聖☆お兄さん×HELLSING 戦争?ねぇよ、そんなもん!!   作:心太マグナム

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第1話

美しい月の夜、そこでは2匹の吸血鬼が対峙していた。

 

牧師のような格好をしている吸血鬼は目の前でニタニタと笑う紅いコートを羽織った吸血鬼が自分より遥かに格上の存在と認識すると、一人の女性を人質に取り、銃を構える吸血鬼に交渉を持ちかけていた。

 

「動くな殺し屋!!そこまでだッ!たった一人の生存者だぜ、生かしておきたくないのか!!大した事じゃない。俺の脱出に手を貸せ!!目をつぶるだけでもいい!!」

 

牧師のような格好をした吸血鬼は必死な顔で目の前の吸血鬼に命乞いをする。紅いコートを羽織った吸血鬼は命乞いをする吸血鬼を下らなそうな瞳で見ると、女性に一つ質問をする。

 

「お嬢ちゃん、処女か?」

 

いきなり放たれた突拍子のない質問に女性は頬を赤く染めて、牧師のような吸血鬼は何を言ってやがると訳のわからない顔をする。紅いコートを羽織った吸血鬼は頬を赤く染める女性に再度質問をする。

 

「処女かと聞いている!!答えろ!!」

 

「野郎!!ふざけるんじゃないッ」

 

「答えろ!!」

 

質問の答えが早く欲しいと言わんばかりに男は声を大きくし、女性に答えを出させる。その時女性の中で何かが切れて意を決して大きな声で叫ぶ。

 

「はッ…はッ…はいッ!!」

 

答えを聞いた男はニヤリと笑うと構えている大口径の銃の引き金を引く。放たれた弾丸は女性の肺を貫き、牧師のような格好をした吸血鬼の胸部分を貫通する。明らかに致命傷を与えたにも関わらず、引き金を引いた男は舌打ちをする。

 

「チッ……咄嗟に移動して致命傷を避けたか。どうやらコイツは案外やるらしい」

 

男は再び引き金を引こうと指に力を入れるが何かに気付いて動きを止めるをこの場面を見ているのが当事者の三人では無いと気付いたからだ。男は目だけを移動して何者かがいる方向を見る。そこには頭に茨の冠を被った長髪の男と謎のパンチパーマのような髪型をしている2人の男性がいた。2人の男性は白いシャツとジーパンというラフな格好をしており、シャツにはジーザス、南無三と書かれていた。2人の男性の内謎のパンチパーマのような髪型をした男性が顎に手を当てながら真剣そうに三人を見つめていた。

 

「うーん、最近の映画はあそこまでやるのかぁ。スタントマンの方も大変だろうなぁ。私がやってきた苦行並に辛いものだよアレは。イエス、やっぱ海外の映画ってすごいねぇ……って」

 

パンチパーマの男は隣にいるイエスという名の男性を見ると、イエスの頭からヤバイものが垂れているのに気づく。

 

「ちょっ!?イエス!聖痕開いちゃってるよ!そうだった!キミはああいうグロいの苦手だったのを忘れてた!」

 

「…………」

 

イエスは目の前の光景が苦手なのか、両肩に手を当てて、アカン見なけりゃよかったと言いたげにブルブルと震えていた。パンチパーマの男はイエスを必死に励まそうと肩を揺らして正気に戻そうとしていた。その光景を見て、紅いコートを羽織った吸血鬼は怯えている男を何処かで見たことある様な気がしたが、勘違いと思い舌打ちをする。

 

「チッ……観光客か……」

 

「クソッ!コイツはもう使い物にならん!ならアイツらだ!」

 

崩れ落ちる女性を見て牧師のような格好をした吸血鬼は彼女に人質の価値が無くなったと理解し、すぐに新しい人質を見つけて2人の男性の元へと駆け出す。

 

「な、なら!!コイツらならどうだ殺し屋ァァ!!」

 

「うわっ!!何かこっちに来たよイエス!ひょっとしてこの映画のエキストラって自由参加制なの!?そんな映画聞いたこと無いよ!」

 

牧師のような格好をした吸血鬼は2人の男性を人質に取ろうと2人を掴もうとする。しかし、それは愚かな事だった。この二方はただの人では無いのだ。

 

一人は目覚めた人と呼ばれたブッダ。

 

そしてもう一人は神の子イエス・キリストなのだ。

 

この2人は世界、神から祝福された存在であり、存在自体が法儀礼済みの武器を遥かに凌ぐ程の存在なのだ。

つまり何が言いたいのかと言うと……

 

低級の吸血鬼如きではこの二方に触ることすらできない。

 

イエスとブッダを掴もうとした吸血鬼は掴もうとした手から灰になっていく。灰になる勢いは止まる事をしらず、牧師のような格好をした吸血鬼の顔に驚愕が走る。その光景を見た紅いコートを羽織った吸血鬼もサングラス越しに目を見開いて驚愕する。

 

「な、なんだこれは!?俺の身体が灰になっていく!?」

 

「…何が起きている?」

 

「え!?なにこれ凄い!これが最近のCGなの!?ホントに人が灰になってるみたい!」

 

だからホントに灰になってるんですよブッダ様。

 

やがて牧師のような格好をした吸血鬼は身体の全てが灰になり消えていった。紅いコートを羽織った男はツカツカとイエスとブッダに近づくと興味深そうに2人を見つめる。

 

「 貴様ら一体何者だ?吸血鬼が触れただけで灰になるなんて聞いた事が無い。そんな事できるのは神くらいだ」

 

「え?なんでわかったの?」

 

「は?」

 

自分の正体を見破られたと思ったブッダは驚いた顔をするが紅いコートを羽織った吸血鬼は訳がわからないと言いたげに首を傾げる。そして聖痕が開いて正気じゃなかったイエスが正気になり、目の前の紅いコートを羽織った男を見て目を見開いて驚く。

 

「き、君はもしかして……ヴラドくん?」

 

「……何故私の昔の名を知っている。……まさか、その茨の冠、そのお顔……」

 

自分がまだ領地を持っていたころの名を知っているイエスを訝しげに見ると、紅いコートを羽織った吸血鬼アーカードはイエスの正体に気づいて片膝立ちになり、祈りを捧げるような格好をする。

 

「イエス……イエス・キリストなのですか!?」

 

「そう…そうだよ。初めましてだね、ヴラドくん。私が天界に行ってから救えなかった人……」

 

預言者と哀れな子羊のなれの果て。2人はこうして出会った。

 

祈りを捧げるような格好をしたアーカードをイエスは悲しそうに見るのだった。

 




眠い。


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