精霊仕い ~それは精霊ですか? いいえロボットです~   作:忌野希和

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69話 もぐもぐタイム

「それじゃあ結果オーライということで、シュヴァルツァにはご褒美をあげようか」

 

「Gyaooooooooo!」

 

 ご褒美と聞いてシュヴァルツァの興奮は最高潮に達する。

 目の前にキルテがいるにも関わらず、鼻息を荒くして鳴いた。

 折角仲良くなったのにまた怖がらせてしまったかとシキは思ったが、

 

「あはは、声でっか~。息しめっぽくてくっさ~」

 

 キルテは楽しそうに笑っていたので胸を撫でおろす。

 なかなかに肝の据わった少女だ。

 

 シュヴァルツァへのご褒美とはずばり糧食である。

 糧食は棒状固形の携帯食料(シリアルバー)料理をパック詰めした(レトルトパウチ)ものの二種類あるが、シュヴァルツァは前者がお気に入りだった。

 

 秘密基地の番犬ならぬ番竜の報酬として糧食を色々と与えてみたのだが、特にチョコレート味のシリアルバーが大好物だ。

 事前に梱包を剥いたシリアルバーをストレージボックス内に大量に保存してあるので、シキはダミーの次元収納である巾着袋から取り出すふりをする。

 

 シリアルバーを四、五本ほど手づかみしてシュヴァルツァに向かって放り投げた。

 

「Gruuuuuuuuuu!」

 

 シュヴァルツァは顎を大きく開けてシリアルバーを出迎えた。

 そして口を開けたままシキの様子をじっと伺う。

 

「はいはい、まだまだいくよ」

 

 シキがシリアルバーを次々と放り投げ、五回ほど繰り返したところでようやくシュヴァルツァは口を閉じて咀嚼した。

 味を堪能しているのか、うっとりと目を細めながら体を左右に揺らしている。

 

「なんか美味しそう」

 

⦅そうだな⦆

 

「手づかみのでよかったら、二人も食べます?」

 

 物欲しそうにキルテとガルムに見つめられたので、気まずくなったシキが勧める。

 二人は物珍しそうにシリアルバーを観察してから噛り付いた。

 

「なにこれ!? ちょっと不思議な味だけど甘くて美味しい! けど口の中がぱさぱさになる~」

 

⦅これはシュヴァルツァ殿が病みつきになるのも頷けるな⦆

 

 美味しそうに食べる二人を見ていて、シキがあることに気が付いた。

 

『あ……やばい、犬にチョコレートは駄目じゃなかったっけ』

 

『マスター、犬にとってチョコは含有するテオブロミン、カフェイン、そして過剰な糖が悪影響を及ぼし、嘔吐や下痢、動悸といった初期症状が現れ、重症化すると痙攣、内臓出血、心臓発作などを引き起こします』

 

『あわわわわどどどどうしよう』

 

『ご安心ください。万が一そうなった場合は治療薬で完治可能です』

 

『た、助かった……でいいのか?』

 

 ドキドキしながら二人の反応を見ていたシキだったが、どうやら大丈夫なようだ。

 犬扱いは失礼だったかもしれないが、体調を悪くして最悪毒殺を疑われたら困る。

 

 シキとオルティエの会話はサイコフィールドで遮っているので、ガルムには伝わっていない。

 ガルムの念話の第一声がシキに届かなかったのも、サイコフィールドで防御していたからだ。

 明らかな内緒話ではあったが、余計な波風を立てないためかガルムからの追及はない。

 

「ねえシキお兄ちゃん、これお父さんとお母さんに持って行ったらだめ?」

 

「うーん、誰に貰ったとか、何で出来ているかとか秘密だからなあ」

 

「ちえ~」

 

「そういえばキルテはガルムさんと会ってることも秘密なんだっけ」

 

「うん。ガルムが住んでる森はせーいきだから入っちゃいけないんだって」

 

⦅狼人族は古くから我を信仰しているが、我の縄張りを神聖視して近づかないのだ。たった一人キルテを除いてな⦆

 

「それでわたしが神獣ガルムの巫女? になったんだよ」

 

⦅先着順だからな⦆

 

「え~」

 

 ガルムは音場の神という小柱の神の加護を持つだけでなく、その神から神託を受ける神獣という立場にもいるそうだ。

 

 このアトルランと呼ばれている世界は大柱の神である創造神が作った。

 その後自身の神の力を分割して中柱の神々を各大陸の守護者にし、小柱の神々には様々な事象を司らせている。

 

 音場の神は音が伝播する場を司り、シキが加護を持つ吟遊神は詩と歌を司るといった具合だ。

 

「僕の知り合いにも地母神からの神託を受けている巫女の娘がいるんですよ」

 

⦅ほう、世界に四柱しかおらぬ大陸の守護神である、中柱の神の巫女とはすごいな。小柱の神の神託でも真意を測るのに難儀するが、その巫女は更に苦労しているのではないか?⦆

 

「ええ、その通りなんですよ」

 

 地母神の巫女であるウルティアに下される神託は一方的で、不規則で、意味不明なものが大半で、そのせいもあり辛い境遇に置かれていた。

 孤児院で一緒に暮らしていた時、聞こえてくる意味不明の音楽や言葉をシキはウルティアの鼻歌や声で再現してもらったのだが、確かにあれはこの世界の人からすれば意味不明なものだろう。

 

 シキ本人やスプリガンたちにも関係することだが、この世界は前世の世界と何かしらの繋がりがあるようだ。

 あれを神託扱いにするのは戯れが過ぎるのではないかとシキは思う。 

 

「Gyauuuuuu」

 

「ああ、ごめんごめん。ご褒美の続きだね」

 

⦅キルテ、そろそろ帰らないと両親に叱られるぞ⦆

 

「やばい! 薬草も木の実も集めてないよ。籠どこいった、籠~」

 

 後日聖樹守りとの面会に同行してもらうことをガルムと約束して、この場は解散となった。

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