1000年間浄化の光に当てられてたら悪性とか無くすよね 作:K+#ガソ林
俺ね、魔王だったらしいの。
ほんでね、魔王らしく世界を闇で包み込んだのよね。
日光浴できないからね、植物や動物はどんどん死んでった。ほんで俺はそいつらの無念のエネルギーを吸い取ってな、もっと闇を広げてったわけ。
当時は多分ね、力とかに酔ってたのかもしれない。ここで動物達は皆徒党を組んでな、俺に襲いかかってきた。俺は負けた。んで、俺は世界一神聖とか言われてる『神の球』の近くに聖なる鎖で封じられた訳よ。
球から出てる光はほんともう鬱陶しかったんだけどな、聖なる鎖の力で抜け出すこともできなかった。光に当てられると、徐々に俺の心の中から闇が抜けてった。闇ってのは、感情…いわば、欲、自己そのもの…。その闇が抜けちまったせいで今は記憶が曖昧気味でよ。昔覚えてた魔法とか軒並み忘れちまった。
ほんでな、今も光に当てられてぼーっとしてんのよね。身体はピンピンしてる。何故かって、光は生命の鼓動、満足の気持ちだから。俺は満ち足りているし、安息なのよね。
ん?今日は誰か来るな。俺に客人とは、一体誰だろう。俺が封印されてからは、1人として動物に会ったことはないんでな。心当たりもないわ。
───
1000年前、大陸を無双し占領し、栄華を誇ったバルサラック大陸軍は、たった1人の有角の民によって壊滅させられた。我々の祖先がそれを知ったのは、かの魔王が宣戦布告してからだ。
『我が名は、アベル。アベルである。魔王である。バルサラックは壊滅した。繰り返す。バルサラックの国を名乗るものどもは皆、殺した。通告する。我が軍門に降れ。我が血の一滴として民となれ。使者が迎えにゆく。我が民よ、また、相見えよう。』
魔王は死者の肉体を兵器とし、魔物として解き放った。生者を喰らう軍勢に対し、ありとあらゆる国が同盟を組み───あらゆる魔を断つエンチャント、【聖剣術式】を完成させ、これを運用し、そして勝利を収めたのであった。
「さて、ここが封印地か。…強大なる光、『神の球』。どう思う?本当に、【あいつら】に対抗できるのか?」
「何分、千年前の伝承ですからねぇ。ここの光が健在であったと言う話は。魔王封印と引き換えに機能を失ったとあります。本当だったら無駄足ですよ?」
「いえ、無駄足ということはありません。1000年前を生きた私が保証します。あれの力は大きすぎる。だから、隠蔽していたのです。…ただ…魔王の状態が心配ですね。おそらくは心神喪失にあると思うのですが…。」
「あまりビビらせないでくださります?ここで立ち止まっても何にもなりません。いきましょう。」
剣士、魔術師、弓使い、大盾の騎士の4人組…長い旅を抜けてきたのか、マントはボロボロで、装備の至る所には傷が入っている。
「そうだな。…どりゃあっ!!」
剣士の見事なタックルにて、封印の扉が破壊された。眩い光が、4人組を照らし───その心身を満たす。
「な、なんだこれ。回復魔法…?」
「悠長にしている暇はありませんよ。一時的には回復になりますが、この光を長く浴びると精神的な死を迎えます。」
「ドラコの言う通りです。シル。背負ってきたそれを使って、球を閉じ込めてください。」
大楯の騎士は、背負いものを降ろす。三つの輪だ。一つは吸光、一つは放出、一つは転送を司る、『神の球』封印装置。
「よぉーし。はっ。よっ、ほっ。終わりましたよ。」
輪っかを取り付けると、神の球はその光を失う。封印は完了した。あとはこれを持ち帰るだけだ。と、いうところで、一行はその視界の隅に、有角の青年を見つけた。
「…帰りましょう。」
「魔王だろ、あいつ。なんかないのか?ここから神の球も持ち去る訳だろ。」
「おそらくはもう、廃人でしょう。球からの光が無い以上、彼は生命を維持できません。また、闇の力の大半を失っている。聖なる鎖を破壊することも、あの様子ではできなさそうです。放っておけば、彼は死にます。」
「率直にいうぞ。哀れだ。俺が取り上げる。」
「いけません!」
「おやおや、勇者王殿。珍しいではありませんか。何があなたの興味を引いたのです?」
「1000年前の生き字引だ。何か知ってる可能性がある。【魔星】との戦いにも役立つかもしれない。あとは、こいつを餌に有角の奴らを味方につけられるかもしれない。」
「っですが、あやつは死者を弄び、あらゆる無辜の民の安寧を脅かし、あまつさえ生み出した魔獣に食らわせた!無念だった民の、民が…!」
「オト。お前の気持ちはわからない。理解しない。俺は俺の思いに従う。シル、出発の準備はできたか?」
「はーい。いつでもいけますーっ。」
「ドラコ。そいつの鎖を外して運べ。できるだろ。」
「わかりました。
魔王に術式が施される。白い肉体に赤の脈動が走る。術により気を狂わせ、身体のリミッターを解除させた。
「
魔王は自我を失い、必死の力で手枷を引きちぎった。光の力が体に満ちていたからだろう。肉体の強度は並の人間を超えている。
「
魔王は手枷を振り払って、一行についていくことにした。