焼肉屋騒動から1週間後。
PK学園の生徒であったはずだが、訳あって(世界線移動)今は陽東高校に在籍している。芸能高校といっても一般科なので、授業も普通の高校と大して変わらないのは平穏を望む僕にはありがたい事だ。
「みんな席に着いてー!」
(数学の竹下先生は今日も可愛いぜ!) (僕はどの教科も100点取れる自信があるが、数学は無理そうだ。何故なら……授業中竹下先生だけを見てるからさ) (結婚しよ)
「では授業を始めます!」(何かガキ共にウケがいいからこのキャラでやってるけどダルいわー帰ったら彼氏に癒してもらお)
(ホント可愛いぜ!)(ああ、僕はあなたを見つめる事をやめられない) (結婚しよ)
まぁ表面上は平穏だな、後1人だけ巨人になれそうな生徒がいる気がするがきっと気のせいだろう。しかしこう考えるのは何度目になるかわからないが、テレパシーはロクなものじゃないな。ゲルマニウムリングを使いたいが、学校では指輪など付けられないし仕方ない。これ以上面倒な心の声を拾わない事を祈る。
(くすえも~ん!めっちゃ可愛くて歌も上手くてダンスも上手くてアイドルになってくれそうな子を超能力で出して~!)
ルビー、即フラグ回収してくるのはやめてくれないか?
「せっかくB小町SECONDを結成したのにメンバーは私と先輩の2人だけ、ぴえヨンとのコラボ動画で少しは名を売る事が出来たけどアイドル活動はまだ始められてすらいないんだよね……」
放課後、今日もアクアは恋リアの撮影らしくルビーと2人で苺プロへ向かっていた。やれやれ、さっきのトンデモは何かと思ったがメンバー数の事で悩んでいたという事か。いやそうだとしても完璧アイドルを出すなんて禁断の人体錬成能力は僕にはない。
「じょ、冗談だよ!?つい心の叫びを抑えきれなかったというかね」
だが分身能力はあるぞ。
それを聞いたルビーは訝しげに僕を見てきて。
「……それも十分禁断じゃん?」(あっ、でもせんせとママが分身できたら最高かも。ハーレムを築けちゃうんだ、夢の楽園せんせママハーレムを!!ぐへへへっ)
もう既に脳内で妄想として形作れているのか、ルビーはアイドルとしてあるまじき顔になっており。ファンの前で晒そうものなら一発アウトだぞ、ある意味こっちの方が禁断じゃないか?
数分経ってここは外という事実にようやく理性が働いたらしく、ニヤケ顔ではあるもののルビーは戻ってきてくれた。
(分身……ちょっと待って斉木さん、それならもしかして性別を変える事も出来たりするの!?女の子に!)
ルビー、それはよくないな。邪念は捨てて早く事務所に行くぞ。だが一度その思考が沸いたら最後、自らの左目の星をより一層輝かせた彼女は止められそうになかった。
(一瞬でいいからお願い!)
無理だ。
(そこを何とか)
だから無理だ。
(……コーヒーゼリー)
やれやれ仕方ないな、少しだけだぞ。
監視カメラや人影のない場所に行き、テレパシーでも確認済みである。そして僕はコーヒーゼリーと引き換えに楠雄から楠子に変身した。
楠子を見たルビーは目を見開き固まっていて、まあ変身を初めて見たら驚くのは当たり前か(えっ可愛すぎでしょ)……は?
変身する事もあって距離を取らせていたルビーだったが、一瞬で僕の元へ駆け寄ってきた。
「これはいけるね、アイドルになろ?B小町SECONDいいよB小町SECOND。でもどうしても嫌なら違うグループでもいいよ、その時は私めちゃくちゃ推すから。これを活かさないのはもったいないよ、だからアイドル。なろ?」
もはや前世分も加算されてしつこいスカウト化してるぞ、さりなとルビーは同一人物なのに何で2人分のパワーみたいになってるんだ。これがそんなに良いのか?確かに連載時は読者ウケ凄まじかったらしいが。
「何か笑顔やポーズとかできる!?当然可愛めの!その写真をSNSに上げたら万バズは固いよ」
数日前にかなからSNSの使い方を叱られたばかりだろう、バレたら炎上するぞ。変身しただけで満足してくれ。
「笑顔NG、ならこの場合クール、いや無感情アイドルに入るよね。こういう子もオタウケはかなり良いんだよ!先輩のこってりとはまた違った濃いめのオタとかにね!」
分析やめろ……悪いが斉木楠子のΨ難を始めるつもりはないぞ。