1000年間浄化の光に当てられてたら悪性とか無くすよね   作:K+#ガソ林

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第三話

 俺って魔王だったらしいのよね。

 今はね、言語を大体覚えたので、召使としての振る舞いを教えてもらってる。礼儀作法とかだるい。

 午前中の稽古も終わったんで、ご飯作りを学びながらエルゼラちゃんとゆっくりしてたんだけどね、角を頭に持ってる民族に攫われかけた。

 攫われかけたってのはね、兵士の方々が駆けつけてくれたからなんとかなったって感じ。10人くらいは捕えたけど、リーダーっぽいのは逃げたね。

 なんかね、憎々しい目をしてたね。でも、分かるよ。俺を攫って、そのまま処刑したかったんだろうなって。そうすれば、社会的な差別も消える。

 有角民族は、魔王を生み出した民族。差別は受けるだろうな。そりゃ。

 

 

───

 

 ドアが蹴破られ、首に手を回された。襲撃だ。とてつもなく、速い。

 

「魔王だな。魔王アベル。お前が。」

 

「私がその魔王アベルですが。いったいどうして───。」

 

「対象を確保した!引き上げるぞ!」

 

 魔王アベルは抵抗しない。

 

「お逃げになってください!アベル様!」

 

(エルゼラ…!)

 

 目の前でエルゼラも捕まっている。狙いがアベルである以上、抵抗したら人質に取られるだろう。縛られ、抱えられ、運ばれていくアベル。

 

「アベル様!」

 

 すでに声は遠く。が、ここは王都。するりと撤退はできない。

 

「黒角傭兵団だな!リーダーのゲン!ここでその命貰い受ける!!!」

 

 防衛隊長、雷剣のボルク。電気信号で強化された肉体を用いて、迅速に標的を片付ける───この王都における最優騎士だ。騒ぎを聞きつけて、ここに参上した。

 

(陽動にひっかかるとは、思っていなかったが…しかし!!)

 

「ボルク!私に近づくな!無辜の民の家、爆破するぞ!」

 

「死ね!」

 

 ボルクはゲンの言葉に左右されなかった。実際に他のメンバー達の手によって爆発が起きる。民達が死ぬ。ゲンは牽制の言葉をかけつつ、一心不乱に逃げ出した。脱出を援助するために木陰に隠れていたメンバーが、次々とボルクに切り伏せられていく。

 

「まだだ!次は王都全体を爆発させる!私を追うな!」

 

「お前が殺した!だから、お前を殺す!!」

 

「違う!お前が殺したようなものだボルク!民の命を犠牲にするのか!」

 

「犠牲にしたのはお前だ!!!」

 

 大きな爆発音が響き渡る。その時、ボルクがゲンに追いつき、その首を落とした。

 

「手応えあり。!?」

 

 ゲンの肉体が弾ける。ボルクは飛んできた肉片を悉く切り伏せた。ゲンの肉体から現れたのは、闇の龍───。ゲンは、以前死亡しかけたドラコのように、闇の精神体となることで生きながらえた。

 

「これは賭けだ。ボルクよ、あの新兵器は持っているか?」

 

 手榴弾は今、手元にない。

 

「恨めしいことだ。お前を滅ぼせんことが。」

 

 闇を切り伏せることは難しい。魔法は物理現象であり、闇に対して通りが鈍い。散らすことはできるが、その程度だ。あの光手榴弾でもなければ、滅することは難しい。

 

「日中ではいずれ、闇は消える定め。引き上げるとしよう。ボルク、そして───アベル。」

 

───

 

 王都は壊滅的な被害を受けた。

 魔王アベルを処刑しろと、黒角傭兵団から声明が出た。でなければ、再び襲撃すると。そのために、王都は混乱の最中である。

 

「…勇者王様にも困ったものだ。扱いに困る。アベル、貴様を処刑すれば、無辜の民の命は消えないらしい。」

 

「ボルク様。私の命であればいくらでも。この抜け殻に使命はありません。」

 

「勇者王様に言い訳が立たんのだ。…いや、このようにするか。アベル。お前は我が国の兵士として、王都の外に出ろ。そして、この王都を囲う4魔を討ち果たすのだ。」

 

「4魔とは?」

 

「悪魔共が落とした、4体の生産魔獣だ。こやつらは闇によって、動植物を作り替え、魔物としている。こいつらにかかりきりになれば、対悪魔との戦線に乱れが生じる。そのため、手が出せなかった。」

 

「わかりました。出立は。」

 

「後で伝える。仲間を見繕う時間が必要だ。無駄死にならんようにな。魔王というぐらいだから、戦闘力には期待しているぞ。」

 

 

───

 

 

「エルゼラ。今戻った。怪我はないか?」

 

「ありません。アベルさんこそ、無傷で良かったです。」

 

「本当にか?」

 

「当たり前ですよ。私のことを知っている人は、1人でも多い方がいいんです。」

 

「それは、何故だ。私は魔王。私の顔と、悪名は轟いた。だが、それに良い感情を抱いたことはない。」

 

「あなたのことを知らないでしょう。顔と悪名を知ったところで、あなたのことを真に知れたとは思いません。」

 

「それでは、どこからだ?」

 

「そうですねぇ。時間を共にすることですかね。」

 

「時間。」

 

「ええ。一緒にご飯を食べる。鍛錬する。例え同じ目的を持っていなかったとしても、同じ時を過ごしたと思えたなら、それが人を知るということだと思いますよ。」

 

「……。」

 

 ボロボロの家を片付けながら、お互いに沈黙した。

 

 

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