その恋は幻のように 作:Fate好き
「ああ──なんて、遠くて────こんなに、近い────」
ぼやけた視界で、最後の力を振り絞り彼へと腕を伸ばす。足元が覚束ない中ゆっくりと歩み寄る私を、彼は悲痛な目でじっと見つめていた。
伸ばした腕から青色の蜜が湧き出る。袖まで滲んだ蜜が青く艶めく。勿論この程度で彼を溶かしきることはできない。でも、最後にほんの少しだけでも彼に触れて、一つになりたかった。
しかし、そんな最後の小さな願いも叶わない。敗者である私には叶える資格などなかったのだ。
彼が側に控えるサーヴァントに目配せする。マスターの指示に従い、サーヴァントであるセイバーが私と彼の間に躍り出る。
次の瞬間にはセイバーの剣が私の体を袈裟斬りにしていた。もはや数分ももたずに自壊していただろう私の体は、一切の抵抗も見せずに切り裂かれる。トドメの一撃を受けた私の体は瞬く間に崩壊していった。
「ふふ──そう、よね────これが私に相応しい────独りきりの、おしまいだわ────」
悲しみと、満足感が私の心を満たしていく。
ああ、貴方を取り込めなくて、本当によかった……
そう思いながら私、メルトリリスは完全に消滅した。
そのはずだった。
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「あら、随分と珍しい。一体どこから迷い込んだのかしら…………結界は異常なし。妙ね」
「紫様。どうかなされましたか?」
「何でもないわ。ただ、面白いお客さんが来ただけよ」
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チュンチュン チュン
風が木の葉を揺らす音に、鳥の鳴く声。さまざまな音が入り混じり、静かな音楽を奏でている。瞼越しに明るい光が網膜を焼き、背中から伝わる冷たい感触が意識を覚醒させていく。
眠りから覚めるという感覚を経験したことのない私は、全身を包む不思議な感覚に戸惑いつつ、ゆっくりと目を開ける。
「ここ、は…………」
視界には、迷宮内では眼にすることのなかった
ここは、一体どこだろうか。それに私は先ほど完膚なきまでに敗北し、その霊基を砕かれたのではなかったか。
体を見れば、破損部位は全て元に戻っており、体は軽くなっている。いや、満身創痍だった時と比べれば軽いが、いつもよりは重いだろうか。
「あー、やっと起きたのね」
思考を巡らせていると、突如後ろから声を掛けられる。急いで立ち上がり、臨戦態勢に入る。
「取り敢えずそこ、邪魔だから一旦退いてくれない?」
そこには、紅白の巫女服を纏った少女が、箒を手に立っていた。