精霊仕い ~それは精霊ですか? いいえロボットです~   作:忌野希和

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181話 盾はロマン武器

 加護の力は魔術よりも自由度が高いらしい。

 シキは【吟遊神の加護】を持ってはいるが、その恩恵は声がよく通るとか、音感に優れているとかささやかなものである。

 

 なので自由度と言われてもピンとこなかったが、アルネイズの加護を見ているとなんとなくわかった気がした。

 

「ねぇウル姉、ごにょごにょ……」

 

 思いついたことを相談してみると、シキの発想力にウルティアが目を見開いて驚いた。

 

「っていう内容を後で伝えてもらえる?」

 

「ううん、今この場でシキが伝えるべきよ」

 

「でも俺、嫌われてるし」

 

「だからこそよ。ほらほら」

 

 ウルティアに背中を押されて仕方なく、険しい表情のアルネイズの元へ向かい質問した。

 

「アルネイズさん。その具現化した盾って投げられないんですか?」

 

「は?」

 

「あと、盾の形を変えて、刃とか生やしたりできませんか?」

 

「………はぁ?」

 

「アルネイズさんの【光輝神の加護】は光を纏わせた身体強化、それと光の盾を具現化できるんですよね? 具現化、つまりアルネイズさんが想像して盾を生み出しているなら、想像の内容次第ではもっと自由に扱えるんじゃないですか?」

 

 前世のエンタメ知識があるシキとしては、もっと色々できそうだというのが素直な感想だった。

 盾といえばフリスビーのように投げたり、変形させて巨大な剣にしたり、サーフボードのように乗ったりと、ロマン溢れる装備である。

 

 何ならスプリガンの一部装備でそのような機構を持つシールドもあった。

 アルネイズには見せられないが。

 

「空中で盾を固定するのも、アルネイズさんの意思で行っていることですよね? それなら逆に飛ばせるんじゃないですか?」

 

「そんなこと出来るわけ……いや、まさか」

 

 アルネイズが空中に向かって手を翳すと、光り輝く盾が現れる。

 通常なら空中に固定される盾は重力に従って落下した。

 その様子を見てアルネイズが驚愕している。

 

「確かに意識して固定しないようにすることはできますね。さすがに飛ばせませんが」

 

「今後の訓練次第でできるようになるかもしれませんよ。これは俺の予想ですが、盾を具現化するにあたって、空中に固定するのにも力を使ってると思うんですよ。これまでも盾の大きさは自由に変えてましたよね? 大きくすると力の消費が増えるか盾の強度が落ちてませんか? 大きさ変えられるなら形も変えられませんか? 実際の盾にも様々な種類があるじゃないですか。どこまでが盾でどこからが盾じゃないのか、検証してみてはどうでしょう」

 

 最初は怪訝な表情のアルネイズだったが、シキの説明を聞いて次第に真剣な表情になっていく。

 再び手を翳して盾を具現化させた。

 盾は常に凧のような逆三角形をしていたが、少しずつ形を変える。

 

 角が取れて全体的に丸みを帯び始めたが、途中で割れて消えてしまった。

 相当集中していたのか、呼吸を忘れていたアルネイズが大きく息を吐く。

 

「形も変えられましたね」

 

「おお、やっぱり色々工夫できそうですね。尖らせるのが難しいなら、盾の厚みを薄くして大きさも拳大にしちゃえば、戦輪(チャクラム)みたいに投擲して使えそうじゃないですか」

 

「それはもう盾ではないのでは」

 

「本当にそうですか? それを決めるのはアルネイズさん自身だと思います。盾の形にしかできないのではなくて、盾の形なら何でもできるんですよ」

 

「…………!」

 

 その言葉はアルネイズの固定観念を打ち破った。

 現時点ではまだ可能性が見えただけで前途多難だったが、がむしゃらに盾で殴っていた時よりも選択肢が、道が増えている。

 

 アルネイズは想像した。

 亜神ベリーズが振り下ろした腕を、輝く円形の盾が通過して斬り落とす瞬間を。

 

 そしてこの想像を現実にできたならば、自分はまだウルティアの隣に居られると確信する。

 同時に自身のこれまでのシキへの態度を顧みて、けじめをつけなければならないと覚悟した。

 

「シキ殿、私は貴方に謝罪しなければなりません。あからさまだったので気付いていたと思いますが、私は貴方のことを疎ましく思っていました。それも自分本位の身勝手な理由で。申し訳ありませんでした」

 

 アルネイズは姿勢を正してから深々と頭を下げた。

 これに対してシキは慌てて手を振る。

 

「大丈夫ですよ。そんなに気にしてませんでしたから。頭を上げてください、謝罪を受け入れます」

 

「ありがとう……そしてそんな私に、新しい加護の可能性を示してくれたことに感謝を。必ず使いこなしてウルティア様を守ると誓いましょう」

 

 アルネイズが穏やかに微笑んだ。

 それはシキが初めて見る表情で、少しだけどきりとする。

 

「宜しくお願いします。エンフィールドに来てもらっても、俺が常にウル姉といるわけじゃないですから」

 

「えー」

 

 ウルティアが不満げな声を上げているが事実である。

 小型情報端末(リーコン)でエンフィールド男爵領全体を監視しているのでセキュリティは万全だが、咄嗟の出来事には対処できない可能性もあった。

 だからアルネイズが強くなるに越したことはない。

 

「アルネイズさん、他にも色々やりようはあると思うんですよ。小さな盾の集合体を組み合わせれば、全体の形は自由だから剣も作れそうです。あとさっきの戦輪を更に小さくして(やじり)みたいにして飛ばすとか。地面に水平に展開して空中を歩くための足場にしたり、敵の足元に出してひっかけて転ばせたり。とどめは敵の体内で盾を生成して内側から破裂させて……あ、皆ちょっと引いてる?」

 

「あらあら、シキさんって結構悪辣なのねぇ」

 

「シキ殿、参考にはなりますが、体内で盾を生成するのは、光輝神のお叱りを受けると思いますよ。というかさすがに無理です」

 

「うーん、なら盾の投擲を主題にして考えてみよう。敵に当たると自動的に次の敵に向かって飛んでいくとか。魔術 《連鎖する雷(チェインライトニング)》の盾版だね。三方向に投擲したり、敵に当たると盾が分裂したり、ブーメランのように戻ってきて二度ダメージを与えたりしても面白そう」

 

「そのすごい豊かな想像力はどこから来てるのかしら? 母様感心しちゃうわー」

 

 前世のゲームの知識から来てます。

 とは言えず、エリンに頭を撫でられながらシキはぎこちない笑顔を浮かべる。

 そして本来の目的であった、外様の神が封印されし神殿についてアルネイズに尋ねるのであった。

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