精霊仕い ~それは精霊ですか? いいえロボットです~   作:忌野希和

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250話 総力戦

 シキの視界が真っ暗になったかと思うと、次の瞬間には純白に染まり、激しく明滅を繰り返す。

 マニは全方位から鱗の弾丸が放たれた瞬間、攻撃に使用していた満月を解除。

 

 〈GS-202 マニ・ルーン〉を包み込むようにして再展開。

 バリア代わりにしたのだ。

 そのままの状態で〈真月の杖〉に跨り、メナスの包囲から脱出する。

 

『おい、使い魔ども、生きてるか』

 

『しんでまーす』

『ほんとむり』

 

「すまない、我が主。小型情報端末を一機、CRで購入してくれぬか」

 

「う、うん。使い魔、大丈夫なの?」

 

「再召喚できるから問題ないのじゃ」

 

「よかった……あ、気が動転して機体強化するの忘れたから、一緒にやっておくよ」

 

 シキが小型情報端末を購入すると、すぐに真新しい機体が現れる。

 マニが杖で軽く触れると、小型情報端末が輝いた。

 

『なんだ夢か』

 

『いや夢じゃなくがっつり死んどるからな。使い魔ども、次はメナスに包囲されないよう立ち回るのじゃ』

 

 メナスとの戦闘は続く。

 遅ればせながらシキがCRを消費して機体強化を施したため、マニたちの優位性は増した。

 鱗の一斉掃射は連発できないので、再発射できるようになったら皆で警戒していたのだが……。

 

『ふぁっ!? 連射?』

『こいつ一気に撃たないで小出しにしてきやがった』

『ぐえー、しん―――』

 

 メナスは体表の鱗すべてを一斉に飛ばすのではなく、三分の一程度に留めて連射してきた。

 これにより弾幕の密度が増加。

 小型情報端末が追加で一機、犠牲になった。

 

「ちぃっ、向こうも必死じゃのう。ならばこちらもリスクを承知で」

 

「マスター!」

 

 〈GS-202 マニ・ルーン〉のコックピットに第三者が現れた。

 それは長い銀髪と冷たい銀の双眸を持つ絶世の美女。

 

「オルティエ!」

 

「ようやくビーコンの電波を探知することができました、もうご安心くださ―――」

 

 シキの姿を見つけて喜色満面だったオルティエの表情が凍り付く。

 マニがシキを抱きかかえているのを目撃したからだ。

 

「いや、これは」

 

「新たなスプリガンですね。直ちにこちらの指揮下に入るよう命令します」

 

「承知した。オルティエ殿」

 

「マスターを複座に降ろして戦闘に専念しなさい」

 

「初回サービスタイムは終わりか。残念じゃのう」

 

 オルティエが硬直したのはほんの数秒だった。

 さすがに咎めている場合ではない。

 

 慌てるシキをよそに、オルティエとマニの間で話がつく。

 マニが理術を使うと、シキの体がふわりと浮かんで複座に収まった。

 

 オルティエはそれを確認するとシキの背後に回り、複座をすり抜けて抱きしめる。

 立体映像だからできる荒業だ。

 

 しかもシキと接触する部分は実体を残しているので、柔らかい感触に包まれている。

 ある意味人間椅子だ。

 咎めはしないが、主張はする。

 

「オルティエ?」

 

「転移対策です」

 

「あっはい」

 

「あれが祖龍の本体となるメナスですね。サマンサの手稿によると〈奈落の王〉、もしくは〈暗黒龍〉と呼ばれる外様の神のようです」

 

「本当に便利だなぁ、サマンサ図鑑。ライカたちは大丈夫?」

 

「はい。祖龍及びリオンと交戦中ですが、エルたちがいますので問題ありません。マスターは奥にあった龍脈経由で宇宙に転移させられたようです。距離が問題でしたが、祖龍の言っていた()()がヒントになりおおよその方向は判明していました」

 

「あー、そういえば何か意味ありげなことを言ってたね」

 

「エネルギー量からしてグランデ級ですか?」

 

「元々はベンティの手前くらいだったぞ、オルティエ殿。我がそこまで削ったのじゃ」

 

「―――戦闘ログを回収したわ。確かに侮れない相手のようね。一気に勝負を付けましょう。マスター、一部権限の期限付き譲渡を要請します」

 

「うん」

 

 権限を取得したオルティエがスプリガンを転送。

 宇宙空間に七機の換装式汎用人型機動兵(スプリガン)器が一斉に出現する。

 それは迷宮にいるエルたちと護衛役のエイヴェを除く、すべてのスプリガンたちであった。

 

「えっ、樹海の防衛は大丈夫?」

 

「短時間であれば問題ありません。そのための現地採用者たちです」『各員、作戦を開始しなさい』

 

 オルティエがボイスチャットで命令すると、全員から怒号のような返事があった。

 

「ぐおお、久しぶりに耳が」

 

 堪らずシキが両耳を押さえるが、脳内に直接響いているので無意味だ。

 シキとの接続が途絶えていたのだから、仕方がない。

 スプリガンたちの声には、無事だったことへの安堵とメナスへの怒り、両方が混ざっていた。

 

『っしゃぁ! 落とし前つけてやるぜ』

 

『斬り刻む』

 

 フェリデアとスースが先陣を切ると、メナスこと暗黒龍が体をくねらせて迎撃した。

 彼我の大きさを考慮すると、虫が人の腕で払い除けられるような光景だが、もちろん彼女たちが只の虫なわけがない。

 

「Woouuuu髮「繧�後muuuuun!」

 

 体当たりを前に掻き消えた二機であったが、それは暗黒龍の体に張り付いていたからだ。

 〈SG-063 フェリデア・ティーガ〉は両手に装備したグラップルクローを。

 

 〈SG-072 スース・ファシロ〉は一振りの剣、霊鷲乃剣(りょうじゅのつるぎ)を暗黒龍の体に突き立て、斬り刻む。

 有言実行である。

 

『ミロードに危害を加えた罪は、その身の消滅をもって償ってもらいましょう』

 

『そうね』

 

『万死に値する』

 

 リューナ、セラ、プリマの三機は、汎用武装のアサルトライフル〈メタリア AKX160〉で後方から発砲。

 命中精度よりも攻撃力を重視した、フルオートによる制圧射撃だ。

 何せ的は大きいので当てやすい。

 

 宇宙空間で火薬を用いた実弾兵器を使用する場合、強い反動と空気がないため銃身に籠った熱が逃げないという問題がある。

 しかしその問題さえクリアすれば、発砲エネルギーは減衰することなく標的まで届く。

 

 反動はスプリガンのブースターで相殺し、熱は無視する。

 アサルトライフルの銃身が焼き切れる直前に新品に交換する荒業だ。

 

 シキの知る前世の銃器の性能であれば、十数発も撃てばもう使い物にならなくなるが、そこは Break off Online の未来兵器である。

 射撃による発熱は大幅に軽減されているため、百発を超えても発砲が可能だった。

 

 大量の銃弾と前衛二機の猛攻によって、暗黒龍の体は傷つき、黒いオイルのような血が辺りに充満する。

 

「Wooo縺謨オ、縺�↓nnn螳ソオaa縺ィ◆縺rrセ縺ソ縺医◆縺�iii!」

 

「いよいよノイズしか聞こえなくなってきたな」

 

 それと共に、暗黒龍から発せられる怖気も増している。

 無意識に体が小刻みに震えるシキの頭を、オルティエが優しく撫でた。

 

「メナスは与えたダメージ量に応じて形態を変えます」

 

「お、いよいよ最終形態のようじゃ」

 

 オルティエとマニの言う通り、暗黒龍に動きがある。

 空間が歪んでいるかのように、常に横を向いてた頭部が―――正面を向いた。

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