1000年間浄化の光に当てられてたら悪性とか無くすよね 作:K+#ガソ林
俺ね、魔王だったらしい。
今日は4魔の一体、西の獣王を討伐しに、ロヴォス村というところまで行くのね。馬車に乗ってる。
「私も一緒です。」
ロヴォス村には、前線基地が用意されている。顔見知りということで、色々やりやすかろうと彼女(エルゼラ)にもついてきてもらっていた。廃人同然のアマネ様の世話もしてもらう必要があるし。
「立派なことだ!前線基地だ、魔物に食い殺される可能性は高い!守ってやれないかもしれない!立派なことだ!」
「あまりおどかすなよ。リュカ!彼女とて、それはわかっているだろうが…そこまで露骨にいうことでもない。」
「言い方が悪かったか?それは、申し訳ない!エルゼラ殿!」
「いいえ、お心遣いありがとうございます。私とて、連合国の民。お手伝いさせていただきたく思うのです。」
「立派だ…。」
「リュカちゃんも、エドナスちゃんも、結局言うこと同じじゃない。」
馬車は進む。アベルは資料を取り出し、皆に注意した。
「警戒すべきは、この『白虎』。2体以上確認されてて、騎士団肝入りのゴーレム兵すら蹴散らすらしいね。パワーとスピードが強ければ、強いと言うことかしら。」
「ゴーレム兵とはなんだ?俺の時代にはなかった。」
「闇で操作する戦闘用外骨格だな。強くて硬いが、悪魔は闇を支配するということで、安全を期すため、このような内地でしか運用されていない!」
「助かる。」
───
勇者一行は悪魔7将を暗殺しようと気を揉んでいた。アスモデウスと同じような手順で封印しようと乗り込んでも、将達はすぐに拠点を捨て去り、逃げられてしまうのである。今後について話し合う勇者アレックス、弓使いオト、魔術師ドラコ、盾使いシル。
「戦力を分けて巡回するのは悪手だ。あいつらの逃げ足をなんとか封じる手段があれば良いのだが。」
「大規模な聖剣結界で、戦場ごと覆ってしまうのは如何でしょう。」
「それ、やろうとしてるんですが、理論が完成していないのですね。無制限な拡大は、現状の技術では不可能と。」
「では、地面の下にでも入れまして、トラップとして運用するのはどうです?」
「神の球を大量に用意出来れば、考えるんだけどな。…やはり、これか。」
勇者アレックス・ノヴァが目をかけるのは、『光を生み出す研究』だ。
「…時間がかかるのは好都合だ。神の球の研究を急がせる。」
「理論としては───周りにある闇を吸収することで、光を発生させる装置、それが、神の球の正体などと言っているそうです。オトさん、シルさん、どう思われますか?」
「……。」
「闇を溜め込むなんてきな臭いって、言って欲しいんですか?」
「ええ、はい。しかし、オトさん。あなたが何も反応しないとは、少し気になりますね。」
「…思うところがない訳ではありませんが…神の球を原因として事変が起こったと言う記録はありません。私の知る限り。ですので、何も。」
───
魔王を知る者は、この世界に少ない。
であれば、魔王は魔王でない。
しかし、罪は罪だ。恨みは募る。その、ごく少数の感情は、昂り燃える。
「魔王アベル、か…クックッ。」
南の戦場へ向かった、魔王を名乗る者、その名は───。
「帝王アナンの後継者、バルサラックの太子───コルム。私の牙は、お前を狙っているぞ。」
「感心しませんな。このような場所で、そのようなことを。ご主人様。」
「リカード。用事は済ませたか?」
「ええ。食糧、移動手段…諸々の手筈は整えました。出発ですか?」
「魔王が死したのち、世界に散らばった我ら同胞の魂を迎え、再臨させる。バルサラックの復活は間近である。」
「……。」
「心配するな、聞かせている。勇者王とて我らの存在には気づいている。その上で、我々は協力できる。」
雑踏の中で、食事を摂る者、新聞を読む者、商売をする者───コルムは彼らに目配せすると、立ち上がって歩み出した。
「魔王は後だ。バルサラックの独立も後だ。先に悪魔を追い払う。こちらで、勝手にな。」
「行きましょう。ご主人様。」
バルサラックの全ての人間を、この場に持ってくることは不可能だった。王たる魂と、その臣下たる3名。彼らが、新生バルサラック大陸軍を構成する全てだ。
「ああ。…大鷲を狩ってやったんだ。少しは恩に思ってくれ。」
2人は歩き出した。