その恋は幻のように   作:Fate好き

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終わりと始まり

「ああ──なんて、遠くて────こんなに、近い────」

 

 ぼやけた視界で、最後の力を振り絞り彼へと腕を伸ばす。足元が覚束ない中ゆっくりと歩み寄る私を、彼は悲痛な目でじっと見つめていた。

 

 

 伸ばした腕から青色の蜜が湧き出る。袖まで滲んだ蜜が青く艶めく。勿論この程度で彼を溶かしきることはできない。でも、最後にほんの少しだけでも彼に触れて、一つになりたかった。

 

 しかし、そんな最後の小さな願いも叶わない。敗者である私には叶える資格などなかったのだ。

 

 彼が側に控えるサーヴァントに目配せする。マスターの指示に従い、サーヴァントであるセイバーが私と彼の間に躍り出る。

 

 

 次の瞬間にはセイバーの剣が私の体を袈裟斬りにしていた。もはや数分ももたずに自壊していただろう私の体は、一切の抵抗も見せずに切り裂かれる。トドメの一撃を受けた私の体は瞬く間に崩壊していった。

 

 

「ふふ──そう、よね────これが私に相応しい────独りきりの、おしまいだわ────」

 

 

 悲しみと、満足感が私の心を満たしていく。

 

 

 ああ、貴方を取り込めなくて、本当によかった……

 

 

 そう思いながら私、メルトリリスは完全に消滅した。

 

 

 

 

 

 

 そのはずだった。

 

 

 

 ────────────────────────

 

 

 

 

「あら、随分と珍しい。一体どこから迷い込んだのかしら…………結界は異常なし。妙ね」

 

「紫様。どうかなされましたか?」

 

「何でもないわ。ただ、面白いお客さんが来ただけよ」

 

 

 

 

 ────────────────────────

 

 

 

 

 

 チュンチュン チュン

 

 

 風が木の葉を揺らす音に、鳥の鳴く声。さまざまな音が入り混じり、静かな音楽を奏でている。瞼越しに明るい光が網膜を焼き、背中から伝わる冷たい感触が意識を覚醒させていく。

 

 眠りから覚めるという感覚を経験したことのない私は、全身を包む不思議な感覚に戸惑いつつ、ゆっくりと目を開ける。

 

 

「ここ、は…………」

 

 

 視界には、迷宮内では眼にすることのなかった()()と、風にそよめく木々。ぼんやりとした頭で上体を起こせば、体についていた木の葉がはらりと落ちた。

 

 ここは、一体どこだろうか。それに私は先ほど完膚なきまでに敗北し、その霊基を砕かれたのではなかったか。

 

 体を見れば、破損部位は全て元に戻っており、体は軽くなっている。いや、満身創痍だった時と比べれば軽いが、いつもよりは重いだろうか。性能(スペック)が大幅に落ちている。いや、それよりも何よりも、この肉体は……。

 

「あー、やっと起きたのね」

 

 思考を巡らせていると、突如後ろから声を掛けられる。急いで立ち上がり、臨戦態勢に入る。

 

「取り敢えずそこ、邪魔だから一旦退いてくれない?」

 

 そこには、紅白の巫女服を纏った少女が、箒を手に立っていた。

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