超能力の子   作:ガテル

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第22話

 

平日の朝、それはテレパシーが使える僕にとって苦痛の時間である。何故なら半径200m内の人間達の憂鬱な心の声で溢れかえっているからだ、特に登校中は人の密集率も高く入ってくる声の量も多い。

 

(学校行くのだる) (あのうるさいだけのカス上司さっさと辞めてくれねぇかな) (今日こそ真唯に恋人より親友の方が良いって事、絶対分からせてやるんだから!)

 

今すれ違った僕と同じ髪色をした違う学校の女子生徒には何故かシンパシーを感じるな、詳しくは分からないが彼女も学園生活で随分苦労してそうな気がするぞ。ただ本の種類が違うとでも言うのだろうか?具体的に言うなら僕は漫画主人公で向こうはラノベ主人「ちょっと、そんな触れちゃいけないものに触れてるみたいな難しい顔してどうしたのよ?」

 

 

振り向くとそこには、訝し気にこちらを見てくるかなの姿が。

 

……僕とした事が気づかなかったな、だが助かったぞ。危うくイケない真実に辿り着く所だった。

 

 

「ホントに何考えてたのよ……でもまぁ気を付けなさい、その不注意さは身の危険を呼ぶわ。全く、やれやれね」

 

 

僕の口癖を使うのはやめてくれ、それより珍しいな。僕達は通学ルートが全然違うから今まで会った事などなかっただろう。

 

そう聞くと、かなは気だるそうにため息をついて。

 

 

「悩みがあってね、それについて歩きながら色々考えたかったのよ。だからわざわざ遠回りしてたわけ」(学校じゃ今ガチの話題ばっかり耳に入ってくるから嫌気が差してたけど、結局街中の通行人でも同じなのよね。これなら遠回りなんてするんじゃなかったわ)

 

その悩みというのは今ガチについてか?

 

 

「……ガチの大当たりで怖いわね、何?マジシャンってのは読心術も習うの?」

 

 

正解率100%(テレパシー)だ、まぁこれはスルーでいいが……僕にとって今ガチの話題というのは他人事じゃない。何せあれだけ介入してしまったからな、だからかなの話は一応気になるぞ。

 

何で分かったのよと少しの間引き気味だったが、どうやら諦めたのか話を始めた。

 

 

「……そもそも恋愛リアリティショーってどうなのよ、人の恋愛を安全圏から眺めるなんてコンセプトが悪趣味なのよね。誰と誰の掛け合わせがいいとか、何なの馬主なの。楠雄もそう思う思うでしょ?」

 

 

こちらから聞いておいて悪いと思うが、めちゃくちゃ反応に困るぞ。

 

 

「みんなアクあか言っちゃって、実在の人物でカップリングとかやめなさいよ」

 

 

そうか、この不機嫌っぷりの理由はアクアが好きだからか。やれやれ、恋愛に疎い僕でも普段から事務所で心の声を沢山聞かされていれば流石に察せる。

 

それにしても歴史の運命力というのはしっかり働いているようだな?あの件は仕方がないとはいえ介入しすぎた、だから本来に人の抱く想いを無くしてしまったのではないかと不安があったが……これなら流れは違えどツクヨミの話していた通り黒川さんはアクアに好意を抱いているのだろう、安心したぞ。

 

 

「あかねもあかねよ、何か急におもしれーボクっ娘キャラやっちゃって。しかも視聴者にウケてるし、ウケいいし!」

 

 

あれだ、僕による影響で正史との流れの変化はその……本当に申し訳ない。

 

どうやら変に触れてしまった事で本人の心に抱え込んでいた不満が爆発したらしく、僕では抑えられそうになかった。

 

―――だが心配する必要はない、あくまで僕じゃ無理なだけだ。既にテレパシーでそれを可能な人物が近づいてきているのは把握済みである。

 

 

「有馬……それに斉木?2人が一緒だなんて珍しいな」

 

 

アクア、来てくれて助かった。お礼に今度コーヒーゼリーの美味しい店を紹介するぞ。

 

 

「いきなりどうした」

 

 

 

 

 

「―――やっぱアンタ変わってる、高校生が学校という牢獄から逃げ出して何するかと思えば公園で呑気にキャッチボールだもん。わざわざグローブとボールまで買ってさ、変なの」

 

 

そうだな、学校サボって公園で呑気にキャッチボールなんておかしいぞ。

 

 

「……正直ツッコミ入れるの嫌でスルーしようと思ったけど言わせて、公園のベンチに座って呑気にトランプをシャッフルしてる楠雄も十分変わってるのよ??」

 

 

何を言ってるんだ?僕は一応マジシャンなんだぞ、修行は基本だろう。

 

 

「頭痛くなってきたわ」

 

「……別に斉木は来なくてもよかったんだぞ?今の俺が言うと説得力0だが、学校はサボっちゃいけないものだしな」

 

 

2人は僕の正体を知らないから説明は出来ないが、ここは別世界だしサボりを知られて困る両親もいない。それに勉強だって2年の範囲は既にPK学園でやっている、だからサボリがOKという理論にはならないが1回ぐらいなら別に構わないだろう。

 

気まぐれだ、と短く理由を伝えるとアクアは(まぁ斉木も年頃だし、そういうのしたくなるか)と納得した。妙に達観したその見方はアクアの前世が20代後半の男性だったからだろう、ツクヨミが以前そう言っていたな。

 

今ガチの撮影などタイミングの噛み合いが悪く、実はアクアと話したのはルビーやかなに比べて少ない……だから前世についてなどよく知らないのだが、いずれ知る機会が来るのだろうか?

 

僕はその件について若干引っかかりを感じていると、いつの間にかキャッチボールは始まっていた。しかし、かなは野球の経験が無いらしく投げたボールはアクアを通り越して遠くへ。

 

 

 

「私みたいな下手っぴじゃなくて、もっと上手な人誘えばよかったんじゃない?ルビーとか」

 

「妹に学校サボらせる兄がいるか」

 

「シスコンキモッ」

 

 

妹と結婚したいだのほざくあのシスコン(照橋兄)よりは全然マシだぞ、アレは論外すぎる。

 

 

「……じゃあ今ガチの人とかは、仲良いんでしょ?」

 

「まぁ悪くはないけど、一応仕事っていうか。気安い関係でもないし」

 

「そ、そうなんだ」(へぇ~?へぇ~~??へぇ~~~???)

 

 

恋する乙女の内心はカオスだな、これをずっと聞いている自信は残念ながら僕にはない。

 

 

「嘘ついたり打算で動く事ばっかで、何の打算もなく無駄な会話を出来る人間は俺の周りには……まぁ家族とか除いてあまりいないな。その点有馬なら気を遣わなくていいし」(斉木も初対面のときから周りの生徒とは雰囲気違うし話しやすいんだよな、若者特有の騒がしさが無くて落ち着いてるのがいい。まだあんま話せてないけど、ルビーからの話聞くに良い奴なのも分かるし)

 

 

……フッ、さっきはアクアの前世について変に興味を持ってしまったがそれはプライバシーの侵害というやつだな。謝るぞ。

 

 

 

「使えやコラ!!」

 

 

その瞬間、ボールはかなの手から滑り落ちてしまいその後僕の足元まで転がってきた。

 

 

「斉木、悪いがこっちに投げてくれないか?」

 

 

やれやれ、仕方ないな。ボールを投げるなど久しぶりだが誤って力加減を間違えないようにしないと―――あっ。

 

 

「えっ?」

 

「は?」

 

 

 

この世界に来てから物理で物を言わす機会など例外のぴえヨンを除き全くなかった、だから元の世界に比べて頻度が少なすぎたせいだろう。

 

……ボールは空の彼方へと消え去った。

 

 

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