流星のロックマン Arrange The Original 2   作:悲傷

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第30話.コンタクト

 ロックマンの体はボロボロを通り越して限界だった。ブラキオ・ウェーブの巨体が何度も何度もロックマンを弾き飛ばす。そのたびに、ロックマンはバトルカードのソードを突き立てるが、焼け石に水のようなものだ。

 

「そろそろ諦めろっつーの!!」

「へっ、残念……だったな。俺の相棒は……こういう時には、頑固なんだ……よっ!!」

 

 ウォーロックの強がりだった。今のロックマンは、ウォーロックが電波変換を維持し、スバルが気力だけで立ち上がっている状態に過ぎない。ウォーロックが力尽きれば、スバルは湖の底に投げ出される。極めて危険な状態だった。

 

「しつけえっつーの!!」

 

 ブラキオ・ウェーブは怒鳴りながらロックマンの周りを泳いでいる。倒れるのを待っているらしい。

 

「畜生、ならもういっちょやるしかねえか……おい、よく聞けっつーの! 今度のは今までのとはまるでちげえぞ!?」

 

 ブラキオ・ウェーブは口にサンダーブレスをチャージしはじめた。今までのものと違いエネルギーが大きい。直撃すればそれこそロックマンは消滅するかもしれない。

 それでもロックマンが背を向けることはない。スバルは「逃げてください」と涙声で叫んでいるキザマロをちらりと見て言った。

 

「負けられ、ないよ……僕は、キザマロを……友達を……助けるんだ!!」

 

 かろうじて保っている意識を頭上のブラキオ・ウェーブへと向ける。青白い光は水中の太陽となってロックマンを厳しく照らしていた。その向こう側で何かが光った。緑色だ。

 特別意識することも無く、目がそれに釘付けになる。ゆっくりとしか動かない手を向ける。緑色の光は見る見るうちに大きくなったかと思うと、水面を突き破り、ブラキオ・ウェーブの横を通ってロックマンへと向かってきた。

 

「な……んだ?」

 

 目を見開くブラキオ・ウェーブ。まっすぐに向ってくる光に、ロックマンは笑みを浮かべた。

 

「君も……僕と戦ってくれるの?」

 

 手が伸びきった。緑色の光は導かれるようにそこに飛び込んでいく。

 

「や、やめろっつーの!!」

 

 危険を感じたブラキオ・ウェーブがサンダーブレスを放った。シノビの後ろで青白い閃光が煌めく。ロックマンの手がシノビと触れた。

 

「……トライブオン」

 

 直後、雷がロックマンを飲み込んだ。雷撃が轟き、あらゆるものを吹き飛ばす。

 

「ロックマーーーン!!」

 

 キザマロの悲痛の叫び声が上がる。雷鳴が消え、土煙が晴れていく。そこには何も残っていなかった。巨大なクレーターがぽっかりと空いているのみ。キザマロの手がズルリと窓から滑り落ちた。

 

「ば、馬鹿野郎が……死んじまったんじゃ……」

 

 ブラキオ・ウェーブが首を横に振った時だった。

 

「勝ったつもりかよ!!?」

 

 声がその場に降り注いだ。キザマロの目に微かに光が戻った。見上げる。そこに映ったシルエットを見て、目を輝かせた。

 ブラキオ・ウェーブも上を仰いだ。かろうじて見えたのは目にも留まらぬ速さで飛び込んでくる緑色の影だった。

 

「ホタルゲリ!!」

 

 こめかみに激痛が走った。眩しい光が彼の視界を奪う。

 

「いっでぇえ!?」

 

 突然の攻撃にたじろぎ、水中で姿勢を崩すブラキオ・ウェーブ。彼はかろうじて見える目を開き、辺りの様子を伺った。

 一体の電波体がいた。目を疑う。間違いない。体は緑色になっており、細部も変わっている。だが見間違うことはない。ロックマンだ。

 ロックマンは首に巻き付けてある赤いマフラーをなびかせると、右手に手裏剣を召喚して見せた。

 

「ロックマン・グリーンシノビ!!」

 

 それは新しいロックマンの力……緑色の忍者だ。

 ロックマンは右手を大きく振りかぶると、持っていた手裏剣を投げつけた。高速の刃がブラキオ・ウェーブの体を切り裂く。

 

「づぅ!? は、速えっ!?」

 

 さっきまでとはまるで動きが違う。焦ったブラキオ・ウェーブは首を伸ばして噛みつこうとする。だがそこにもうロックマンはいない。ただ水を噛んだだけ。

 

「あ?」

 

 どこに行ったのかと思ったとき、下から顎を跳ね飛ばされた。首がまっすぐに上に伸ばされる。そこに連続して痛みが走った。多数の手裏剣が並ぶようにして首に刺さったのだ。

 慌てて辺りを見渡すもロックマンの姿は見えない。それどころか攻撃は激しさを増してくる。右を向けば左から攻撃が来て、そちらを向けば下から。動こうとする前にもう一発。なんとかその場から動いたと思ったら、その方角から手裏剣が飛んでくる。痛みに悶える暇もなく、また下からの攻撃に晒された。

 ロックマンの動きに目を回すブラキオ・ウェーブ。だが、ロックマンのスピード事態は大した物ものではなかった。

 

「ようやくまともに動けるようになった……ってところか?」

「うん、水面に出られれば……」

 

 ロックマンはこのトライブオンの特性をもう理解していた。素早い動きと手裏剣という遠距離攻撃が最大の武器だ。ゴート・カンフーの遠距離攻撃型というところだろう。

 だがその自慢のスピードは半分も出せていない。水中ゆえに、ようやく従来通りに動けるというレベルだ。ブラキオ・ウェーブが翻弄されているのは、単に戦い慣れしていないだけだ。

 それでも有利な状況になっていることは変わらない。ブラキオ・ウェーブの体に手裏剣やバトルカードを撃ち込んでいく。

 

「い、いでえ!!」

 

 悲鳴を上げてブラキオ・ウェーブが逃げ出した。追撃しようとしてロックマンはビクリと手を止めた。ブラキオ・ウェーブの大きなヒレの下には潜水艦。窓ガラスにキザマロの悲愴の表情が映る。

 

「そうだ、攻撃を止めろっつーの」

 

 ブラキオ・ウェーブが青黒くなった瞼を持ち上げながら言った。ロックマンが攻撃すれば、潜水艦ごとキザマロを押しつぶすつもりなのだろう。

 

「ケッ、きたねえ野郎だな」

「何とでも言いやがれっつーの! 俺はもう、後戻りできねえっつーの!」

 

 ロックマンは素直に手に持っていた手裏剣を消した。これで勝敗は決した。ロックマンはサンダーブレスの的になるのだ。

 

「…………さい!」

 

 その時、キザマロの声が聞こえた。潜水艦の中で、キザマロがブルブルと震えていた

 

「攻撃してください! ロックマン!!」

「なっ! てめえ!?」

 

 ブラキオ・ウェーブが動揺したとき、もうロックマンは動いていた。エレキソードを片手に距離を詰める。気づいたブラキオ・ウェーブは潜水艦を放り出して逃げに徹し始めた。口から小規模な雷を幾つも吐きだし、ロックマンをけん制する。

 こんな見え透いた攻撃に当たる様なロックマンではない。だがこの雷を避けながら、水中を器用に泳ぎ回る敵を追いかけなければならない。思うように攻撃ができないのもまた事実だった。

 このままでは時間だけが悪戯に消費されていくだろう。

 

「くぅ、どうしよう?」

「なんでもいいから攻撃しろ。らちが明かねえ!」

「分かった!」

 

 耳元ではじけ飛ぶ雷に片目を瞑りながら、ロックマンは一枚の手裏剣に力を込めて巨大化させた。狙うは最も大きい的……相手の胴体。狙いを定めて腕を振った。

 

「ヒレです! ヒレを狙ってください!!」

 

 キザマロが叫んだ。反射的にロックマンは狙いを一枚のヒレに変更した。雷の網を潜り抜けて、手裏剣がヒレを切り裂いた。

 

「いっでえ!!」

 

 叫びながら逃げようとするが、動きは鈍っていた。四分の一とはいえど、ヒレが機能を停止したのだ。今のブラキオ・ウェーブは水中で片足を掴まれた気分だろう。

 狙う場所が定まった。ロックマンは怯えるブラキオ・ウェーブとの距離を詰めながら新しい手裏剣を召喚する。

 

「もう一度ヒレを! ヒレだけを狙えば勝てます!!」

 

 ロックマンはキザマロの方を見た。目が合う。頷き合った。

 

「く、来るんじゃねえっつーの!!」

 

 焦ったブラキオ・ウェーブが更に雷を連発する。狙いも定まっておらず、がむしゃらといった感じだ。見当違いなところに飛んでいく雷たちの中心で、ロックマンはバトルカードを使用した。

 

「コガラシ!!」

 

 ロックマンの目の前で竜巻が起こった。それは水底の土と小石を巻き上げ、茶色い渦となってブラキオ・ウェーブを囲んだ。ロックマンの姿が見えなくなる。

 

「そうです! そのまま一気にヒレを狙って!!」

「さ、させるかっつーの!!」

 

 ヒレを攻撃されたときの恐怖に駆られたのだろう。ブラキオ・ウェーブはヒレをバタバタと動かして周辺に雷をまき散らす。

 ウォーロックはその姿を見下ろしながら鼻で笑っていた。コガラシに乗って浮き上がっていたロックマンは、ブラキオ・ウェーブの頭上を取っていた。キザマロとの打ち合わせ通りだ。

 彼の手には手裏剣……エネルギーを大量に注ぎ込んだそれは、自分の体ほども大きくなっていた。それを力の限りに投げつける。数は一枚や二枚ではない。

 

「フウマシップウジン!!」

 

 十枚超える特大の手裏剣が降り注ぐ。ミスリードに気づいたブラキオ・ウェーブがようやく顔を上げる。手裏剣は四肢に突き刺さり、首を切り裂き、そして額を貫いた。

 

「ぎぃやあああぁぁぁっ!!!」

 

 ブラキオ・ウェーブの体が歪んだ。形を保てなくなり、電波粒子となって崩壊する。電波体を失い、水中に放り出された男の体を抱きかかえると、ロックマンは急いで水面を目指した。

 

 

 水面に上がると、ロックマンは男を岸に寝かせて再び水中へと潜っていった。その様子を見守っている者がいた。少し離れたウェーブロードで、ファントム・ブラックはおどけるように肩をすくめた。

 

「興ざめですね。ブラキオ・ウェーブがロックマンを倒せばそれでよし。もしブラキオ・ウェーブが倒されても、相応のダメージを受けたロックマンに私が留めを……と思っていましたが、あれではね……」

 

 やれやれとため息を吐き出すと、仕方ないという風に立ち上がった。

 

「引き揚げますか……あなたはどうしますか?」

 

 振り返ると、そこにはブライがいた。彼はファントム・ブラックではなく、水面の一点を凝視していた。ファントム・ブラックはもう一度肩をすくめると、カミカクシで姿を消した。

 

「なぜ、オーパーツは奴を選んだ……」

 

 彼の視線の先では、潜水艦を担いで上がってきたロックマンがいた。中にいる少年を気遣っているのか、揺らさないようにと慎重に運んでいるように見える。

 胸に黒いとげとげとしたものが渦巻いた。

 

「よく分からないけれど、これだけは分かったサ」

 

 いつの間にか、彼の後ろにゴート・カンフーがいた。彼は傷だらけの顔で、清々しい笑みを作っている。

 

「君じゃロックマンには勝てないサ」

 

 ブライは拳を握りしめた。ロックマンは潜水艦を岸に引き上げ、中から少年を助け出そうとしている。

 その光景に舌打ちを付くと、カミカクシでその場を後にした。




トライブオン→ワンパンで撃破

の予定だったのですが、ワンパターンでつまらない&キザマロに見せ場所を用意してあげたい。
と考えて、このようになりました。
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