精霊仕い ~それは精霊ですか? いいえロボットです~   作:忌野希和

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229話 嫉妬や

 リファのおかげで〈銀猫〉との取引は無事に完了した。

 これで迷宮探索に専念できる。

 ライカたちを助けた翌朝、全員で冒険者ギルドに集まっていた。

 

「それじゃあ改めて自己紹介するね。ボクは第二位階冒険者のライカ・バイフ・ブレイル。【風雷神の加護】持ちで、武器に風や雷を纏わせることができるよ」

 

「おお、それは格好いい」

 

 ライカの武器は手甲(ガントレット)足甲(グリーブ)だ。

 どちらも金属製で細かい彫刻が施されている。

 

「これで魔獣を蹴ったり殴ったりしてるんですよね? すぐに傷ついたり凹んだりしそうだけど、全然綺麗ですね」

 

「昔王様にもらった魔術具なんだけど、〈硬化〉が付与されてるから頑丈みたい。あと魔石を仕込む場所があって、ボクや魔石の魔力を使って〈雷撃〉も打てるよ」

 

「おお~、加護とのシナジーもありそう」

 

 シキ的にはそういうギミックのあるロマン武器は好物である。

 Break off Online 製のSFな武器もいいが、ファンタジーなのもいい。

 目を輝かせるシキに気をよくしたのはライカだ。

 

「ここに魔石を入れるんだよ」

 

 ライカがシキの隣へ移動してから手甲の留め具を外す。

 反対の手で手首のあたりを掴み、手甲本体を肘方向へスライドさせる。

 すると内側から魔石を装填するスロットが現れた。

 

「結構広い空間ですね。これなら首狩りの魔石も入るかな」

 

「えっ、首狩りの魔石を持ってるの?」

 

「昨日偶然手に入れたんです。使う予定ないし、ここに入れてみます?」

 

「ほんとに? ありがとう!」

 

「姫様、そのくらいにしてください」

 

 嬉しくなったライカはシキに抱きつこうとしたが、背後に控えていたモアが割り込んで阻止する。

 二人が肩を寄せ合ったくらいから、割り込むタイミングを見計らっていた。

 

「あ、ごめん。馴れ馴れしかった? いつも貴族らしく振舞えって、モアに怒られちゃうんだよね」

 

「こちらこそ失礼しました、ライカ様」

 

 モアに睨まれたため、シキが数歩下がりながら答える。

 お互いの呼び方はモアの強い要望により、ライカを敬う形で落ち着いた。

 

 シキとしてはどちらでもよかったので、ライカがモアに折れたことになる。

 モアはライカに対して絶対の忠誠を誓っていて、すべては主を思っての具申だ。

 

 

 

 商人のひとり娘として生まれたモアだったが、幼い頃に母親は病死。

 母親の商才で成り立っていた商会は、ろくでなしの父親があっという間に潰してしまう。

 

 モアは借金のかたとして売られた。

 いわゆる丁稚奉公のような扱いだったが、大好きな母親を亡くして生きる希望を失ったモアに、労働意欲などあるはずもない。

 

 何処で働いても使えないと罵られ、転々とし、最後に辿り着いたところがライカの屋敷だ。

 どうして不出来なモアが貴族のライカにあてがわれたかといえば、単純に年が近い同性だから。

 それだけであった。

 

 もしここでも使えないと判断されていたならば、モアは今度こそ非合法の奴隷として売られていただろう。

 結果的にモアはギリギリで踏みとどまることができたのであった。

 

 自分と似たような境遇のライカだったが、心折れることなく武術の訓練に没頭しているのを見て、モアは母親の最期の言葉を思い出す。

 

 ―――モア、貴女は私の分も生きるのですよ。

 

 そうだ、母さんにもらったこの命、無駄にできないんだった。

 悲しみで心が埋め尽くされ、忘れてしまっていた。

 

 その日から心を入れ替えたモアは、母親の大切な言葉を思い出させてくれたライカに忠誠を誓う。

 こうしてライカの意思を尊重しつつも、バイフ族の姫としての振る舞いを身に着けさせるための奮闘が始まった。

 

 

 

 天真爛漫なところがライカの魅力ではあるが、無作法だと相手の立場まで悪くしてしまう。

 だから異性と軽々しくふれあうなんてとんでもない。

 

 特にこのシキという少年は駄目だ。

 絶世の美女たちを当たり前のように侍らせている。

 

 ライカが気安く振る舞うことをいいことに、不敬にも体を密着させていた。

 そこは自ら引き下がるところだろう。

 しっかり監視しなければと、心に誓うモアであった。

 

「次は私の番ですね」

 

「あ、すみません。ちょっと待ってもらっていいですか」

 

「ご主人様!」

 

 冒険者ギルドの扉が開くと同時に、何者かが飛び込んできてシキに抱きつく。

 それは犬耳を生やした少女だった。

 仕立ての良い軍服からはみ出した尻尾が、嬉しそうにブンブンと揺れている。

 

「シアニス、おはよう。早かったね」

 

「おはようございます! だってご主人様に会うのが楽しみでしたから」

 

 シキに頭を撫でられて、シアニスと呼ばれた少女は幸せそうに目を細めていた。

 

「みんなもおはよう」

「「おはようございます」」

「おはよー」

 

 シアニスの他に三名の少女が、シキに挨拶しながら冒険者ギルドに入ってくる。

 全員が軍服姿の美少女だった。

 

「ええとシキさん、この方々は?」

 

「紹介しますね。まず俺に抱きついてるのがシアニス。こっちのオレンジ色のポニテの子がエキュース。隣の茶髪の子がルミナ。モアさんと似た桃色の髪の子がエル。俺の仲間たちです」

 

「「よろしくおねがいします!」」

 

 エキュースとルミナが元気よくお辞儀をする一方で、エルはトコトコとモアに歩み寄る。

 そして左右を覗き込み何かを確認すると、にっと笑ってからサムズアップした。

 

「お姉さん、その丸く巻いてる角、いいねー」

 

「はい?」

 

「スースたちはここでパーティーを抜けるので、交代要員です」

 

 シキと一緒に冒険がしたい。

 それがスプリガン全員の希望だ。

 

 身元の割れているレドーク王国では不可能だが、ブレイル獣王国でなら問題ない。

 そのためにわざわざ全員が交代で冒険者登録をして、階級を上げ、王都から馬車を使ってここまでやってきた。

 

 もちろんエンフィールド大樹海の防衛任務があるので、こまめに転移して帰っている。

 慌ただしいが、シキとのコミュニケーションは何よりも優先されるのだ。

 

「みんな若いけど大丈夫?」

 

「スースたちと同じ程度に戦えますので安心してください。てかライカ様だって若いじゃないですか」

 

「だからこそ異常なのですが……」

 

 そう、これは異常だ。

 現在の階級はともかくとして、第二位階冒険者のライカと同等かそれ以上の実力者が、ここに九人もいることになる。

 

 第二位階は在野にて最高階位であり、こうも易々と集結していい戦力ではない。

 実際に実力をこの目で見るまでは、疑ってかかったほうがいいだろう。

 モアは気を引き締める。

 

「わっ、何この美女美少女の集団は。ここは冒険者ギルドで貴族の舞踏会場じゃないのよ? パーティー違いじゃない?」

 

 丁度バックヤードから出てきたギルド職員のシンディーも、目を(しばたた)かせていた。

 またギルド内には少数ながらも他の冒険者もいる。

 

 その男たちは集団の中の唯一の男であるシキに向かって、嫉妬の眼差しを向けていた。

 目を血走らせながら「ハーレムかよ」「もげろ」「はぜろ」と呪詛を呟いている。

 

 異世界でも呪詛の内容は同じなんだなあ。

 ハーレムであるという事実から目を背けつつ、ちょっとズレた感想を抱くシキであった。

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