異世界転移して3年……クラスメートがクラス転移してきた!? 作:剣の舞姫
異世界転移して3年……クラスメートがクラス転移してきた!?
第12話
「獣のダンジョン」
まず始めにダンジョンについて改めて説明しなければならない。
ダンジョンとは大陸の各地に点在する迷宮の事を指し、確認されている数は12カ所、そのうち現在機能しているダンジョンは9カ所。
そしてつい最近の研究や資料解析によるとダンジョンとは8000年前の邪神戦争における邪神軍十二幹部の根城だったらしい事が判明している。
ダンジョン内は幾層もの階層によって構成されており、その何処かにダンジョンコアと呼ばれる物が存在している。ダンジョンの機能を停止させるにはダンジョンコアを見つけ出して破壊しなければならず、それまではいつまでもダンジョンモンスターを再出現させ続けるのだ。
当然だが、肝心のダンジョンコアの発見は容易ではなく、邪神戦争から現代までの8000年の間にコアの破壊に成功したダンジョンは3箇所のみ。また、昔よりもダンジョンモンスターの数が増えた事もあって現代のダンジョン攻略難易度は嘗てより跳ね上がってしまった。
今回、剣佑達が挑むのはその12カ所あるダンジョンの一つ、ビーストダンジョンと呼ばれている獣型モンスターばかり発生しているダンジョンだ。
馬車でダンジョンの近くまで来た剣佑達は降りてから徒歩でダンジョン入口の前まで来て、フィリアとアンナが自害用チョーカーを首に巻いたのを確認してようやく準備が整った。
四人の目の前には遺跡のような石造りの神殿跡の入口があり、入ってすぐに地下へ降りる階段が存在している。
「これは、ランタンを灯しておいた方が良いな」
「そうね」
事前に購入しておいた小型ランタンを四人とも照らして腰に下げると、盾持ちのスウェンを戦闘に階段を降り始めた。
階段は横幅が広いので先頭にスウェンを、中堅には剣佑とアンナが左右に分かれて並び、後ろをフィリアが歩く。
四人パーティーの基本となる陣形だが、この時フィリアは欲を言えばもう二人ほど人が欲しいと考えていたのだ。
六人パーティーなら全方位に対して安全な陣形を取りやすいという事から、実は現状だとダンジョンに挑むには少し心許ない人数でもあった。
「アンナ、ダンジョン内だから剣はもう抜いておけ」
「あ、はい団長!」
見ればスウェンも剣佑も既に剣を抜いて、フィリアも弓を手に持っているというのにアンナだけまだ腰の鞘に剣を納めたままになっていた。
スウェンに注意され慌てて剣を抜いたアンナを見て、そしてその手に握られた新品の剣を見てスウェンは感心したように頷く。
「良い剣を買ったな……正直、騎士団支給の剣はお前に合っていないんじゃないかと思っていたから、その細身の刀身はお前にとって使いやすいはずだ」
「そ、そうでしょうか?」
スウェンも今持っている騎士団支給の剣はアンナが新しく買った剣より刀身の幅が広い。因みに剣佑の魔剣ルクスリアも細い方で、アンナの剣より太く、スウェンの剣よりも細い中間サイズだ。
「スウェンさんの盾も立派ですよね」
ふと剣佑はスウェンが持っている盾に目を向けた。王国の紋章が刻まれた縦1mほどのカイトシールドと呼ばれるタイプの盾だ。
「これは王国騎士団の歴代団長に受け継がれてきた盾でな、“鉄壁”の武装スキルが付いているんだ」
「鉄壁……盾の武装スキルではよく見られる人工スキルね」
「騎士団にある盾で武装スキルが付いているのはコレだけでな、だから代々の騎士団長が受け継いでいる」
スウェンも先代の騎士団長が引退して引き継いだ時に受け継いだ物だ。だから、いつかスウェンが次の騎士団長に受け継ぐ日まで、スウェンを守り続ける盾として活躍する事になるだろう。
「お、階段も終わりだな……それからモンスターの気配だ。多分、階段の先が広場になっているのか、複数のモンスターが待ち構えている様だな」
「そうみたいね……音の反響からしてそれなりに広い空間よ。この鳴き声は……クレイジーウルフとコボルトかしら」
盾持ちという特性上、最前列に立つ事が多いスウェンはモンスターの気配を察知する能力に長けている。
そんな彼が複数のモンスターの気配を察知したと報告してきて聴覚に優れたエルフ族のフィリアが補足、モンスターの内訳まで教えてくれた事で一気に全員の警戒心も高まった。
「それで剣佑、このパーティーリーダーはお前さんだぜ? 指示を頼む」
「ホント、何で俺をリーダーで申請したんですか?」
「俺もアンナも冒険者としては新米だ。ならお前かフィリアのどっちかが一番、そして剣佑なら俺達全員を率いる事が出来ると判断したからだ」
「過大評価な気がしますが……」
騎士団長を務めるスウェンにそこまで評価されているとはくすぐったいというか、過大評価が過ぎると思ってしまうが、既にリーダーとして正式に登録されているので仕方がない。
剣佑は一度目を閉じて階段を降りた先へ意識を集中、モンスターの気配から凡その数を把握すると目を開けた。
「先ずはスウェンさんが飛び出して敵第一陣の攻撃を受け止めて下さい。その隙に俺とアンナが左右から飛び出して挟撃、フィリアは援護を頼む」
「了解した」
「了解です」
「まかせて」
「よし……GO!」
剣佑の合図と共に最初に飛び出したのはスウェンだ。階段を一気に降りて広場に出ると、フィリアの言う通り四足歩行の青いオオカミ……クレイジーウルフと二足歩行の茶色い人型の犬であるコボルトの群れがあった。
数はざっと見た限りクレイジーウルフが10匹、ナイフを主武装にしているコボルトが15匹といった所か。最初に群れの中のクレイジーウルフが1匹、スウェンへ飛び掛かってくる。
「武装スキル、“鉄壁”発動!!」
“鉄壁”の武装スキルを発動した事で盾と、それを持つスウェンの身体が淡く光り出した。
飛び掛かって来たクレイジーウルフをその盾で受け止めると、その鋭い牙が盾に突き立てられるも盾には傷ひとつ付かない。
「行くぞアンナ!」
「はい!」
スウェンがクレイジーウルフを受け止めた瞬間、剣佑とアンナがスウェンの後ろから左右に分かれて飛び出す。
盾を持たない剣一本のスタイルである二人はスウェンとは違いスピード重視の戦闘を得意としている為、その素早い動きでクレイジーウルフとコボルトの群れの横っ面から斬り掛かり、更にスウェンの後ろから放たれた矢が次々とスウェンに襲い掛かろうとしたクレイジーウルフを射貫いていく。
当然、盾を構えていたスウェンも防御だけに徹する事は無く、右手に持った騎士団支給のロングソードを構えて最初に受け止めたクレイジーウルフを仕留めると、矢を搔い潜って向かって来たコボルトやクレイジーウルフに斬り掛かった。
「これで、最後!!」
ものの数分で群れを片づけた剣佑達、最後のコボルトを斬り捨てた剣佑が血払いをして鞘に剣を納めると一息ついた。
今の戦闘で連携は十分だったと思う。スタンダードなパーティー構成とは言えないが、少なくともそれぞれが役割に徹して戦っていれば十分戦えるパーティーだろう。
「最初は剣士三人に弓一人のパーティーって、どうなのかと思ったけど……結構良さそうね」
「だな。スウェンさんが防御重視のパワー型で、俺とアンナが速度重視のスピード型だから遊撃に回る事で、ある程度役割分担が出来る。更にスウェンさんの援護にフィリアが入ればスウェンさん自身も防御しながら攻撃に転じれるから悪くない」
欲を言えば攻撃魔法を使う魔法使いや補助魔法を専門にしているサポーターが欲しい所だが、無い物強請りはよくない。
一応、剣佑とアンナ、スウェンがそれぞれ補助魔法を使えるし、攻撃魔法もフィリアの精霊魔法で代用出来る。
「落ち着いたな。それにしてもアンナ、やっぱりその剣はお前に合ってたな」
「そうでしょうか? いえ、そうですね……確かに騎士団支給の剣と比べて手に馴染むというか、動きながら剣を振るうのに違和感が無いです」
「ああ、今までよりも断然動きが良かった」
普段、訓練でアンナの動きを何度も見て知っているスウェンだからこそ、アンナが今の剣を使った戦い方が騎士団支給の太い剣を使っている時より良いのが判ったのだろう。
騎士団支給の幅が広い剣ではアンナには少し重すぎて速度を重視しているアンナの戦い方には合わないだろうと、スウェンも前々から考えていて、剣を変えれば一気に伸びるだろうと思っていたのだ。
今回、新しい剣を購入していざ実戦で試してみれば案の定だ。今のアンナなら即、師団長に推薦しても良いだけの実力があると思えた。
「剣を振る速度、剣筋、それから剣を持って移動する速度もか、どれも今までの剣ではどうしても重かっただろう? その所為で十分な力を発揮出来ていなかったように思ってな」
しかし、騎士団支給の剣は一律で決まっている。だからアンナ用に特別支給というわけにもいかなかったので、自分に合う剣は自分で用意してもらう他に無かった。
まぁ、アンナはこの剣を買う費用をまさかの経費で落としたので流石にその時は怒ったが、良い買い物だったのだろう。
「アンナってば、その剣を一目見た時から一目惚れしてたものね」
「ええ、剣の細さやミスリル特有の青緑色の刀身は業物だと一目で判る鍛造、花の金属細工が見事な機能美と造形美が合わさったこの剣、最初に見てこれしか無いと思いました」
実はこの剣を最初に見た時、剣佑が花の金属細工を見てカスミソウに似ていると言った時、カスミソウについて詳しく教えられてからか、アンナはこっそりこの剣を“ギプソフィラ”と呼んでいるらしい。
「そういえば剣佑の新しいグローブはどう?」
「これか」
そう、実は新しい武具を購入したのはアンナだけではない。剣佑も特注で作って貰った防具を今回身に着けているのだ。
その手を包む黒いオープンフィンガーグローブは上級モンスターであるブラックワーウルフの皮を加工した物で、ミスリルで作った青緑色のナックルガードが付いた真新しいグローブだ。
「良い感じだ」
感触を確かめるようにグローブを付けた手を握ったり解いたりを繰り返して皮特有のグリップ力を確認する。
「上級モンスターの皮を使っているから前の物より長持ちするだろうな」
「前のは確か、ワーウルフの皮だったっけ?」
「そう、今回はその上位種のブラックワーウルフの皮だからな」
最初の頃はクレイジーウルフの皮を使ったグローブを使っていたので、それから比べると随分と装備も進化したものだ。
今着ているコートも実は2代目のコートで、前は多少物理防御と魔法防御が高いコートだったが、今のコートはメタルスパイダーとマジックスパイダーの糸とワイバーンの皮を使って作った特別製、物理防御力も魔法防御力も桁違いに上がっている。
更に中に着ている肩出しタイプの蒼銀のライトアーマーは白金を使っているのでミスリルの鎧には劣るが高い防御力で胴体を守ってくれるのだ。
「白金の鎧なのか、鉄より重いから辛くないか?」
「正直かなり重いですよ。ただ、ミスリルの鎧をこのサイズで特注して貰うとなると、中々お高いので……」
「まぁ、確かにな」
ミスリルの鎧は基本的にプレートアーマーで作られる事が多い。この世の全ての金属の中で最も軽く最も頑丈な魔法金属で、産出量も多くない上に加工には特殊な技能が必要だからドワーフ以外に加工出来ないとあって、特注してもらうとなると莫大な金額が掛かる。
前に馴染みの店で特注して貰うとしたらどれくらいなのかと聞いたら、剣佑達が住む屋敷が4~5件くらい買える程の金額を提示された。
「あれ? 私の剣、同じミスリルですが……ルーン金貨90枚は安いのでは?」
「ミスリルは鎧に加工するより武器に加工する方が楽なんだ。だから手間賃はその分、武器の方が安いし、そもそもその剣の細さなら使用したミスリルの量もそこまで多くない」
これがスウェンの使っている剣ほどの太さと長さになればもっと高かったと思う。ついでに、スウェンの着ている鎧を全てミスリル製で作るとなると恐らくだが国家予算並みの金額になるだろうと思われる。
だから、聡一と晴信が武器庫から貰ったミスリルの鎧は国宝クラスの鎧なのだ。本人達はタダで良い鎧貰えてラッキー程度にしか考えていないのだろうけど。
「さて、雑談はここまでにして……どの扉から行く?」
雑談をして休憩をしていたが、それももう終わりだ。四人の視線の先には部屋の三方向にある3つの扉が。
「これは、調査に時間が掛かりそうだな」
「はい、気を引き締めましょう団長」
ビーストダンジョン調査1日目、早くも調査が長引きそうな気配に一同のテンションが下がってしまったのは、言うまでもない。
次回はダンジョン調査の続き、ダンジョンの闇や犠牲者の末路など出せればと思っております。