精霊仕い ~それは精霊ですか? いいえロボットです~   作:忌野希和

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20話 ギルドでざわざわ

「三年ぶりに王都へ来たけど、相変わらずにぎやかねえ」

 

「うん、そうだね」

 

 王都に到着後、シキとエリンは一旦王女たちと別れた。

 後日、正式に王女を襲撃から守った褒賞と、エンフィールド家存続の手続きが行われることになる。

 宿の手配は王女がしてくれたので、登城するまでの数日間は自由時間となった。

 

「母様は久しぶりに冒険者ギルドに顔を出したいんだけど、付き合ってもらっていい? 孤児院にはその後向かうから」

 

 王都に到着した翌日、二人は遅めの朝食を取ってから宿を出る。

 シキはエリンに手を引かれながら王都の町並みを歩く。

 

 シキにとっても三年ぶりの王都ではあったが、このような表通りとは無縁の生活だった。

 なので懐かしさよりも珍しさが勝り、周囲をきょろきょろと見回してしまう。

 

「手をつながなくても大丈夫だよ」

 

「だめよ~。おのぼりさんがはぐれたら困るじゃない」

 

 恥ずかしいから手を離したかったのだが、浮き足立つシキの様子を看破していたエリンは首を縦に振らない。

 結局手をつないだまま冒険者ギルドまで来てしまう。

 

 中に入ると左手に受付カウンターがあり、正面には依頼掲示板、右手に併設された酒場のテーブルが並んでいた。

 王都の冒険者ギルドだけあって非常に混雑していて、複数ある受付カウンターには沢山の冒険者が並び、掲示板の前にも人だかりができている。

 

「遅めに来たつもりだけど、まだまだ混んでるわねえ」

 

 エリンの声に反応して、掲示板の前にいた一人の冒険者がこちらを向いた。

 髭面の中年男で、エリンの姿を見て目を見開く。

 

「け、〈剣姫〉……」

 

 大きな声ではなかったが、中年男の声は喧騒の中でも不思議と響いた。

 男の声をきっかけにエリンに注目が集まり、ギルド内が騒がしくなる。

 

「〈剣姫〉ですって?」「誰それ」「さあ?」「でも美人だな」

「第二位階冒険者 〈剣姫〉エリン。久しぶりに見たな」「引退したんじゃなかったのか」

「あんなお嬢ちゃんが二つ名持ちなわけねえだろ」「いやいや、見た目に騙されたら酷い目にあうぞ」

「横の子供はなんだ? 子供か?」「あの若さで?」「分からんぞ、実は結構歳が……」「ばっ、よせっ」

 

 あ、あの冒険者死んだな。

 笑みを浮かべながら殺気を放ち始めたエリンを見てシキがそう思ったところで、別の一人の冒険者が進み出てきた。

 

「やあエリン。元気にしてたかい」

 

 金髪碧眼の優男で、周囲の冒険者よりも身なりが良い。

 上等な革鎧を身に着けているが、それがなければまるで貴族のようだ。

 

「アイストフ卿、ご無沙汰しております」

 

「他人行儀はよしてくれよ。君と僕の仲じゃないか。昔のようにクリフと呼んでくれよ。君は相変わらず、いや前にも増して美しさに磨きがかかっているね。パーティーを組んでいた三年前はあどけなさが残っていて可愛らしいかったが、今は大人の魅力に溢れているね」

 

 エリンが貴族の礼をするとアイストフ卿と呼ばれた男、クリフがひらひらと手を振る。

 そしてシキに鋭い視線を向けた。

 

「そちらの君が、もしかしてエリンの心を射止めた、僕の恋敵かな?」

 

 クリフの恋敵発言に、周囲の女性冒険者がざわついた。

 シキに向けられた殺気混じりの視線に、護衛として傍に立つスースが色めき立つ。

 

「いいえ、この子は私の息子よ」

 

 エリンの発言に今度は男性冒険者がざわついたので、仕方なくシキは名乗ることにする。

 

「お初にお目にかかります、アイストフ卿。私はシキ・エンフィールド。エンフィールド男爵家当主ロナンドの長女エリンの養子です」

 

「なるほど君は養子なのか。僕はクリフィン・アイストフ。アイストフ伯爵家の次男だ。次男だから家も継がないし、君も気軽に僕のことはクリフと呼んでくれ。養子ということはエリンにまだ夫はいない? ならまだ私にもチャンスはありそうだね」

 

「うふふ、私より弱い男に興味はないわよ? クリフ」

 

「なら久しぶりに手合わせしてみるかい? 三年前の僕とは思わないことだ」

 

 色恋沙汰の話のはずなのに、何故か不敵な笑みを浮かべて睨み合うエリンとクリフ。

 お互いに貴族といえど、冒険者の血が騒ぐということなのだろう。

 そして主に殺気を向けられた従者たちも血が騒いでいた。

 

『スース、オルティエ。ステイ…ステイ!』

 

 それぞれ白鞘の刀と大型拳銃を抜き放とうとしているので、小声で必死に止めるシキであった。

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