流星のロックマン Arrange The Original 2   作:悲傷

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第16話.オーパーツ

 階ひとつ分のスペースを惜しみなく使った古代文明展もいよいよ終わりが近づいてきていた。最後の展示室の入り口は、光沢を放つ上質そうな赤いカーテンで遮られていた。

 その前でシャベクリンの説明が再開される。

 

「最後にご紹介しますは、幻の遺産『オーパーツ』ですわ」

「おーぱーつ?」

 

 ミソラには聞きなれない言葉だったらしい。シャベクリンはふわふわとミソラの周りをまわるように飛びながら説明する。

 

「その時代にはあり得ない科学力を持った遺産のことですわ。歴史の矛盾とも呼ばれ、古代人が残した現代への挑戦と受け取る歴史家も居ますわ」

「え? え?」

 

 学に疎いところがあるミソラには、ちょっと難しい説明だったらしい。隣で熱く頷いていたスバルはフォローを入れてあげた。こういう時は例を持ってくると分かりやすい。

 

「例えば、機械も電気も無かったはずの大昔の遺跡から車が出てきたらおかしいでしょ?」

「あ、なるほど。そういうのがオーパーツなんだ?」

「その通りですわ。では、参りましょう」

 

 よっぽどオーパーツとやらがご自慢なのか、シャベクリンはご機嫌な様子で最後の部屋へと入っていった。スバルも後に続いて、カーテンを手で払うようにして中に入った。

 照明を少なくしているのか、部屋は薄暗くて足元がよく見えない。部屋の最奥には2つの大きなライトが一カ所に集中しており、オーパーツと思われるものが照らし出されていた。

 

「これがオーパーツ。先ほどご紹介したベルセルクの遺産ですわ」

 

 そこにあったのは一振りの大剣だった。重厚な刀身の長さは1メートル以上、幅は3~40センチはありそうだ。人が持ち上げられるとは到底思えない巨大な剣は、柔らかい綿に囲まれて安置されていた。

 

「この剣がオーパーツと呼ばれる理由は、マテリアルウェーブとひじょうによく似た物質で構成されているという点ですわ」

「え!? マテリアルウェーブって……今の最新技術じゃ!!」

「はい。だからオーパーツなのですわ。この剣は彼らの文明名そのものを借りて、『ベルセルク』と呼ばれていますわ」

 

 ムー大陸ならまだしも、ベルセルクは武骨な剣を振り回す程度の文明だったはずだ。ネットワークも電力も持たなかった彼らがマテリアルウェーブを作れるわけがないのだ。確かな歴史の矛盾を前に、スバルは小さなうめき声をあげてしまう。

 

「スバル、ビジライザーをかけてみろ」

 

 ウォーロックが小さく声をかけてきた。言われたとおりにして、スバルはビクリと飛び上がりそうになった。オーパーツの周りに黄色いオーラが見えたのだ。

 

「……電波?」

「ああ……こいつはきっと武器か何かだったんだな」

 

 黄色いオーラの正体はオーパーツから滲み出ている電波だった。それは息を飲むほど濃密で、触れるだけで体を傷つけられるのではないかと思うほど禍々しかった。

 食い入るように見入るスバルの反応が気に入ったのか、シャベクリンはご満悦な様子だった。

 

「どうぞ快くまで、ご覧くだ……」

 

 シャベクリンの言葉は最後まで続かなかった。いや掻き消された。大音量で鳴り響く警報に。続けざまに聞こえてくる悲鳴。予備の照明が一斉に点灯し、出口には避難経路のマークがまぶしく光る。同時に、マテリアルウェーブであるシャベクリンが光になって姿を消した。おそらく、ウェーブロードを通じて強制的に回収されたのだろう。

 緊急事態なのは誰の目にも明らかだった。

 

「なにっ!?」

「スバルくん!!」

 

 ミソラの呼びかけに頷いて、スバルは警報音を発した隣の部屋に飛び込んだ。そこは最初に案内された展示室でムーの遺産が並べられている。

 その中の一つ、彫刻品の下で異変は起きた。何の前触れもなく紫色の穴が発生したのだ。彫刻品はゆっくりと穴の中に沈んでいき、姿を消した。

 

「…………え!?」

 

 マジックのような現象にスバルは何が起こったのか分からなかった。だが、すぐに盗まれたのだと理解した。

 この奇怪な穴は広い展示スペースの至る所で発生しているようで、展示品が次々と姿を消していく。

 

「……ロック、どうなってるの、これ?」

「俺が知るかよ!」

 

 悲鳴を上げて逃げ出す客たちに、穴に捕らわれて身動きできずにいる警備用マテリアルウェーブたち。見る見るうちに減っていく展示品。

 うろたえることしかできないスバルの肩に、ポンと手が置かれた。ミソラだった。

 

「スバルくん! 出番だよ」

 

 さも当然のことと言う口調でミソラは言った。

 

「ま、待ってよ! 僕にこれをどうしろって?」

「スバルくんが解決するに決まってるじゃん?」

「僕が!?」

 

 電波ウイルスや電波人間と戦うことならできる。だが、今回は見たこともない奇妙な現象だ。そんなものをどうやって止めろというのだ。

 

「でも、僕に何ができ……」

「ここの皆は待ってるんじゃないかな? ロックマンの登場を」

 

 不安に揺れていたスバルの目が止まった。先ほどの地獄絵図のような光景に加えて、消えていく展示物を見てパニックになっている職員たちの姿があった。

 胸にぶら下げている流星型のペンダントを握る。目を閉じて深呼吸する。

 

「……ミソラちゃん……僕、何とかしてみるよ!」

「そうこなくっちゃ!!」

 

 スバルはスターキャリアーを頭上に掲げ、眼前の光景を睨み付けた。

 

「電波変換!! 星河スバル、オン・エア!!」

 

 電波粒子がはじけ飛び、スバルは青いヒーロー……ロックマンへと姿を変える。その隣ではミソラもハープ・ノートに電波変換し、青いギターを握っていた。

 

「じゃあ、まずはどう動く?」

 

 ミソラの質問にはハープが答えた。ギターの頭についている口が動く。

 

「あの穴を発生させている原因が何処かにあるはずよ。手分けして探してみましょ」

「んじゃそうするか?」

 

 ウォーロックが頷き、スバルとミソラも他に意見が無いため賛成した。

 

「じゃあ頑張ろうね、ロックマン!」

「うん……」

 

 ハープ・ノートはウェーブロードに飛び上がり、隣の展示スペースへと駆け出していった。姿が見えなくなってからロックマンも動き出した。今も生まれては消えていく穴を避けながら、何か怪しいものはないかと目を凝らす。

 こういう時に空気を読まないのがウォーロックである。

 

「お前が進んで動くとはな? ミソラに良い処でも見せたかったのか?」

「ち、違うって!」

「そうか~?」

 

 ちょっと腹が立ったので、右拳をウォーロックの口に突っ込んで黙らせた。その間も館内を駆け回り、辺りを観察する。

 

「いいから、原因を探し……て……」

 

 スバルは歩みを徐々に弱めて、立ち止まった。視線はある一点を見つめて固定される。場所は天井の片隅。オレンジ色のウェーブロードの上。そこに何か紫色の球体がある。目を凝らして、それが何であるか気づいてゾッとした。

 目玉だった。

 

「……なに、あれ? ……悪趣味……」

「……とりあえず、明らかに怪しいものがあったな」

 

 奇怪な穴に、気持ち悪い目玉の電波体。これで関係ないと考える方が不自然だ。

 ウェーブロードに飛び上がって、ロックマンは恐る恐ると目玉に近づく。警戒しているのではなく、単に気持ち悪いから近づきたくないだけだ。何処か血走ったような眼球はどこを見ているのか不明瞭で、ひたすら不気味だった。

 だが、下で起きていることを考えたらためらっているわけにはいかない。思い切って足を大きく踏み出した。その一歩が空を切り、体をすとんと下に突き落とした。

 

「え?」

 

 気の抜けた声をあげながらスバルは足元を窺った。オレンジ色だったはずのその場所に、紫色が渦巻いていた。展示品を消していた穴だ。まずいと思ったときには、もう穴に落っこちていた。

 

「う、うわあ!? ったあっ!?」

 

 叫んだ直後には、身体が地面に叩きつけられていた。

 あの目玉にしてやられてしまった。歯を食いしばりながら身を起こそうとする。

 

「……スバル、周り見てみろ……」

「え?」

 

 体を起こして目をしばたたかせた。そこは自分がいた美術館ではなかった。紫色だった。目に映るもの全てがだ。無色なはずの空気が紫色に染められてしまったかのような空間が広がっていた。辺りを見回すと、見覚えのある展示品の数々が転がっており、先程の彫刻品も混じっている。どうやら、ここは泥棒の袋の中らしい。

 

「この感じは……現実世界でも電波世界でもねえな。異次元空間ってところか?」

「異次元空間……って……」

 

 あり得ないと言いたいが、スバルは最後まで言えなかった。この世界には壁が無いのだ。それどころか地面すらない。透明な板でも敷いているかのように、無いはずの地面に立っている状態だ。もちろん、天井も空もなく、見上げればどこまでも紫が広がっているのみ。もしかしたら行き止まりすらないのかもしれない。

 ようやく、この空間の異質さを理解する。ここにはどんよりとした紫色の空気以外、何もないのだ。

 

「ど、どうしよう……」

「どうするもこうするもねえだろ。こっから出るんだよ。それに、ミソラのやつは今頃お前を探してるかもしれねえぜ」

「……そうだね」

 

 もしかしたら、今も続いているであろう穴をふさぐために孤軍奮闘しているかもしれない。悲しそうな顔をしているミソラが目に浮かんだ。

 

「行こう!!」

 

 出れるか出れないかではなく、出るしか無い。そんな当たり前のことに気づけなかった自分が愚かしく感じられた。

 出口を求めてロックマンは意を決して走り出そうとした。その足元から白い光が裂けた。

 

「へっ!?」

 

 突然産まれた亀裂はあっという間に広がって、紫色の世界をガラスのように打ち砕いて白色に染め上げた。ロックマンがまぶしいと思った直後にはまた床に叩きつけられていた。

 

「いった~!!」

「大丈夫? ロックマン?」

「え?」

 

 見上げるとハープ・ノートの心配そうな顔があった。女の子の目の前でお尻を強打して痛みもがいている。何ともかっこ悪い絵である。突き上げられるように飛び上がって、痛みをかみ殺した。

 

「だ、大丈夫だよ! それより、さっき怪しい目玉が!!」

「ポロロン、それなら私たちが倒しといたわよ」

 

 ギターになっているハープが自慢げに言った。「え?」と周囲を伺うと、先ほどの場所に破壊された目玉があった。ロックマンが倒すはずだったそいつは電波粒子となって消えていく。

 

「展示品も返ってきたし、一件落着だね?」

 

 ハープ・ノートに言われてようやく足元に気づいた。先ほどの空間にあった展示品がウェーブロードの下で多数転がっている。涙を流していた職員たちと、囚われていた警備用マテリアルウェーブ達が集まってくる。

 

「うん、そうだね……」

 

 原因を潰して盗品を取り戻したのだ。あっという間の事件解決で、被害は無いに等しいだろう。だが、なんの活躍も出来なかったロックマンは顔を曇らせていた。ちらりとハープ・ノートの方を見てしまう。

 だから気づけたのは偶然だった。かなり遠く離れてしまったオーパーツの展示室。その片隅に現れていた新しい目玉に。駆け出した。ハープ・ノートの側を抜け、ウェーブロードを飛び移る。その間にも穴が出来上がり、オーパーツを飲み込み始めた。刀身の半分があっという間に沈んでいく。

 

「させるかよ!!」

 

 刀身が全て消えた時、ロックマンの右手とウォーロックの口が剣の柄を掴んだ。引っ張り上げようとしても、巨大な岩石でも掴んでいるかのようにびくともしない。むしろ徐々にだが飲み込まれている。

 

「パルスソング!!」

 

 背後から飛んできたハート型のエネルギー弾が目玉に撃ち込まれた。ハープ・ノートの援護射撃だ。目玉の表面がへこみ、穴の吸引力がわずかに弱まった。

 

「ハープ・ノート! もっとお願い!!」

「任せて!! マシンガンストリング!!」

 

 ギターの先端から5本の弦が射出され、目玉に食い込んだ。ハープ・ノートは右手を掻きまわし、弦を震わせる。音のエネルギーがそのまま破壊の力に変わり、目玉を内側から破壊していく。目玉から紫色の煙が上がり始め、穴から刀身の一部が顔を出した。あともう少しだ。

 こういう時に気を緩めてしまうのが人間である。安堵からロックマンはわずかに腕の力を抜いてしまった。がくりと体が前に傾いた。「しまった」と後悔したときにはもう遅い。刀身は沈み、柄どころかウォーロックの顔まで穴に吸い込まれてしまった。

 ハープとミソラが叫ぶ。

 

「ウォーロック!!」

「いけない!!」

 

 ハープ・ノートの周囲にコンポが召喚される。連続した小さなダメージではなく、少し手を止めてしまうものの強力な一撃を与えられる攻撃に切り替えたのだ。

 弦を強く弾く瞬間、コンポから音符型のエネルギー弾が放たれた。

 

「ショックノート!!」

 

 弦を伝って来たエネルギーと音符型の弾丸が重なるように撃ち込まれる。内部をある程度破壊されていたこともあったのか、目玉の全体にヒビが走りそこから大量の煙が噴き出す。目玉がぐらりと横に傾く。そして力尽きたように床に転がると、小さい爆発を起こして消滅した。

 同時に穴の吸引力がなくなった。勢いあまったロックマンが後ろに飛ぶ。その左手……ウォーロックの口にはしっかりと剣が咥えられていた。

 

「やっ……た!!」

 

 かろうじて両手で受け身をとりながら、ロックマンが床に転がった。ハープ・ノートが側に駆け寄ってくる。

 

「大丈夫? ロックマン!?」

「しっかりしなさいよ、ウォーロック」

 

 ハープ・ノートが差し出してくれた手を握り、ロックマンは痛みをやせ我慢して立ち上がった。

 

「大丈夫だよ、ハープ・ノート。最後のナイスだったよ?」

「エッヘン。私だってやるときはやるんだからね」

 

 笑顔で頷くハープ・ノート。その表情が変わるのに時間はいらなかった。ハープのたったの一言は、ロックマンの笑みすら消し去った。

 

「ウォーロック……あなた、剣はどうしたの?」

「「え?」」

 

 ロックマンの声にハープ・ノートのものが重なった。左手を動かそうとして、何か違和感を覚える。左手を目線まで持ち上げると、ウォーロックがダラダラと大量の汗をかいていた。口を固く結んでいるが、目は「やっちまった」と語っている。ものすごく嫌な予感がした。

 

「ウォーロック……オーパーツは?」

 

 そう、ウォーロックが咥えていたはずのオーパーツが無いのだ。そこらへんに転がってるのではないか? そう思って辺りを見渡してみたが、埃の塊一つありはしない。

 とても貴重な遺産。そんな言葉がずしりとロックマンにのしかかった。尋ねるのが怖い。だが、訊かないわけにはいかない。

 

「ロック……?」

「ウォーロック……?」

「ウォーロックくん……?」

 

 ミソラとハープも同じことを考えているらしい。声が震えている。視線の挟み撃ちに耐えきれなかったのだろう。ウォーロックは激流のように荒い言葉を吐き出した。

 

「わ、わざとじぇねぞ!! スバル! てめえが受け身なんざ取ろうとしたからだ!!」

「ちょ、ウォーロック、どうし……」

 

 そこまで言って気づいた。穴が消えて後ろに飛んだとき、剣はウォーロックが咥えていたのだ。そんな状態で左手を床に向ければ?

 

「まさか!!?」

「ああそうだよ! 飲み込んじまったんだよ!!」

「何やってるのよ!!」

 

 ハープがギターであることを忘れたように飛び跳ねる。スバルはアングリと口を開け、ミソラは信じれないという目している。

 

「き、貴重な文化遺産だよ!?」

「美術館の人たちが困っちゃうよ!?」

「俺を責めんな! 俺だって故意にやったわけじゃねえ!!」

 

 大混乱する4人。他人の物、しかもこの世に2つとあるか分からないような代物を紛失してしまったのだ。彼らにかかる社会的責任などを考えれば、冷静でいられるわけがなかった。

 そこにガヤガヤと声が混じってくる。隣の展示室に人だかりが見えた。もうじきここにもやってくるだろう。

 

「逃げるぞスバル!!」

「え!? あ、うん!!」

「ま、待ってよ。ロックマン!!」

 

 ハープ・ノートの手を引いて、ロックマンはそこから逃げることにした。非常にずるい……考えようによっては窃盗罪だが、なりふり構ってなんていられなかった。

 すたこらとウェーブロードを走っていく2人。その背中に鋭い視線を向ける者がいた。彼は物陰からひっそりと姿を現すと、その赤い目を尖らせた。

 

 

 外に出てもまだ罪の意識に追いかけられている気がして、結局コダマタウンまでフルマラソンしてしまった。住み慣れた町の夕焼け模様に安心したのか、ゼエゼエと息を吐きながらようやく立ち止まった。

 

「ど、どうしよう……大変なことしちゃった……」

「そんなに気にしちゃだめだよ」

 

 罪悪感に落ち込んでいるロックマンと違って、ハープ・ノートのほうはそうでもないようだった。彼女はもう考え方を切り替えたらしい。

 

「最後のは事故だったんだから仕方ないよ。それに本当は全部盗まれちゃうところだったけれど、他の展示品は返ってきたんだから。それだけでもロックマンの活躍としては十分でしょ?」

 

 正確に言うと、展示品を取り戻したのはハープ・ノートだ。ロックマンはただ穴に飲み込まれて一緒に助け出されたに過ぎない。

 

「そう……かな……?」

「オーパーツを取り出す方法だってきっとあるはずだよ。今は借りていることにしよ? 後で返せばいいんだよ」

「……そ、そうだね……返したらいいんだもんね」

 

 物は言いようとも言える内容だが、考え方を変えるという意味では良い視点変更だった。

 

「ポロロン、スバルくんは何も気にすることないわよ。それに今回悪いのはウォーロックだしね?」

「しつけえぞ、ハープ!」

 

 またしてもウォーロックとハープの痴話喧嘩である。2人の遠慮のない言い合いを見て、ようやくスバルも心がほぐれたらしい。ミソラと目が合うと、満面とは言えないが頬を緩めた。

 その時だった。ロックマンの周りに黄色いオーラが見えたのは。

 

「…………え?」

 

 ハープ・ノートが驚きを声にしたときには、それは跡形もなく姿を消していた。

 

「どうしたの、ハープ・ノート?」

 

 どうやらロックマンは気づいていないらしい。ウォーロックも突然変な声を出したハープ・ノートを不思議そうな目で見ている。

 

「ううん、なんでもない」

「そう? じゃあ帰ろうか?」

「……うん……」

 

 ロックマンが歩き出す。平然とした足取りでだ。

 今のオーラは何だったのだろう? 本人たちが気づいていないということは、目の錯覚だろうか? 一人思案するハープ・ノートにハープがひっそりと耳打ちした。

 

「ミソラ。私も見たわよ。黄色いの」

「ホント?」

「ええ……」

 

 ハープ・ノートは前を行くロックマンの背中を凝視した。あのオーラの片鱗が見えるのではないだろうか? そんな彼女の期待も虚しく、ロックマンの周囲には何の変化も起きる気配が無い。

 見間違いだったのだろう。そう言いきかせようにも不安がぬぐえなかった。あのオーラは、まるでロックマンを燃やそうとしているかのようだったから。

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