超能力の子   作:ガテル

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第14話

 

僕の名前は斉木楠雄、苺プロ所属の高校生マジシャンだ。目標である世界最高のマジシャンを目指すため、放課後や土日も修行に明け暮れて……るわけないだろう?当然だ、だって僕は熱血系主人公じゃないからな。

 

一応「逸材」らしい苺プロ唯一のマジシャンな僕を更に鍛えるため、ミヤコさんは事務所パワーや自らのコネクトを使い他事務所のマジシャンや有名なトリック系YouTuberを講師として呼ぶという事が数日前にあったのだが。開始1時間で全員根を上げてしまい。

 

 

「「「……何か自分より凄いです、教えるどころか逆にこっちが教わりたいぐらいです」」」

 

 

そんな感じで残り時間は立場が逆転し、何故か僕が講師になるという現象が起きてしまった。だが僕のはトリックではなく超能力だから、特に種も仕掛けもないので説明は出来ずにただマジックを見せるだけになってしまったのは申し訳なかったな。でも3人とも「凄いの見れた!」と満足そうに帰ってくれたのはよかったが、この事をミヤコさんに伝えると謎展開についてこれないのかこめかみを押さえながら。

 

 

「本当に逸材なのはよく理解できたわ……とりあえず、どういう活動をするかについては今後ゆっくり考えていく事にしましょうか」

 

 

と、僕の芸能活動プランは一旦フワフワと宙に浮いた状態になってしまった。正直あのときは完全に流れで入ってしまったから、悪いがあまり目立つような事はしたくないんだがな?まぁタレント関係に関してはΨ難に巻き込まれない事を祈るしかなさそうなのが辛い所だ。

 

 

そんな出来事もあり、土日も修行に明け暮れるわけじゃない僕は元の世界と同じように週末を過ごしていた。今日は日曜日、午前中は家で趣味の読書をしつつ午後からはスマホで調べたカフェに足を運ぶつもりだ。何故ならこの世界でも美味しいコーヒーゼリーを食べたいからな……こんな感じで静かな落ち着いた1日を過ごせると思っていたんだが。

 

 

「にがっ!?ふふ、コーヒーゼリーというのは中々美味しいね?私の舌に見合う味だよ」

 

 

いや、最初に思いっきり「にがっ!?」って言ってるの聞こえてるんだが。まだ子供だろツクヨミ、無理して身栄なんか張らない方がいいと思うぞ。

 

 

「はぁー?これくらい食べれるし、なめんな」

 

 

その割にはスプーンを持つ手がプルプル震えてる事にはツッコミを入れるべきか?

 

僕の平和なはずの1日は、先ほどカフェの前で会った未だ正体が掴めない謎幼女によって打ち砕かれた。

 

 

 

 

「君にとって私は唯一の世界改変の認識を共有する存在だ、どうだい?また全然久しぶりってわけじゃないけど会えて嬉しいよね?」

 

 

入学初日のときもそうだったが、割と頻繁に絡んでくるな。やはり暇なのか?

 

前回のようにまた必死に否定してくると思っていたが、僕の問いに対しツクヨミは遠い目をしながら。

 

 

「君の言う通りさ、この平和になった世界で私の役割はない。いやそれ自体は本当にいい事なんだけどね、でも暇すぎて何だか悲しくなっちゃったんだよ……」

 

 

……良い世界に変わってくれた事は聞いたからわかっているが、暇になった原因も100%僕だな。ツクヨミの表情から哀愁が漂いすぎてて、ちょっと罪悪感あるぞ。

 

 

「アクアとルビー、私が2人に関わる事はもうなくなったよ。いや強いて言えば一つあるけど、あの件は一緒にいるうちにいつか気づくときが来るだろうしね?だからわざわざルビーを曇らせる必要はないかな」

 

 

そういえば2人の事を知っていて、過去に何かしら関係があるんだったな。そこについては知らないが、暇なら僕じゃなくあっちに絡めばいいだろ?お前もそうしたいと思ってるはずだ。

 

すると、ツクヨミは「全く、何もわかってないねー」と言わんばかりにムカつく表情でちっちっちと人指し指を立てて左右に振っていた。

 

 

「私は影から見守りたいタイプでね、だって前もそうして……つ、つまり彼らに介入はしないって事だよ!?わかってくれたかな!?」

 

 

……今の絶対正体に関するヒントだな、テレパシーは読めないがちょっとずつ答えに近づいてきたぞ。

 

要はアクアとルビーに関わるつもりはないが、純粋に暇で寂しいから話し相手が欲しい。そういう事だろ?

 

 

「……私をボッチみたいな括りは不満しかないが、まぁ否定できないのが悔しいね。そうさ、こうして現れたのは今までの会話を聞いたり関わった結果。毎度君は何やかんやツンデレてるから、話し相手になるのも許してくれると思ったからだよ」

 

 

おい、誰がツンデレだと?確かに斉木楠雄を語るときファンからそう言われてる事が多い気がするが。あれは間違ってるな、僕は決して最終的にやれやれとか言っちゃう系のツンデレじゃないぞ。

 

 

 

 

 

 

 

「焼肉なんて初めてだよ、何かオススメとかあるかな?」

 

 

自分の事を人間より遥か上の存在とか言っていた割には、焼肉という人の娯楽に対し随分とワクワクしてるように見えるが?やれやれ、さっきの話でツクヨミに多少罪悪感を感じてしまったからだろうか。本当は一人で静かに過ごすつもりだったのに焼肉に連れてきてしまったぞ。まぁどうしてここを選んだかの理由を説明するなら、僕自身元から母さんや父さんと時々焼肉に行っていて普通に好きだからだな。

 

 

「やっぱり君ってツンデレみたいだね」

 

 

……だから僕はツンデレじゃないって言ってるだろ、そのニヤニヤした目をやめてくれ。

 

(今ガチのゆきホントどうなるんだろうなー)

 

 

「ん?急に苦い顔してどうしたんだい?」

 

 

いや、この数日テレパシーで沢山今ガチの話題を聞くんだが。正直僕には合わない話すぎて聞いてるだけで疲れてくるんだ、元の世界でも恋愛リアリティショーはあったが絶対見なかったしな。

 

アクアが出演してるしルビーやかな、お前の話にも上がっていたから見ようと努力したが1話の中盤で限界を迎えてしまった。

 

 

「ああいうのは陽キャが見るものだからね?君が見れないのも無理はないさ」

 

 

ナチュラルに喧嘩売ってくるな、これでも本当に努力したんだぞ。僕としてもこれから重要人物になると言っていた、MEMちょや黒川あかねが一応どんな人物かは知りたかったんだ。

 

そう話すと、ツクヨミは何故かこちらを心配するかのような表情で見てきた。まるでそれは危険だよとでも言わんばかりに。

 

 

「……MEMちょは別にいいけどね、でも黒川あかねに関してはあまり関わるべきじゃないと言うか警戒した方がいいと思うよ」

 

 

どうしてそんな危険人物みたいな言い方をするんだ?確かに黒川あかねを映像で始めて見たとき、何か無性に嫌な予感はしたが。

 

 

「いや彼女の性格がヤバいとかそういう意味ではなくてね、問題はあの優れすぎた観察眼と推理力かな。改変前の世界では途中から真相に近づくわ強いわで、私も正直かなり困惑してたんだよ」

 

 

真顔になっているツクヨミを見て、本当だった事がわかる。一見そんな風には見えないがそこまで凄いのか。

 

……つまり何が言いたいかというと、黒川あかねと関わりを持つと僕の正体が見破られる可能性があるというわけだな?

 

 

「そういう事だね、あと日曜の今日って今ガチのメンバーで焼肉に行く事になる日なんだけど心配する必要はないよ。彼らが行くのはここの焼肉屋とは違う店だからさ」

 

 

そもそも彼女の所属は苺プロじゃないしな、だから当然僕と関わる可能性も低い……ちょっと待て。今何て言った??

 

 

「いやだから今日は今ガチのメンバーが焼肉に行く日だよ……って私の頬をつねるな!前も言ったけどね!一応子供の躰なんだぞ!?」

 

 

何でそんな重要な情報を言わなかったんだ、確かに改変前はそうだったかもしれないがここはバタフライ効果で色々な事が変わった世界だぞ。もしかしたら行く店が変わってる場合も十分あり得(いやー臨時休業の張り紙を見たときはマジで焦っちゃったけど、近くにいい店あってよかったよぉ)

 

(焼肉でも若いから胃もたれしないだろうし安心して食えるな) 

 

 

「……君のその表情からして、もしかしなくても彼らが来ちゃった系かな」

 

 

ああ、来ちゃった系だ。僕達はまだ席に着いただけで注文自体はしてないが、カメラがある以上瞬間移動や透明化はできないな。しかも彼らは既に近くのテーブル席にいる、僕としたことが真面目な話で気を取られて気づけなかった。完全に失敗だ、今ガチメンバーの陽な雰囲気など挨拶する事ですらキツいし絶対に避けたいぞ。

 

周囲に別の人物と思わせる催眠も、自分には使えないからここでは意味がない。こうなったらもう今のうちに席から出るしかないな、店員への説明は会計のカウンターですればいいか。

 

 

「や、やれやれ?完全に強行策ってわけだね。し、仕方ないからそれで妥協してあげるよ」

 

 

僕の口調取るな、まぁ問題はないぞ。今アクアが席についてるのは確認できてるしな、僕にとって知り合いはあのメンバーの中でアクアだけだ。彼以外と認識はないし、すれ違うくらいなら大丈夫だろう?

 

観察眼に優れているらしい黒川あかねも、別に能力者というわけじゃないみたいだしな。僕はそう軽く思っていたのだが、ツクヨミの考えはどうやら違うらしく焦った様子で。

 

 

「か、彼女を甘く見ない方がいい!人の細かな挙動まで深く考察できるほどに「……えっ?」

 

 

何かを疑問に思ったような声が聞こえて、僕が後ろに振り返るとそこにいた人物は例の黒川あかねだった。恐らくドリンクバーに来たんだろう、だが彼女の姿を見たツクヨミはまるで終わったと言わんばかりに絶望的な顔を浮かべていて……そこまで反応する必要あるか?

 

 

 

(歩き方とその姿勢、一見一般的に思えるけど明らかに他の人と比べて負担が少なく身軽。アスリートとかでさえ比べ物にならない、それにその自然さから恐らく意図的じゃなく根本的な身体の構造からそうだよね。まるで重力に囚われてないみたい、私こんな人初めて見たよ?こういうの何て説明するんだろ。普通の人にはない特殊な力を持ってるとでも言えばいいのかな……いや考えすぎだよね)

 

 

……前言撤回だ、彼女は本気でヤバいぞ。

 

 

 





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