精霊仕い ~それは精霊ですか? いいえロボットです~   作:忌野希和

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259話 いでよ祖龍!!!!

「兄上! これは一体何事か!」

 

 安全地帯に到着すると、検問官のナウラ・シィズ・ブレイルが声を荒げた。

 ぼろぼろになっているリオンを見て驚いている。

 

「ナウラ殿。私はカルナノーラ・レンド・ブレイル。冒険者ギルドのマスター及びレンド族の御意見番を務めている者だ」

 

「なっ、いつの間にそんな大物が検問を突破している!?」

 

「此度、この迷宮 〈祖霊の渓〉で大きな変化が生じた。ブレイル獣王国の根幹を覆す程のものだ」

 

 カルナノーラが一連の出来事を簡潔に説明する。

 最初は疑いの眼差しを向けていたナウラだったが、折れた〈爪龍剣〉を見せられて愕然としていた。

 

「本物なら折れるわけがないだろう?」

 

「しかし、そんな……」

 

「そしてこちらにおわす方が本物の祖龍様だ」

 

「え? このカバが?」

 

「だーかーらーカバじゃないのだっ!」

 

 事の重大さを理解したナウラは、他の検問官を残して同行することに決めた。

 迷宮を出て冒険者ギルドに向かう。

 

「おかえり、リ……カルナノーラ様?」

 

「ただいま、シンディー。取り急ぎ馬車の手配を頼む。出発は明日の早朝だ」

 

「わ、わかりました。正体を隠さなくてよいのですか?」

 

「それどころじゃないからな。ちなみにこちら、祖龍様だ」

 

「あら、可愛いブタちゃんね」

 

「ブッ……」

 

 その日は宿で休息を取り、翌朝になると王都に向けて出発した。

 リオンは昨晩目覚めていて、宿で大暴れしてナウラたちを困らせたらしい。

 馬車に乗る際にも暴れはしないものの、シキたちを恨みの籠った目で睨みつけていた。

 

 

 

「エフェメラ! 本当にエフェメラなのだな」

 

「ライオス陛下。お久しぶりです」

 

 三日かけて王都に戻ってきたシキたちだったが、早々に城に呼ばれ玉座の間へと通される。

 玉座の間には王族であるシィズ族の重鎮が揃い踏みで、玉座に座っているのはリオンと同じ獅子頭の男。

 

 ライオス・シィズ・ブレイル国王陛下だ。

 エフェメラの姿を見つけると、感極まった様子で玉座から立ち上がる。

 降壇して近づこうとするが、左右にシキとオルティエがいることに気が付き、怯えた様子で立ち止まった。

 

「エフェメラ、すまない。私は……」

 

「父上! こいつらを王家反逆罪で捕まえてくれ!」

 

 国王の言葉を遮ってリオンが叫ぶ。

 公の場で会話の妨害に加えて父上呼びは、親子と言えど不敬に当たる行為だ。

 国王の側に控える護衛騎士が顔を顰めたが、本人は気にした様子もなく喚き続ける。

 

「こいつらはこの俺に危害を加えた。極刑だ!」

 

「発言をお許しください。国王陛下」

 

「あ、ああ。許す。カルナノーラ」

 

 カルナノーラはシキから()()()()()だと聞いていた。

 一体いつ根回ししたのだろうか。

 

 そういえば精霊オルティエの姿が見えないタイミングがあったが……

 王族の破滅に繋がる話を本当にして良いのだろうか。

 

「それでは〈祖霊の渓〉で起こった一部始終を説明いたします」

 

「……うむ、包み隠さずに話すがよい」

 

 カルナノーラの確認に国王が答えた。

 なんと根回しは本当だったか。

 腹を括ったカルナノーラの説明が始まる。

 

 シィズ族を認めていた祖龍は偽物で、その正体は外様の神〈奈落の王〉であったこと。

 下賜された爪で作った〈爪龍剣〉も偽物で、リオンが持ち出し折れてしまったこと。

 

 バイフ族のライカと他国からやってきたシキたちにより、〈奈落の王〉は倒され本物の祖龍は救出されたこと。

 そしてここにいるのが本物の祖龍だということ。

 

 説明が進むにつれて重鎮たちの顔色が驚きで歪み、不都合な事実に青ざめ、怒りで真っ赤になる。

 最終的には怒号が飛び交う事態となった。

 

「出鱈目だ!」

 

「こんな毛無しどもの言うことを信じるのか!」

 

「〈爪龍剣〉が折れるはずない。それはこいつらが用意した偽物だ!」

 

「なんだその変なカバは! 祖龍なわけがあるか! ふざけるな!」

 

「あれ、怒らないの?」

 

「ふっ、いい加減言われ慣れたのだ……」

 

 祖龍の背中に哀愁が漂い始めたので、そろそろ段取り通り話を進めることにする。

 

「オルティエ」

 

「はい。マスター」

 

 オルティエが進み出ると、体が光に包まれる。

 すわ武力行使か。

 近衛兵が国王を庇い武器を構えるが、光が収まった後のオルティエの姿に唖然とした。

 

 精霊モード―――メイド服からウェディングドレスに切り替えたオルティエが浮かび上がる。

 その神秘的な光景に誰もが目を奪われ、気が付けば怒号は止んでいた。

 

 オルティエはドレスの裾を揺らめかせながら、天井の高い玉座の間をゆっくり上っていく。

 中間地点に辿り着いた辺りで止まると、天に向かって両手を掲げた。

 白くて細い指の先が、雲一つない青空に向かって伸びている。

 

「……は?」

 

 近衛兵の一人から変な声が漏れるのも仕方ないだろう。

 いつの間にか玉座の間の天井が消失して青空が見えているのだから。

 

 これは〈SG-068 アリエ・オービス〉の仕業である。

 荷電粒子収束射出装置(ラプソディ)で天井を消し飛ばしたのだ。

 

 攻撃判定以外をオフにしているため、周囲からは突然天井が消失したように見えているだろう。

 シキが皆と一緒に青空を見上げると、〈SG-068 アリエ・オービス〉がブンブンと手を振っていた。

 

「準備完了しました」

 

「ありがとうオルティエ。祖龍様、いいですよ」

 

「よっしゃなのだ。まだ神力が回復してないから一回しかできないから、皆ちゃんと見ておくのだぞ」

 

 降りてきたオルティエに変わって、祖龍がてくてくと二本足で皆の前に歩いていくと、ピカッと輝く。

 オルティエの淡い発光とは違い、昼間でも眩い稲光だ。

 

 雷と化した祖龍は開いた天井から空へと昇り、再び実体化する。

 シキはその姿に見覚えがあった。

 

 細長い胴体が悠然と空を舞い、龍の頭が玉座の間を睥睨している。

 色が漆黒ではなく純白なことを除けば、宇宙空間で戦った暗黒龍こと〈奈落の王〉にそっくりであった。

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