精霊仕い ~それは精霊ですか? いいえロボットです~   作:忌野希和

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11話 致命的な一言

『シアニス、どういうつもりですか? いくら332年振りとはいえ高い位置から飛びつくなんて。もしマスターが怪我をしたらどうするのですか』

 

『くうーん、ごめんなさい。つい嬉しくて』

 

 コアAIのシアニスが総合支援AIのオルティエから説教を受けている。

 地面に正座して背中をしゅんと丸め、頭部の犬耳もぺたりと垂れ下がっていた。

 

『まあまあ、俺はなんともなかったから』

 

『そうはいきません。我々スプリガンはマスターの忠実な僕です。あらゆる危険から守るのが使命だというのに、逆に危険に晒すなど言語道断です。シアニス、貴女は332年振りの本物のマスターを失いかねない行動をしたのですよ』

 

 柳眉を逆立てて怒るオルティエの言葉を聞いて、シアニスの肩がぴくりと動いた。

 改めて自分の行いが良くないものだと認識したのか、つぶらな瞳が涙で潤む。

 

『ご、ごべんなさい……』

 

「もう、女の子を泣かせたら駄目じゃない。飛びつかれたぐらいで倒れないように鍛えないと」

 

「ちょっと母様は黙ってて」

 

 ぞんざいに扱われて頬を膨らませるエリンは無視して、シキは泣き出したシアニスの前で膝を付き、慰めるように肩に手を置いた。

 

『別にあれくらいで怪我なんてしないから、次から気を付けてくれればいいよ』

 

『それじゃあ私もご主人様と一緒に寝てもいいですか?』

 

『えっ』

 

『貴女には樹海の防衛という任務があるでしょう。マスターの身辺警護は私に任せておきなさい』

 

『オルティエだけずるい! 他のみんなもそう思ってるんだからね』

 

『そ、それが役割分担というものでしょう。実際に貴方たちの誰かが抜けたら樹海の防衛がままならないじゃない』

 

 オルティエも反論はするが、シキとの同衾は役得だという自覚はあるようだ。

 動揺して視線が泳いでいた。

 

『防衛ならスプリガンを強化するか、新たにユニット配置をすれば対応できるもん』

 

『あー、クレジットがカンスト状態のまま魔獣を倒すとクレジットそのものが入手できなくて勿体ないし、確かに強化はしないとね』

 

『!? マスター!』

 

 まさかシキがシアニスの肩を持つとは思っていなかったオルティエが声を荒げる。

 

『さすがご主人様!』

 

『いや強化をするのと一緒に寝るのは別の話……わかった、わかったからそんな顔しないで』

 

 シアニスだけでなくオルティエまで泣きそうな表情になったため、シキは同衾を否定できなくなってしまった。

 

『まあその何というか、皆とは主従関係じゃなくて出来るだけ対等な関係でいたいかな。332年間もこの国を守ってくれていたわけだし、その恩には報いないとね。だから俺への要望や意見があれば気兼ねなく言ってくれていいよ』

 

 それはシキの素直な気持ちだった。

 先代のロナンドまでは碌に意思疎通もできないまま、ひたすらに樹海で魔獣を倒し続けてくれたのだ。

 システムの上では主従関係だったとしても、332年分の恩を返す必要があると考えた。

 

『マスター……そこまで我々のこと考えてくださるなんて。お優しい言葉に感謝致します。一層の忠義を捧げることをお許しください』

 

『お許しくださいっ!』

 

『あはは、忠誠は程々でいいよ。さっきも言ったけど、お互い様なんだから俺への遠慮はいらないからね』

 

 今度は感動で瞳を潤ませながら敬礼をする二人を見て、苦笑いするシキであった。

 この「遠慮はいらない」という言葉が、スプリガンとの関係性を大きく変えることにシキが気付き、ちょっと早まったかな……と思うのは少し先の話だ。

 

 早速その日の夜には、コアAI全員が含まれた遠慮のない同衾シフトが組まれ、実行されることになる。

 ちなみにエリンもちゃっかり同衾シフトの末席に連なっていた。

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