流星のロックマン Arrange The Original 2   作:悲傷

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第36話.暴走

 戦い慣れしたロックマンとジェミニ・スパークWによる2人がかりで、電波変換したばかりの村長を倒すのは至極簡単。そんな予想は戦いが始まってからの僅かな時間でひっくり返されていた。一発のミサイルがジェミニ・スパークWを襲う。

 

「うわぁ!?」

「ツカサくん!」

 

 ウェーブロードから落ちていくジェミニ・スパークWに叫びながら、ロックマンは上空に向かってバルカンを乱射した。コンドル・ジオグラフは目前に迫って来ていた。

 

「ミサイルバード!」

 

 コンドル・ジオグラフが数発の誘導ミサイルをばらまいた。四方を包囲するように鳥型のミサイルが向かってくる。周囲を見渡しながらロックマンは歯を食いしばった。ウォーロックも同じ思いだ。

 

「チクショウ、足場さえありゃあ……」

 

 ロックマン達が苦戦する一番の理由は戦っている場所だった。ウェーブロードが飛び石状態になっているせいで、思うように動けないのだ。ひたすら足元に気を配らなくてはならない状態で敵に集中できるわけがない。

 対してコンドル・ジオグラフは自由に空を飛べる。それも戦闘機のごとく高速で、縦横無尽にだ。こうなったら攻撃を当てることすら難しい。

 ウォーロックが舌打ちをしている間に、最後のミサイルを撃ち落とした。爆炎を切り裂くようにしてコンドル・ジオグラフの巨体が現れる。

 

「フライングインパクト!」

 

 単純だが絶大な威力を持つ体当たりだ。慌てて空中に逃げるロックマン。コンドル・ジオグラフの翼がウェーブロードを粉々に破壊した。

 宙を舞いながらロックマンは周囲に目を凝らした。自由に動けない空中は危険……ただの的だ。早く足場に降りなければならない。それがベストな選択ではないと気づかせたのはウォーロックだった。

 

「下だスバル!!」

 

 そちらを見て、ロックマンは目を見開いた。迂闊だった。最初からコンドル・ジオグラフの狙いは一人だ。遥か下方のウェーブロードにいるジェミニ・スパークWに向かって、コンドル・ジオグラフは翼のエンジンを全開にしていた。先程のフライングインパクトだ。

 膝をついていたジェミニ・スパークWはようやく気付いたらしい。頭上を仰いだ顔に驚きと焦りの表情が見える。

 

「ツカサくん! ヘビーキャノン!」

 

 考えるより前に体が動いた。威力の高い砲弾を放つ。左翼に命中し、コンドル・ジオグラフの体が少し傾く。その僅かな間にジェミニ・スパークWが退避し、ウェーブロードだけが砕け散った。

 だがまだ気は抜けない。

 

「あれが来るよ!」

 

 ロックマンの声を聞いて、ジェミニ・スパークWが下を窺った。Uターンしたコンドル・ジオグラフの嘴には緑色のエネルギー。

 

「ダブルストーン!」

 

 ジェミニ・スパークWの足元に岩が召喚された。彼がスターキャリアーからバトルカードを使ったのだ。それを蹴飛ばした直後に攻撃が来た。

 

「ウイングレーザー!」

 

 極太のレーザーが岩を掻き消した。ギリギリのところで退避したジェミニ・スパークWは近くのウェーブロードによじ登る。

 

「大丈夫、ツカサくん?」

 

 上昇していくコンドル・ジオグラフにキャノンを放ちながら、彼の側に降りて安否を確認する。だが、これは迂闊な行動だった。

 

「ダメだよスバルくん! 一カ所に固まったら狙われる!」

「あ、しまった! ごめん、でも放っておけなくて……」

「……いや、大丈夫そうだぜ。あいつ仕掛けて来ねえぞ」

 

 ウォーロックに言われて、2人はコンドル・ジオグラフを見上げた。2人が同じ場所にいるというのに何も仕掛けようとはしてこなかった。

 

「どうやら、村長はレーザーを上に向かってしか撃たねえみたいだな」

「え、そうなの?」

「さっきツカサが膝をついていた時、レーザーを撃たれていれば終わりだった。だが、わざわざ体当たりなんてまどろっこい真似をしていやがったろ?」

「なにか理由があるのかな?」

「あれだろうな」

 

 ツカサの質問に対して、ウォーロックは顔を下に向けた。2人はかなり下まで落ちてしまったらしく、ナンスカ村が近くに見えた。不安そうに見上げている村人やルナ達の姿もかろうじてではあるが視認できる。この距離でレーザーを撃てば村にも被害が出てしまうだろう。

 

「神とやらの甘い言葉に唆されていようが、腐っても村長ってわけだ。こいつは利用するにこしたことねえな」

「利用って……?」

 

 村長の優しい心に付け込もうとういうのだ。何とあくどい事だろう。

 

「ツカサ、お前はここに陣取ってろ。俺とスバルであいつを引きつける。お前は隙を見てジェミニサンダーでも打ち込んでやれ」

「ま、待って! それじゃあ君たちが危険すぎるよ!!」

 

 集中的に狙われ、被弾もしているジェミニ・スパークWが安全地帯に居座り、強力な遠距離攻撃を放つ。加えてロックマンが囮になりながら攻撃を仕掛ける。コンドル・ジオグラフからしたら鬱陶しいことこの上ないだろう。

 ウォーロックの案は理に適っている。だが負担はロックマンだけにかかる。ツカサが抗議するのは当然のことだった。

 だが、スバルは首を縦に振った。

 

「良いよ、僕が囮になる」

「ヘッ、お前ならそう言うと思ったぜ」

 

 ウォーロックはニヤリと笑ってみせた。

 

「でもスバルくん……」

「大丈夫だよ、ツカサくん。僕を信じて。僕は君を信じているから」

 

 ロックマンはそれだけ言うと、まだ反論しようとするツカサの言葉を振り切って上空へと駆け出した。同時にコンドル・ジオグラフも動き出す。

 

「トライブオン! グリーンシノビ!!」

 

 トライブオンしたロックマンはミサイルを撃ち落としながら逃げ回り始めた。ある程度数が減ったのを見計らい、大量のヒートグレネードをばらまく。狙いは曖昧だがこれで良い。狙いを定めていない分、相手にとっては避けにくい。速度に任せて突っ込んでくるコンドル・ジオグラフは対処できずに数発被弾した。

 

「ぐぅっ!?」

 

 加えて下からジェミニ・スパークWの援護射撃が始まった。ロックマンに気を取られていたコンドル・ジオグラフはまともに弾を受ける。

 ジェミニ・スパークWに気を向けたようだが、攻撃する素振りは見えない。この隙にロックマンは大量のバトルカードを使用し、攻撃の陣形を整えた。

 

「ステルスレーザー、ボルティックアイ!!」

 

 透明な小型戦闘機と、目玉のような機械が大量に召喚される。ロックマン自身は両手をマッドバルカンに変えた。

 

「いっけえ!!」

 

 攻撃の嵐が始まった。二門のバルカン砲が火を吹き、小型戦闘機と目玉から細かい雷の弾丸が放たれる。集中砲火を受けてコンドル・ジオグラフが動きを緩めた。

 この好機をツカサは逃さなかった。ジェミニサンダーが左翼を撃ちぬいた。翼から火を吹き、コンドル・ジオグラフは錐もみしながら落ちていった。

 

「や、やった!?」

「よしっ!!」

 

 ウォーロックと頷き合うと、下に目をやった。ジェミニ・スパークWが左手を振っている。手を振り返そうとした時、ロックマンの顔に緊張が走った。ジェミニ・スパークWより少し下で、コンドル・ジオグラフが体勢を立て直していたのだ。その額には赤く灯る光。忘れていた。コンドル・ジオグラフがダイナソーを取り込んでいることを。

 ロックマンが叫ぼうとしたときには、コンドル・ジオグラフがジェミニ・スパークWの真下に回り込んでいた。口には緑色のエネルギー。

 

「危ない!!」

 

 叫んだ時にはもう遅かった。悲鳴すら起きなかった。レーザーをまともに受けて、ジェミニ・スパークWが人形のように空へと放り出されていった。

 

「やった! やったぞ!! これで私がナンスカ村の神に……!!」

「トライブオン!!」

 

 残った方の翼にベルセルクが突き立てられた。雷のエネルギーが流し込まれ、随所から火が吹きだす。もだえるような鳴き声が空に響いた。

 

「よくもツカサくんを!!」

「ぬうぅ! まだ抗うか!?」

 

 戦いが再開された。ロックマンはコンドル・ジオグラフの体に取りついて攻撃を続けようとするものの、相手はそれを許さない。超高速で飛行し、振り落とそうとしてくる。ロックマンは翼にしがみ付くのが精いっぱいだった。

 

 

 その遥か下方……村とは目と鼻の距離にまで迫ったウェーブロードにジェミニ・スパークWはいた。ダイナソーで強化されたレーザーをまともに食らったのだ。無事なわけがない。彼の痛々しい姿の隣にジェミニが姿を現した。

 

「ギ……ギギ……」

 

 自我がほとんどない彼ではあるが、電波変換している相手が危機的状況であることは分かっているらしい。ジェミニ・スパークWの周りを右往左往と動き回っている。数回往復して、そっと顔を覗き込む。とたんに、仮面を鷲掴みにされた。

 

「ギッ!?」

 

 そのまま持ち上げられる。もがこうと体を揺すると、より強い握力で締め付けられた。同時にジェミニの体の右側に、違和感が生じた。

 

「ギギッ……!? ギッ!!?」

 

 白い仮面がメキメキと音を立てる。その様子を見上げながら、ジェミニ・スパークWは顔を醜い笑みで歪めた。白かったはずの体が徐々に黒く染まり初めていた。

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