(もっと見たかったよー楠子ちゃん)
コーヒーゼリーと引き換えに行った寄り道変身ショーも終わり、僕達は今苺プロの入口前まで来ているのだがルビーは未練タラタラらしく何故かちゃん付けまでしている。悪いがルビー、もう楠子について触れるのはやめてくれないか?
(ええ~?楠子ちゃんがアイドルやったら絶対人気出るのに、前世から生粋のドルオタな私が言うんだから間違いないね!)
あの姿はあくまで僕の女体化に過ぎないんだがな……それにただでさえ楠子は少ない出番ながらも人気投票で上位を取ってしまったキャラだ、なのでこの作品に出しすぎると「もうずっと楠子でいいんじゃね?」と意見が来てTSタグを追加しなければいけなくなる可能性がある。冗談抜きで斉木楠子のΨ難がスタートしてしまうぞ。
そんな根底を揺るがしかねないやり取りをテレパシーで交わしながら事務所内を歩き進めいつもの部屋へ入ると、そこにはソファーに寝転がり「よくわかるニホントカゲ」という本を読んでいるかながいた。現在ここはメンバー人数の理由から未だ正式なアイドルを活動始められないB小町SECONDと、突然契約で未だ芸能活動プランさえよく定まってない謎マジシャンな僕のたまり場と化している。
確か数日前はよくわかるエリマキトカゲだかを読んでいた気がするが、そんなにトカゲが好きなのか?
「私を爬虫類大好き女子か何かだと勘違いしないでほしいわね、ほら知識や雑学は多い方が将来役立つって言うでしょ?芸能界なら尚更よ」(い、いや別にこの前のドッキリで昔を思い出して若干バラエティ熱が再燃しちゃって読み漁ってるとかじゃなくて!?でもあれは勘違いだったし。結局今も仕事量は少ないままなのよね……何か悲しくなってきたわ)
僕に芸能界の事はよくわからないが、かなの哀愁漂う姿は切なさを感じさせるぞ。
「その目やめて!同情されるとマジで辛くなっちゃうから!!」
あれだ、この後ラーメンでも食べに行くか?
「いやカロリーとか色々気にするし、悪いけどパスさせてもらうわ……てか急にどうしたのよ、ラーメン誘うとかアンタそんなキャラじゃなかったでしょ」
今の発言は僕じゃなくて燃堂のキャラだな、「おう、相棒!ラーメン食いに行こうぜ!」耳にタコができるほど聞かされた台詞だが最近は……認めたくないもののそれが聞けない事を少しだけ寂しく感じる。だからだろうか、つい真似してしまった。
まぁここは別世界、そもそもいな「あっ、ラーメン屋といえば最近ネットでバズってる人気店があるんだよ。場所は苺プロの最寄り駅から数駅離れた所でさ、えっと店名は確か……ラーメンAIBOUだね」
は???
苺プロ帰り、日が暮れて辺りも暗い中。僕はさっそく例の店へと足を運んでいた、それにしてもかなりの行列だな?今から並んで営業時間的にちょうどギリギリ入れるくらいか。
ラーメンAIBOU……ルビーによるとネットでバズった理由はあまりに特徴的すぎるイカついケツアゴ店主、だがそれだけが理由ではなく味の質の高さ。正統派な醤油ラーメンは一度食べればやみつき、リピート間違いなしと言われているらしい。当然調べれば店主の写真も載ってるだろうが、猛烈に嫌な予感がしてどうしても僕は調べる事ができなかった。いや分かっている、ここは別世界だし燃堂はまだ高校生だ。ラーメンが好きでも作るのは専門外、それに一時期バイトしたときは店内に地獄を作り出してた有様だ。スキルに年齢に世界など全ての面から考えても……だがあの燃堂だぞ、全くもって経緯はわからないが。
「おー相棒、気がついたら何かここにいたんだけどよ。どうなってんだ?お?」とか状況すら理解できずにこの世界に飛ばされてきてる可能性もある。
ちなみにここは店内から半径200m以内なため、一応テレパシーで客の声を聞き取っているけれど店主の心の声のみは何故か聞こえないのが僕の不安をより増幅させる。超能力を使用していないにも関わらず時間が無限のように感じながら、僕は平常心を保ち行列を待った。
そして1時間半ほど並び、ようやく店内へ足を踏み入れた僕の目の前に現れたのは。
「へいらっしゃい!」
モヒカンのような黄色い特徴的な髪、ヤンキーにしか見えない顔つき。ラーメン屋なのに何故か寿司屋の掛け声、テレパシーで心の声が読めない。そして綺麗に割れたケツアゴ、もはや要素全てが。
……燃堂?
思わず出てしまった僕の言葉に対し、「お?」と不思議そうに首を傾げた後。
「オレっちの名字は燃堂じゃねぇぞ、堂燃。堂燃力だぜ!」
やれやれ、別世界だからこういうパターンか。理解したぞ、やれやれ。
全くやれやれだ、いや3回も使ったのは断じて動揺からではないからな……本当だぞ。