うためだ。今まではリビングで普通に話し合えたけれど、飛鷹くんがいるとなると色々と気を遣わせてしまうからそうはいかないから、飛鷹くんがランニングに行っているタイミングでお父さんに相談してこうなった。
「初めて乗ったよ。お父さんの新しい車」
もちろんドライブはその
「そうか。初めてか」
この車に乗るのが初めてだと言った私に、お父さんは視線を前に移しながら思い耽るような表情で呟く。
「寂しいか?正直」
“誰かさんがよく家を空けるからね”……っていう軽口をお父さんにも叩けるようになりたいけど、偉大さを知っているこの人を前にするとどうしても“尊敬”が勝ってしまうから思っていても言えない。
だから新体操以外の話をしているときのお父さんとの会話は、どこかぎこちない。
「お父さんが悪く思う必要なんかないよ。私が“甘えない”って決めたことだから」
「…そうだったな」
それでも“同じ景色を見る”と
「どこか寄りたい場所はある?」
「いや、大丈夫」
「分かった」
微妙に目線が合わない会話をちょっとだけして、お父さんの車はコンビニを後にした。
一方その頃、遠征先の宿舎に着いた慧は姉の結から送られてきた応援動画を眺めていた。
『一本ーッ!!』
「うわまた慧がモテてやがる」
「別にモテてはいないよ。姉ちゃんと同じ部活の人たちだから応援してくれてるってだけでさ」
「でもぶっちゃけ嬉しいっしょこんなに応援されて?」
「応援されることは力になるからもちろん嬉しいよ。あ、見たから姉ちゃんに返信しないと」
「(こりゃまだまだ時間がかかりそうだ…)」
女バドの女子10人(姉を含む)から応援されても、1ミリも邪な気持ちにならない純粋無垢な慧であった。