1000年間浄化の光に当てられてたら悪性とか無くすよね   作:K+#ガソ林

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第四話

 

 魔王アベルを生み出した有角の民は、その力を当時の連合軍に貸すことで生き残った。

 その際、鬼神のような英雄も生まれた。岩角王である。

 彼の名声はいずれ信仰となり、今では、角の英雄を讃える教会が多く点在するほどである。

 

───

 

 黒角傭兵団の拠点は、洞窟を拡張して作られている。細い洞穴は素人でも長物武器で防衛しやすく、崩落させることで敵の足止めができる。

 今後の作戦を練っているゲン、その横に佇むのは、死の悪魔───ヨミ。

 

「…ここまで、失うものが多いとはな。」

 

「死の大盤振る舞い、大変ありがとうございます。あなた方は良い顧客だ。」

 

「感謝するぞ。ヨミ。お前の協力がなければ、今回のようにうまく潜入はできなかっただろう。」

 

 黒角傭兵団のリーダー、ゲンは悪魔のヨミと手を結んでいるようだ。死の悪魔は、人が死ぬ時に放出する特別な闇を吸うことで、その力を増す。

 

「"蘇生"も行いました。協定通りにね。また、よろしくお願いしますよ。」

 

「私が攻勢に出た場合、その攻勢で死亡した死者は蘇生する…。」

 

「ええ。今回は10割の攻勢と判断しました。ので、黒角の死者は全員生き返らせました。」

 

 悪魔は闇を操作できる。肉体を別で用意し、その中に死者の意識となる闇を入れることで、死者蘇生を可能とするのだ。

 

「契約期間は後10ヶ月。準備はできていますか?」

 

「応とも。…連合王アレックス・ノヴァ。奴を戦後までに処理せねば、我らに未来はない!」

 

 決意を新たに、ゲンは図面を描く。

 次の標的は、戦場。アレックス・ノヴァが進軍する激戦区である。

 

───

 

 ボルクの頼みだ!俺が引き受けるしかあるまい。

 4魔討伐隊の募集の話が朝礼で出た時に、真っ先にそう思った。討伐隊のリーダーは、舞い戻った魔王アベル。光の球の聖なる力で改心したらしいが、眉唾である。俺が責任を持って、監視する!

 朝礼が終わったので、執務室で職務に励もうとするボルクを詰める俺だった。

 

「失礼する!ボルク!なぜ俺にアベルについて何も言わなかった!!奴を世界人類のために役立てて見せよう!俺に任せてくれ!!!!」

 

「…うるさいからだ貴様はァ!あ、いや、お前がうるさいから話さなかったわけではない。魔王アベルの噂が広まっては、王都の治安が脅かされると考えたからだ。」

 

「なるほど、そうだったのか!!では、俺は行くぞ。粛清騎士隊長、断頭台のリュカ・ハルシオンがな!それでは、失礼する!」

 

 バタン!ドアが閉められ、どたどた足音が去る。

 

「…あいつ、目が怖いんだよな。いい奴なんだけど。」

 

 ボルクは肩の力を抜いた。しばらくぼーっとしてると、溜まっている執務を思い出したので、急いでやり始めるボルクであった。

 

───

 

 俺、魔王だったらしい。

 

「───蘇ってみれば、このような平和な世界とは、虫唾が走る。それも、不平等である。家畜は喰われ、住処を奪い、魔物を狩る。そして、人ですら───奴隷を人に作る。」

 

 気を抜いたら、魔王だった時の人格が出ちゃったっぽい。

 いや、あのね、なんか…俺、俺自身をナメてたのよね。1000年間浄化の光に当てられてたら悪性とか流石に無くすだろ…。

 

「俺よ。それは無理な話だ。意識があれば、闇がある。今まではリハビリ期間というわけだ。虚弱に弱らせただけでは、すぐ復活するのが闇というものだ。」

 

 あのさ。掃除してるエルゼラさんもビビってるから、普通な感じにして欲しいんだけど。いちいち声出さなくても聞こえてるから。

 

(わかった。無駄に争う気はない。それで、なんだ。)

 

 ねぇ、なんで蘇ったの?

 もうどうだっていいって、そう思ってたじゃん。お前は、俺なんだから。

 

(…。)

 

 魔王はさ、一応は、有角の民だった。それに乗じた当時の人々が、魔王に取り入ろうとした。バルサラック大陸軍に、虐殺されてたから。

 でも、大陸軍という敵を打ち滅ぼしてもなお、外大陸に進撃を続ける俺を見て、あいつらは恐ろしくなったんだ。それで、外の大陸の奴らに話を通して、不意打ちを受けて、俺は負けた。

 

(復讐だ。)

 

 虚しくなったろ?

 同じところを見てる奴なんて、一人もいない。

 俺とお前に、仲間なんていなかった。

 

(…憎い。)

 

 白々しい。

 もういい、引っ込んでろ。魔王。

 もう角がなんだと言われるような世の中じゃないんだ。俺が守るべき人も、殺すべき敵も違う。

 

(お前がそういうのであれば、しばし、引っ込んでおいてやろう。……我が出るに相応しいその時までは、な。)

 

「いいね。助かる。」

 

 エルゼラさんが近づいてきた。心配そうな顔だ。話は終わったと伝える。

 

「お大事ですか?なにやら、様子がおかしく…。」

 

「大丈夫よ。エルゼラちゃん。」

 

「いえ、やはり様子がおかしいです。そのようなフランクな話し方ではなかったような。」

 

「言語教育完了ってとこかしらね。多分。俺、結構こんな感じなのよ。今まではさー。言葉知らなかったから、ちょっと硬かったかもねン。」

 

「そのようでありますか。わかりました。…。」

 

「?」

 

(前までの方が、カッコよかったな…。)

 

 話し方で損するアベルであった。

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