異世界転移して3年……クラスメートがクラス転移してきた!?   作:剣の舞姫

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第15話 「上級モンスター」

異世界転移して3年……クラスメートがクラス転移してきた!?

 

第15話

「上級モンスター」

 

 ダンジョン調査二日目、既に朝からダンジョンに潜っていた剣佑達は昨夜に決めたルートを通って昨日とは別の階段から地下2階へと降りていた。

 昨日のルートと中央のルートを挟んで丁度反対側のルートになるので、構造もそこまで変わらないかと思われたが、昨日のように広場の多いルートではなく、実は入り組んだ通路が多いようで、道の途中で敵と遭遇する事もある。

 とはいえ、通路自体はそこまで広いわけではないので、広場で遭遇するよりも数が少ないから対処はさほど難しくない。

 前衛に盾持ちのスウェンが立って、その後ろにアンナが、更にフィリアと続き最後尾には剣佑が背後を警戒するフォーメーションで進む事で確実に対処する事が出来たのだ。

 

「フィリア、こういう通路ばかりの入り組んだ場所は罠が多いイメージだが」

「ええ、一応精霊魔法で小精霊を飛ばして罠が無いか調べながら進んでるわ」

 

 入り組んだ通路は落とし穴などの罠がある事が多い。なのでフィリアが飛ばした緑色の半透明な妖精のような存在……風の小精霊で行く先々を調べて、罠があれば最前列のスウェンに報告するようにしている。

 そして、今も落とし穴トラップを発見したらしく、フィリアが前に出て少しだけ足元の石ブロックの床を調べると、トラップ起動トリガーとなるブロックにチョークで印を付けた。

 

「見事な罠探索能力だ……本職のレンジャーにも劣らないのではないか?」

「一応、これでも冒険者として30年のベテランだからね」

 

 初めてパーティーを組んだ仲間にレンジャーが居たらしく、色々と教わったとの事だ。そのレンジャーは数年前に病気で亡くなっているが、その子供夫婦や孫に時々会いに行っているらしい。

 

「孫の方もそろそろ結婚するって言ってたから、今度結婚祝いを贈らないと」

「買い物ならお付き合いしますよ。男の子ですか? 女の子ですか?」

「女の子よ、今は確か冒険者ギルド本部で事務処理をしているわ」

 

 フィリアからしたら生まれたばかりを知っていて、抱っこもしたし布おむつを替えた事もある子が、立派に働くようになって、そして結婚までする年齢になったのだと感慨深いものがある。

 エルフ族という長命種だから、人間族との時の流れ方が違うのは当然とはいえ、30年という年月は本当に短い。

 

「結婚祝いか……そういえば、俺も王立学園の同級生の子供が今度、結婚するって話だったな。俺も、何か用意しておかないと」

 

 スウェンにも結婚する知り合いがいるようで、まだ10代の剣佑とアンナには知り合いの子供や孫が結婚するというのがどういう感覚なのか理解出来ないが、二人ともどこか嬉しそうにしている事から、やはり喜びも一入なのだろう。

 

「ケンスケさんとフィリアさんは結婚は考えてないんですか?」

「私達は、そうねぇ……剣佑次第かしら?」

 

 フィリアから意味あり気な視線を向けられて剣佑は明後日の方を向いた。確かに結婚は考えているが、まだ色々と準備というものやタイミングというものがあるのだ。

 

「お? 階段だな」

 

 どう返したものかと考えていると、先頭を歩くスウェンが地下3階に降りる階段を発見したようで、周囲の敵反応と罠などを確認しながら近づき、ランタンで階段を照らす。

 階段途中にも敵がいる可能性もあるが、スウェンが確認した限りでは気配は感じ取れないようで、こちらに合図を出した。

 

「何がいると思う?」

「中級モンスターの強化型か、上級モンスターってところ?」

「だな、その辺が妥当だ」

 

 階段まで辿り着き、再びスウェンが階段下を覗き込んで問題無い事を確認すると、一行は慎重に降り始める。

 階段途中に罠が仕掛けられている様子は無く、無事に地下3階に降りると案の定と言うべきか、少し広い空間に出た。

 その空間の中央には1体だけだがモンスターの姿がある。四足歩行の獣型、獅子の頭に山羊の胴体、蛇の頭の形をした尻尾……間違いない、上級モンスターの中でもとりわけ獰猛で危険なモンスターに指定されているキマイラだ。

 

「来るぞ!!」

 

 キマイラが既にこちらの存在に気付いて威嚇しているのは既に判った。スウェンの合図で剣佑とアンナ、そしてスウェン自身も魔力を高めて補助魔法を発動する。

 

「「「フィジカルアビリティⅡ!!」」」

 

 中級補助魔法、フィジカルアビリティⅡとは簡単に言えば身体強化魔法だ。初級のフィジカルアビリティよりも強化率が高いので、身体を鍛えて無ければ効果切れと共に全身筋肉痛による激痛に苛まれる事になる少し危険な魔法。

 当然、普段から鍛えている三人なら問題無く使用出来る魔法なので、上級モンスター相手に遠慮なく使用に踏み切った。

 

「キマイラの火炎放射が来る! 俺の後ろに隠れろ!!」

 

 キマイラが、その口に炎を発生させた事で何が来るのか察知したスウェンが盾を構えて、その後ろに剣佑達が入ると、丁度キマイラが放った火炎放射が迫って来た。

 

「マジックバリア!!」

 

 炎の威力を見たスウェンがすぐさま盾だけでは不味いと中級補助魔法のマジックバリアを展開、少しでも炎の威力を抑えて防ごうとしたのだろう。

 それを見て、後ろに居たフィリアも炎の威力を下げる為に精霊魔法を使用する。

 

「ウンディーネ! 水流障壁!!」

 

 フィリアの隣に現れた水色の半透明な女性、水の精霊ウンディーネが手を翳すと、スウェンの張ったマジックバリアを覆うように水の壁が展開された。

 タイミングよく火炎放射がそこに直撃して、大量の水蒸気を発生させながら水の壁とマジックバリアに阻まれて、スウェンの盾に届く頃には炎の威力も大幅に低下、防ぎきる事が出来るレベルになる。

 

「キマイラはデカイ図体の割りに素早いぞ! アンナは俺と攪乱! スウェンさんはフィリアの方にキマイラが行かないように注意!」

「おう!」

「わかりました!」

 

 キマイラは蛇の尻尾に毒を持つモンスター、つまり毒を使う以上は自身にも毒耐性があるという事で、魔剣ルクスリアの武装スキルは役に立たない。

 元より使用頻度の少ないスキルなので気にはしないが、いざという時の切り札が効かない相手というのは、中々精神的にキツイ相手であるのは否めないだろう。

 だが、剣道で精神修行もしてきた剣佑であればその程度の事で動揺する筈も無く、冷静に、しかし心は熱くしながら剣を握り、キマイラの背後へ回って襲って来た蛇の頭を弾きながら付け根へ斬り掛かった。

 キマイラの尻尾の蛇はそれ自体が命のある生命体になっており、キマイラを倒すには尻尾の蛇を殺してからでなければ本体は死なないようになっている。なので、キマイラ討伐は本体を仲間が抑えている内に尻尾を斬り落とすのがセオリーなのだ。

 

「硬い……が!! この程度の硬さなら!」

 

 一度離れて走りながら斬り付けた尻尾の付け根を見る。木の幹のような太さの付け根は3分の1まで刃が通っており、後2回くらい同じ個所を斬れば切り落とせそうだ。

 とはいえ、斬った時の感触から魔剣ルクスリアほどの切れ味が無ければ弾かれるのは確実、アンナの剣もミスリルで切れ味は確かだから、彼女でも斬れるかもしれない。

 

「アンナ、尻尾の付け根を斬れるか?」

「やってみます!」

 

 スウェンが盾でキマイラの爪を防いでフィリアが尻尾の蛇の頭を射貫いた所を狙い、今度はアンナが尻尾の付け根に斬り掛かる。

 切れ味は確かなミスリルの剣による斬撃は、その刃が確実に付け根を斬るも剣佑ほどの深さまでは斬れなかった。

 おそらく、ミスリルの剣では魔剣ルクスリアほどの切れ味が無い事と、アンナの腕力が剣佑に劣っているのが原因だろう。

 

「アンナ! 尻尾は俺が斬り落とすから、援護頼む!」

「はい!」

 

 即座にアンナが矢の刺さった蛇頭を抑えに動いたので、その隙に剣佑は2度目の斬撃を付け根に叩き込む。

 一度目より最初の抵抗は少なかったが骨に当たった時は流石に抵抗が大きかったものの、構わず骨も切断、残り僅かな所で止まってしまったので離れると、尻尾の蛇も抵抗が弱くなったように見えた。

 最後の一撃は尻尾の必死の抵抗も考えられるので、剣佑は魔力を魔剣ルクスリアに通して赤黒い魔力を纏わせると、上段の構えを取る。

 

「これで終わりだ!! “断頭一閃”!!」

 

 剣佑の剣道と剣術、そして異世界で覚えた魔力という力を組み合わせた技、それがこの断頭一閃という技だ。

 原理は至ってシンプル、魔力を纏った剣を上段の構えから一気に振り下ろすだけ。ただし、その破壊力は抜群で、近距離では断頭台の如き鋭く重たい一撃として、遠距離の相手には飛ぶ斬撃として遠近両方に対応する剣佑の得意とする技である。

 

「斬り落とした!」

「よし! これで決めるぞ!!」

 

 剣佑の一撃が尻尾の付け根を完全に斬り落とすと、キマイラが激痛と動揺で暴れ出した。

 それを見てスウェンが盾を構えながら右手の剣に魔力を流すと、青白い光が刀身を包み込む。

 

「スピニングバースト!!」

 

 暴れながらも襲い掛かって来たキマイラの爪を盾で防ぎ、スウェンの剣がキマイラの首に突き立てられ、一気に貫いた。

 キマイラの首に刺さった剣、その刀身に纏っていた魔力がキマイラの体内で弾けると、爆発を起こしてキマイラの首が飛ぶ。

 突き刺した剣に纏わせている魔力を相手の体内で拡散・爆発させるスウェンの技は特に決め技として使用される事が多く、これを受けた相手は体内をズタズタにされて大概が死に至る技だ。因みに、剣ではなく槍でも出来る。

 

「お疲れ様」

 

 キマイラの死を確認した後、フィリアが労いの言葉を投げかけて一同の緊張が解れた。念のため周囲を警戒するのに剣は抜いたままダンジョンの床に溶けるように消えて行くキマイラの死体を確認した後、部屋の中央で一休みする事に。

 焚火で持ち込んだ干し肉を炙り、パンと一緒に少し遅い昼食を食べながらマッピングしている地図を広げて次のルートの想定をしなければならない。

 

「この広間の扉は5つ、つまり何処かの通路が上の階の中央ルートや右ルートと繋がっていると考えるべきだな。それでいて新たなルートか……広すぎるな」

「この広すぎるダンジョンのどこかにダンジョンコアが隠されていると考えると、探すとなれば骨が折れそうです」

「まぁ、今回はあくまで調査目的だからコアは探さないけどな……調査だけでも時間が掛かりそうだ」

 

 剣佑の言う通り、今回の目的はあくまでダンジョン調査なのだが、これだけ広いと調査にも時間が掛かりそうだ。

 邪神の封印されているという“魔界”へ通じる道があるのか、その調査だけでどれだけ時間が掛かるだろうか。

 

「一先ず、1ヶ月を目途に考えましょう。1ヶ月潜ってみて結果如何に関わらず一度王都へ帰る」

「うむ、流石に俺とアンナもそれ以上騎士団を空けるわけにもいかんからな、妥当な判断だろう」

 

 そうなると、毎日宿に帰るのも効率が悪い。多少の危険は承知の上でダンジョンで寝泊りする事も考えなければならないだろう。

 一応、全員寝泊り出来るように毛布や着替え、数日分の食料や水、薪などを収納して持ってきているから問題は無い。

 後は、寝泊りするのなら安全を確保した部屋で、という事になるが、このダンジョンは小部屋が多いので罠や隠し通路の存在をチェックすればいけそうだ。

 

「郊外演習以来だな、こういうのは」

「はい、あの時は演習でしたが、今回は本物のダンジョン内での寝泊りですね」

 

 スウェンとアンナが言うには騎士団で毎年行われる郊外演習でも外で見張りを立てて寝泊りをするという事をしていたらしい。

 今回は場所が外ではなくダンジョンで、人数も騎士団より少ないが郊外演習の経験は役に立ちそうだ。

 

「そうだケンスケさん、せっかくの機会ですから貴方の剣を教えて頂けませんか?」

「俺の……北辰一刀流をか?」

「ホクシンイットウ流というのですか、流派は」

「そう。日本で大昔に千葉周作という人物が創設した流派で、それこそ日本の歴史に登場する有名人も修めていた流派だ」

 

 坂本龍馬や新選組の藤堂平助、伊藤甲子太郎や山南敬助、服部武雄など、北辰一刀流を学んだ先達には有名人が数多く居る。

 剣佑もまた、同じく北辰一刀流を学ぶ一人ではあるが、正直言って習い始めて然程長くないため、人に教えられる程ではないというのもあり難色を示した。

 

「はっきり言って俺はまだ北辰一刀流の初伝で、基礎的な構えや動き、技術しか知らない。それに剣道の動きを合わせて、その上でロングソードを使う事前提に改良してるから、かなり異質になってしまっている」

「構いません。私は強くなる為なら使用する剣の異質さなど気にしませんから」

 

 そこまで真剣に頼まれては仕方がない、今夜から毎日基礎を教える事になった。

 勿論、教えるのはあくまで本当に基礎なので、最初は構え方とそれから素振りだけになるが、北辰一刀流の術理を学ぶ上で誰もが通る道なのでアンナにも通って貰う必要がある。

 

「んじゃ、まずは安全な小部屋を見つけないとな」

 

 昼食を終えて立ち上がった四人は、今晩寝泊りする安全な小部屋を見つける為に歩き出す。

 道中に現れた中級モンスターや上級モンスターを倒しながら、ようやく罠も抜け道、隠し通路の無い小部屋を発見した頃には夕食の時間に差し掛かっており、この日は見つけた小部屋で寝泊りする事が決まるのだった。




次回はアンナさん、北辰一刀流を学ぶ。
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