1000年間浄化の光に当てられてたら悪性とか無くすよね   作:K+#ガソ林

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第二話

 魔星にて、悪魔連合は───壊滅していた。

「…。」

 悪魔達の屍の上で、集った闇を玉とする。王の名は、リープス。

「馬鹿な奴らだ。」

 玉を飲み込むリープス。羽はより雄々しく、肉体は膨張し、さらなる成長を行う。

「背中を刺そうとするな。背後を見ることなんて、できないだろう。」

 この魔星で何が起ころうとしているか───その真相は、何人にも知られない。

 

───

 

 他星侵略軍、7将の大悪魔達───闇を独自の形態に進化させた、生命を超えた存在だ。

 

 統括将軍、アクモス

 遊撃将、ジアビス

 練兵将、マルク

 3将が一つの戦場に集まるなど、前代未聞。というのも、光の力だ。

 人間達が装備する光手榴弾、神の球を兵器化したもの───あれに照らされた闇的防御は全て溶解されてしまう。

 そのため、闇を司り、大規模な防御復旧が可能な将軍が集められたのだ。

 

「どうする。アクモス。」

 

「決まっている。我らが故郷を、簒奪者から取り戻す。」

 

「その方法を聞いているんですよ。脳みそついてます?」

 

「…方面軍を分ける。前線基地は捨て、侵略に入る。」

 

「いいのか?闇は貴重だぞ。」

 

「攻撃的な闇、防御的な闇…捕らえた奴らから搾り取れるだけ搾り取った。穴から死霊軍を出せ。目眩しに進軍させろ。それを合図とし、全体に号令をかける。」

 

「わかりました。伝令、各部隊長に連絡をお願いします。」

 

「はっ!」

 

───

 

 村だった場所。

 そこは子らの遊び場だった、旅人が訪れる観光地だった。竜の亡骸が埋まる洞窟───老若男女様々なガイコツが、槍を手に、地上へ向け歩き出した。

 空洞の眼。

 肉がついているものも、いくつか。

 

───

 

「快進撃だな。オト。」

 

「ええ。神の球の力、しっかり役に立つようで安心しました。しかし、光の力を受けて苦しむとは、まるで魔王のようですね。悪魔は。」

 

「組成が似ているんでしょう。魔王も、闇を散々使い込んだ結果、体のいくつかを闇の力で補強・代替していたと聞きます。彼らの肉体もそのような力でできているのでは?」

 

「今調べようがないことをペラペラ喋らないでください。光が悪魔に効く、それでいいじゃないですか。」

 

「シル。お前、言い方に気をつけろ。毎度のこと一言多い。」

 

「すみません。性分ですから。」

 

「付け足すな。…ここか?お前ら、戦闘準備。」

 

「了解…いつでも行けますよ。」

 

「それでは、作戦通りに。」

 

「皆さんの事、信頼してますからね?…絶対なぞ、世にありませんが。」

 

 勇者王率いる一行は、悪魔軍の基地らしき場所に潜入していた。試みるのは暗殺だ。光の手榴弾は強力で、その対処に悪魔7将が出張ったのは、行幸であった。光の手榴弾の完全な対処法が用意される前に、将の1人か2人くらいはやってしまいたい。

 ドアの前に立つ一行。巡回兵は皆殺しにした。おそらく、この扉の奥には…。

 

「入るぞ!」

 

 ドアをタックルでぶち破る勇者王、悪魔3将と対面する。

 

「警備はどうした?」

 

「全員殺した。」

 

「…ジアビス、マルク、逃げるぞ。」

 

「躊躇いが見えるな。遅いんだよ、オト!」

 

「はい。スカルパー(空魔術)!」

 

 オトは弓使いだ。天候、気流を操って、マーキングした対象には必中の矢をお届けできる。どこにいようが関係ない。

 

「それがどうした───な!?」

 

 天空から降り注ぐ矢の雨に気づいた時には、すでに遅い。大気圏で周遊させていた1億を超える矢の雨が、魚群のように砦を啄む。

 魔法を使って構築した、防御性に欠けてはピカイチで、緊急時のシェルターになるはずの砦だったが、サンドブラストに晒された果物のように消え去っていった。

 

「流石だな。褒めてやる。」

 

「矢の打ち上げは連合がやったこと、皆の力あっての作戦です。」

 

「エグい。あれじゃ肉片一個も残りませんよ。」

 

「油断しないでください。悪魔は肉体に依る生物ではありません。」

 

 シルの注意喚起に合わせ、闇があたりから噴き出す。アクモス、ジアビス、マルク───三体の悪魔が、個体という垣根を超えて合わさった、

 

 三個の特殊な闇、その合成体だ。特異かつ、溶けにくい闇であるため、大気中にあっても霧散せず、依代を得ず、周りの闇を引きつけて肉体とすることができる。

 

「恐れ入った。」

 

「光栄だ。悪魔。名は?」

 

「アスモデウス。我が名である。クク。」

 

 自己紹介の時間は、攻撃に代わっている。侵食の闇───一行の身体が地に縫い付けられる。物質化の闇が、天空から闇のつららを落とし、動力の闇が大気を高熱化させ、自然発火を引き起こした。

 

「馬鹿野郎!死ぬでしょうがっ!!」

 

 シルが手榴弾を投げなければ、最悪の未来になっていただろう。闇は打ち払われ、あらゆる影響は満たされる。つまり、相殺された。

 

「よくやったシル。ドラコ!」

 

セクタル(強制術印)!っ、逆流!?」

 

「軽々しく我が肉体に触れるなよ?それ!」

 

 悪魔アスモデウスに赤い脈動が走る。アスモデウスは魔力通路から逆流し、ドラコの体を乗っ取ろうと闇を放出した。

 

「くっ…エフェクト(実行)!」

 

 最後に一言。それきり、アスモデウスに乗っ取られたドラコは、闇の媒介となる。闇を常に放出し、攻撃的な魔法を振り撒いて妨害を始めた。アスモデウスとの連携で、闇が陣地を侵食する。あたりに散らした光の手榴弾がいくつか時限発動して闇による侵食を防ぐが、スピードが尋常でない、

 

「愚かな!それで全てか?罠だろう?」

 

「よくもそう用心深くなれるな。感心するよ。肉体がないなら、寿命もないだろう?」

 

「勇者王、来ます!」

 

「勇者王様!」

 

 アレックスとアスモデウスが対峙する。アレックスの全身から青い光が迸った。あらゆる魔を断つ聖剣術式だ。この青光がある限り、アレックスが闇の力を受けることはない。

 だが、オトとシルは対象外だ。手榴弾を前方に向けて放っていたのが災いして、背後から闇の急襲を受け侵食された。ドラコのように闇の媒介となる。

 ───が、ここで事態が急変した。アスモデウスの身体が、定型を保てない。引っ張られるようにして崩される。

 

「あの魔術師か!」

 

 闇がドラコの体に吸い込まれる───ドラコの意識は闇と同化した。意識と同化した闇がアスモデウスに吸収されたことで、アスモデウスの身体の中で、闇の"流れ"を操ることができるようになった。

 ドラコ↔︎アスモデウスのように双方向に流れている血流。ドラコに吸い込まれるアスモデウス。ここで肝心なのは、アスモデウスは身体を持たない。闇は意識に滞留し、意識は物理的な機関に依存する。脳みそがないアスモデウスの闇は、滞留するアンカーを持たない。

 

「ドラコ、良くやった。聖剣解放───あらゆる魔を断つ。」

 

 つまりは、アスモデウスは抵抗できず、ドラコの中に収納されるのだ。アレックスの剣はドラコを切り裂いた。

 

「だからどうした!闇を切り裂いたところでぇっ!!」

 

 聖剣術式がある限り、アレックスは───アレックスの周囲1mは闇の力を受けない。しかしそれで防げるのは、侵食に限定した話だ。物質化、動力は使いようによっては効く。物質化した闇を高温で熱し、溶岩噴射として発射する。かなり身を切ることになる、が、これにてゲームエンドだ。

 

「剣よ。封じろ。」

 

 アレックスの剣、封印剣ノヴァ。その核には自動的に駆動する魔法機が仕込まれている。闇に反応し、切った闇を吸い込むことができるのだ。闇を吸い込めば吸い込むほど、光を発するので、聖剣とも呼ばれた。

 封印剣ノヴァが、溶岩と化した闇を封じる。闇を封じた際に発される光によって、熱の威力を無効化した。

 

「行くぞ。」

 

 反応が遅れたアスモデウスを、封印剣が切り裂いた。闇を封じ、光を発する。アスモデウスの肉体は剣によって引き裂かれ、光によって滅された。

 

「馬鹿な…ありえない…!」

 

 この一瞬で大ダメージを受けたらしいアスモデウス。逃げることにする。しかし、逃げることは叶わない。闇は外部にある何かを侵食することで、実質的に動くことができる。

 

「聖剣結界、張っておきますねー!」

 

「シル、良くやった!」

 

 大楯使いが投げた輪っか───魔を遮断する魔道具により、アスモデウスの撤退は阻止された。しかし、輪っかは魔道具だ。ちょうど動力の闇も活性化した。動力の闇を消費して生み出された熱により輪っかが溶かされ、破壊される。アレックスは戦慄した。闇は封印剣に吸い込まれつつある。が、自爆覚悟なら、温度変化でアレックス達を焼き殺せるはずだ。共倒れだが…。

 

「…っ覚えていろよ、人ども。」

 

 アスモデウスは吸いこまれている部分を自切、空へと飛び立った。ドラコの身体は力を失い、倒れた。

 

「…逃げられた。が、良かったかもしれない。」

 

「危ないところでした。まさか、あそこまで理不尽な能力を持っていたとは。」

 

「肉体を滅ぼして、依代がなくなったところをドラコが吸収。そのまま聖剣結界で逃げ場を封じて、封印剣で吸い尽くす算段…私も完璧だと思いましたが、見直しが必要なようですね。」

 

 地に伏せるドラコの亡骸を見つめる一行。

 

「おい、起きろドラコ。ふざけてるんじゃない。」

 

「はい、ただいま。」

 

 ドラコはすくっと立ち上がる。

 

「いつ見ても、人間離れしてますねー。」

 

「悪魔達を真似しているだけですよ。死んでも闇と意識があれば、魔法で生命に必要な臓器を新生できる。」

 

「その理屈なら、アスモデウスは抵抗できたんじゃないか?」

 

「私がアスモデウスの闇と同化して、経絡の方向を引っ張っていたので、難しいと思いますよ。一度作られた流れは、無体であればですが、修正できません。」

 

「流石だな、ドラコ。」

 

 余韻もわずか。シルが一番に歩き出した。

 

「それより、お家に帰りましょう。しょんべん漏らしました。気持ちが悪いです。」

 

「シルも付き合ってくれて助かってる。それでは、帰るか。」

 

 一行はドラコの魔法で作った砂流に乗って自陣まで戻ることにした。

 

「あ、亡者の大群が陣地に攻め入ってますよー。」

 

「働きたいか?シル。」

 

「いえ、全然。」

 

「…まぁ、亡者ならなんとかなるでしょう。しかし、いくつか悪魔も入り込んでいるようです。」

 

「悪魔の将を実質潰したんです。我々は十分に働きました。残りは他の方々に任せましょう。」

 

 

───

 

 

「これが、弘法筆を選ばず。です。」

 

「なるほど。これが、弘法筆を選ばず。」

 

「はい!」

 

 俺って魔王だったらしいけど、蚊帳の外っぽいンだわ。

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