―――ようやく、終わる
No.■■■■■■■ RUBBY/おしまい
どこからか音が聞こえる。
パキ、というひび割れるような音。小さく、断続的に、しかし途切れることはない。
―――ああいや、音の源は本当は分かっている。
手足の間隔は当の昔に消え失せている。
あたりは静寂が支配し、戦いの名残だけがそこに残っている。
標識だったものは根元から折れ、道路もその機能を失っている。
真ん中には少女がペタリ、と座り込んでいる。
腰に巻いている真紅のデバイスは傷だらけで、むき出しになった配線から火花が飛び散っている。
死体は残っていない。唯一遺すことが許されているのは一枚のカードだけ。
墓標のように、しかし死後も安寧は訪れないとでも言うかのように無動作にカードがばらまかれている。
一陣のそよ風が吹き、カードを持ち去っていく。
一枚一枚が世界の軍事を揺るがせかねないもの。しかし、それを意識する必要はもう無い。
既に世界に政府というものは存在しない。
大国では戦闘が起きているだろうが、終結するのは時間の問題だ。
災厄に備えてきた日本でさえこの有様なのだから。
私たちは怪物に勝てなかった。
生意気な後輩は怪物になった。
――――私を逃がすために。
頼れる先輩は自ら命を絶った。
―――私の代わりに彼を殺したから。
家族の仇は討てなかった。
―――代わりに
私は怪物を殺した。
殺し続けた。
殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して―――
―――殺し続けた。
そうでもしないと、罪悪感で押しつぶされてしまいそうだったから。
「―――ハハッ」
その果てが、この結末か。
血の味が広がる口から嘲笑が漏れる。
パキパキ、という音が近づいてくる。
指先は既に崩壊が始まり、徐々に消失している。
味覚が消える。
思い出したのは孤児院で食べた昼食。
彼は謙遜したが、久しぶりに料理が美味しいと感じられた。
―――その味も、温かさも、薄れていく。
聴覚が消える。
石の音が聞こえなくなる。
―――ああ、そういえば後輩の声はどんなものだっただろうか。
視覚が、消える。
これだけは安心した。もう二度と私の顔を見ないで済む。
弱くて、みじめで、仇すら討てず、生き残ってしまった私の顔。
―――そんな資格なんて、私には無いのに。彼を巻き込み、復讐鬼に落としてしまった私には。
最後に思い出したのは家族ではなく仲間たちの顔。
とうの昔に逝ってしまった仲間たち。
私の最大の幸運で、最大の不幸。
彼らがいなければ私はここに居らず、私がいなければ彼らはあのような結末にならなかっただろう。
―――家族ではなく、あなたたちをおもいうかべる、とはわ、、も、、、、た
・・・
・・・・・
・・・・・・・・・・・
いしきが、きえる
再び風が吹き、石像が倒れ伏す。
甲高い音と共に砕け散り、原形が残らないほどまで粉々になる。
破片は徐々に粒子になっていき、やがて跡形もなく消えていった。
遺されたのは真紅の銃とドライバー、そして
一枚のレコードカードだけだった。
―――ああ、みなさん。そんなところにいたんですね―――