精霊仕い ~それは精霊ですか? いいえロボットです~   作:忌野希和

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208話 おそらくガールズトーク

「というわけで合流できましたので、これからは仲間たちとパーティーを組みます……ちょ、やめ」

 

「アリエ、いいかげんにしなさい。話が進まないでしょう」

 

「ああん」

 

 セラがアリエの膝の上からシキをひょいと取り上げた。

 そして何事もなかったかのように自分の膝に乗せる。

 

 アリエのようにシキを(まさぐ)って話の邪魔はしないが、心なしか口角は上がっていた。

 その隣ではスースがそわそわしながら座っている。

 まるで順番待ちをしているかのようで、登場時に纏っていた凛とした雰囲気は霧散していた。

 

「いつもこんな感じなのかい?」

 

「え? まぁそうですね。何かすみません」

 

「いや、いいんだよ。あー、これはちょっと勝てないね。真面目に話を聞こうか」

 

「そ、そうね」

 

「はい……」

 

 美女を侍らせる? 光景を目の当たりにして、すっかり酔いが覚めてしまったリリ、スタナ、セリーの三人である。

 

 同性から見てもセラたちの美貌は圧倒的だ。

 シミ一つない肌に抜群のプロポーション。

 

 特に胸元は三人とも主張が激しく、膝に乗せたシキの頭を包み込むようにして固定している。

 慎ましい派閥のセリーたちは……言い知れぬ敗北感を味わった。

 

 オルティエもそうなのだが、とてもじゃないが冒険者をするような見た目ではない。

 ドレスで着飾れば生まれが平民だとしても、余裕で貴族の妾、いや正妻にだってなれるだろう。

 

 心なしか周囲の男たちも引いていた。

 冒険者の女ならワンチャンあるが、貴族級の美女となると手は出せない。

 ただし目の保養になるのは間違いないので、視線自体は減らずに増えているのだが。

 

「それでですね、次は護衛依頼を受けるつもりです。護衛依頼は規模によっては複数パーティーが雇われることもあるので、もし条件が合えばご一緒にいかがでしょうか?」

 

 実は既にオルティエが王都に転移で戻り、募集している護衛依頼を確認してからの誘いである。

 当然セリーたちは王都に戻るまで知ることはできないが。

 

「そういうことでしたら、私とスタナは構いません。リリはどうですか?」

 

「多分大丈夫かな。ああ、私は兼業冒険者でね。セリーたちと常に共に行動しているわけじゃないんだ」

 

「そうだったんですね」

 

 その後はセラたちも混ぜて打ち上げを再開。

 改めて杯を交わし合い、親睦を深めた。

 

 

 

 

 

 

 

「美人で性格も良いなんて、勝てる要素がないよ~」

 

「おかげで諦めはつきましたけどね」

 

 宿に戻ったセリーたちがラフな格好に着替えてベッドの上で寛いでいる。

 あとはもう寝るだけなので、今は雑談の時間だ。

 

「何だかんだ言ってセリーもその気だったんだね」

 

「あっ」

 

 ぼそりと呟いた本音をリリに拾われ、恥ずかしくなったセリーは枕に顔を埋める。

 確かにセラたちは性格も良かった。

 

 貴族令嬢のように平民を見下す、もしくは守ろうというような上から目線になるようなことはなく、セリーたちと和やかに打ち上げを楽しんでいた。

 

「シキを過保護にするきらいはあるけど、変なところはそのくらい……いや存在自体が変ではあるけど。作法は綺麗だけど貴族のそれとは少し異なっているんだよね。他国のマナーで似ているとしたら、貴族のいない商業都市あたりかな」

 

「セラさんたちも変だけど、シキはもっと変だよ。あんな美人に囲まれて照れる様子すらないなんて」

 

「そうだねぇ、あれだけ大事にされてるんだし、十二歳なら少し早いけど色仕掛けから守る対策はしてるかもね」

 

「対策?」

 

「決まってるじゃないか。アレだよ、アレ。ひひひ」

 

 リリの下品な仕草を見てスタナが顔を赤らめる。

 こっそり顔を持ち上げて見ていたセリーだが、リリが視線を向けると素早く枕に顔を隠した。

 

「君たちこそ、そんなに初心(うぶ)で大丈夫かい? 女で冒険者なんてやってると、野郎どもに襲われそうになることもあるだろうに。ちょっと顔の良い男に釣られてホイホイついていくんじゃないよ」

 

「リリこそどうなのよ? 余裕ぶってるけど、男の影なんて見たことないわ」

 

「はっ、君たち処女とは違うのだよ。私は異性とのロマンスに事欠かな………よし、この話はやめようか」

 

 最後のロマンスが()()()()()、思い出すのに時間を要したリリが、遠い目をしながら話題を変える。

 

「なんとなく思ったのは、シキは複数の姉妹に囲まれて育った長男みたいなものじゃないかな。女に囲まれているのが普通になっちゃってるんだよ」

 

「「あ~」」

 

 言われて納得したセリーとスタナである。

 興味がない、我慢しているというよりは、慣れているという表現がしっくりきた。

 

「つまりだ、色気はシキへのアピールにはならないんだよ。そういう意味では君たちもセラたちとはイーブンだね」

 

「でも冒険者としても負けてそうですよ? シキさんやオルティエさんを見る限り、階級もあっさり追い越されそうです」

 

「不利なところで競ってはいけないよ。持ち味を活かすんだ」

 

「持ち味?」

 

「オルティエたちになくて、君たちにあるもの。そう、その獣の耳と尻尾さ。シキの視線を追っていると、スタナのつつましい胸には興味なさそうだけど、そのぴくぴく動く耳や尻尾には釘付けだったよ」

 

「え、そうだったんだ。やっぱ胸はだめか……」

 

 地味にダメージを受けているスタナを尻目に、リリが講釈を続ける。

 

「シキたちは異国からやってきた人族だろう? 獣人はそれなりに珍しいんじゃないかな。君たちは獣人なんだから、その自慢の毛並みで勝負すればいいのさ。撫でさせればイチコロだよきっと」

 

「「おお~~~」」

 

 その後は毛の手入れのために、王都に戻ったら高級な香油を買いに行こうと話しながら就寝となった。

 ちなみにシキの仲間に毛や羽を持つ者がいるだけでなく、自分たちよりも毛並みが良いことが判明して愕然とするのは、少し先の未来のことである。

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