花に嵐の喩えもあるが、そんなことより青春だ 作:ぱる@鏡崎琴春夜
トリニティ総合学園の学区内にあるスイーツショップ。その店内飲食スペースで、三人の少女がお喋りをしている。
「で、呼び出しといて、ナツはいつになったら来るのよ」
ぱくりとマカロンを頬張った金髪の少女、伊原木ヨシミは、未だ現れないメンバーに不満を述べる。
「まぁまぁ、なんか意味ありげに呼び出しといて遅れてくるのはいつものことじゃん」
キャラメルラテのほろ苦さを楽しむネコミミの少女、杏山カズサはちょっと変わった友人の行動を振り返って、いつものことの続きを夢想する。
「でも、新たなるロマンの可能性を見つけたり、ってどういう意味なんだろう?」
スイーツ部のモモトークに送られたメッセージを読み上げた茶髪の少女、栗村アイリは首を傾げて言った。
「どーせ、新しいお店ができたってだけで───」
「違うよ、私はこの部活に新しい風を届けた」
ヨシミの言葉を遮り、待ち人であった柚鳥ナツはどっしりとした重さの言葉を口にした。
「新しい風?」
「そう───って、まだ来てないの?」
カズサの言葉に頷こうとしたナツだったが、テーブルを見渡し、彼女の想定とは違う様子であることに困惑の言葉を述べた。
「まだ来てない?」
「アンタ、誰か連れて来たってこと?」
ナツの思惑にやっと気づき始めた瞬間、遠くのテーブルで怒鳴り声が聞こえた。
「だぁかぁら! 言ってんだろぉ!? 人を待ってるんだってよぉ!」
「しかし、コーヒー一杯で二時間は……」
客たちの視線はそちらへ向く。そこには、店員に掴みかからんとする黒色の制服に身を包んだ少女の姿があった。その瞳は帽子と髪の毛が隠してうかがい知れない。読者皆々様に置かれましては、その特徴からトリニティであれば、正義実現委員会では無いかと勘繰られる方もいるだろう。だが、彼女はその対極に位置する少女だった。
黒の制服だが、セーラーではない。どちらかというとブレザー寄りの制服。いや、もっと正確に言うならば背広と形容する方が正しく思える。前のボタンを留めることなく開いたままにし、その下にはワインレッドのシャツ、首には白いアスコットタイ。飾り気のない革ベルトに黒のズボン。さて、どう考えても正義実現委員会ではないだろう。
彼女の短いショートボブの髪の毛が揺れる。片側だけ長めになった髪の毛は彼女のチョコレートのような瞳の色を隠していた。
「嫌ねぇ、ああいうの」
「そぉね」
ズズズと各々の飲み物を啜るヨシミとカズサ。だが次の瞬間に、その飲み物を噴き出して、お互いの顔に掛け合った。それはナツの一言が原因だった。
「なぁんだ来てるじゃ~ん」
それは確実に今店員と言い争っている生徒に向かって言った言葉だった。
「ん? おい、ナツ! お前からも何とか言ってくれ!」
「頼みなよ」
はぁ、とため息を吐きながらナツは彼女の元へ歩み寄っていった。
「紹介するよ、
テーブルにはシンプルなドーナツが並ぶ。トッピングなどは無いプレーン。オールドファッションと呼ばれる商品が六個セットになったものだった。
「よろふぃく」
その一個を頬張りながらモナカと呼ばれた少女は軽い調子で挨拶をした。だが、その挨拶一言だけで、それ以降彼女はただ頬張るだけのマシーンとなる。
「……それだけ!?」
「───随分と変わった風だね」
これが始まり、スイーツ部にやってくるトルネード。ロマンを愛するリボルバー少女は、今日もお菓子とロマンを求めて……
「ロマンに欠けるな」って言わせたいだけです。
それ以上でもそれ以下でもありません。
そして、私には『おりこう酸』が足りております!!!!!