超能力の子   作:ガテル

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第5話

 

僕はこの世界の過去で、アイという人物の殺害を目論む男の心の声をテレパシーで受信し犯行に及ぶ前にソイツを気絶させ警察にも通報し食い止めた……いや、食い止めてしまったのだ。過去を変えればバタフライ効果で未来に大きな影響を及ぼす、前に現代を世紀末に変えてしまったどころか僕が死んでいる事態にまでなった事がある。

 

そんな経験があるからこそ過去を変えてはいけないと誰よりも知っていたのに、僕は見過ごす事が出来なかった……今度は世紀末どころか人類が滅亡していてもおかしくないと覚悟していたが。この現代に来て特に文明に問題が起きたような形跡は見受けられない、それは心の底から良かったと思う。

 

 

でも知らなくちゃいけないんだ、僕がこの世界に及ぼした影響についてな。別世界へ帰るのは現状できないが、過去へ戻る事なら恐らくはできるだろう。それで変えてしまったものを元に戻さなければ。

 

 

「……君のその顔、私の話を聞いたら過去の同じ日へ飛んで改変を修正する気だね?」

 

 

どうしてそんなに驚いている、お前がどんな理論で改変を認識できているかは知らないが。僕の前に現れたのは歪みを戻してほしいからだろ?

 

するとツクヨミは大きくため息を吐き、その顔はやれやれと言った感じに呆れていた。

 

 

「さっき言ったはずだよ、私は君に感謝しているとね。それはこの改変を元に戻してほしくないという意味さ」

 

 

は?僕はこの世界を本来の流れと変えてしまったんだぞ、それによって数々の悪影響を及ぼしているに違いない。止めるのはおかしくないか?

 

 

「いいや、君が起こしたのは悪影響なんかじゃないよ。むしろ良いことだね、あの男……リョースケがアイを殺せなかった事により本来起きるはずだった復讐や苦しみはは起きず。そして全ての元凶となるカミキヒカルもその後すぐにあっさり事故で死んだんだ、全く驚きさ。バタフライ効果ってのは随分めちゃくちゃだね、ふふっ」

 

 

僕のときも急に世界が世紀末化して鳥束がモヒカン野郎になってたぐらいだしな、それに関しては同意だが……ツクヨミ。これだけは言っておくぞ、悪影響がないからといって改変を戻さない理由にはならない。その理論なら前に元の世界の過去へ行ったときに、僕は燃堂の父親を救う選択肢を取らなかったことに矛盾が生まれる。

 

 

普段は感情が薄いと自覚してるが、そんな僕でも今は顔が歪み怒っているのが自分でもわかる。だがツクヨミの瞳はまるでこちらを見透かしてるようだった。

 

 

「お堅いね、そうは言ってるけど君の中には実は後悔があったんじゃないのかな?だから過去でリョースケを止めた、合ってるかい?」

 

 

……チッ、ポンコツそうに見えて痛い所を突いてくるなコイツ。テレパシーを遮断してる道具を奪ってその正体を暴いてやりたくなったぞ。

 

認めたくないが、否定もできないな。ああ、僕はあの選択肢を心のどこかで後悔していたんだろう。だから助けたんだ。

 

 

「やれやれ、少しは私をバカにした事について後悔したかい」

 

 

いやそれはないな、僕の感が言っているがお前の正体は意外なもので。知ったらきっと笑えるはずだ。

 

 

「は、はぁ!?私は人間なんかより遥かに偉大な存在ですけど!?」

 

 

汗ダラダラだし必死すぎだろ、余計に怪しいぞ……コイツはやはりポンコツだな。そう僕が確信に至っていると、少しは冷静になったのかコホンと咳払いをした。

 

 

「ま、まぁどちらにしろ君は過去に戻る選択肢を取らないはずだよ。だってリョースケが言っていたアイというのは、さっき会ったルビーの母親であるアイドルアイだからね……って私の頬をつねるな!一応子供の躰と同じなんだぞ!」

 

 

おいどういう事だ、それは本当なのか?

 

 

「う、嘘をつくわけないだろ?君が過去に飛んだ日はアイのグループのドーム公演当日でね、その日にアイはナイフに刺されて殺されるはずだったんだよ。その死はルビーと兄であるアクアや、周りの人々に大きな影響を与えることになる出来事だった」

 

 

……色々言いたい事だらけだが、まずは答えろ。僕が改変する前の世界を何故お前は知っているんだ?

 

 

「私はかなり特別な存在だからさ、後2人に情報を教えたり色々流れを作る役割でもあったんだが……全く。雰囲気のある意味深なワード沢山考えてたのに急に世界が変わったもんだから本当に驚いたよ?トンデモない事をしてくれたね君は」

 

 

やってくれたなと言ってる割には先ほどからこの改変に喜んでいるように感じられて、心を読めない僕にはその理由がわからなかった。そんな僕の困惑した表情を見たツクヨミは、まるで過去の大切な記憶に思いを馳せるように穏やかな表情になり。

 

 

「……まぁ私は彼らに恩があるんだよ、だから根底から復讐に縛られる事のない世界になって安心してるのさ」

 

 

アクアとルビー、2人と何があったのか知らないが僕はそこを深掘りするほど野暮じゃない。

 

それにしてもアイという人物がルビーの母親だったとはな……いや、ルビーからアイの話を聞いた時点で僕も心の底では察しが付いていたのだろう。

 

 

「私の話はいい、それより君は結局どうするつもりなのかな?過去に行き元通りにする選択肢を取るのかい?」

 

 

僕とルビーの会話を聞いていたなら、その答えなどわかっているだろう。

 

 

前世の彼女の境遇やその短い人生を知った上で、今がどれだけ幸せかをずっと散々聞かされたんだぞ。それに世界に悪影響もないなら……そうだな、僕は改変してしまったこの事実を背負ってもいいと思ってる。

 

 

「……やれやれ、この場合私も同罪になるんだろうね。君のバカにした態度はとても腹立つが、一緒に背負ってあげるよ。あの2人のためだ」

 

 

そう言ったツクヨミは困ったように、だがそれ以上に喜びが大きい笑顔を浮かべていた。

 

これが正しいかはわからないが、少なくともこの決断に後悔はない。やれやれ、昔の僕なら考えられなかったけれどアイツらと出会った事で変化はあったのだろう……元の世界か。家族もいるし当然戻りたいが、同時に自分の超能力がどれほど手に負えないかも十分に理解している。だからとりあえず焦っても仕方ないだろう、またあのバグが起きれば元の世界の同じ地点と時間に戻れるはずだ。発生方法もわからないし気長に待つしか手段はない。

 

 

「とりあえず話は纏まったね、そういえば君は公園での会話で元の世界に帰る方法がないと言ってなかったかい。これからどうするつもりなのかな?」

 

 

いつ起きるか分からない2回目の超能力バグを待つしかないな、まぁ1万回越えのループも経験した事がある。それにそもそも元の世界だって火山噴火の件で1年を何度か繰り返してたぐらいだ、だから僕が時間に関して焦る事はない。

 

一応返答にはなってるはずだが、ツクヨミは首を傾げて何かを疑問に感じてるようだった。

 

 

その仕草、引っかかる事でもあるように見えるぞ?

 

 

「もしかしたら1年以上こっちに留まる可能性もあるんだよね、君って一応高校生だろ。今も制服だしさ、学校とかどうするんだい?」

 

 

……ツクヨミ、ちなみに聞くがこの世界にPK学園という高校はあるか?元の世界で僕が通っている所だ。

 

するとツクヨミは気まずそうに目を逸らし、心の声が聞こえなくとも答えは丸わかりだった。

 

 

「……聞いたことないね、恐らく存在しないと思うよ」

 

 

僕とした事が色々あってすっかり頭になかった、家は人のいない山奥に瞬間移動しそこで超能力を使い小屋でも作ればいいが。長く留まる場合は学校問題も浮上するんだったな。

 

金も手持ちは殆どないっていうのに、また一つ新たな問題が増えてしまったぞ……僕が別の高校に入る事になるのか?やれやれ。

 

 





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