TS少女、ダンジョンに潜る   作:ドラゴンスキー

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プロローグ(TSするまで)

「坊主、そろそろ見えてきたぞ」

「ほんとですか!?ここまで乗せてくださりありがとうございます!」

「なーに、困ったときはお互い様ってやつさ。気にするな」

 

お金も親も住む場所もなければ、まだ成人していないのでまともな仕事にも就けない。

そんなボクでもできる仕事――――――冒険者になることを求めて、迷宮都市セントラルへと歩いて向かっていたところこのおじさん――――キムさんというらしい―――は一人で歩くボクを見かねたのか荷台とはいえ馬車に乗せていってくれた。優しい人だ。

 

「それにしても……坊主。お前も大変だな。その歳で冒険者なんて」

「あ、いえ!その、ボクが自分で決めたことですので!」

「そうか。まあ、なんだ。頑張れよ」

「はい!このご恩は忘れません!本当にありがとうございました!!」

 

キムさんは街の門のところまで乗せてくれてた。これから街の中へと入る手続きがあるらしいのでここで分かれることとなった。

なんの対価も支払えないボクをここまで乗せてくれたキムさんへの少しでも感謝を伝えたくて、キムさんの姿が見えなくなるまで頭を下げた。

キムさんの姿が見えなくなった頃、顔を上げると馬車の中からは遠くに見ていた景色がすぐそこにあることに少し驚いた。

 

「うわあ、大きい門………」

 

目の前に広がるすさまじい景色に思わず声を漏らす。

大きな門の前には2人の衛兵が立っており、街の中へ入って良いのかを判断する仕事をしている。ボクが街の中へ入れるかどうか分からず、不安でごくりとつばを飲み込んだ。列へと並び、順番を待つ。ボクが待っていたのは旅人などが並ぶ列で、商人達が並ぶ列とは別の列だったのでさほど時間が掛からずボクの番が来た。

 

「次!」

「は、はい!」

 

衛兵のハキハキとした大きな声に身体に緊張が走り、ガチガチとなって答える。

 

「名前と年齢、職業とこの街へ来た理由を教えてください」

「よ、ヨル=アルフィナと言います!歳は11歳です!仕事には就いていません!この街にはダンジョンに潜るために―――――冒険者になりに来ました!」

 

ボクがいった内容を記録するためか衛兵の手に握られていたペンの動きが止まった。

 

「冒険者、ですか?その歳で?」

「は、はい!その……ダメ、なんでしょうか?」

「いえ、冒険者に年齢の制限はないですが………」

 

若すぎる。その言葉を衛兵はぐっと飲み込んだ。

自分の仕事はここで指名手配犯などを見極めて街の中へ入れないこと。また、問題になりそうな人が来たらすぐ様報告することだ。

同情なんてしてたら心がいくつあっても足りないという先輩の言葉を思い出し、心を鬼にして仕事を続けた。

 

「中へ入って貰ってかまいません。ようこそ、迷宮都市セントラルへ。冒険者ギルドは真っ直ぐいったところにあります」

「……!はい、ありがとうございます!」

 

少年は衛兵にぺこりと頭を下げて街の中へ駆けだした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「冒険者登録……ですか?」

「はい!」

 

目の前のキラキラと目を輝かせる少年を見て、受付嬢のリンナは内心ため息をついた。どこからどう見ても未成年である。成人した15歳の人ですら若い方である冒険者という仕事は、入ってから1ヶ月以内に死亡してしまう人は3割近くにもなる。それだけ危険な仕事だ。

まあしかし「冒険者になりたい!」という人に「ダメです!」と突っぱねる権利などリンナは持ち合わせていない。冒険者に年齢制限がないとは言え、これだけ若そうに見える人の冒険者登録をしたのは受付嬢人生の中でも初だ。

 

「冒険者登録ですね。こちらの用紙にお名前と年齢をお書きください」

「はい、分かりました!」

 

すらすらと用紙に書き込んでいく少年を見ながら、用紙を確認する。

 

(ヨル=アルフィナ……、歳は……11歳!?)

 

15歳ではないにしても13歳くらいかなと予想してた歳を超えてきたことに驚愕した。11歳の子供が死の危険を伴うダンジョンに潜るなんて、とリンナは考えたがこの子にはこの子なりの事情があるのだろう。あまり深く踏み込むのは互いにとって良くないので気持ちを受付嬢モードに切り替える。

 

「では、次に魔力の測定を行います」

「魔力の測定………?」

「人の魔力量には個人差があり、さらに魔力量だけでなく魔力の性質も異なります。自分自身を知ることは冒険者にとって大切なことです」

「なる、ほど……」

 

なんとか理解しようとコクコクと頷きながら返事をする少年を見ながら魔道具(アーティファクト)である水晶を用意する。水晶には触れた人の大まかな魔力量をしることができ、別の魔道具を組み合わせることにより魔力の性質を知ることも出来る。この魔道具もオリジナルはダンジョンから得られたもので、その有用性から研究が進められ、今では複製するのに至っている。

 

「こちらの水晶に手をかざしてください」

「は、はい」

 

少年が言われた通りに手をかざす。これはー……。

 

(反応なし。測定不能。……まあ無理もないか。まだ11歳だもん)

 

魔力は年齢とともに活性化する傾向がある。命の危険がある場所みたいな特殊な環境で育った場合はその限りではないが11歳の少年―――――ヨルはまだ魔力が活性化していない状態なのだ。魔力は誰の体内にも宿っているものだがその使い方を分かっていない状態なのだ。

今の結果を用紙に記入する。

 

「はい、ありがとうございます。では、次に試験を受けてもらいます」

「試験……ですか?」

「はい。冒険者様の力がどのくらいなのかを計るために行います。試験の結果次第では最初から最低ランクであるEではなくDやCランク、あるいはもっと上のランクからスタートすることも可能です。今試験管を務めることができる人は――――――」

「俺が見よう」

 

手が空いている人を見繕っていた私の背中に声が掛けられ振り返ると身長が2m近くあるがたいのいい男が立っていた。

 

「………!ギルド長!?」

「おう。ちょうど手が空いていたからな。その小僧は俺が相手をする」

「で、ですが…………」

「なんだ?」

「い、いえ。なんでもありません」

 

もう引退しているとはいえ、かつては凄腕の冒険者をやっていたギルド長にすごまれては何も言えなくなってしまった。それじゃあ行くぞと声をかけて少年を片手でひょいとつかんでギルド長と少年は演習場へと消えていった。

だ、大丈夫かなあ……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「改めて、この冒険者ギルドのギルド長をしているギガンだ。よろしくな」

「よ、よろしくお願いします!」

 

演習場に着いたらギルド長のギガンが真剣な表情でヨルを見つめた。

 

「小僧。なんで冒険者になりたいんだ?」

「…………ボクは11歳だし、親もいません。そんなボクにもできそうな仕事は冒険者くらいかなとおもって……」

「そうか。そうだな。確かに、そうかもしれない」

 

親も親戚も頼れる人がおらずおまけに未成年なら就ける仕事は限られてくるだろう。

だがな、とギガンは続けた。

 

()()()

「…………!!」

 

かつて冒険者をしてきたからこその言葉だからかもしれないがその言葉がズシンとヨルの胸に響いた。

 

「ダンジョンで死ぬヤツなんて珍しくねえ。俺も昔はそれなりに名前をはせた冒険者だった。今では引退しているがな。仲間を何人も見送ってきたし、俺自身も無事とはいえねえ」

「無事じゃ、ない……?」

「ああ、そうだ。この左目は()()だ」

「………!」

 

これだけの迫力のある人でさえそのような傷を負ったという事実。

 

「小僧。聞き方を変えよう。お前………ダンジョンで死ぬのが怖くないのか?」

「ボクは………。ボクは…………――――――」

 

怖い。そんなの決まっている。

死ぬのは怖い。

死にたいわけじゃない。

 

でも――――――――――――――。

 

今までの人生を振り返る。

 

女手一つでボクを育ててくれた母。

ボクを養うためにたくさん仕事をして過労で倒れてそのまま無くなってしまった母。

そんな母の死を、無駄にしたくなくて。

例え難しくても厳しくても最後まであがきたくて。

それで、ここにきた。

 

「―――――――――ボクは。それでも、冒険者になります」

 

かつて母が言っていた言葉。

冒険者とは、自分の道を自分で切り開いていく者だと。

ギガンの目を真っ直ぐに見て、自分を伝える。

 

「自分の道は、自分で切り開きます」

「…………――――」

 

ヨルの決意が伝わったのか緊迫した雰囲気はなくなりフッとギガンは笑った。

 

「そこまでの決意があるのなら、死んでも化けて出てこないだろ」

「え!?今までのやりとりってボクが死んだときのためだったんですか!?」

「別にそれだけじゃないけどな」

 

それも一応あるんだ!?と内心ヨルが驚く。

さて、とギガンはヨルに手を差し出した。

差し出された手を見て、ヨルも握手に応じる。

 

「小僧。これでお前も冒険者だ」

「はい、ありがとうございます!――――って、あの、試験は?」

「あん?魔力が活性化してないやつがDもCもあるか。お前のランクはEだ。取りあれずはな」

「……………」

 

それは、そうだった。

 

「さっきの受付嬢のとこにいきな。そろそろ冒険者カードの発行も終わってるだろ」

「はい………」

 

トボトボと演習場を後にしようとするヨルにギガンは「忘れていたことがあった」と話した。

 

「小僧。冒険者にとって一番大切なことはなにかわかるか?」

「一番、ですか………。強さ、とか?」

「まあ強さは大切だが、違う。冒険者にとって一番大切なのは生きて帰ることだ」

「生きて、帰る」

「そうだ。どれだけ強くとも死んだら意味がねえ。たとえ今は力が足りなくても生きて帰れれば強くなって出直すことができる。死んだら負けで、生きて帰るのが勝ちだ。たとえ負けたとしても死んでなければ本当の意味で負けじゃねえ。そのことを、忘れるなよ」

 

そういってギガンは「ま、健闘を祈るぜ」と演習場を出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから受付嬢のリンナの元へいき、冒険者カードを受け取った。

リンナがいうには魔力を通せば個人情報(魔力の性質など)を見られるようになるのが冒険者カードなのだが、魔力が活性化してないヨルの冒険者カードは仮発行とのことなので、魔力が活性化したら再び作りに来て欲しいとのことだった。

 

冒険者カードを受け取ったあと、リンナさんから簡単に冒険者についてとダンジョンについての講習を受けた後、早速ダンジョンへと向かった。

リンナさんの指導は厳しくも優しく右も左も分からないボクでも理解できるように話してくれた。これからも冒険者を続けるのなら担当になるということも言っていた。

お金に関しては母が残してくれた遺産があるけど、あまり手を付けたくないし、何より自分で稼げるようにならなければ遠からず破滅するだろう。

そうならないためにも今はがむしゃらに頑張らなくては。

気合いを入れ直して教えて貰った道を進んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここが、ダンジョン……………」

 

リンナさんの話によるとダンジョンとは魔力が集まる場所に発生する傾向が高いらしく、ダンジョンには魔力を集める魔物や魔道具が核となっていて核を取り除けばダンジョンも消えるのだとか。核となるものがどのくらいに魔力を集めているかでダンジョンの難易度が変わるらしい。

そしてEランクのボクが向かっているのは当然難易度が最低レベルのダンジョンである。迷宮都市セントラルという名前はそんなたくさんのダンジョンの中心部にあり、たくさんの冒険者が訪れることからその名が付いた。

ボクが向かっているダンジョンはセントラルから徒歩30分程度で着いた。

 

地下へと入る入り口があり、外からじゃ暗くてよく見えない。

ここでジッとしてても始まらないので、支給品として渡されたナイフを手に取り、慎重に階段を降りていった。

 

地下なので暗いと思っていたが中に入ってみたらそれほど暗くは感じない。

階段を下っていった先には先へと進む通路が―――――。

 

「グギャ?」

「……ッ!」

 

通路には緑色の肌をした小さい生き物―――――ゴブリンがいた。

ゴブリンはすでにこちらに気づいているようで戦闘態勢を取っている。

負けじとこちらも戦闘態勢をとる。

 

緊張でナイフを持つ手や足が震えてくる。

ふうと空気を吸って肺に取り込み緊張をほぐす。

戦うしかないのだ。冒険者になると決めたのだから。

 

ゴブリンが動くより先にこちらから動く。

地面を蹴ってゴブリンとの距離を詰める。それに驚いたゴブリンが棍棒を振り下ろして攻撃してくるが単調な攻撃なので読みやすく右に避けて回避する。回避してできた相手の隙を突くようにナイフを振るった。

 

「ッ!」

 

浅い!いや、今のはボクが躊躇ったんだ!

生き物を殺すことを。

何をやってるんだと自分で自分を責める。

ゴブリン1匹倒せないようじゃこの先どんな敵とだって戦えはしない。

 

「もう一度だ……」

 

地面を蹴りゴブリンとの距離を詰め、ゴブリンがしてくる振り下ろし攻撃を今度は左に回避―――――

 

「―――!?」

 

振り下ろしてない!

こいつ動きを学習してる!

 

振り下ろし攻撃のフェイントに引っかかったボクは次のゴブリンの攻撃を避けることが出来ず、壁にたたきつけられる。

 

「ぐはッ!!」

 

壁にたたき付けられた衝撃で肺から酸素が抜ける。

痛い。

痛いけど―――――。

 

「ッ!?」

 

追撃をしてきたゴブリンの攻撃を咄嗟に転がって回避する。

なんとか立ち上がって再び戦闘態勢をとる。

 

身体が、痛い。

熱い。熱い。熱い。

 

「それでも、冒険者になったんだろ。お前は」

 

自分自身に言い聞かせる。

今度はゴブリンから仕掛けてきた。棍棒を横に殴りつけるようにふるって来たのでナイフでなんとか受け止める。

 

「ぐぎゃあ!!」

「ぐっ………うおお!」

「ぐぎゃっ!?」

 

そのまま力比べをするのではなくゴブリンの腹を蹴飛ばす。

倒れ込んだゴブリンにそのままナイフを力の限り押し込むとゴブリンは核となる魔石を残して消えた。

 

「はあ……はあ………はあ……」

 

汗が止まらない。

熱い。

身体が風邪を引いたときのように熱を感じる。

ゴブリンから落ちた魔石を回収してポケットにいれる。

 

「ぎゃぐわ!!」

「ぐぎゃあ!」

「ッ!?」

 

そうしていると通路の奥から2体のゴブリンが現れた。

身体が熱く、だるさを感じる。

ギルド長の言葉を思い出す。

生きていたヤツが勝ちだ。

情けないが今日はここまでにしておこう。

ゴブリン1匹だけとはいえ、倒せたのだから前進だろう。

 

 

 

 

 

 

 

ダンジョンからの帰り道をふらふらと歩いて帰る。

身体が痛いし、熱いし、意識がもうろうとしてきた気がするけど自分の足で帰らなければ助けてくれる人はいないのだ。

 

「はあ、はあ…………」

 

衛兵の人に冒険者カードを見せ、街の中へ入る。

あと、ちょっと。

もうちょっとで、ギルドに着く。

 

よたよたとした歩きだったがなんとか冒険者ギルドについたようだ。

 

「あ、ヨルくん。おかえりー―――」

「…………―――――」

「ヨルくん!?」

 

 

受付嬢の姿が見えた安心からなのか意識は暗闇に落ちていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うーん…………」

 

目が覚めた。身体に痛みや熱さはない。

ここはどこだろうか?

そんなことを考えているとガチャリとドアが開いた。

 

「あ、起きてる。良かった。ヨルくん急に倒れるんだも、の………」

「どうしたんですか、アリナさん?」

「えっと…………ヨルくん、だよね?」

「………?………そうですけど?」

 

質問の意味が分からず首を傾げる。

そんなボクの態度を見てアリナさんは手鏡をこちらに見せてきた。

 

「………………………え」

 

何が起きているのか分からず思考がフリーズした。

手鏡に映っていた顔は自分の者ではなかった。

自分の顔の面影はあるが自分の顔より女の子っぽいーーーー。

 

「…………………ッ!?」

 

そこまで考えて自分の身体をまさぐったが。

()()

男ならついているはずの。昨日まではついていたものが、ない。

 

 

 

 

 

「えーーーーーーーー!?女の子になってるーーーーーーーー!?」

 

 

 

 

ヨル(女)の絶叫が冒険者ギルド内に響き渡った。

 

 

 

 

 




【名前】    ヨル=アルフィナ
【年齢】    11歳
【性別】    男(?)
【冒険者ランク】E
【魔力性質】  反転
【魔法】    性別反転



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