精霊仕い ~それは精霊ですか? いいえロボットです~   作:忌野希和

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6話 設定変更

『とりあえずブースト強化は置いといて』

 

『えーーー』

 

 画面の向こうでシアニスが抗議の声を上げ腕をぶんぶんと振り回している。

 重厚感漂うロボットの動きにしてはシュールだなとシキは思った。

 

「じいちゃん、今まではどうやって防衛の指示を出してたの?」

 

「魔導書に映し出された精霊を指で触ると、精霊語の羅列が四行くらい出てくるじゃろ? 森の中に赤い光点……魔獣が現れたらそれの一番目を選ぶのじゃ。そして魔獣を倒し終わった後は三番目じゃの」

 

「ふむふむ、攻撃と待機コマンドを配置で覚えて指示していたわけか。初代の頃からこうやって防衛ラインを築いて、魔獣を倒し続けていたんだね」

 

 日本語が分からない二代目以降は初代から教わった通りに、コマンドを位置で覚えて防衛し続けていたのであった。

 待機状態でも魔獣が接近すれば精霊が自動的に攻撃を始めるが、攻撃指示を出したほうが先制攻撃になるのだという。

 

 十体ほどの精霊が数キロ間隔で配置されるという密度の薄さだが、リーコンという小型情報端末のおかげで魔獣の索敵は十分間に合っているようだった。

 

「無事に引継ぎも終わったことだし、屋敷に戻るとするかのう。エリンも心配してるじゃろうて」

 

「そうだね、帰ろうか。オルティエもついてくるよね?」

 

『はい、もちろんです! これからはずっと、ご一緒させて頂きます』

 

「あ、はい」

 

 

 

 

「お父様、シキ、おかえりなさい!」

 

 二人がエンフィールド男爵家の屋敷に戻ると、ロナントの娘エリンが出迎えた。

 貴族としては最低限度の質素なドレスを身に纏い、浅葱色の長い髪を三つ編みにしている女性だ。

 エリンはシキに素早く駆け寄ると、正面から思い切り抱きしめた。

 

「シキ! 加護の引継ぎはどうだった? 痛くなかった? 苦しくなかった?」

 

「ぐえっ、今が一番痛くて苦しいから、母様」

 

「まあまあ、そんなこと言って。照れなくてもいいのよ」

 

 エリンの巨大な胸元で絞めつけられるシキが苦しそうに答えたが、絞めつけている本人はどこ吹く風だった。

 

「それで精霊様は今ここにいらっしゃるのかしら」

 

「うんいるよ。母様のすぐ後ろに」

 

「あらまあ、ご挨拶が遅れて申し訳ありません。シキの母エリンでございます。息子を宜しくお願い致します」

 

 エリンが後ろを向いてオルティエに深々と一礼したが、微妙に方向が合っていない。

 見えていないのだから仕方がないのだが。

 

「なあオルティエ。マスター以外に精霊……スプリガンを見せることは出来ないんだよね?」

 

『できますよ』

 

「だよなあ。出来るわけないよな……えっ」

 

『〈設定:オブジェクト〉項目の〈キャラクター表示:オルティエ〉横のチェックボックスにチェックを入れてください』

 

 シキが言われた通りに設定すると、エリンとロナンドにも見えるようになったようだ。

 二人とも驚いた様子で空中に浮かぶオルティエを見上げている。

 オルティエは地面に降り立つと、この国の言葉で恭しく挨拶した。

 

「お初にお目にかかります。マスターのお継母様。オルティエと申します」

 

「まあまあ、なんてお美しい精霊様なんでしょう」

 

「ほ~、お役御免となったが、再び精霊に相まみえるとはのう。しかもこちらの言葉まで話すとは」

 

「見えないのは特殊な能力とかじゃなくて、ただの設定なんだ……」

 

 いまいち納得のいかないシキであった。

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