超能力の子   作:ガテル

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第23話

 

ボールを空の彼方へと消し去る瞬間をアクアとかなに見られてしまった僕は、2人に強引にマジックの一種だのアメージングだの説明して何とか誤魔化す事に成功した。まぁアメージングって台詞は微塵もウケずに気まずい空気を作り出しただけだったがな?

 

何はともあれ、今回の件は完全に僕の失態だ。ルビーやツクヨミにぴえヨンと黒川さん、この世界の人物にも僕が超能力者である事を知ってる人物は4人だがこれ以上増やしてはいけない。何故なら、この正体バレのスピード感で行くと簡単に把握人数が元の世界超えてしまう事態になる。それはまずいな?斉木楠雄のΨ難の根本的スタンスが崩れてしまうぞ……メタはこれぐらいにしておいて、とりあえず今は目の前の問題に向き合うとしよう。

 

 

「―――人気YouTuberにしてインフルエンサーMEM、アイドルに興味あったのは意外だったわ」(その顔見てれば分かるわよ、絶対年齢サバ読んでるでしょ)

 

「……」(アクたんの話でホイホイ来ちゃったけど、よく考えなくてもナチュラルに7つも年齢サバ読みしてるとかバレたらヤバいよぉ)

 

 

これに向き合いたくはないな、今すぐゲルマニウムリング付けていいか?

 

 

 

 

「YouTubeチャンネル登録者数37万人、それ以外の動画投稿プラットフォームでもフォロワー数63万人。ネットではだいぶ人気あるみたいね」(私も色々通って見てきたから分かるわ、美容や年齢は自分の意志に対して抗えないものなのよ。まぁ個人でやってる場合ならよくある話ね、こういう予想を立てるのは申し訳ないけれど……サバ3つといった所かしら?)

 

 

ネタバレになるが2倍以上だぞ、やれやれ。何故僕がこんな場所に居合わせなければいけないんだ……昼にミヤコさんから「今日の夜事務所に来てくれないかしら?斉木さんのマジシャン活動については前にゆっくり考えていくと言ったきり進んでなかったし、改めて色々と今後のお話をしたいわ。急で本当にごめんなさいね、本当はもっと早くやりたかったのだけど中々時間が取れなかったのよ」と僕の元へ連絡が来た。

 

他事務所のマジシャンや人気トリック系YouTuberを講師として呼んだものの、最終的には逆に僕が講師となって彼らにマジック(種も仕掛けもない)を見せる事になってしまった事件。確かにそこから僕のマジシャン活動は宙にフワフワと浮いてしまっていた、それがようやく動くらしいのだ。元より勢いで決まってしまったマジシャン、まぁ色々あって複数の芸能人と関わりは持ったが自らがその立場になるなど僕の目立ちたくないという信念から真逆であり正直嫌すぎるぞ。

 

事情を付けて断るのも出来るが、だからと言って後回しにするのはもっと面倒だ。そう思い、渋々事務所へと足を運んだのだが……話を始めるといった所でアクアと今ガチの面子でありツクヨミの話にも出ていたMEMちょが入ってきて今に至る。

 

 

「まず聞きたいのだけれど、MEMさんの事務所は?」

 

「私は一応、個人事業主として配信業やっていて……えっとごめんなさい。さっきからソファーに座って私達の話を聞いている彼は関係者か何かですか?」

 

「……そういえば、いきなり2人が入ってきたものだから斉木さんの事すっかり忘れ―――彼は斉木楠雄さん、苺プロ所属のマジシャンよ。かなりの逸材で今後には期待してるわ」

 

「今忘れたって言いかけませんでし「気のせいね」は、はい……マジシャンかぁ」

 

 

困惑一色にこちらを見てくるMEMちょ、この場に関係のないマジシャンがいるのだからその反応は当然だな。僕としても出るタイミングを失ってしまっていたんだ、だから今出て行く流れができて助かったぞ。これからサバ読みの話が訪れると思うと聞きたくしな?

 

立ち上がろうとしたそのとき。

 

 

「逸材か、確かに斉木は凄かったぞ。野球ボールを空の彼方へ消し去るやつ……アレはどう見ても投げて飛ばしたようにしか見えなかったんだが、ちゃんとしたマジックの一種らしいな」(アメージングとかいうキメ台詞は良いと思えないけどな?)

 

 

僕のセンスがダサいと勘違いするのはやめろ、文句は蝶野に言ってくれないか。

 

そんなアクアの発言でMEMちょの僕を見る目が何故か変わり始め……嫌な予感がするぞ。

 

(アクたんもそう言うなら本当に逸材なんだねぇ、確かにボールを空の彼方へ消し去るマジックなんて動画でも見た事ないよ。他にも何か誰もやれないようなマジック出来るのかな?あれっ、それをやればネットで……)

 

 

「―――バズる可能性大だよ!ねぇくーたん!今度私のチャンネルに出てくれないかなぁ?ギャラは弾むよ~?」

 

 

MEMちょは目を輝かせながら僕の元へ近づいてきた、くーたんというのは僕か?その呼び方は母さんの「くーちゃん」に似てるからやめてほしいぞ。

 

 

「任せてよ、私はネット上のマーケティングとセルフプロモーションでここまでやってきたバズらせのプロなんだよぉ?絶対くーたんをネットの人気者にしてあげるからさ!」(チャンネル登録者100万人に近づく大きなチャンス、こんなの絶対無駄に出来ないじゃん!)

 

 

僕は死んでもネットの人気者になどなりたくないんだがな、それに欲望が丸聞こえだぞ。中々引いてくれないMENちょだったが、早く本題に入りたいのかミヤコさんが「……それで?あなたは年齢をいくつサバ読んでるのかしら?」と直球で聞きMEMちょは完全に固まってしまった。ついに年齢の話が来てしまったか、僕は既にネタバレ済みだ……彼女の年齢は25歳であるというのをな?

 

 

 

 

 

「―――がっつり盛ったわね!?」

 

「いくつ持ったの、3歳くらい?」

 

 

違うぞアクア、盛ったのは7歳だ。

 

 

「……マジか、つまり25かよ」

 

「いや何で知ってるのぉ!?」

 

 

……マジックの1種だ。

 

 

「年齢判明マジックとか普通に最悪だね!?違うの!これには事情があって!」

 

 

 

MEMちょ、彼女はどうやら幼い頃からアイドルになるのが夢だったらしい。だが、母子家庭で弟が2人いる事から就職を考えていたが母親が応援してくれた事でその夢を目指し始めた。それからオーディションで大手の最終審査に残ったりと良い結果は出ていたが……高校3年のとき母親が過労からか入院してしまい、お金が必要な事から彼女は高校を休学して様々なバイトをこなし弟達を大学に行かせ母親も元気になれたと。しかし既にそのとき年齢は23歳、アイドルのオーディションは満20歳な事から受けられなくなり夢を追えなくなった。

 

アイドル業界というのは本当に厳しいんだな、僕にはあまり遠い話だがそれでも伝わるぞ。

 

……いや遠くはないな、ルビーとは関わりがあるし星野アイも僕の世界改変が大きな影響を与えた人物だ。

 

 

「やっぱりダメですよね、7つもサバ読んで……バレたとき大変ですもんね」(私が小さい頃からずっと輝いていて、今なおその輝きは失せない。そんなアイみたいな存在に私もなりたかったなぁ)

 

 

僕にはどうする事もできない、だが……解決できそうな人物が来るみたいだな。心配は必要なさそうだぞ。

 

 

「……そんな事ないよ」

 

「えっ?」

 

「MEMちょだ!本物!可愛いー!!」

 

「話は聞かせてもらったわ、私も年齢でウダウダ言われた側だからちょっとだけ気持ち分かる……子役の事務所も高学年になったらお払い箱でさ。ホントムカつくうううう!」

 

 

 

ルビーと……芸能界への怒りから泣いているかな、2人が来たからというだけで僕は心配がいらないと思ったわけではない。テレパシーでルビーがMEMちょに対して何を言おうとしているかを分かっているからだ。

 

彼女は左目の星をより一層輝かせながら。

 

 

「アイドルをやるのに年齢なんて関係ない、だって憧れは止められない―――ようこそ!B小町SECONDへ!」

 

「……うんっ、よろしく」(アクたんが言ってたけど、本当にSECONDをやる気なんだ。今もB小町があるのに、どうしてだろうと思ったよ?きっと何か理由があるんだと思う。でもそれについて聞きはしないんだぁ、だって……このチャンスにすっごくワクワクしてるからね!)

 

 

MEMちょはルビーの手を取り、B小町SECOND3人目のメンバーとなった……良かったな。

 

 

「またうちの妹は綺麗事を―――有馬、ルビーとMEMをよろしくな」

 

「うるさい、気安く話しかけないで……アンタは黒川あかねと楽しくやってなさいよスケコマシが。今ガチの番組内では付き合わずに終わったけど、どうせ裏でコソコソ付き合ってんでしょ?」

 

「いやマジで付き合ってねぇし……まぁ今度遊びに行きませんかって誘われたけどな」

 

「やっぱりスケコマシじゃないの!」

 

「酷くね?」

 

 

 

B小町SECONDはようやく正式なスタートか、それにこれで僕はツクヨミの話していたこの世界の重要人物とも全員会ったんだな。気にかけていた件が一つ解決して少しスッキリしたぞ、いつ元の世界へ帰れるか分からない不安はあるが……とりあえず今はマジシャン活動の件を何とかすれば僕はこの世界で落ち着いた時を過ごせ(斉木さん!もし良ければなんだけどね?)

 

……どうしたんだ?

 

テレパシーながらもルビーは体をしっかりこっちへ向けて、何かを決意したような真剣な表情。

 

 

(B小町、そしてママを超えるために当然歌やダンスとかアイドル活動をめちゃくちゃ頑張るよ。だって全力の実力勝負だもん!でもそことは別の部分である事をアイドルに活かせると思ったんだ、前世のある私やお兄ちゃん、そして超能力者の斉木さん。非化学なオカルト的存在……それって唯一無二の個性じゃない?)

 

 

……つまり。

 

 

(超能力、いやマジックとしてアイドルのパフォーマンスと合体させれば誰も見た事のないアイドルが出来るかもしれないって思うんだ。私もアイドルとしての立場だけじゃなく一ドルオタとしても見てみたいし、作ってみたい。だから、だからね?もし斉木さんがいいなら……私達B小町SECONDに協力してくれませんか!)

 

 

 

この世界に来て最初に出会ったのはルビーだ、彼女と色々話しテレパシーなどでも僕は様々な事情を知った。そこから陽東高校に入って、苺プロにも所属しかなを誘ったりぴえヨンとの動画撮影などB小町SECONDとして活動を行うための努力を見てきたんだ……ふっ、どうやら僕に穏やかな時というのは訪れてくれないらしいな?

 

まぁ目立つのはご免だ、だが裏からサポートぐらいはしてもいいだろう。

 

 

 

―――分かった、協力するぞ。

 

 

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